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〜"デス"ゲーム、開幕〜
16話 自分が自分であるために。
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「っぷ、はははは!この世界の魔王だぁ?お前それ本気で言ってんのか?ゲームの世界だってのに……いいご身分だなぁ!」
金髪を角刈りにしたリーダーらしきマッチョが、斧を両手で持ち勢いよく迫る。
「ほう、中々に速いな。だが――」
俺の方が速い。そう口にし斧の間合いから外れようとした瞬間、マッチョが急ブレーキをかけ体を沈める。
「……‼っく」
燃え滾る火の球、グレオラと窓ガラスほどの強度を秘めた水の球、アクリアが胸部に直撃する。
^
痛い。物凄く痛い。こんな痛み、産まれて初めて味わった。それはそうだろう。現実世界で打ち上げ花火を俺に向けられ発射されたことも無ければ、自動車が走る速度ほどの勢いで窓ガラスに突っ込んだことなど一度もないのだから。
普通なら命がいくつあっても足りない状況だ。それなのに俺の骨は罅すら入らず、痛みは既に引き始めている。ローブなどSS級だからだろう、焼け跡、濡れ跡など微塵もない。『HP』という概念が体の異常を許さないのだ。
それが物凄く怖かった。今まで心の奥底に眠っていた『夢かもしれない』という気持ちがぷちっと潰れた。
プレイヤーの首を刎ねた時感じた『安心』は、『ちゃんと首を刎ねることが出来た』ことへの安心感だったのかもしれない。だが、よくよく考えてみれば魔剣に血は付着していたし、プレイヤーの体から鮮血は飛び散っていた。だがそれだけだった。本来起こるはずの流血が一切なく、そのまま雲散していくだけだった。
体の部位はちゃんと切断されるし血も出る。だが、出るだけで、流れはしない。俺はどうやらその事実から本能的に目を逸らしていたらしい。
そしてその事実を確認した今、それがすんなりと理解してしまえる自分に恐怖した。まるで自分が自分ではなくなるようだった。
日本の常識を持った俺ではない、ゲーム内の常識を持った俺に成り代わっているような気がした。
ああ、認めるよ。
偽物の俺に飲み込まれないように。
俺は、夢ではない、現実でゲームの中に転生させられたんだよ。
そして協力してやるよ、ゲームワールド。
なんのためか知らないがよ、あんたら、俺の脳を探ってるんだろ。
協力してやる。だからどうか、今の俺でいさせてくれ。
今の俺で残る99万9898人、殲滅してやるよ。
……あーあ。最悪だ。認めちまった。まあ、そのおかげで吹っ切れたよ。俺はこの世界を『俺の人生』として生きていく。
さ、まずは目の前の問題だ。
^
マッチョが体を沈めた理由。それは中衛の魔術師が放った魔術を、俺の死角から通すためだった。
己の背中で魔術を隠し極限まで相手に悟らせないまま、前衛の急な予測不能の行動で動揺させ高確率で当てる。随分ハイリスクハイリターンな連携技だが、恐らくそれを既にものにしているのだろう。
「ああ?だがなんだって?」
マッチョが俺に睥睨する目を向ける。こいつ、見た目に反してかなり頭脳派だ。それに加え味方との連携も上手い。
「いやいや参った参った。ちょっと舐めすぎてたわ。だがよ」
さて、『AGI』320の本気の走り、行きましょう!
