吹奏楽部の私が異世界転生したら強キャラだった件。

葉山

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吹奏楽部の私が異世界転生したら強キャラだった件。#1

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吹奏楽部におけるトロンボーンとは、トランペットと肩を並べる花形である。
それこそ勇壮なファンファーレから緻密で美しい旋律まで。
そんなトロンボーンのパートリーダー、宇奈月  陽菜子はメトロノームを突然に止めて言い放った。
「ぜんっっ然駄目!」
椅子で陽菜子を囲むように演奏していた後輩たちはびくびくしながら楽器を下ろした。
「音程も合ってない、適当なリズム…1年生練習してないよね!?」
名指しで怒られた1年生3人は俯く。
「先週からなんにも変わってないじゃん…コンクールまで1ヶ月切ってるんだよ?自覚ある?」
「でも先輩…」
「言い訳聞きたくないから。」
反論しようとしたひとりをぴしゃりと制す陽菜子。
「言い訳するくらいなら合わすべきとこちゃんと合わそうよ」
クラリネットとの合わせあるから、と陽菜子は教室の入口で言い、後ろ手にドアを閉めた。
思ったよりも乱暴な音がした。
自分がパートリーダーだからちゃんと引っ張っていかなくちゃ、と気張っては居るものの、イマイチどうやったらいいのか未だに分からない。
頭の中はコンクールでいっぱいなのに、焦りばかりが増す。
「うなづきー」
正面の廊下から同じく3年生のクラリネットパートリーダー、杉野雅紀が呼び止めてきた。
「なにー」
「何不機嫌になってんだよ?顔にも声にも出てんぞ」
「うっざい」
「パート練習上手くいってない?」
手洗い場のそばの給水器で唇を冷やしながら彼に愚痴る。
「完全に練習不足じゃんあんなの」
「まー…前々から気になってはいたけどね、17小節目」
「他パートから聞いてもわかるくらいなんだね」
「まぁそんなに気張るなよ」
そう言って朗らかに笑う彼は、この新庄高校吹奏楽部の部長でもある。性格は音色に出るのか自由でのびのびとしたまるで歌うようなクラリネットの演奏をする。
しかもソロが得意…なんて才能なんだろう。
「わかんないよ、どうしたらいいかなんて」
「そう焦んな、クラと合わせに来たんだろ?」
「そう…ってか杉野と合わせたいところが」
「あぁ、そうなの?」
クラリネットと合わせに行くというのは半分嘘だ。怒ったあと少し気まずくなって、話していて落ち着く雰囲気の彼のところに行きたくなってしまったのだ。
「とりあえずきょうしつー」
「あっ待ってよ」
野球部の小気味よいバットの音が響く廊下、彼の背中を追いかけた。
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