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本編
LEVEL41 / 接続語は二度漬け禁止
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※「LVEL12 小論は連想ゲームのように(前編)」「LEVEL13 小論は連想ゲームのように(後編)」の後続論点です。初めての方は上記の話を読んでいたけると理解がしやすいかと思われます。
「先生、なんて……俺、そんな偉そうなこと考えてないですよ」
勇斗は別に、自分が特別な存在とは思っていなかった。それは決して謙遜などというのではなく、ましてや「謙遜してる俺カッケー」とか、あるいは「本当はスゴイと褒められたい」わけでもない。
なぜなら、自分が教わったのは「小論文」という、学校で習っていなかった内容を教わった事であり。むしろ「なぜ学校で教えてくれないのか?」という疑問を感じるようになっていたのである。
「でも、周りがそう考えてんだからしょうがないじゃないか」
「しょうがない、ですか? 」
「そう、しょうがない」
勇斗本人にしてみれば、そもそも「感想文の課題が無事終わった」というだけで本来は満足なのである。むしろ、それ以上の完成度を求められるのは「自分だけ余計な宿題を出されている」とすら思っていた。
「それで、最初にやったゲーム感想文の内容を手直しする」
「手直し、ですか?アレってもう、直すところないんじゃ……」
「接続語の重複箇所を削除する」
「接続語……ですか?」
杉田が何やら、黒板に書き始める。
ドラクエ
↓
チームワーク
↓(例えば)
将棋
↓(ちなみに)
ハンデ戦
↓(つまり)
チームワーク
――その内容は、勇斗が初日にやった「連想ゲーム」の内容である。
「ドラクエはチームワークのゲームだ。魔王を一人で倒すのは難しい。したがって仲間を集める必要があります」
これも全く内容は同じだ。今、杉田が話している内容は「つい10日くらい前の勇斗自身」である。
「ちなみに将棋の場合、勇者は王将のようなものです。王将だけで将棋は勝てませんよね。そこで、別の動きをする駒が必要となってきます」
むろん、これも同じだ。
「ちなみに、将棋にはハンデ戦というものがあります。そしてこの表現は正しくありません」
えっ、一体何を言ってるんだ?そこから先は……
「どうだ、驚いただろ? 」
「いきなり何ですか! 」
「何って、これがダメなんだよ」
突然の杉田のダメ出しに対し、勇斗は完全に「何を言っているのか分からない」状態である。
「一体、何がダメなんですか?」
「同じ接続語を2回連続で使っちゃいけないんだ」
「何ですか? そのルール」
「まあ、何て言うかな。将棋でいう「二歩」みたいなもんかな」
将棋の駒である「歩」の前にもう一つ歩を置く。これは「二歩」といって反則行為である。趣味の対局ならばともかく、プロの棋士同士の対局でこれをやった場合「一発アウト」。即ち反則負けとなる。
「でも、何で接続語を連続で使うのが「反則」なんですか?」
ドラクエにおける、「仲間と一緒に魔王を倒す」というシナリオを将棋に例えた感想文である。そして、その将棋を例にとって説明を並べていくわけだ。
そうなれば、例え話の接続語が「ちなみに」というのは当然、正解ではないだろうか?
「何でそんなルールが存在するんですか?」
「何だろう。敢えて言えば「リズムが悪い」ってとこかな」
「リズム? たったそれだけの理由でダメなんですか? 」
「そう、たったそれだけの理由でダメ」
勇斗は、ますます納得がいかなかった。具体例を挙げるんだから、たとえ同じ接続語が連続して出ようとも「分かり易さ」。あるいは伝わることが最優先ではないだろうか?
そもそもこんなルール自体、敢えて分かりにくい文章になる危険を冒してまで律儀に守るべき内容なのだろうか?
「もちろん、そういう考え方もある」
「じゃあ、それでいいじゃないですか! 」
「それがダメなんだよ。何故ならこの文章は「先生の書いた文章」じゃなきゃいけないんだから」
杉田によれば、前回、勇斗が書いた感想文は「生徒としては合格点」なのだそうだ。
「じゃあ、先生としては何点くらいなんですか?」
「そうだな、60点くらいかな」
「一体、どこがダメなんですか?」
「だから言ってんじゃん。接続語、それは二度漬けが許されない世界……」
あっ、またコイツ変な世界に入ろうとしてるな、と勇斗は思った。が、
「この感想文をさ、参考書に載せる模範解答レベルに仕上げないといけないんだ」
「これ以上、何を書けっていうんですか?」
「何も書く必要はない。今、必要なのは「文章の手入れ」なんだよ」
「手入れ、ですか?」
勇斗にはまだ、2回連続で同じ接続語を使ってはいけない理由に納得がいかなかった。
しかし、自分の書いた内容が単に自分の成績を評価されるという枠を超え、大勢の人の参考になるとすれば……
「わかりました。じゃあ、直しますよ」
「そう、それでいい。それでこそ龍崎先生だ」
――と、勢いで承諾してしまったものの、やはり別の接続語を使うのは難しい。そして「逆に伝わりにくい」内容になってしまうのではないだろうか?
