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〜戦力強化編〜
25話 エネミー殲滅計画
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……いつもの天蓋だ。
重く閉ざされた瞼を、光を手に入れようと懸命に動かし開ける。瞳の中には、いつものように代わり映えの無い紫色の天蓋が映っていた。照明が点いているのを見ると、現在時刻は夜中だろうか。
体が物凄く怠い。今、俺を包み込んでいる毛布が重く感じるほど怠い。ここまでの怠さは勤務歴2年の時に、会社対抗のマラソン選手として抜擢されてしまった時以来だ。
なんとか動く目を右に向けてみれば、いつもの優しい微笑みを顔に浮かべたセバスが、こちらを見つめていた。
「お目覚めですか、カイザ様」
「ああ」
素っ気ない返事になってしまったが許して欲しい。言葉を発することすら、抵抗感を抱いてしまうほど怠いのだ。
……あれ?そういえば俺、ベッドに潜った記憶がないんだが。俺は確か神殿から帰ってきて椅子に座ってその後……その後、どうなったんだ?
必死に記憶にある場面を繰り返すも、いつも同じところで終わってしまう。10分ほど思考に耽っていたが、結局答えに辿り着くことは無かった。
「セバス」
「はい、なんでしょうか」
この3文字だけでもかなりきついのだが、背に腹は代えられない。
「俺は、どうして今ベッドにいるんだ?」
俺の言葉にセバスは素っ頓狂な顔をする。
「はて。私に寝ると告げてそのままご就寝なさいましたな」
……ふふ、嘘が下手だなセバスは。それなら今、お前はここにいないだろうに。まあ、間違いなく俺がなにかやらかしたんだろうな。
「……そうか」
「ですが、一つ気になったことを申し上げるならば」
セバスがこれだけは言っておかねばならない、というような真剣な表情で言う。
「それは?」
「カイザ様の瞳の中に、不可解な数字が流れていらっしゃいました」
不可解な数字が流れていた、か。セバスの顔から嘘は窺えない。疑っているわけではないが、どうやら本当のことのようだ。
数字……数字……‼そうだ、タイムリミット。
「オープン」
そう口にすると、丁寧に俺が寝ている姿勢でも見えるよう頭上にプレートが出現する。
「夢ではない……か」
どうせなら寝ている時の夢であってほしかったが、カウントダウンは夢ではなかったようだ。さて、これからどうするか……。
「カイザ様」
これからの行動に不安を抱きながら顔を曇らせていると、セバスがなにやら少し躊躇いながらも俺を呼ぶ。
「なんだ?」
「私たちは、カイザ様の配下です。ですので、ほんの少しでも、微力ながらお役に立ちたいと思っております。今、カイザ様がお悩みになられていることは、私たちではお役に立てないことなのでしょうか」
「いや、そういうわけでは……」
どうしたものか。俺は自分の正体を言うべきなのだろうか。分からない。セバスは俺が『あと2年で死ぬ』と言ったら、信じてくれるのだろうか。
「私たちは何がありましても、カイザ様の味方です。そして、絶対に裏切りませんし、疑いません。ですのでどうか、私たちにご助力させて頂けないでしょうか」
……っはは。その台詞、めちゃくちゃ詐欺師がいいそうだな。でもまあ、一人で途方に暮れるよりも、仲間を頼った方がいいのかもな。俺は配下を統べる者、魔王なんだもんな。
「実は――」
^
「残り2年以内にエネミーを全て殲滅しないとカイザ様が死亡する、ですか」
俺のひとしきりの説明を聞いた後、セバスは顎に手を当て思い悩む。
「どうだ、信じられないか?」
「にわかには信じられません」
まあ、そうだよな。
「ですが、カイザ様が言う事であれば本当なのでしょう。というより、疑うなどという選択肢は、もとよりありません」
セバスが瞳を閉じながら言う。その姿は、あるべき執事の姿そのものだった。
ここまで信頼されているなら、俺も期待に応えなきゃな。
「よし、じゃあ『エネミー殲滅計画』のプラン、立てるか!」
「畏まりました」
気付けば、重くのしかかっていた怠さなど吹き飛んでいた。
^
「世界地図」
スキルを発動すると、広大な世界の立体的なジオラマが5メートル四方の映像で目の前に広がる。
「すっげええ……」
「流石はカイザ様です」
俺が驚くのはおかしいと思ったか?その通りだ。
……結局取得してから一度も使っていなかったのだ!許せええ!
「それで、まだイベントを設置できるのは……第5ステージ以降か」
俺が世界地図を使用した理由。それはイベントの設置可能エリアを確認するためだ。それと同時に、最も攻略が速いプレイヤーの位置を把握するという目的も兼ねている。
「第4ステージ到達済み、しかしボスは未討伐か」
第5ステージがまだイベント設置可能なのであれば、そういう事なのだろう。第3ステージのボスの適正Lvは30。それはつまり、現状で鉢合わせると呆気なく撃破される可能性があるという事だ。
ここは慎重に、尚且つ効率的に行きたい。
「セバス、明日からレジェンダリーフォレストでレベリングを始める。今日はこの辺りでお開きにしよう」
「畏まりました。それでは、お休みなさいませ」
「ああ、お休み」
セバスが恭しく礼をした後、俺の部屋から退出する。
「……さて、皆の情報を暗記しよう」
今後行動を共にする配下達の能力を知らないわけにはいかない。……ああ、いつ見てもイライラすんなこれ!