「俺は小細工なんか使わずにあんたを斬る事、造作もないぞ?」
「チィ……‼」
おっと、首を刎ねたつもりだったんだけど、どうやら斧の先端でギリギリ防いだらしい。そのおかげで体制を崩してくれたから遠慮なく追い打ちするけど。
「グレオラ!」
「アクリア!」
中衛の2人がすかさずマッチョのカバーに入る。流石に2連続で中級魔術をくらうのはまずい。
咄嗟に身を翻し、魔剣を振りながら後退し距離をとる。
「ふっ」
「俺の腕が……‼どういうことだ……?」
どうやら魔剣が直撃していないのにも関わらず、腕を切断されたのが不思議なようだ。鋭い眼光でこちらを睨みつけてくる。おー怖い怖い。
「さあ、どうしてでしょうか」
言うわけないだろバーカ。ここで種が割れるのは謎の解説役が脇にいるアニメだけだ。
斬られたくなかったら、斬撃拡張の間合いを見切ることだ。
「このクソガキが……」
お、ヤンキー定番の垂れ文句。
「杉野!松村!回復!」
マッチョが短杖を持った後衛2人に怒鳴る。おいおい、それ本名だろ。
「は、はい!小回復」
「ひ、小回復」
後衛2人が回復魔術を発動する。すると、緑の膜に覆われたマッチョの腕が見る見るうちに再生していく。くっそ、ヒーラーずりー!
「そんじゃ、延長戦スタート」
おいてめー、なに回復してもらって偉そうに言ってんだよこんちきしょー!
「カイザ様!こっちはもう片したぞ!」
マッチョが地面を踏みしめ突進してくると思われた瞬間、俺を呼ぶ声が聞こえ全員の視線が一気に声の主へと集まる。
「シェスト、もう終わったのか」
「ああ。ちゃちゃっとな。きひひ」
シェストが恐怖心を煽るような笑みをしながら言う。俺には全くの無害だけどね。
「あいつらがやられただと?お前みたいな雑魚そうな女にか?」
マッチョが懐疑そうな表情を浮かべながらシェストに問う。
「……あ?てめー今なんつった?」
それに対しシェストは底冷えするほど低い声で言葉を返す。まずい、これこそ俗に言う一触即発状態だ。
この状況の何がまずいのかって?それは
「まてシェスト、こいつらは俺がやる。でないと、またリポップしちまうからな」
そう、シェストがやるとプレイヤーはリポップしてしまうのだ。このマッチョは何としてでも今のうちに俺が殺らなければいけない。
「リポップ?よくわかんねーがまあ、カイザ様の獲物だ。譲るよ」
「ああ、ありがとう。俺も、丁度準備が整った」
「漆黒の鎧……」
「さあ、延長戦だろ?再開だ」
金髪を角刈りにしたリーダーらしきマッチョが、斧を両手で持ち勢いよく迫る。
「ほう、中々に速いな。だが――」
俺の方が速い。そう口にし斧の間合いから外れようとした瞬間、マッチョが急ブレーキをかけ体を沈める。
「……‼っく」
燃え滾る火の球、グレオラと窓ガラスほどの強度を秘めた水の球、アクリアが胸部に直撃する。
^
痛い。物凄く痛い。こんな痛み、産まれて初めて味わった。それはそうだろう。現実世界で打ち上げ花火を俺に向けられ発射されたことも無ければ、自動車が走る速度ほどの勢いで窓ガラスに突っ込んだことなど一度もないのだから。
普通なら命がいくつあっても足りない状況だ。それなのに俺の骨は罅すら入らず、痛みは既に引き始めている。ローブなどSS級だからだろう、焼け跡、濡れ跡など微塵もない。『HP』という概念が体の異常を許さないのだ。
それが物凄く怖かった。今まで心の奥底に眠っていた『夢かもしれない』という気持ちがぷちっと潰れた。
プレイヤーの首を刎ねた時感じた『安心』は、『ちゃんと首を刎ねることが出来た』ことへの安心感だったのかもしれない。だが、よくよく考えてみれば魔剣に血は付着していたし、プレイヤーの体から鮮血は飛び散っていた。だがそれだけだった。本来起こるはずの流血が一切なく、そのまま雲散していくだけだった。
体の部位はちゃんと切断されるし血も出る。だが、出るだけで、流れはしない。俺はどうやらその事実から本能的に目を逸らしていたらしい。
そしてその事実を確認した今、それがすんなりと理解してしまえる自分に恐怖した。まるで自分が自分ではなくなるようだった。
