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冒険者と人形遣い 1
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「うひゃい」
広場での公演を終え、下宿している遊郭に向かっていたシノは、外郭に入ったところで口元を覆面で隠した3人組の男に路地裏に引っ張り込まれた。
「いたたた。な、なんすか、おにーさん方は?」
「おう、人形遣い。芸をやるのは構わんが、俺たちに挨拶が無いのはイカンな」
ニヤニヤ笑いの男が凄んで来るが、いい加減この手の嫌がらせに慣れているシノは、顔色も変えなかった。
「はて?この街を仕切る親分さんには、ちゃんとショバ代を払ってますが?」
「おっと、自供が出たな。そういう裏社会と繋がりがある連中を取り締まるのが俺たちの仕事って訳だ。見過ごす事はできなくなったなぁ」
そういうが、この三人はどう見ても役人ではない。シノも何となく事情を察した。
(なるほど、地回りの一家とは別口ですか…ショバ代取るなら、ちゃんとこういう連中から守って欲しいものですが)
脳内で悪態をつきつつ、念のため公僕で無い事を確認する。
「仕方ないすね。んじゃ、警邏の詰め所に行けばいいですかね?」
「いやあ、俺たちはお役人に余計な手間を掛けさせないためにこうしてるんだ。自警団ってやつだよ。話するなら俺らんところに来てもらおうか?」
「えぇ、嫌ですよ。それに、おにーさん方と話したって、1回で済まないかもしれないし、おにーさん方以外にも自警団とやらがいるかもしれませんよね?」
手首を掴まれそうになったので、さっと身を引いた。やはり役人とは無関係だ。こいつらに付き合うのは論外だが、とは言え騒ぎは起こしたく無かったし。どうしたものか…
「お?逆らう?逆らっちゃう?街の治安を守る冒険者に?余所者が?」
ドガッ
「痛ッ」
考えていたら、男の一人がいきなりシノを蹴り倒した。自分達を全く恐れないシノに腹が立ったらしい。
転んだ拍子に、行李の上に括りつけていたトランクが落ちた。カチリとロックが外れる音がする。
「あっ」と呟くと、シノはトランクの上に覆いかぶさった。
「金はこの中か」
男の一人がトランクを奪おうとした。シノは抱きかかえて渡すまいとする、男たちは三人がかりでシノを蹴りつけた。見かけより頑丈なシノは男三人に蹴られても怯まなかったが、脇腹を蹴られ息が詰まり、頭を蹴られて景色が廻った。それでもトランクからは絶対に手は離せない。
「黙ってそいつをよこせば痛い目見ないで済むって言ってるんだよ」
「ダメ…すよ」
シノは必死でトランクに抱き着く。
(私は大丈夫、私は大丈夫、大丈夫……)
「しぶといな。どうする、殺っちまうか?」
いくら蹴飛ばしても、ブツブツ呟きながらトランクを抱えて離さないシノに、焦れた一人が言った。
シノの顔色が変わる。
「最近の冒険者は、街で人を狩るだけで組合に在籍できるのかい。統括を問い詰めてやろうかね…」
突然、路地の入口から声をかけられ、三人が振り返った。
綿襖甲と片手剣を装備した、中年の剣士と思われる男が立っていた。
「なんだてめぇは」
「組合に不良冒険者をチクって小遣い貰ってる、卑しいご同業だよ」
「チッ冒険者か」
冒険者が介入して来たと知って、三人は即座に撤退を決めた。彼らが冒険者でありながらカツアゲをして生きて行けるのは、正体を知られていないからだ。同業相手に危険は冒せない。
「引くぞ。だが、お前の顔を覚えたからな。俺たちの邪魔しやがったお前は二度と街を…」
「歩けなくなるのは君達だよ、スタイン君、オールズ君、テイナー君」
自分達は姿を隠し、邪魔をしたこいつを見つけて一方的に追い詰めてやろう…と思っていた三人は、自分達の身元が既に知られていた事に愕然とした。
「な」
