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4 102号室 住人 光井慎
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自分の無表情は父親譲りらしい。幼い頃から目つきが悪く、愛想もなく、口数も少なかった。同じ年頃の子供からも少し距離を置かれていたが、体格も良かったためイジメにあうようなことはなかった。率先して遊びに誘ってもらったこともなかったがそんなものだと思っていた。
けれど6歳離れた実の妹から怖がられたのは正直辛かった。こちらがじっと顔を見る度に泣かれてしまい、悩みに悩んだ子供時代を送った。
妹とのそんな関係が改善したのがお菓子だった。自分たちの母親はよくおやつを手作りしてくれていたのだが、あるとき先にプリンを食べてしまっていた妹が自分のプリンをじっと見ていることに気がついた。
母親を伺うと夕飯の支度に忙しそうにしていた。少しだけ考えてからまだ手をつけていなかったプリンを妹の前に差し出してみた。妹は自分を見ることはなかったが、喜んでそのプリンを食べ始めた。
同じようなことが何度か続くと次第に妹が自分に近づいてきて、それが嬉しかった。
何度目かのやりとりの時に母に見つかった。母は驚いた様子で「あらあら」と言いながら自分たちを見比べた。妹は知らん顔してロールケーキを食べていた。
「慎くん、お菓子作ってみる?」
しばらくして母からかけられたその言葉のおかげで自分の道が決まったのだと思う。
後から考えれば妹は2人分のおやつを食べていたわけで、どう考えても食べ過ぎだ。おやつの食べ過ぎで夕食をあまり食べなくなる妹、あたりまえだが減らされる妹のおやつ。自分のおやつを欲しがる妹……悪循環の原因は自分にあったのだが、自分たちを叱ることなく解決策を短時間で導き出し、示した母は偉大だと思う。
とにかく小学4年生にして自分はお菓子作りの世界に足を踏み入れた。母に教えられながら材料を量ったり混ぜたりする作業はとても楽しかった。側で見ている妹も、自分が作ったお菓子を貰えると知っており、気がつけばいつの間にかすっかり懐かれていた。
高校で進路を決めるときも迷いなく製菓学校への進学を決めた。担任の先生に製菓だけでなく調理師の勉強もしたらどうかと勧められたが、断固断った。自分は料理も嫌いではないので食事の支度なども母を手伝っていたが、どうしても魚が苦手で克服できそうになかったからだ。これに関しては父に若干の責任があると思う。
サラリーマンの父は釣りが趣味なので休みの日には時々仲間と一緒に釣りに行く。あれはまだ自分が幼稚園の頃だったと思う。大きな魚を釣ってきて上機嫌な父が自分の目の前で楽しげに魚をさばきはじめた。そして運悪く頭を落とされた魚と目が合ってしまった。恨めしそうな目で自分を睨んでいるような気がして異様に恐ろしかった。
もちろんその日の夕食に出た魚を食べることができなかったし、しばらく頭のついた魚が食卓に並ぶのも耐えられなかった。秋刀魚はもとより、ちりめんじゃこのような小魚でさえだ。立派なトラウマだ。
今では美味しく魚を食べることはできるが、魚に包丁を入れることはいまだできない。西洋料理にしろ日本料理にしろ、魚をさばけない調理人など聞いたことがない。そんなわけでおそらく一見、板前が似合いそうな風貌でありながら、製菓の道に進んでいる。
専門学校時代、この風貌のために浮いてはいたがそれなりに友人もできた。そのひとりが調理師コースに通っていた笹村だ。卒業後はホテルのフレンチレストランで働いていて、休日があうと一緒に色々と食べ歩きに行っている。今回キャンセルしたスペイン料理も彼の誘いだったのだが。
「うわぁ、マジか??次はいつ行けるかわかんないぞ?」
とりあえず笹村が帰宅した頃を狙って電話し、開口一番に謝罪をした。
笹村が予約を取ってくれたレストランは値段もそこそこするのだが、何より予約が取りにくい。スペイン料理を日本人好みにアレンジした創作料理で味、サービス共に定評がある。今回も笹村の勤め先の先輩のコネか何かでなんとか予約が取れたものだった。
「本当に悪い……」
「いや、こっちはぜんぜん構わないんだけどさ。行きたい奴はいくらでもいるから」
昔から人当たりの良い笹村には多くの友人知人がいる。そんな中で自分を誘ってくれたのに申し訳ないとしかいえない。
「まぁ仕方ないわなぁ。お世話になった人なんだろう?」
「そうだな。あの人のおかげでココに馴染めたんだと思う」
「じゃあそっちに参加するしかないよなぁ。まぁレポートしてやるから楽しみにしとけ」
笹村はカラカラと笑いとばしてくれる。次回会った時は必ず埋め合わせをしなければならない。
その後、次回の休みに会えなくなったので近況報告大会が始まった。バイトに可愛い子が入ったことやちょっとした上司のグチ、面白い食材の話など笹村の話題は多岐にわたりしかも楽しい。グチですら笑えるのだから話術の才能が豊かなのだと思う。
「で?最近どうよ?」
いつもの如く聞き役に回っている自分の話を聞き出そうと話を振られた。昔からそうなのだが、彼はとりあえず他人が躊躇う一歩を踏み込んで来る人だった。こちらが絶対話したくないことはさておき、どうしようかと悩んでいる事についてはしつこく問いただしてくる。そんな事をされたことがなかったので最初は随分戸惑ったが今ではもう慣れた。
「……この間……来客のお客さん泣かせそうになった」
先日の女の子の話をした。親切心が仇になるなんてことは良くあることだが仇にしかならないのがいささかキツい。
一通り話し終えると笹村はうーんと唸った。
「でも今までより進歩してんじゃないの?だって放置せずに石?拾ったんだろう?前なら他の人呼んで対応させたんじゃないの?」
確かにそうだ。自分が出ると厄介だからと他の人に頼っていたと思う。スタッフ内でも仕方がないなという風潮があるのも確かだ。それがわかってるからホールの対応も顔なじみのお客様の分だけが自分に割り当てられているのも知っている。
「確かにトラブル回避するにこしたことはないんだけどなぁ」
そうなのだ。自分が出て行くことでトラブルの率が上がり、店に迷惑がかかるのが申し訳ないだけで、自分だけが責められるのであれば別にかまわないのだ。
「オレはそんなにお前の表情が怖いとは思わないけどなぁ」
「それは見慣れてるからだろう?」
「そうかなぁ?……慎さぁ。顔面マッサージ?エステ?受けてみたら?」
「……は?」
予想外の言葉が聞こえてきた。空耳かだろうか?
