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吹奏楽部の私が異世界転生したら強キャラだった件。#4
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怖い。
こわい、こわい、こわい…!!
地面にへたりこんだまま恐怖で後ずさる。
「少しホソイがマァ…ゼイタクは言ってられねぇ」
本や漫画に出てくるゴブリンそのものの風体をしたそれは、陽菜子の全身を舐めるように見廻した。
「オンナだから、タダ喰うだけじゃ勿体ないな」
下品な笑みを浮かべながら近づいてくるゴブリンに、陽菜子はぎゅっと目を瞑った。
いびつな五指が陽菜子の太腿に突き立てられる、刹那。
バシッッッ…!!
何かを弾くような音と共に、ゴブリンの身体が弾き返された。
完全に油断していたのか、もんどりうって地面を五メートル程も吹き飛ばされるゴブリン。
「グッ…ナンダ…!?」
「な、何、これ…!?」
陽菜子も状況を理解出来ず、ふとポケットを見下ろした。
さっきポケットに入れたオイルが、スカート越しに僅かに金色の光を放っていた。
「フザケヤガッテ…!」
見るとゴブリンの左腕が二の腕までまるで焼け焦げたかのように燻っている。
「グオオオオ!」
怒り狂ったようにゴブリンは傍にあった戦斧をめちゃくちゃに振り回しながら突っ込んできた。
咄嗟にポケットにあったオイルを相手の顔面目掛けて投げつける。
たかがプラスチック製の、数百グラムのオイル。
そんなものは簡単に斧で薙ぎ払われてしまう─筈だった。
直後、耳を塞ぎたくなるような轟音とともに戦斧が砕け散り、ついでにゴブリンの怒りに歪んだ顔と上半身を余すとこなく吹き飛ばした。
砕けた肉片は陽菜子の頬と制服を汚す。
「…やっ…た」
がくがくと膝が震える。
その時、がちゃがちゃとやかましい音を響かせ鎧に身を包んだ集団が現れ、陽菜子を取り囲んだ。
「…ゴブリンが暴れているとの情報で来たが…これはどういう事だ」
下半身だけになって倒れ伏しているゴブリンを見て、数人がひそひそと会話している。面あてをしているので表情までは読み取れない。
頭が真っ白のまま、俯いてひしゃげたオイルの入れ物を見つめる。
「少し、通してくれないか」
凛とした声が響き、兵士たちの壁がすっと崩れる。
陽菜子に向かってきたのは、同い歳くらいの黒髪を後ろに束ねた男。
ゴシックな金ボタンの軍服が他の者との身分の差を感じさせた。
「萎縮させてすまなかった、立てるか?」
彼は跪き、陽菜子に手を差し伸べる。その手を取って陽菜子は立ち上がると縋る様に問いかけた。
「ここ、どこなんですか…さっきのあれはなんなんですかっ…」
「落ち着け、大丈夫だ」
「落ち着いてられないよっ、大丈夫じゃなくない…!」
錯乱したようにポロポロと涙を流して彼の手を握りしめる。
「うちに…帰りたいよ…もとの世界にっ…!!」
彼は一瞬はっとなにかに気づいた表情を浮かべ、
「あー、よしよし、話聞いてやるから」
先程よりもくだけた口調で頭を撫でながら陽菜子を宥めた。
こわい、こわい、こわい…!!
地面にへたりこんだまま恐怖で後ずさる。
「少しホソイがマァ…ゼイタクは言ってられねぇ」
本や漫画に出てくるゴブリンそのものの風体をしたそれは、陽菜子の全身を舐めるように見廻した。
「オンナだから、タダ喰うだけじゃ勿体ないな」
下品な笑みを浮かべながら近づいてくるゴブリンに、陽菜子はぎゅっと目を瞑った。
いびつな五指が陽菜子の太腿に突き立てられる、刹那。
バシッッッ…!!
何かを弾くような音と共に、ゴブリンの身体が弾き返された。
完全に油断していたのか、もんどりうって地面を五メートル程も吹き飛ばされるゴブリン。
「グッ…ナンダ…!?」
「な、何、これ…!?」
陽菜子も状況を理解出来ず、ふとポケットを見下ろした。
さっきポケットに入れたオイルが、スカート越しに僅かに金色の光を放っていた。
「フザケヤガッテ…!」
見るとゴブリンの左腕が二の腕までまるで焼け焦げたかのように燻っている。
「グオオオオ!」
怒り狂ったようにゴブリンは傍にあった戦斧をめちゃくちゃに振り回しながら突っ込んできた。
咄嗟にポケットにあったオイルを相手の顔面目掛けて投げつける。
たかがプラスチック製の、数百グラムのオイル。
そんなものは簡単に斧で薙ぎ払われてしまう─筈だった。
直後、耳を塞ぎたくなるような轟音とともに戦斧が砕け散り、ついでにゴブリンの怒りに歪んだ顔と上半身を余すとこなく吹き飛ばした。
砕けた肉片は陽菜子の頬と制服を汚す。
「…やっ…た」
がくがくと膝が震える。
その時、がちゃがちゃとやかましい音を響かせ鎧に身を包んだ集団が現れ、陽菜子を取り囲んだ。
「…ゴブリンが暴れているとの情報で来たが…これはどういう事だ」
下半身だけになって倒れ伏しているゴブリンを見て、数人がひそひそと会話している。面あてをしているので表情までは読み取れない。
頭が真っ白のまま、俯いてひしゃげたオイルの入れ物を見つめる。
「少し、通してくれないか」
凛とした声が響き、兵士たちの壁がすっと崩れる。
陽菜子に向かってきたのは、同い歳くらいの黒髪を後ろに束ねた男。
ゴシックな金ボタンの軍服が他の者との身分の差を感じさせた。
「萎縮させてすまなかった、立てるか?」
彼は跪き、陽菜子に手を差し伸べる。その手を取って陽菜子は立ち上がると縋る様に問いかけた。
「ここ、どこなんですか…さっきのあれはなんなんですかっ…」
「落ち着け、大丈夫だ」
「落ち着いてられないよっ、大丈夫じゃなくない…!」
錯乱したようにポロポロと涙を流して彼の手を握りしめる。
「うちに…帰りたいよ…もとの世界にっ…!!」
彼は一瞬はっとなにかに気づいた表情を浮かべ、
「あー、よしよし、話聞いてやるから」
先程よりもくだけた口調で頭を撫でながら陽菜子を宥めた。
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