「こいつなんで俺たちを」
「認めてどうするよ、バカだねぇ~」
剣士に嘲笑されて三人は激昂した。
「カマかけやがったのか!」
「カマじゃないよ。俺はほとんどの冒険者の特徴と名前を把握している。さ~てどうしよう?追い詰められちゃったね?逃げてシラを切ろうにも、顔も名前も知られちゃった。街を逃げ出すしか無いのでは~?」
「クソッこうなったら殺るしかねぇ」
挑発されていると判っていても、三人は目撃者を消すしか無かった。そうでなければ待っているのは破滅だけだ。剣を抜くと男に切りかかった。
「本当に馬鹿だねぇ…」
「ぐっ」
「おふ」
「が」
三人はたちまち昏倒させられた。相手は武器すら抜いていないというのに。
「三対一だろうが、魔獣にビビって街中でしかイキれないお前達が、勝てる訳無いだろうよ…」
そう言いながら三人を後ろ手に縛っていると、男の仲間らしい冒険者が警邏を連れて来た。
後を任せると、剣士は倒れているシノを抱き起した。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
「誰も、死んでません、か?」
「まずそれかい?死んでないよ。縛って警邏に突き出す。まぁ暴行、強盗未遂、殺人未遂の現行犯だ、死ぬまで強制労働だろう」
もう一人の仲間が、組合の職員を連れて来た。
「嬢ちゃん、組合で証言をしてもらっていいかい?。冒険者のやった事だから組合が手当もしてくれるし、食事くらいは出ると思うよ?」
「できれば、ご協力お願いします」
組合の女性職員にそう言われて、シノはようやく安堵して頷いた。
路地裏でシノを救った剣士は、シノを組合に任せると外郭の広場で通り過ぎる冒険者を眺めていた。あんな目に遭った後だから、男の自分が付き添うより組合の女性職員に任せた方が良いと判断したのだ。それに、付き添うなら自分より適役が居る。
やがて目当ての冒険者を見つけた剣士は、手を振ってその男を呼び止めた。
「おーい、日雇い。お前の世話してた嬢ちゃんが騒動に巻き込まれた。ちょっと面貸せや」
広場での公演を終え、下宿している遊郭に向かっていたシノは、外郭に入ったところで口元を覆面で隠した3人組の男に路地裏に引っ張り込まれた。
「いたたた。な、なんすか、おにーさん方は?」
「おう、人形遣い。芸をやるのは構わんが、俺たちに挨拶が無いのはイカンな」
ニヤニヤ笑いの男が凄んで来るが、いい加減この手の嫌がらせに慣れているシノは、顔色も変えなかった。
「はて?この街を仕切る親分さんには、ちゃんとショバ代を払ってますが?」
「おっと、自供が出たな。そういう裏社会と繋がりがある連中を取り締まるのが俺たちの仕事って訳だ。見過ごす事はできなくなったなぁ」
そういうが、この三人はどう見ても役人ではない。シノも何となく事情を察した。
(なるほど、地回りの一家とは別口ですか…ショバ代取るなら、ちゃんとこういう連中から守って欲しいものですが)
脳内で悪態をつきつつ、念のため公僕で無い事を確認する。
「仕方ないすね。んじゃ、警邏の詰め所に行けばいいですかね?」
「いやあ、俺たちはお役人に余計な手間を掛けさせないためにこうしてるんだ。自警団ってやつだよ。話するなら俺らんところに来てもらおうか?」
「えぇ、嫌ですよ。それに、おにーさん方と話したって、1回で済まないかもしれないし、おにーさん方以外にも自警団とやらがいるかもしれませんよね?」
手首を掴まれそうになったので、さっと身を引いた。やはり役人とは無関係だ。こいつらに付き合うのは論外だが、とは言え騒ぎは起こしたく無かったし。どうしたものか…
「お?逆らう?逆らっちゃう?街の治安を守る冒険者に?余所者が?」
ドガッ
「痛ッ」
考えていたら、男の一人がいきなりシノを蹴り倒した。自分達を全く恐れないシノに腹が立ったらしい。