『~魔王になったあなたのためのサポートガイド~これであなたも魔王デビュー』
重く閉ざされた瞼を、光を手に入れようと懸命に動かし開ける。瞳の中には、いつものように代わり映えの無い紫色の天蓋が映っていた。照明が点いているのを見ると、現在時刻は夜中だろうか。
体が物凄く怠い。今、俺を包み込んでいる毛布が重く感じるほど怠い。ここまでの怠さは勤務歴2年の時に、会社対抗のマラソン選手として抜擢されてしまった時以来だ。
なんとか動く目を右に向けてみれば、いつもの優しい微笑みを顔に浮かべたセバスが、こちらを見つめていた。
「お目覚めですか、カイザ様」
「ああ」
素っ気ない返事になってしまったが許して欲しい。言葉を発することすら、抵抗感を抱いてしまうほど怠いのだ。
……あれ?そういえば俺、ベッドに潜った記憶がないんだが。俺は確か神殿から帰ってきて椅子に座ってその後……その後、どうなったんだ?
必死に記憶にある場面を繰り返すも、いつも同じところで終わってしまう。10分ほど思考に耽っていたが、結局答えに辿り着くことは無かった。
「セバス」
「はい、なんでしょうか」
この3文字だけでもかなりきついのだが、背に腹は代えられない。
「俺は、どうして今ベッドにいるんだ?」
俺の言葉にセバスは素っ頓狂な顔をする。
「はて。私に寝ると告げてそのままご就寝なさいましたな」
……ふふ、嘘が下手だなセバスは。それなら今、お前はここにいないだろうに。まあ、間違いなく俺がなにかやらかしたんだろうな。
「……そうか」
「ですが、一つ気になったことを申し上げるならば」
セバスがこれだけは言っておかねばならない、というような真剣な表情で言う。
「それは?」
「カイザ様の瞳の中に、不可解な数字が流れていらっしゃいました」
不可解な数字が流れていた、か。セバスの顔から嘘は窺えない。疑っているわけではないが、どうやら本当のことのようだ。
数字……数字……‼そうだ、タイムリミット。
「オープン」
そう口にすると、丁寧に俺が寝ている姿勢でも見えるよう頭上にプレートが出現する。
「夢ではない……か」
どうせなら寝ている時の夢であってほしかったが、カウントダウンは夢ではなかったようだ。さて、これからどうするか……。
「カイザ様」
これからの行動に不安を抱きながら顔を曇らせていると、セバスがなにやら少し躊躇いながらも俺を呼ぶ。
「なんだ?」
「私たちは、カイザ様の配下です。ですので、ほんの少しでも、微力ながらお役に立ちたいと思っております。今、カイザ様がお悩みになられていることは、私たちではお役に立てないことなのでしょうか」
「いや、そういうわけでは……」
どうしたものか。俺は自分の正体を言うべきなのだろうか。分からない。セバスは俺が『あと2年で死ぬ』と言ったら、信じてくれるのだろうか。
「私たちは何がありましても、カイザ様の味方です。そして、絶対に裏切りませんし、疑いません。ですのでどうか、私たちにご助力させて頂けないでしょうか」
……っはは。その台詞、めちゃくちゃ詐欺師がいいそうだな。でもまあ、一人で途方に暮れるよりも、仲間を頼った方がいいのかもな。俺は配下を統べる者、魔王なんだもんな。
「実は――」
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「残り2年以内にエネミーを全て殲滅しないとカイザ様が死亡する、ですか」
俺のひとしきりの説明を聞いた後、セバスは顎に手を当て思い悩む。
「どうだ、信じられないか?」
「にわかには信じられません」
まあ、そうだよな。
「ですが、カイザ様が言う事であれば本当なのでしょう。というより、疑うなどという選択肢は、もとよりありません」
セバスが瞳を閉じながら言う。その姿は、あるべき執事の姿そのものだった。
ここまで信頼されているなら、俺も期待に応えなきゃな。
「よし、じゃあ『エネミー殲滅計画』のプラン、立てるか!」
「畏まりました」
気付けば、重くのしかかっていた怠さなど吹き飛んでいた。
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「世界地図」
スキルを発動すると、広大な世界の立体的なジオラマが5メートル四方の映像で目の前に広がる。
「すっげええ……」
「流石はカイザ様です」
俺が驚くのはおかしいと思ったか?その通りだ。
……結局取得してから一度も使っていなかったのだ!許せええ!
「それで、まだイベントを設置できるのは……第5ステージ以降か」
俺が世界地図を使用した理由。それはイベントの設置可能エリアを確認するためだ。それと同時に、最も攻略が速いプレイヤーの位置を把握するという目的も兼ねている。
「第4ステージ到達済み、しかしボスは未討伐か」
第5ステージがまだイベント設置可能なのであれば、そういう事なのだろう。第3ステージのボスの適正Lvは30。それはつまり、現状で鉢合わせると呆気なく撃破される可能性があるという事だ。
ここは慎重に、尚且つ効率的に行きたい。
「セバス、明日からレジェンダリーフォレストでレベリングを始める。今日はこの辺りでお開きにしよう」
「畏まりました。それでは、お休みなさいませ」
「ああ、お休み」
セバスが恭しく礼をした後、俺の部屋から退出する。
「……さて、皆の情報を暗記しよう」
今後行動を共にする配下達の能力を知らないわけにはいかない。……ああ、いつ見てもイライラすんなこれ!
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