「お前さぁ、きっと顔の筋肉がカチカチなんじゃないの?だからこう、もみほぐして貰えば筋緩んで表情つくりやすくなるかも?ブライダル司会やってる友達がいるんだけどさ。その子が老廃物流せて顔のコリも解れるから気持ちいいって言ってたような気がする。肩甲骨とかもほぐすと動かしやすくなるっていうからさ」
「エステって……女性がよく通ってる?」
きらびやかなイメージの未知の世界だ。礼子さん達には似合いそうだが、絶対に自分が行っていい場所ではないと思う。そもそも男が行けるのか?
「うんそう。いいかもしれないな。ちょっと聞いてみるよ」
笹村のすごいところ、それは友人、知人の多さ。そして即決力と行動力。このままでは連れて行かれてしまうかもしれない。
「あぁ……、ちょっと待ってくれ。ちょっと……いろいろ心の準備がいるから一旦保留に……」
「聞くだけだから聞いとくぞ?」
「いや、頼むからちょっと待ってくれっ」
その後、必死のひきとめの甲斐あってその件は保留にしてもらうことができた。
この一連のやりとりでモヤモヤした気持ちが全て飛んでしまっていたのだが、この時の自分は気づくことなく、未知の世界に連行されなかったことにただただ胸をなで下ろすばかりだった。
けれど6歳離れた実の妹から怖がられたのは正直辛かった。こちらがじっと顔を見る度に泣かれてしまい、悩みに悩んだ子供時代を送った。
妹とのそんな関係が改善したのがお菓子だった。自分たちの母親はよくおやつを手作りしてくれていたのだが、あるとき先にプリンを食べてしまっていた妹が自分のプリンをじっと見ていることに気がついた。
母親を伺うと夕飯の支度に忙しそうにしていた。少しだけ考えてからまだ手をつけていなかったプリンを妹の前に差し出してみた。妹は自分を見ることはなかったが、喜んでそのプリンを食べ始めた。
同じようなことが何度か続くと次第に妹が自分に近づいてきて、それが嬉しかった。
何度目かのやりとりの時に母に見つかった。母は驚いた様子で「あらあら」と言いながら自分たちを見比べた。妹は知らん顔してロールケーキを食べていた。
「慎くん、お菓子作ってみる?」
しばらくして母からかけられたその言葉のおかげで自分の道が決まったのだと思う。
後から考えれば妹は2人分のおやつを食べていたわけで、どう考えても食べ過ぎだ。おやつの食べ過ぎで夕食をあまり食べなくなる妹、あたりまえだが減らされる妹のおやつ。自分のおやつを欲しがる妹……悪循環の原因は自分にあったのだが、自分たちを叱ることなく解決策を短時間で導き出し、示した母は偉大だと思う。
とにかく小学4年生にして自分はお菓子作りの世界に足を踏み入れた。母に教えられながら材料を量ったり混ぜたりする作業はとても楽しかった。側で見ている妹も、自分が作ったお菓子を貰えると知っており、気がつけばいつの間にかすっかり懐かれていた。
高校で進路を決めるときも迷いなく製菓学校への進学を決めた。担任の先生に製菓だけでなく調理師の勉強もしたらどうかと勧められたが、断固断った。自分は料理も嫌いではないので食事の支度なども母を手伝っていたが、どうしても魚が苦手で克服できそうになかったからだ。これに関しては父に若干の責任があると思う。
サラリーマンの父は釣りが趣味なので休みの日には時々仲間と一緒に釣りに行く。あれはまだ自分が幼稚園の頃だったと思う。大きな魚を釣ってきて上機嫌な父が自分の目の前で楽しげに魚をさばきはじめた。そして運悪く頭を落とされた魚と目が合ってしまった。恨めしそうな目で自分を睨んでいるような気がして異様に恐ろしかった。
もちろんその日の夕食に出た魚を食べることができなかったし、しばらく頭のついた魚が食卓に並ぶのも耐えられなかった。秋刀魚はもとより、ちりめんじゃこのような小魚でさえだ。立派なトラウマだ。
今では美味しく魚を食べることはできるが、魚に包丁を入れることはいまだできない。西洋料理にしろ日本料理にしろ、魚をさばけない調理人など聞いたことがない。そんなわけでおそらく一見、板前が似合いそうな風貌でありながら、製菓の道に進んでいる。