「ちなみに、に代わる接続語は他に何がある? 」
「そうですね。「例えば」とかですかね?」
「他には?」
「他には、えっと……「なお」とかですか? 」
「それも一つの選択肢だろうね」
なるほど、確かに言われてみればそうだ。「ちなみに〇〇は××だ」「ちなみに△△も××だ」という内容であれば、
「ちなみに〇〇は××だ。なお、△△も××だ……こんな感じですかね?」
「そう、そういう感じ」
思ったよりも簡単に出来た。そして確かに杉田の言うとおり、同じ接続語を連続で使わない。使うとしても別の接続語に「書き換え」をした方が、確かにリズム感が良い。
「じゃあ、「なお」の他に具体例を示す接続語は? 」
「そうですね。例えば……いや、「他に」とかでしょうか? 」
「ソレ! つまり「見つけようと思えば見つけられる」ってことなんだよ」
「確かに、そうですね」
接続語、といえば勇斗にとって「しかし」「例えば」「だから」くらいしか考えたことがなかった。
しかし、少なくとも今の「文章の手入れ作業」において、それは必ずしも「教科書に載っている」あるいは「国語のドリルで解いた」言葉だけに限られない。
「実はな、この接続語をテンポ良く使いこなせるのが「物書き」なんだ。小説家や新聞記者。あとは雑誌にコラム書いている人とか……いい文章、読みやすい文章は大概、このテンポ。即ち「リズム感」がいいんだよ」
勇斗にも思い当たる節はあった。確かにライトノベル、いわゆる「ラノベ」と呼ばれる文章は皆、とにかく「テンポが良い」。
それは単に読み易さを重視し、簡単な表現で書かれている。あるいは読者層が好むと思われる「ラブコメ」「ファンタジー」といった要素があるだけではない。現に勇斗自身、それに特別興味があるわけでもなく、実際にそのようなテーマでも「つまらないものはつまらない」という感覚である。
では、その中で「面白い」と思えた作品は一体、どんな感じだっただろうか?
「文体がリズミカルで、頭の中にスッと入ってくる……」
やはりこれなのかもしれない。即ち、ストーリーは平凡でも、その表現がとにかく「スッと頭に入ってくる」。
だとすれば、それは自分がたった今、指摘されている「接続語の使い方」にあるのではないだろうか……
「おっと、もう時間だ」
杉田が教室に掛けてある時計、そして自信の腕時計に目をやる。時計の針は午前10時50分を指している。
「10分間休憩な」
勇斗の疑問を遮るかのように休憩時間が訪れると、杉田は足早に教室を出て行った。
「先生、なんて……俺、そんな偉そうなこと考えてないですよ」
勇斗は別に、自分が特別な存在とは思っていなかった。それは決して謙遜などというのではなく、ましてや「謙遜してる俺カッケー」とか、あるいは「本当はスゴイと褒められたい」わけでもない。
なぜなら、自分が教わったのは「小論文」という、学校で習っていなかった内容を教わった事であり。むしろ「なぜ学校で教えてくれないのか?」という疑問を感じるようになっていたのである。
「でも、周りがそう考えてんだからしょうがないじゃないか」
「しょうがない、ですか? 」
「そう、しょうがない」
勇斗本人にしてみれば、そもそも「感想文の課題が無事終わった」というだけで本来は満足なのである。むしろ、それ以上の完成度を求められるのは「自分だけ余計な宿題を出されている」とすら思っていた。
「それで、最初にやったゲーム感想文の内容を手直しする」
「手直し、ですか?アレってもう、直すところないんじゃ……」
「接続語の重複箇所を削除する」
「接続語……ですか?」
杉田が何やら、黒板に書き始める。
ドラクエ
↓
チームワーク
↓(例えば)
将棋
↓(ちなみに)
ハンデ戦
↓(つまり)
チームワーク
――その内容は、勇斗が初日にやった「連想ゲーム」の内容である。
「ドラクエはチームワークのゲームだ。魔王を一人で倒すのは難しい。したがって仲間を集める必要があります」
これも全く内容は同じだ。今、杉田が話している内容は「つい10日くらい前の勇斗自身」である。
「ちなみに将棋の場合、勇者は王将のようなものです。王将だけで将棋は勝てませんよね。そこで、別の動きをする駒が必要となってきます」
むろん、これも同じだ。
「ちなみに、将棋にはハンデ戦というものがあります。そしてこの表現は正しくありません」
えっ、一体何を言ってるんだ?そこから先は……
「どうだ、驚いただろ? 」
「いきなり何ですか! 」
「何って、これがダメなんだよ」
突然の杉田のダメ出しに対し、勇斗は完全に「何を言っているのか分からない」状態である。
「一体、何がダメなんですか?」
「同じ接続語を2回連続で使っちゃいけないんだ」
「何ですか? そのルール」
「まあ、何て言うかな。将棋でいう「二歩」みたいなもんかな」
将棋の駒である「歩」の前にもう一つ歩を置く。これは「二歩」といって反則行為である。趣味の対局ならばともかく、プロの棋士同士の対局でこれをやった場合「一発アウト」。即ち反則負けとなる。
「でも、何で接続語を連続で使うのが「反則」なんですか?」
ドラクエにおける、「仲間と一緒に魔王を倒す」というシナリオを将棋に例えた感想文である。そして、その将棋を例にとって説明を並べていくわけだ。
そうなれば、例え話の接続語が「ちなみに」というのは当然、正解ではないだろうか?
