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〜"デス"ゲーム、開幕〜
9話 魔王はつらいよ~心境編~
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石碑に触れ転移をすると、そこにはセバスと眼鏡をかけた赤髪の男が、こちらを宝くじでも当たったかのような笑顔で見つめている。
「あ、セバス、と、ビャクラ。えと、なんだ?ただいまー……なんて……」
怖い、物凄く怖い。どれくらい怖いかって、全身が小刻みに震えて額から脂汗流して胃の辺りがキリキリする程度には怖い。構図的に、暴力団のお頭と若頭に笑顔で詰め寄られてる高校生なんだが。
「「お帰りなさいませ。カイザ様」」
……あ、はい。なんか、裏組織の裏ボスになった気分。
「あの、ごめんね?なんかこの石碑に触ったら変な所に飛ばされちゃって」
顔を石碑に向けながら言う。いやー、この二人と同時に間近で顔合わせながら喋るのきついわー。
「いえ、私たちのことはお気になさらず。それより、カイザ様がご無事で何よりでございます」
「左様でございます。私たちはカイザ様が存在しているだけで満足なのです」
若頭、お頭の順で励ますような言葉をかけてくる。いやー、心が痛い。
なんかこう、今回みたいに一定以上の迷惑をかけると、思いっきり怒られたり叱られたりする方が気分的に楽じゃない?ここまで優しくされていると逆に胸が痛いというか……それも彼ら本気で俺が無事なだけで満足だと思ってるし。
「そういえば一つお聞きしたいことが」
セバスが何か思い出したようだ。
「ん?なんだ?」
「カイザ様が転移した先は一体どこなのか、と」
……すいません。その情報、俺のミスで持ち帰れていません。ほんっとーにごめんなさい!ああ今すぐ土下座したい。でも土下座したら面倒臭くなるの分かりきってるから出来ない!
「あの、すまん。それが分からなかったんだ。なんか、林と草原が混ざっているような曖昧な空間だった」
「なるほど。それでは僕の出番、ということですね?」
ビャクラが人差し指と中指で眼鏡をクイッと若干上にあげながら、含みのある笑みをこちらに向けてくる。……ごめん、俺には分からない。
「そうですね。ビャクラ、お願いします」
セバスの言葉を聞いた後も何故かこちらを見つめ続ける。……え、なに?
少し謎の間が開いた後、セバスがこちらを申し訳なさそうに見つめてくる。え、どうすればいいの俺!
「ああ、それじゃあビャクラにお願いしよう、かな~?」
「はい!お任せくださいカイザ様!このビャクラ、必ずや成果を出して見せましょう!」
ああー、俺にお願いされたかったのね。……なんだろう、俺に対する、っていうより、魔王に対する承認欲求が強いのかな?セバスが土下座しそうな勢いで、頭を何度も下げながら感謝しているのを見るとそうなのだろう。
「では、始めます」
ビャクラが石碑の前に立ち右手を翳す。
「カイザ様、申し訳ありませんでした。ビャクラはカイザ様への承認欲求が凄まじいものでして……逆にカイザ様以外ですと、指摘されたり頼まれたりするのを嫌う難しい人でして……」
セバス本人が何か失敗を犯したような顔で、ビャクラに聞こえるのを妨げるように手を俺の耳付近に寄せて言う。なんだかこっちまで申し訳ない気持ちになってくる。
「大丈夫だよ。よっぽどのことが無い限り俺は怒ったりしないからさ。もっと気を抜いてくれ」
励ますようにそういうと、今度は目に涙を溜め始めてしまった。
セバスさん!?あれだけ冷静沈着だったのに、感情の起伏激しくないですか!?だがまあ、もっと気を抜いて欲しいとは本気で思っている。人間は完璧ではない。自分以外の行動なんて制御できるものじゃないんだよ。だから、もっと気楽に行こう?セバスのためにも、俺のためにも。
めちゃくちゃ俺恰好つけてるけど、こんな偉そうな台詞、声に出しては死んでも言えない。おっと、どうやらビャクラがスキルを発動するようだ。
「【広目天】」
「うわっ」
おっと、つい心の声が漏れてしまった。いや、正直日本という平和な国にいた俺の反応としては当たり前だと思う、うん。
ビャクラがスキルを発動した瞬間、数えきれないほどの禍々しい『眼球』が石碑をドーム状に取り囲むように広がり、そして侵入していったのだ。
「ふむ。なるほど。カイザ様が転移した場所が判明しました」
おっと、どうやらもう分かったようだ。石碑に手を翳した時点で薄々気付いてはいたが、どうやら石碑の転移先を調べていたようだ。調べる、というより解析だろうか。
「凄いな、それで、どこだったんだ?」
場所を言わないまま、こちらを見つめ続けているのはまあ、これを待っていたのだろう。なんだかちょっとずつ慣れてきた。
「はい!それは」
「……あ、うんそれは?」
正直言っていいですか?
