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吹奏楽部の私が異世界転生したら強キャラだった件。#3
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濃い緑の匂いが鼻腔をくすぐった。
「…?」
ゆっくりと目を開けると、目に飛び込んできたのは柔らかな陽射しと、ざわざわと風に揺らぐ枝葉。
はっとして身を起こす。
「何処…?」
枯葉を踏み締め、立ち上がると陽菜子は見知らぬどこかの林の中にいた。
「さっき…私何して…」
倉庫に物を運んでて、途中の階段で足を滑らせて…
「そうだ、頭っ…!」
思い切り頭を踊り場に打ち付けたことを思い出し、頭に手をやるがどこも出血などしていなかった。
制服の袖を捲って確認してみるが、あれだけ派手に打ち付けたにも関わらずその痕跡はどこにもない。
「どういう事…?」
混乱した頭でぐるりと思考を巡らせ、もしかすると私は死んでるんじゃないかとも思ったが明らかに身体はちゃんとある。つねると痛いし。
…ということは、夢か。
多分私は救急車で病院に運ばれて、生死をさまよっている状態での夢ということも考えられる。
…心細くなって1歩踏み出すと、ポケットの中に何かが入っているのを感じた。
ぞんざいにポケットに手を突っ込み取り出すと、それはトロンボーン用スライドオイル。
さぁっと血の気が引いた。
「現実…な訳ないじゃん…だってさ、さっきまで学校に居て」
ポケットの中のものなんてあるわけないじゃん。これ夢なんだから。
そう言い聞かせようとしても頭が追いついていかなかった。
「だ、誰かいませんか!ここどこなんですかっ…」
自身の置かれている状況に頭がおかしくなりそうで、大声で助けを求める。
その時、微かに遠くから鐘の音が聞こえてきた。
「こっち、かな」
陽菜子は聴覚を研ぎ澄まし、音の出処に向かって歩き始める。
ローファーはすぐに泥だらけになってしまったが、確実に音は近づいてきていた。
「あっ…そ、そこにいる人!」
少し離れた木陰に動く人影を見つけ、渡りに船とばかりに駆け寄った。
猟師なのだろうか。野暮ったい皮の上着を身につけた大柄な人物だ。地面に座り込んで何かをしている。
「はぁっ…はぁっ…あ、あの!」
ようやくその人物の目の前まで辿り着き大きく肩で息をしていると、『彼』はゆっくりと振り返った。
「ひっ…!?」
振り向いた顔面は、明らかに人間のものではない。
緑がかった皮膚。尖った耳にぎらぎらと金色に怪しく輝く眼球。
そして手には、腐りかけた人間の大腿部が。
「アァ…エサからコッチに来てくれるなんてよ…なんてコウウンなんだ」
口に咥えた『人間の』肉片を地面にベッ、と吐き出すと、それは陽菜子に牙の揃った口でにんまりと笑う。
─喰われる。
声を出すこともできず、その場にへたりこんだ。
今すぐ走れ。
脳が警鐘を鳴らしているのに、脚がまるで動かなかった。
「…?」
ゆっくりと目を開けると、目に飛び込んできたのは柔らかな陽射しと、ざわざわと風に揺らぐ枝葉。
はっとして身を起こす。
「何処…?」
枯葉を踏み締め、立ち上がると陽菜子は見知らぬどこかの林の中にいた。
「さっき…私何して…」
倉庫に物を運んでて、途中の階段で足を滑らせて…
「そうだ、頭っ…!」
思い切り頭を踊り場に打ち付けたことを思い出し、頭に手をやるがどこも出血などしていなかった。
制服の袖を捲って確認してみるが、あれだけ派手に打ち付けたにも関わらずその痕跡はどこにもない。
「どういう事…?」
混乱した頭でぐるりと思考を巡らせ、もしかすると私は死んでるんじゃないかとも思ったが明らかに身体はちゃんとある。つねると痛いし。
…ということは、夢か。
多分私は救急車で病院に運ばれて、生死をさまよっている状態での夢ということも考えられる。
…心細くなって1歩踏み出すと、ポケットの中に何かが入っているのを感じた。
ぞんざいにポケットに手を突っ込み取り出すと、それはトロンボーン用スライドオイル。
さぁっと血の気が引いた。
「現実…な訳ないじゃん…だってさ、さっきまで学校に居て」
ポケットの中のものなんてあるわけないじゃん。これ夢なんだから。
そう言い聞かせようとしても頭が追いついていかなかった。
「だ、誰かいませんか!ここどこなんですかっ…」
自身の置かれている状況に頭がおかしくなりそうで、大声で助けを求める。
その時、微かに遠くから鐘の音が聞こえてきた。
「こっち、かな」
陽菜子は聴覚を研ぎ澄まし、音の出処に向かって歩き始める。
ローファーはすぐに泥だらけになってしまったが、確実に音は近づいてきていた。
「あっ…そ、そこにいる人!」
少し離れた木陰に動く人影を見つけ、渡りに船とばかりに駆け寄った。
猟師なのだろうか。野暮ったい皮の上着を身につけた大柄な人物だ。地面に座り込んで何かをしている。
「はぁっ…はぁっ…あ、あの!」
ようやくその人物の目の前まで辿り着き大きく肩で息をしていると、『彼』はゆっくりと振り返った。
「ひっ…!?」
振り向いた顔面は、明らかに人間のものではない。
緑がかった皮膚。尖った耳にぎらぎらと金色に怪しく輝く眼球。
そして手には、腐りかけた人間の大腿部が。
「アァ…エサからコッチに来てくれるなんてよ…なんてコウウンなんだ」
口に咥えた『人間の』肉片を地面にベッ、と吐き出すと、それは陽菜子に牙の揃った口でにんまりと笑う。
─喰われる。
声を出すこともできず、その場にへたりこんだ。
今すぐ走れ。
脳が警鐘を鳴らしているのに、脚がまるで動かなかった。
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