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第一章 第二王子との出会い
6.第二王子の本心
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「アルベルト様、どうして私に良くしてくださるんですか?」
私は本心を探る為に、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
するとアルベルトは少し困ったような笑みを浮かべた後に、こう続けた。
「……それは、最初にも言った通り兄上に婚約破棄された君が心配だったからだよ。」
だから、優しくしたと。
アルベルトはそう言ったのだ。
……多分嘘なんだろうな。
彼はそんな感情的に動くような人ではない。
ゲームをプレイしていて、それは嫌というほどわかっていた。
更に確信を持った私は、その言葉の直後に聞こえて来た別の声に、耳を傾ける。
『……本当は、姿が変わった君に一目惚れしてしまったからなんて、口が裂けても言えるわけないよなぁ。』
えっ……!?
これが、アルベルトの本心……?
私はとても信じられないその言葉に、魔法が失敗してしまったのではいかと疑ってしまった。
そう——私が女神様からもらった力……それは人の心を読む能力だ。
転生、もしくは転移した人はもれなく女神様から力を与えられる。
その力というのは、主要の火、水、風、土、光、闇属性に加えて、本人が望むいずれにも属さない無属性の魔法を一つ選べるというもの。
私は前世でも散々な目に遭って、誰も信じられなくなっていた時に転生したので、人の本心が分かれば解決すると思い、この力を選んだのだ。
それに右も左もわからない異世界でやっていく為には必要な力だと思ったのもあった。
まあ、結局使えなかったのだけれど。
それはともかく、信じられない言葉に現実逃避してしまったが、いつまでも黙っているわけにもいかない。
そう思った私は更に切り込むことにした。
「でしたら、ここまでで大丈夫ですよ。私はもう平気ですから。今までありがとうございました。」
ニコッと笑ってそう告げてみた。
エドワードに復讐する為に彼は必要だった。
だけどその目的も無くなった今、アルベルトと一緒に行動する理由なんてない。
さっきまでは私を利用する為に一緒にいると思っていたから、これから行動を共にするのも良いかもしれない……そう思っていたのだが。
アルベルトが利益目的でないのなら、私は彼を利用してはいけない。
そう思い、元々伝える予定だった言葉を口に出したのだが、アルベルトは目に見えて悲しそうに眉を下げた。
その表情に罪悪感が募る。
……自分のことを好いてくれている人を突き放すのはやっぱり辛いな。
それも、この魔法が成功していると仮定した場合のことだけど。
私はまだ、誰かを信用なんてできなかった。
心の何処かでは疑ってしまうのだ。
彼が私を利用してないなら、打算的でないのなら……なんて、すぐには信じることができなかった。
あんなことがあった以上、信じられないのは仕方のないことなのかもしれないが、そのせいで誰かを傷つけるのは避けたかった。
だから、距離を置こう。
それが私の出した結論だった。
「……そっか。俺はもういらない?」
「……!」
そんなこと、思うわけがない。
彼は少なくとも表面上は私に親切にしてくれていた。
……今思えば、転生者について何も知らない私を言葉巧みに騙して利用することだってできたはずだ。
でも、それをしなかった。
ちゃんと神殿に連れてきてくれたわけだし。
そんなアルベルトを必要がないなんて薄情なこと、誰が思うだろうか。
でも……
私は躊躇ってしまう。
私が世界をも揺るがす存在になってしまった以上、一緒にいたら迷惑をかけてしまう。
彼が利益の為にそれを選ぶのなら私も気兼ねなく一緒にいられた。
でも、私の為に動いてくれた彼には、そんなことをできるはずがない。
迷惑をかけるとわかっていて、彼に甘えるわけにはいかないのだ。
だから、だから……ちゃんと断らなくちゃダメ。
そう思うのに、わかっているのに……。
「……だって、迷惑かけたくないもん。」
そんな言葉が口から出てしまった。
アルベルトは目を丸くした後、優しく笑って私の頬にそっと触れる。
「なんだ、そんなこと気にしてたの?……相変わらず優しいね、君は。」
「そんなこと……」
ない……と言おうとした。
だけど、それは叶わないものになってしまった。
だって、アルベルトに抱きしめられてしまったのだから。
私は驚いて固まってしまった。
え、なんで。
何が起きてるの……?
理解が追いつかず、抱きしめられるがまま呆然と立ち尽くしてしまう。
「大丈夫、俺は君の味方だから。だから……」
——遠慮なく頼ってよ。
耳元でそんなかっこいいことを言われて、私の顔は蒸気が吹き出そうなほど赤くなってしまった。
いやいやいや、一旦落ち着こう。
これが、現実なはずない。
そう、きっと夢だ。
誰も信用できなくなった私は、ずっと誰かに言って欲しかった。
だから、これは私の願望が作り出した夢で、きっと目が覚めたら不敵な笑みを浮かべたアルベルトが扉の外で待っている。
そうに、決まっている。
だけどやけにリアルな感覚に、心ではそう思っていても、これが現実なのだと思ってしまう自分もいた。
『はぁ、かわいい。てか、良い匂いするし。こんな匂い、クロエ嬢とすれ違った時はしなかったよね?……本当に別人なんだな。』
っ……!?
