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第一章 第二王子との出会い
25.悪役令嬢クロエ
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ものの見事に全員から目を逸らされた私は、説明を求めるようにお父様で視線を止めた。
「お父様、正直に仰ってください。」
さっきできるだけ話をするって約束してくれたのにもう破るの?というような意味も込めてじっと見つめると、お父様は目に見えて狼狽えた。
私の知らないところで、一体何が起きてるんだろう……?
その反応がさらに私の不安を煽る。
「……実は、クロエには影武者がいるんだ。今は、影武者にクロエのフリをしてもらっている。」
「……えっ?」
カゲムシャ……?
って、あの!?
王族とかなら納得できるけど、ただの貴族令嬢でしかない私にそんな人がいるなんて……、予想外すぎる。
「で、では、私が居なくなったことを知っているのは……」
「私と陛下だけだ。大事になる前に手を打ったからな。」
ソウナンデスネ。
それにしても、私にそっくりな人がいるなんてビックリだ。
世の中にはそっくりさんが3人いるって聞いたことはあるけど、この国に2人存在するなんて、どんな確率なんだろう。
まぁ、そのおかげで助かったみたいだから、その影武者さんには感謝しかないけど。
私のせいでお父様……公爵家の名誉が傷ついたりしていないか心配だったから。
ほら、あの殿下のことだよ?
私が居なくなったら、国外追放に耐えきれずに失踪したとかあらぬ汚名を着せそうじゃない?
そしたら、断罪に信憑性が増してしまう。
それだけが気がかりだったから、少なくとも私が居なくなったことを知られていないのは好都合なのだ。
「国外追放を殿下に言い渡されたのですが、その件については……」
「させるわけがないだろう!従者から話を聞いた時なタチの悪い冗談かと思ったくらいだ。クロエが国の為に頑張っていたことは知っていたから、それを自ら不意にするようなことは絶対しないとわかっていたしな。帰って来たら、領地にでも連れて行って殿下が手出しできない状況にしてほとぼりが冷めるのを待つつもりだったしな。」
それじゃあ、私は破滅エンドを回避してたってこと……?
お父様とこうやって話をするまでは嫌われているとばかり思っていたから、むしろ嬉々として国外へと送り出されるんだと信じてやまなかった。
だから、断罪を避ける為に奮闘してたんだしね。
それがまさか、私が無実だと信じてくれるばかりか、追放されないように助力してくれるつもりだったなんて……。
……そっか、私の頑張りは無駄じゃなかったんだ。
ちゃんと、誰かに見てもらえて、信じてもらえるくらいには成果を出していたんだ。
それが嬉しくて、私のこの10年が今ようやく報われたような気がした。
「それにしても驚きました。まさか私に影武者がいただなんて。」
ほっとしてそんなことを口にすると、お父様はなんでもないと言うように説明をしてくれる。
「あぁ、クロエが5歳の時に高熱を出したのを覚えているか?」
「えっと、はい。」
確か私の魂がクロエの体に入ってしまったのも、その時だったっけ。
「あの時、君を失うんじゃないかと気が気じゃなくて、絶対に助けようと医者を探し回った帰り道で、屋敷の前で倒れているその子を見つけたんだ。」
屋敷の前で……。
「……あまりにもクロエにそっくりだったし、幼いこともあって放っておけなくてね。屋敷の中でその子も治療してもらったんだよ。その恩に報いたいというその子たっての希望で君の影武者になってもらったというわけだ。」
そっか、それは放って置けないよね。
それで私に影武者ができたわけかぁ。
その頃からゲームとは全く違かったんだ。
……本当に?
ふと疑念が浮かぶ。
私が転生して来てすぐに物語が変わってしまうなんて、そんなことが、あるのかな?
私と言うバグができたことで変化が起きてしまったといわれたらそれまでだけど、なんだか引っかかる。
私が前世を思い出したのと同時期に現れた少女。
ゲームと違って私に厳しかったお父様。
そして、この身体に私の魂が引っ張られたこと。
この全てを踏まえると……
私は、ゲームの中の悪役令嬢じゃなかった……?
その結論が導き出され、息を呑む。
クロエに魂が引っ張られたということは、その身体の持ち主の魂は入っていなかったということを意味する。
その穴を埋める為に私がクロエの身体に入ってしまった。
つまり、私の魂がクロエに入らなければ、クロエは……亡くなってしまっていたのだろう。
それは、ゲームの中でも同じだったと考えられる。
ってことは、そのお父様が拾った子がゲームに登場していたクロエだと考えるのが自然だ。
ゲームのお父様がクロエに優しかったのは、本当の娘も最愛の妻も失ってしまい、拾った子を娘の代替としていたから……?
だから、離れて行かないように我儘を聞いて甘やかしていた、とか。
そう考えてしまったら、パズルが埋まっていくように1つの道が見事に完成してしまう。
……なら、私は悪役令嬢ですらなかった?
これは仮説に過ぎないし、確かめようのないことだけれど、なんとなく当たっている気がしてならなかった。
だって他の違いがその1つが正しいことで納得できてしまうから。
……女神様に、転生した時のことをもっと詳しく聞こうかな。
そしたら何かわかるかも……。
そこまで考えて、首を横に振る。
ううん、私がゲームのクロエだろうが、そうじゃなかろうが、ここは現実なんだ。
そして、今は変えられないし、私が培って来たもの。
今更暴いたところで、何かが変わるわけでもない。
ただ私が、確証が欲しかっただけなのだ。
断罪されなくて良いって証拠が。
でも……
でも、断罪されても味方になってくれる人がここにはいる。
それだけで十分だということに気付けた。
だから、もうゲームのことを考えるのは辞めよう。
私は、この世界の住民になったんだから。
「お父様、正直に仰ってください。」
さっきできるだけ話をするって約束してくれたのにもう破るの?というような意味も込めてじっと見つめると、お父様は目に見えて狼狽えた。
私の知らないところで、一体何が起きてるんだろう……?