転んだ拍子に、行李の上に括りつけていたトランクが落ちた。カチリとロックが外れる音がする。
「あっ」と呟くと、シノはトランクの上に覆いかぶさった。
「金はこの中か」
男の一人がトランクを奪おうとした。シノは抱きかかえて渡すまいとする、男たちは三人がかりでシノを蹴りつけた。見かけより頑丈なシノは男三人に蹴られても怯まなかったが、脇腹を蹴られ息が詰まり、頭を蹴られて景色が廻った。それでもトランクからは絶対に手は離せない。
「黙ってそいつをよこせば痛い目見ないで済むって言ってるんだよ」
「ダメ…すよ」
シノは必死でトランクに抱き着く。
(私は大丈夫、私は大丈夫、大丈夫……)
「しぶといな。どうする、殺っちまうか?」
いくら蹴飛ばしても、ブツブツ呟きながらトランクを抱えて離さないシノに、焦れた一人が言った。
シノの顔色が変わる。
「最近の冒険者は、街で人を狩るだけで組合に在籍できるのかい。統括を問い詰めてやろうかね…」
突然、路地の入口から声をかけられ、三人が振り返った。
綿襖甲と片手剣を装備した、中年の剣士と思われる男が立っていた。
「なんだてめぇは」
「組合に不良冒険者をチクって小遣い貰ってる、卑しいご同業だよ」
「チッ冒険者か」
冒険者が介入して来たと知って、三人は即座に撤退を決めた。彼らが冒険者でありながらカツアゲをして生きて行けるのは、正体を知られていないからだ。同業相手に危険は冒せない。
「引くぞ。だが、お前の顔を覚えたからな。俺たちの邪魔しやがったお前は二度と街を…」
「歩けなくなるのは君達だよ、スタイン君、オールズ君、テイナー君」
自分達は姿を隠し、邪魔をしたこいつを見つけて一方的に追い詰めてやろう…と思っていた三人は、自分達の身元が既に知られていた事に愕然とした。
「な」
「こいつなんで俺たちを」
「認めてどうするよ、バカだねぇ~」
剣士に嘲笑されて三人は激昂した。
「カマかけやがったのか!」
「カマじゃないよ。俺はほとんどの冒険者の特徴と名前を把握している。さ~てどうしよう?追い詰められちゃったね?逃げてシラを切ろうにも、顔も名前も知られちゃった。街を逃げ出すしか無いのでは~?」
「クソッこうなったら殺るしかねぇ」
挑発されていると判っていても、三人は目撃者を消すしか無かった。そうでなければ待っているのは破滅だけだ。剣を抜くと男に切りかかった。
「本当に馬鹿だねぇ…」
「ぐっ」
「おふ」
「が」
三人はたちまち昏倒させられた。相手は武器すら抜いていないというのに。
「三対一だろうが、魔獣にビビって街中でしかイキれないお前達が、勝てる訳無いだろうよ…」
そう言いながら三人を後ろ手に縛っていると、男の仲間らしい冒険者が警邏を連れて来た。
後を任せると、剣士は倒れているシノを抱き起した。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
「誰も、死んでません、か?」
「まずそれかい?死んでないよ。縛って警邏に突き出す。まぁ暴行、強盗未遂、殺人未遂の現行犯だ、死ぬまで強制労働だろう」
もう一人の仲間が、組合の職員を連れて来た。
「嬢ちゃん、組合で証言をしてもらっていいかい?。冒険者のやった事だから組合が手当もしてくれるし、食事くらいは出ると思うよ?」
「できれば、ご協力お願いします」
組合の女性職員にそう言われて、シノはようやく安堵して頷いた。
路地裏でシノを救った剣士は、シノを組合に任せると外郭の広場で通り過ぎる冒険者を眺めていた。あんな目に遭った後だから、男の自分が付き添うより組合の女性職員に任せた方が良いと判断したのだ。それに、付き添うなら自分より適役が居る。
やがて目当ての冒険者を見つけた剣士は、手を振ってその男を呼び止めた。
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