匂いって。
あぁ、ダメだ。
これ以上はキャパオーバー……
今日色々あったせいだろう。
私は疲れてしまっていたのだ。
……私の意識はそこでぼんやりとしてしまう。
起きたら、きっと元のアルベルトに戻っているはず。
そんなことを思いながら、意識を手放したのだった。
私は本心を探る為に、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
するとアルベルトは少し困ったような笑みを浮かべた後に、こう続けた。
「……それは、最初にも言った通り兄上に婚約破棄された君が心配だったからだよ。」
だから、優しくしたと。
アルベルトはそう言ったのだ。
……多分嘘なんだろうな。
彼はそんな感情的に動くような人ではない。
ゲームをプレイしていて、それは嫌というほどわかっていた。
更に確信を持った私は、その言葉の直後に聞こえて来た別の声に、耳を傾ける。
『……本当は、姿が変わった君に一目惚れしてしまったからなんて、口が裂けても言えるわけないよなぁ。』
えっ……!?
これが、アルベルトの本心……?
私はとても信じられないその言葉に、魔法が失敗してしまったのではいかと疑ってしまった。
そう——私が女神様からもらった力……それは人の心を読む能力だ。
転生、もしくは転移した人はもれなく女神様から力を与えられる。
その力というのは、主要の火、水、風、土、光、闇属性に加えて、本人が望むいずれにも属さない無属性の魔法を一つ選べるというもの。
私は前世でも散々な目に遭って、誰も信じられなくなっていた時に転生したので、人の本心が分かれば解決すると思い、この力を選んだのだ。
それに右も左もわからない異世界でやっていく為には必要な力だと思ったのもあった。
まあ、結局使えなかったのだけれど。
それはともかく、信じられない言葉に現実逃避してしまったが、いつまでも黙っているわけにもいかない。
そう思った私は更に切り込むことにした。
「でしたら、ここまでで大丈夫ですよ。私はもう平気ですから。今までありがとうございました。」
ニコッと笑ってそう告げてみた。
エドワードに復讐する為に彼は必要だった。
だけどその目的も無くなった今、アルベルトと一緒に行動する理由なんてない。
さっきまでは私を利用する為に一緒にいると思っていたから、これから行動を共にするのも良いかもしれない……そう思っていたのだが。
アルベルトが利益目的でないのなら、私は彼を利用してはいけない。
そう思い、元々伝える予定だった言葉を口に出したのだが、アルベルトは目に見えて悲しそうに眉を下げた。
その表情に罪悪感が募る。
……自分のことを好いてくれている人を突き放すのはやっぱり辛いな。
それも、この魔法が成功していると仮定した場合のことだけど。
私はまだ、誰かを信用なんてできなかった。
心の何処かでは疑ってしまうのだ。
彼が私を利用してないなら、打算的でないのなら……なんて、すぐには信じることができなかった。
あんなことがあった以上、信じられないのは仕方のないことなのかもしれないが、そのせいで誰かを傷つけるのは避けたかった。
だから、距離を置こう。
それが私の出した結論だった。
「……そっか。俺はもういらない?」
「……!」
そんなこと、思うわけがない。
彼は少なくとも表面上は私に親切にしてくれていた。
……今思えば、転生者について何も知らない私を言葉巧みに騙して利用することだってできたはずだ。
でも、それをしなかった。
ちゃんと神殿に連れてきてくれたわけだし。
そんなアルベルトを必要がないなんて薄情なこと、誰が思うだろうか。
でも……
私は躊躇ってしまう。
私が世界をも揺るがす存在になってしまった以上、一緒にいたら迷惑をかけてしまう。
彼が利益の為にそれを選ぶのなら私も気兼ねなく一緒にいられた。
でも、私の為に動いてくれた彼には、そんなことをできるはずがない。
迷惑をかけるとわかっていて、彼に甘えるわけにはいかないのだ。
だから、だから……ちゃんと断らなくちゃダメ。
そう思うのに、わかっているのに……。
「……だって、迷惑かけたくないもん。」
そんな言葉が口から出てしまった。
アルベルトは目を丸くした後、優しく笑って私の頬にそっと触れる。
「なんだ、そんなこと気にしてたの?……相変わらず優しいね、君は。」
「そんなこと……」
ない……と言おうとした。
だけど、それは叶わないものになってしまった。
だって、アルベルトに抱きしめられてしまったのだから。
私は驚いて固まってしまった。
え、なんで。
何が起きてるの……?
理解が追いつかず、抱きしめられるがまま呆然と立ち尽くしてしまう。
「大丈夫、俺は君の味方だから。だから……」
——遠慮なく頼ってよ。
耳元でそんなかっこいいことを言われて、私の顔は蒸気が吹き出そうなほど赤くなってしまった。
いやいやいや、一旦落ち着こう。
これが、現実なはずない。
そう、きっと夢だ。
誰も信用できなくなった私は、ずっと誰かに言って欲しかった。
だから、これは私の願望が作り出した夢で、きっと目が覚めたら不敵な笑みを浮かべたアルベルトが扉の外で待っている。
そうに、決まっている。
だけどやけにリアルな感覚に、心ではそう思っていても、これが現実なのだと思ってしまう自分もいた。
『はぁ、かわいい。てか、良い匂いするし。こんな匂い、クロエ嬢とすれ違った時はしなかったよね?……本当に別人なんだな。』
っ……!?
匂いって。
あぁ、ダメだ。
これ以上はキャパオーバー……
今日色々あったせいだろう。
私は疲れてしまっていたのだ。
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そんなことを思いながら、意識を手放したのだった。
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