めんっどくせー。
「それは、始まりの草原、奥地でございます」
「なるほど!セバス、分かるか?」
この世界のことを碌に知らない俺に言われても正直困るのだ。
「ええ。始まりの草原とは我らに仇なす『エネミー』たちが戦いの基礎を抑えるために利用している場所にございます。そして、奥地はその中でも草原の主が生息している『ファーストサンクチュアリ』に最も近い場所にございます。カイザ様がおっしゃられていた『林と草原の間』というのも、奥地でしたら説明がつきます。間違いはないかと」
なるほど。始まりの草原はそのままの意味で、雑魚魔物が跋扈する最初のステージだろうな。『エネミー』とは恐らくプレイヤーのことだろう。そして『ファーストサンクチュアリ』、第一の神殿。これはいわゆるボスがプレイヤーを待ち構えているところだろう。いやはや、セバスの説明は分かり易くて助かるな。
「そうか。そんじゃ知りたいことも分かったし、帰るか」
「畏まりました。【伝達】。皆さん、無事カイザ様はお帰りになられました。防御配置を崩して結構です。お疲れ様でした。では、行きましょうか」
……。……ほんっとーーうに、すみませえええええん‼
心の中で100回土下座したカイザであった。
「あ、セバス、と、ビャクラ。えと、なんだ?ただいまー……なんて……」
怖い、物凄く怖い。どれくらい怖いかって、全身が小刻みに震えて額から脂汗流して胃の辺りがキリキリする程度には怖い。構図的に、暴力団のお頭と若頭に笑顔で詰め寄られてる高校生なんだが。
「「お帰りなさいませ。カイザ様」」
……あ、はい。なんか、裏組織の裏ボスになった気分。
「あの、ごめんね?なんかこの石碑に触ったら変な所に飛ばされちゃって」
顔を石碑に向けながら言う。いやー、この二人と同時に間近で顔合わせながら喋るのきついわー。
「いえ、私たちのことはお気になさらず。それより、カイザ様がご無事で何よりでございます」
「左様でございます。私たちはカイザ様が存在しているだけで満足なのです」
若頭、お頭の順で励ますような言葉をかけてくる。いやー、心が痛い。
なんかこう、今回みたいに一定以上の迷惑をかけると、思いっきり怒られたり叱られたりする方が気分的に楽じゃない?ここまで優しくされていると逆に胸が痛いというか……それも彼ら本気で俺が無事なだけで満足だと思ってるし。
「そういえば一つお聞きしたいことが」
セバスが何か思い出したようだ。
「ん?なんだ?」
「カイザ様が転移した先は一体どこなのか、と」
……すいません。その情報、俺のミスで持ち帰れていません。ほんっとーにごめんなさい!ああ今すぐ土下座したい。でも土下座したら面倒臭くなるの分かりきってるから出来ない!
「あの、すまん。それが分からなかったんだ。なんか、林と草原が混ざっているような曖昧な空間だった」
「なるほど。それでは僕の出番、ということですね?」
ビャクラが人差し指と中指で眼鏡をクイッと若干上にあげながら、含みのある笑みをこちらに向けてくる。……ごめん、俺には分からない。
「そうですね。ビャクラ、お願いします」
セバスの言葉を聞いた後も何故かこちらを見つめ続ける。……え、なに?