日本の常識を持った俺ではない、ゲーム内の常識を持った俺に成り代わっているような気がした。
ああ、認めるよ。
偽物の俺に飲み込まれないように。
俺は、夢ではない、現実でゲームの中に転生させられたんだよ。
そして協力してやるよ、ゲームワールド。
なんのためか知らないがよ、あんたら、俺の脳を探ってるんだろ。
協力してやる。だからどうか、今の俺でいさせてくれ。
今の俺で残る99万9898人、殲滅してやるよ。
……あーあ。最悪だ。認めちまった。まあ、そのおかげで吹っ切れたよ。俺はこの世界を『俺の人生』として生きていく。
さ、まずは目の前の問題だ。
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マッチョが体を沈めた理由。それは中衛の魔術師が放った魔術を、俺の死角から通すためだった。
己の背中で魔術を隠し極限まで相手に悟らせないまま、前衛の急な予測不能の行動で動揺させ高確率で当てる。随分ハイリスクハイリターンな連携技だが、恐らくそれを既にものにしているのだろう。
「ああ?だがなんだって?」
マッチョが俺に睥睨する目を向ける。こいつ、見た目に反してかなり頭脳派だ。それに加え味方との連携も上手い。
「いやいや参った参った。ちょっと舐めすぎてたわ。だがよ」
さて、『AGI』320の本気の走り、行きましょう!
「俺は小細工なんか使わずにあんたを斬る事、造作もないぞ?」
「チィ……‼」
おっと、首を刎ねたつもりだったんだけど、どうやら斧の先端でギリギリ防いだらしい。そのおかげで体制を崩してくれたから遠慮なく追い打ちするけど。
「グレオラ!」
「アクリア!」
中衛の2人がすかさずマッチョのカバーに入る。流石に2連続で中級魔術をくらうのはまずい。
咄嗟に身を翻し、魔剣を振りながら後退し距離をとる。
「ふっ」
「俺の腕が……‼どういうことだ……?」
どうやら魔剣が直撃していないのにも関わらず、腕を切断されたのが不思議なようだ。鋭い眼光でこちらを睨みつけてくる。おー怖い怖い。
「さあ、どうしてでしょうか」
言うわけないだろバーカ。ここで種が割れるのは謎の解説役が脇にいるアニメだけだ。
斬られたくなかったら、斬撃拡張の間合いを見切ることだ。
「このクソガキが……」
お、ヤンキー定番の垂れ文句。
「杉野!松村!回復!」
マッチョが短杖を持った後衛2人に怒鳴る。おいおい、それ本名だろ。
「は、はい!小回復」
「ひ、小回復」
後衛2人が回復魔術を発動する。すると、緑の膜に覆われたマッチョの腕が見る見るうちに再生していく。くっそ、ヒーラーずりー!
「そんじゃ、延長戦スタート」
おいてめー、なに回復してもらって偉そうに言ってんだよこんちきしょー!
「カイザ様!こっちはもう片したぞ!」
マッチョが地面を踏みしめ突進してくると思われた瞬間、俺を呼ぶ声が聞こえ全員の視線が一気に声の主へと集まる。
「シェスト、もう終わったのか」
「ああ。ちゃちゃっとな。きひひ」
シェストが恐怖心を煽るような笑みをしながら言う。俺には全くの無害だけどね。
「あいつらがやられただと?お前みたいな雑魚そうな女にか?」
マッチョが懐疑そうな表情を浮かべながらシェストに問う。
「……あ?てめー今なんつった?」
それに対しシェストは底冷えするほど低い声で言葉を返す。まずい、これこそ俗に言う一触即発状態だ。
この状況の何がまずいのかって?それは
「まてシェスト、こいつらは俺がやる。でないと、またリポップしちまうからな」
そう、シェストがやるとプレイヤーはリポップしてしまうのだ。このマッチョは何としてでも今のうちに俺が殺らなければいけない。
「リポップ?よくわかんねーがまあ、カイザ様の獲物だ。譲るよ」
「ああ、ありがとう。俺も、丁度準備が整った」
「漆黒の鎧……」
「さあ、延長戦だろ?再開だ」
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