「何でそんなルールが存在するんですか?」
「何だろう。敢えて言えば「リズムが悪い」ってとこかな」
「リズム? たったそれだけの理由でダメなんですか? 」
「そう、たったそれだけの理由でダメ」
勇斗は、ますます納得がいかなかった。具体例を挙げるんだから、たとえ同じ接続語が連続して出ようとも「分かり易さ」。あるいは伝わることが最優先ではないだろうか?
そもそもこんなルール自体、敢えて分かりにくい文章になる危険を冒してまで律儀に守るべき内容なのだろうか?
「もちろん、そういう考え方もある」
「じゃあ、それでいいじゃないですか! 」
「それがダメなんだよ。何故ならこの文章は「先生の書いた文章」じゃなきゃいけないんだから」
杉田によれば、前回、勇斗が書いた感想文は「生徒としては合格点」なのだそうだ。
「じゃあ、先生としては何点くらいなんですか?」
「そうだな、60点くらいかな」
「一体、どこがダメなんですか?」
「だから言ってんじゃん。接続語、それは二度漬けが許されない世界……」
あっ、またコイツ変な世界に入ろうとしてるな、と勇斗は思った。が、
「この感想文をさ、参考書に載せる模範解答レベルに仕上げないといけないんだ」
「これ以上、何を書けっていうんですか?」
「何も書く必要はない。今、必要なのは「文章の手入れ」なんだよ」
「手入れ、ですか?」
勇斗にはまだ、2回連続で同じ接続語を使ってはいけない理由に納得がいかなかった。
しかし、自分の書いた内容が単に自分の成績を評価されるという枠を超え、大勢の人の参考になるとすれば……
「わかりました。じゃあ、直しますよ」
「そう、それでいい。それでこそ龍崎先生だ」
――と、勢いで承諾してしまったものの、やはり別の接続語を使うのは難しい。そして「逆に伝わりにくい」内容になってしまうのではないだろうか?
「ちなみに、に代わる接続語は他に何がある? 」
「そうですね。「例えば」とかですかね?」
「他には?」
「他には、えっと……「なお」とかですか? 」
「それも一つの選択肢だろうね」
なるほど、確かに言われてみればそうだ。「ちなみに〇〇は××だ」「ちなみに△△も××だ」という内容であれば、
「ちなみに〇〇は××だ。なお、△△も××だ……こんな感じですかね?」
「そう、そういう感じ」
思ったよりも簡単に出来た。そして確かに杉田の言うとおり、同じ接続語を連続で使わない。使うとしても別の接続語に「書き換え」をした方が、確かにリズム感が良い。
「じゃあ、「なお」の他に具体例を示す接続語は? 」
「そうですね。例えば……いや、「他に」とかでしょうか? 」
「ソレ! つまり「見つけようと思えば見つけられる」ってことなんだよ」
「確かに、そうですね」
接続語、といえば勇斗にとって「しかし」「例えば」「だから」くらいしか考えたことがなかった。
しかし、少なくとも今の「文章の手入れ作業」において、それは必ずしも「教科書に載っている」あるいは「国語のドリルで解いた」言葉だけに限られない。
「実はな、この接続語をテンポ良く使いこなせるのが「物書き」なんだ。小説家や新聞記者。あとは雑誌にコラム書いている人とか……いい文章、読みやすい文章は大概、このテンポ。即ち「リズム感」がいいんだよ」
勇斗にも思い当たる節はあった。確かにライトノベル、いわゆる「ラノベ」と呼ばれる文章は皆、とにかく「テンポが良い」。
それは単に読み易さを重視し、簡単な表現で書かれている。あるいは読者層が好むと思われる「ラブコメ」「ファンタジー」といった要素があるだけではない。現に勇斗自身、それに特別興味があるわけでもなく、実際にそのようなテーマでも「つまらないものはつまらない」という感覚である。
では、その中で「面白い」と思えた作品は一体、どんな感じだっただろうか?
「文体がリズミカルで、頭の中にスッと入ってくる……」
やはりこれなのかもしれない。即ち、ストーリーは平凡でも、その表現がとにかく「スッと頭に入ってくる」。
だとすれば、それは自分がたった今、指摘されている「接続語の使い方」にあるのではないだろうか……
「おっと、もう時間だ」
杉田が教室に掛けてある時計、そして自信の腕時計に目をやる。時計の針は午前10時50分を指している。
「10分間休憩な」
勇斗の疑問を遮るかのように休憩時間が訪れると、杉田は足早に教室を出て行った。
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