少し謎の間が開いた後、セバスがこちらを申し訳なさそうに見つめてくる。え、どうすればいいの俺!
「ああ、それじゃあビャクラにお願いしよう、かな~?」
「はい!お任せくださいカイザ様!このビャクラ、必ずや成果を出して見せましょう!」
ああー、俺にお願いされたかったのね。……なんだろう、俺に対する、っていうより、魔王に対する承認欲求が強いのかな?セバスが土下座しそうな勢いで、頭を何度も下げながら感謝しているのを見るとそうなのだろう。
「では、始めます」
ビャクラが石碑の前に立ち右手を翳す。
「カイザ様、申し訳ありませんでした。ビャクラはカイザ様への承認欲求が凄まじいものでして……逆にカイザ様以外ですと、指摘されたり頼まれたりするのを嫌う難しい人でして……」
セバス本人が何か失敗を犯したような顔で、ビャクラに聞こえるのを妨げるように手を俺の耳付近に寄せて言う。なんだかこっちまで申し訳ない気持ちになってくる。
「大丈夫だよ。よっぽどのことが無い限り俺は怒ったりしないからさ。もっと気を抜いてくれ」
励ますようにそういうと、今度は目に涙を溜め始めてしまった。
セバスさん!?あれだけ冷静沈着だったのに、感情の起伏激しくないですか!?だがまあ、もっと気を抜いて欲しいとは本気で思っている。人間は完璧ではない。自分以外の行動なんて制御できるものじゃないんだよ。だから、もっと気楽に行こう?セバスのためにも、俺のためにも。
めちゃくちゃ俺恰好つけてるけど、こんな偉そうな台詞、声に出しては死んでも言えない。おっと、どうやらビャクラがスキルを発動するようだ。
「【広目天】」
「うわっ」
おっと、つい心の声が漏れてしまった。いや、正直日本という平和な国にいた俺の反応としては当たり前だと思う、うん。
ビャクラがスキルを発動した瞬間、数えきれないほどの禍々しい『眼球』が石碑をドーム状に取り囲むように広がり、そして侵入していったのだ。
「ふむ。なるほど。カイザ様が転移した場所が判明しました」
おっと、どうやらもう分かったようだ。石碑に手を翳した時点で薄々気付いてはいたが、どうやら石碑の転移先を調べていたようだ。調べる、というより解析だろうか。
「凄いな、それで、どこだったんだ?」
場所を言わないまま、こちらを見つめ続けているのはまあ、これを待っていたのだろう。なんだかちょっとずつ慣れてきた。
「はい!それは」
「……あ、うんそれは?」
正直言っていいですか?
めんっどくせー。
「それは、始まりの草原、奥地でございます」
「なるほど!セバス、分かるか?」
この世界のことを碌に知らない俺に言われても正直困るのだ。
「ええ。始まりの草原とは我らに仇なす『エネミー』たちが戦いの基礎を抑えるために利用している場所にございます。そして、奥地はその中でも草原の主が生息している『ファーストサンクチュアリ』に最も近い場所にございます。カイザ様がおっしゃられていた『林と草原の間』というのも、奥地でしたら説明がつきます。間違いはないかと」
なるほど。始まりの草原はそのままの意味で、雑魚魔物が跋扈する最初のステージだろうな。『エネミー』とは恐らくプレイヤーのことだろう。そして『ファーストサンクチュアリ』、第一の神殿。これはいわゆるボスがプレイヤーを待ち構えているところだろう。いやはや、セバスの説明は分かり易くて助かるな。
「そうか。そんじゃ知りたいことも分かったし、帰るか」
「畏まりました。【伝達】。皆さん、無事カイザ様はお帰りになられました。防御配置を崩して結構です。お疲れ様でした。では、行きましょうか」
……。……ほんっとーーうに、すみませえええええん‼
心の中で100回土下座したカイザであった。
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