ゲームの世界に閉じ込められて魔王になりました。99万9999人のプレイヤーを倒すまで現実世界に帰れません。

でるたー

文字の大きさ
10 / 68
〜"デス"ゲーム、開幕〜

10話 主を倒しただけでは終わらない。

しおりを挟む
「ああー、疲れた。ったく、なんでゲームの世界なのに疲れを感じるんだよ……」

 ベッドにダイブすると、俺の体が包み込まれていくように布団に沈んでいく。ああ、この感覚、やっぱり至極。

 この世界、どうやら感覚までも現実世界と同じようだ。今まで見てきた木々や魔物、そしてNPCから伝わる『生命の鼓動』。ゲーム内にも関わらず、人間の仕組みを理解したように刎ねられたプレイヤーの首。ここまでリアルに仕上げられると、『ゲームの世界に閉じ込められた』より『ゲームの世界に転生した』といっても過言ではない。
 ゲームではない、正真正銘異世界に転生したのでは?と考えるも『死んだ生物は光となって雲散する』という現象がゲームの世界であることを示し、現実に引き戻す。

「そうだ、そういえばスキルポイント溜まったんだったけか」

 今日だけで俺はLv8になった。レベルが上がるごとにスキルポイントを2獲得していたのをふと思い出す。

「オープン」

 ステータスを表示すると、スキルポイントの欄の数字が14になっている。

「さてさて、何を習得しますかねー」

 取り敢えず、近距離系スキルと遠距離系スキルを一つずつ取っておきたい。初級ならば5Ptで取得できたはずだ。

「うーーん……。お?」

 スキル一覧をスクロールしていると、取得に20Pt必要のあるスキルが目に付く。

「あー、いや、これは別に後でいいかな。先にこっち」

 結局、当初予定していたスキルを獲得したが、近いうちにあのスキルも手に入れるつもりだ。



「皆、この先がボスエリアだ。気を引き締めていくぞ!」

「「「おおー!」」」

 男が仲間を精神的にも、そして能力的にも鼓舞する。


「よし、行くぞ!」

 エリアホライズンに重なるように配置された大扉を開く。中に踏み入れば、純白の柱が幾本も等間隔に連なっている、神殿を彷彿させる平坦な通路が俺達を迎えた。

「……進むぞ。急に魔物が出てくるかもしれない。武器は常に携帯しておけ」

「ああ、そうだな」

――バンッ

「っ!?」

「ひっ」

 1メートルほど歩を進めた瞬間、大扉が勢いよく、盛大な音を静寂な室内に響かせながら閉じる。確認のために扉に触れ押してみるも、開く感触は一切ない。

「逃がしはしない、ってことか。ならばボスを倒して道を切り開くだけだ。気にせず行くぞ!」

「「「おお!」」」

 『BFO』で初めてのボス戦。険しい戦いになるとは思うが、この5人ならきっと勝てるはずだ。編成は『見習い剣士Lv10』『見習い魔導士Lv10』『見習い僧侶Lv10』『見習い重量兵Lv10』『見習い弓兵Lv10』とバランスの良い編成だ。適正レベルにも到達している。

「……開けるぞ」

 先程の大扉より重量感のありそうな扉に手を当て仲間の顔を窺う。うん、熱意が籠もった真剣な顔だ。

――キイイイィ

『私の領域に踏み入った不届き者はお前たちだな?』

 扉を開けると、全長5メートルはある巨大な黒熊、『ジャイアントベア Lv10』が直立した状態でどっしりと待ち構えていた。

「し、喋った!?」

 見習い僧侶、アルパカさんがジャイアントベアを見上げながら、魔物が喋るという光景に驚愕する。

「この世界はゲームだ。人間以外が喋ってもなんら不思議じゃない」

 見習い重量兵、アップルさんが皆の盾となるように前へ出ながら、アルパカさんに受け答えるように言う。

「相手は俺らと同じLv10だ。力を合わせればきっと勝てる。いくぞ!」

「「「おお!」」」

『グオォォォォ!』

 ジャイアントベアが本来の熊の在り方である4足歩行に切り替え突進する。
 巨体が迫ってくる様は、トラックがアクセル全開で向かってきているのを連想させる。

「俺が食い止める!」

 アップルさんが大盾を地面に打ち付け防御の構えをとる。

――ゴーーーン!