専門学校時代、この風貌のために浮いてはいたがそれなりに友人もできた。そのひとりが調理師コースに通っていた笹村だ。卒業後はホテルのフレンチレストランで働いていて、休日があうと一緒に色々と食べ歩きに行っている。今回キャンセルしたスペイン料理も彼の誘いだったのだが。
「うわぁ、マジか??次はいつ行けるかわかんないぞ?」
とりあえず笹村が帰宅した頃を狙って電話し、開口一番に謝罪をした。
笹村が予約を取ってくれたレストランは値段もそこそこするのだが、何より予約が取りにくい。スペイン料理を日本人好みにアレンジした創作料理で味、サービス共に定評がある。今回も笹村の勤め先の先輩のコネか何かでなんとか予約が取れたものだった。
「本当に悪い……」
「いや、こっちはぜんぜん構わないんだけどさ。行きたい奴はいくらでもいるから」
昔から人当たりの良い笹村には多くの友人知人がいる。そんな中で自分を誘ってくれたのに申し訳ないとしかいえない。
「まぁ仕方ないわなぁ。お世話になった人なんだろう?」
「そうだな。あの人のおかげでココに馴染めたんだと思う」
「じゃあそっちに参加するしかないよなぁ。まぁレポートしてやるから楽しみにしとけ」
笹村はカラカラと笑いとばしてくれる。次回会った時は必ず埋め合わせをしなければならない。
その後、次回の休みに会えなくなったので近況報告大会が始まった。バイトに可愛い子が入ったことやちょっとした上司のグチ、面白い食材の話など笹村の話題は多岐にわたりしかも楽しい。グチですら笑えるのだから話術の才能が豊かなのだと思う。
「で?最近どうよ?」
いつもの如く聞き役に回っている自分の話を聞き出そうと話を振られた。昔からそうなのだが、彼はとりあえず他人が躊躇う一歩を踏み込んで来る人だった。こちらが絶対話したくないことはさておき、どうしようかと悩んでいる事についてはしつこく問いただしてくる。そんな事をされたことがなかったので最初は随分戸惑ったが今ではもう慣れた。
「……この間……来客のお客さん泣かせそうになった」
先日の女の子の話をした。親切心が仇になるなんてことは良くあることだが仇にしかならないのがいささかキツい。
一通り話し終えると笹村はうーんと唸った。
「でも今までより進歩してんじゃないの?だって放置せずに石?拾ったんだろう?前なら他の人呼んで対応させたんじゃないの?」
確かにそうだ。自分が出ると厄介だからと他の人に頼っていたと思う。スタッフ内でも仕方がないなという風潮があるのも確かだ。それがわかってるからホールの対応も顔なじみのお客様の分だけが自分に割り当てられているのも知っている。
「確かにトラブル回避するにこしたことはないんだけどなぁ」
そうなのだ。自分が出て行くことでトラブルの率が上がり、店に迷惑がかかるのが申し訳ないだけで、自分だけが責められるのであれば別にかまわないのだ。
「オレはそんなにお前の表情が怖いとは思わないけどなぁ」
「それは見慣れてるからだろう?」
「そうかなぁ?……慎さぁ。顔面マッサージ?エステ?受けてみたら?」
「……は?」
予想外の言葉が聞こえてきた。空耳かだろうか?
「お前さぁ、きっと顔の筋肉がカチカチなんじゃないの?だからこう、もみほぐして貰えば筋緩んで表情つくりやすくなるかも?ブライダル司会やってる友達がいるんだけどさ。その子が老廃物流せて顔のコリも解れるから気持ちいいって言ってたような気がする。肩甲骨とかもほぐすと動かしやすくなるっていうからさ」
「エステって……女性がよく通ってる?」
きらびやかなイメージの未知の世界だ。礼子さん達には似合いそうだが、絶対に自分が行っていい場所ではないと思う。そもそも男が行けるのか?
「うんそう。いいかもしれないな。ちょっと聞いてみるよ」
笹村のすごいところ、それは友人、知人の多さ。そして即決力と行動力。このままでは連れて行かれてしまうかもしれない。
「あぁ……、ちょっと待ってくれ。ちょっと……いろいろ心の準備がいるから一旦保留に……」
「聞くだけだから聞いとくぞ?」
「いや、頼むからちょっと待ってくれっ」
その後、必死のひきとめの甲斐あってその件は保留にしてもらうことができた。
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