その反応がさらに私の不安を煽る。
「……実は、クロエには影武者がいるんだ。今は、影武者にクロエのフリをしてもらっている。」
「……えっ?」
カゲムシャ……?
って、あの!?
王族とかなら納得できるけど、ただの貴族令嬢でしかない私にそんな人がいるなんて……、予想外すぎる。
「で、では、私が居なくなったことを知っているのは……」
「私と陛下だけだ。大事になる前に手を打ったからな。」
ソウナンデスネ。
それにしても、私にそっくりな人がいるなんてビックリだ。
世の中にはそっくりさんが3人いるって聞いたことはあるけど、この国に2人存在するなんて、どんな確率なんだろう。
まぁ、そのおかげで助かったみたいだから、その影武者さんには感謝しかないけど。
私のせいでお父様……公爵家の名誉が傷ついたりしていないか心配だったから。
ほら、あの殿下のことだよ?
私が居なくなったら、国外追放に耐えきれずに失踪したとかあらぬ汚名を着せそうじゃない?
そしたら、断罪に信憑性が増してしまう。
それだけが気がかりだったから、少なくとも私が居なくなったことを知られていないのは好都合なのだ。
「国外追放を殿下に言い渡されたのですが、その件については……」
「させるわけがないだろう!従者から話を聞いた時なタチの悪い冗談かと思ったくらいだ。クロエが国の為に頑張っていたことは知っていたから、それを自ら不意にするようなことは絶対しないとわかっていたしな。帰って来たら、領地にでも連れて行って殿下が手出しできない状況にしてほとぼりが冷めるのを待つつもりだったしな。」
それじゃあ、私は破滅エンドを回避してたってこと……?
お父様とこうやって話をするまでは嫌われているとばかり思っていたから、むしろ嬉々として国外へと送り出されるんだと信じてやまなかった。
だから、断罪を避ける為に奮闘してたんだしね。
それがまさか、私が無実だと信じてくれるばかりか、追放されないように助力してくれるつもりだったなんて……。
……そっか、私の頑張りは無駄じゃなかったんだ。
ちゃんと、誰かに見てもらえて、信じてもらえるくらいには成果を出していたんだ。
それが嬉しくて、私のこの10年が今ようやく報われたような気がした。
「それにしても驚きました。まさか私に影武者がいただなんて。」
ほっとしてそんなことを口にすると、お父様はなんでもないと言うように説明をしてくれる。
「あぁ、クロエが5歳の時に高熱を出したのを覚えているか?」
「えっと、はい。」
確か私の魂がクロエの体に入ってしまったのも、その時だったっけ。
「あの時、君を失うんじゃないかと気が気じゃなくて、絶対に助けようと医者を探し回った帰り道で、屋敷の前で倒れているその子を見つけたんだ。」
屋敷の前で……。
「……あまりにもクロエにそっくりだったし、幼いこともあって放っておけなくてね。屋敷の中でその子も治療してもらったんだよ。その恩に報いたいというその子たっての希望で君の影武者になってもらったというわけだ。」
そっか、それは放って置けないよね。
それで私に影武者ができたわけかぁ。
その頃からゲームとは全く違かったんだ。
……本当に?
ふと疑念が浮かぶ。
私が転生して来てすぐに物語が変わってしまうなんて、そんなことが、あるのかな?
私と言うバグができたことで変化が起きてしまったといわれたらそれまでだけど、なんだか引っかかる。
私が前世を思い出したのと同時期に現れた少女。
ゲームと違って私に厳しかったお父様。
そして、この身体に私の魂が引っ張られたこと。
この全てを踏まえると……
私は、ゲームの中の悪役令嬢じゃなかった……?
その結論が導き出され、息を呑む。
クロエに魂が引っ張られたということは、その身体の持ち主の魂は入っていなかったということを意味する。
その穴を埋める為に私がクロエの身体に入ってしまった。
つまり、私の魂がクロエに入らなければ、クロエは……亡くなってしまっていたのだろう。
それは、ゲームの中でも同じだったと考えられる。
ってことは、そのお父様が拾った子がゲームに登場していたクロエだと考えるのが自然だ。
ゲームのお父様がクロエに優しかったのは、本当の娘も最愛の妻も失ってしまい、拾った子を娘の代替としていたから……?
だから、離れて行かないように我儘を聞いて甘やかしていた、とか。
そう考えてしまったら、パズルが埋まっていくように1つの道が見事に完成してしまう。
……なら、私は悪役令嬢ですらなかった?
これは仮説に過ぎないし、確かめようのないことだけれど、なんとなく当たっている気がしてならなかった。
だって他の違いがその1つが正しいことで納得できてしまうから。
……女神様に、転生した時のことをもっと詳しく聞こうかな。
そしたら何かわかるかも……。
そこまで考えて、首を横に振る。
ううん、私がゲームのクロエだろうが、そうじゃなかろうが、ここは現実なんだ。
そして、今は変えられないし、私が培って来たもの。
今更暴いたところで、何かが変わるわけでもない。
ただ私が、確証が欲しかっただけなのだ。
断罪されなくて良いって証拠が。
でも……
でも、断罪されても味方になってくれる人がここにはいる。
それだけで十分だということに気付けた。
だから、もうゲームのことを考えるのは辞めよう。
私は、この世界の住民になったんだから。
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