「ぐぅぅ……!」

 熊の頭蓋と大盾が衝突し、鈍いながらも場に響く衝突音が鳴る。ジャイアントベアはその衝撃でふらついているようだ。

「今だ!畳みかけろ!」

 俺の指示で一斉に己の得物をジャイアントベアへと向ける。

「はああ!」
「グレラ!」
「ふっ!」

『グンンンン!』

 首の付け根に剣撃が入り、火の球が背中を焼き、耳元に弓矢が刺さる。
 ジャイアントベアが体を激しく揺らし痛みを露わにする。しっかりと攻撃は通っているようだ。

「ああもう!そんなにふらついてたら狙いが定まらないじゃない!」

 見習い弓兵、サキさんが地団太を踏みながら文句を垂れる。

「でも、しっかりと当たっていますよ!ナイスです!」

「そ、そうね」

 それに対しアルパカさんがアップルさんの下へ歩み寄りながら励ましの言葉をかける。いいチームワークだ。

「HPを回復します!小回復ヒール!」

「済まない、助かる」

 アルパカさんがスキルを発動すると、4分の3まで減っていたアップルさんの体力が見る見るうちに全回復する。

「よし、このまま行くぞ!」

「「「おお!」」」



「はああ!」

『グオオオオォォォォォ……』

 横腹に剣撃を加える。するとジャイアントベアは勢いよく立ち上がり、すぐさま力なく地面に倒れる。倒れた場所からは大量の白い粉煙が舞い上がり、ジャイアントベアの体が青い光となって雲散していった。

<ジャイアントベアLv10を撃破しました。始まりの草原の主を撃破しました。レアアイテムがドロップしました。『ジャイアントベアの毛皮×1』を獲得しました。Lvが11にアップしました。スキルポイントを1獲得しました>

「……い、い、いよっしゃーー!」

「やったな」
「ああ」
「やったのね」
「やりましたね!」

 初めてのボス討伐。それは見事勝利に終わった。ゲームで心の底から喜びを感じるなど何年ぶりだろうか。

――パチ、パチ、パチ、パチ

 5人で輪になり喜びを分かち合う。すると、それに水を差すように柱の影から拍手が鳴り響く。

「始まりの草原の主撃破、おめでとう」

 姿を現したのは、フードで目元を隠した、金の刺繍が入った黒のローブを着用している男だった。

「誰だ、お前」

 見習い魔導士、ヨースケさんが杖を構えながら問う。

「それを言う必要はない。さあ、セカンドバトルだ」

「なっ……‼まだ終わってはいなかっただと!?だがさっきのアナウンスで主を倒したと言っていたが!」

「……」

 男は俺の問いに答えず迫りくる。

「っく、答えないということはこれもストーリーの一部なのか!まずい、ポーションは既に切れている!」

「私もMPがありません!」

 そうだ。主を倒したら終わりなんてルール、どこにもない!乱入イベントはRPGの常識だろ!くそ!何故見落としていた!

「ガルマ」

 ……‼速い、速すぎる!こいつ、ジャイアントベアの比じゃない!

<パーティーメンバー、アルパカ、アップル、サキ、ヨースケのHPが0になりました。パーティーを解散します>

 ……は?

 急遽流れたアナウンスに頭が真っ白になった後、俺の視点がぐらついた。

<魔王に撃破されました。リポップ不可能です。このデータは使用不可になりました>

――ジジジ、ジジジジジジ


――ブツンッ
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...