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とある鬼人の戦記 19 その手からこぼれ落ちるもの 1
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即位と婚礼の一連の公式行事が終わった後で、グリフ王主催の小さな夜会が開かれた。
招待者は、逃避行に付き従った騎士達と、元からグリフ王を支え続けた貴族のみ。言うなれば、身内の慰労会のような夜会だった。グリフ王はこの夜会には獣人の長を招くつもりだったが、手を尽くたもののやはり獣人の参加は見送らざるを得なかった。だが、グリフ王は鬼人の招待は譲らなかった。たとえ正体を明かす事はできないとしても、ステレに共に戦った栄誉を与えてやりたかった。
参加者には、「特別な客」が招かれる事、あらかじめ他言無用の魔法制約をしてもらう事が付されており、招待を受けた貴族は、おそらくは「特別な客」とは鬼人であろうと予想していた。
緊張をはらんで始まった夜会であるが、酒が注がれ王と王妃を寿ぐ乾杯により宴が始まってもステレは現れなかった。オーウェン始め、グリフの騎士達も心配げに王を見る。王は、ステレからは参加の意思が伝えられたと言っていた。だが、このまま二度と会えないのでは無いか…そんな不安が膨らむ。やがて、警備の一人が王の侍従に耳打ちをした。侍従が王に何事かを伝えると、やや沈んでいた王の表情が変わった事で、参加の貴族達は「特別な客」が来た事を知った。王の「通せ」という声に、ホールは静まり返る。先触れの声も無くドアが開かれると、王城のお仕着せのような地味な上下を身にまとい、帽子を目深に被った人物が入って来た。無言のまま王の前まで進み出ると、帽子を取り胸に当てて跪く…真っ赤な髪と金色に輝く目。王都の貴族の多くが初めて見る鬼人の姿だった。出回っている絵姿とは異なり、面差しは美しく体格は只人と大差無い。貴族達の間から「ほう」や「まぁ…」という声が漏れる。
「久しいな、鬼人殿。息災か?」
「はい、陛下にもお変わりなく」
グリフ王はやや表情を和らげたが、不安は変わらぬままだった。王都の前で別れた時からだいぶ経つが、ステレは変わらず今にも崩れそうに見えたからだ。
「夜会に縁の無いあなたにわざわざ来てもらったのは他でもない、あなたは苦境にあった私に力を貸してくれたにも拘わらず、何も取らずに出て行ってしまった。その埋め合わせをしたい。私の力不足により、今は王国の爵位を贈る事はできない。だがせめて、王国騎士の位は受けてもらえぬだろうか?」
これが今の王に出せる精一杯の褒章だった。それでも、どうにかステレのかつての夢を「騎士になる」を叶えてやることができる。貴族の子弟以外に騎士爵を与える事は、確かに今では肩書だけのささやかな褒美ではある。
だがそれが只人以外に対してであれば、王国の国是を変えるものである。貴族の間にざわめきが起きた。鬼人を家臣として従えれば、それは確かにグリフ王の権威を上げるだろう。だが、グリフ王を良く思わぬ貴族はここぞとばかりに王を非難するだろう。グリフを支え続けた貴族とはいえ、グリフの政策全てに全面的に賛成している訳ではない。政権に致命的な政策であれば、それを止めるのも貴族の役目だ。
鬼人はゆっくりと首を振った。
「俺の役目は終わりました。俺の望みは陛下を王位に就けることでした、俺は望むものを既に手に入れています」
鬼人を知らぬ貴族のざわめきが大きくなった。鬼人の言動が無礼だという声が上がる一方、鬼人を騎士にするという王の決断を辞退する事に安堵する声もある。
鬼人の正体を知る者は…。オーウェンは胸が痛むのを感じていた。やはりステレは王都を…下手をしたらこの国を出るつもりなのだ。
「私を支えてくれた者たちには、あなた以外には皆褒美を取らせた。あなたの謙譲を美しく思うが、論功行賞を正しく行うことは、我が国の寄って立つところなのだ」
「……確かに。俺の浅慮で陛下に迷惑をかけていたなら、お詫びいたします」
「ならば……」
しかし、ステレは重ねて首を振る。
「恐れながら、騎士爵であろうと受け取れません」
「私の側にはおれぬか……」
「俺は殺すことしかできない鬼です。それ以外できませませんから、騎士にはなれません」
ステレはあえて、戦うことと言わず殺すことと言った。
かつてキブト王に女が騎士になれない理由を聞いた時、キブト王は騎士の仕事は殺す事だと言った。ステレはそれを否定したかった。ステレは殺す騎士ではなく、愛するものを守る騎士になりたかった。それを目指し続けていた。だが、結局何も守る事はできなかった。故郷は壊滅し、両親と家臣が死んだ。そして今のステレは、関わる者に死を振りまき、人を殺さなければ済まない鬼人になってしまった。だからこそ騎士にななれない。王国の望むものが殺す騎士だからこそ、自分が望まぬ騎士になる事には何も意味が無いのだ。
グリフ王にはその想いは伝わっていた。性別も種族も飛び越えて騎士の位を与える…この国の最高権力者がそう言っても、もうステレの心をすくい上げる事ができなかった。全ては遅すぎた。あれほど望んだ王国騎士に相応しいだけの力を手に入れた事が、かえってステレを騎士から遠ざけてしまった。
それでも、グリフはステレを騎士に相応しいと思っている。ステレの死の刃は、グリフを守るために振るわれ続けたのだから。例えステレ自身がそれを否定したとしても。自分はステレに守られ、生き延びることで王位に就いたのだから。
「あなたが王国騎士にはなれなくとも、私はあの日の言葉を忘れていない。今でもあなたは私の騎士だ」
ステレの表情が僅かに緩んだ。貴族達は、王の言葉は鬼人が「鬼人卿」と呼ばれるようになった一件を指していると思っている。だが、そうでは無い事を王とステレと5人の騎士だけが知っていた。王は、わざわざ大勢の貴族の前で、この言葉を言ってくれたのだ。だからステレはその言葉だけで十分だった。鬼人の力と引き換えに全てを無くしたが、この誓いが残れば十分だ。
「はい、どこにあろうと俺はこの命ある限り陛下の騎士です」
「……では、私の騎士に何か望むものをとらせる。私の懐はそれほど大きいものではないから、望むままに…とはいかないがな」
何も要らない…そう思った矢先に望む物を…そう言われたステレは、ちょっと困ったような顔をした後、真剣に考え始めた。だが、考えれ考えるほど何も思いつかない。ふと視線を上げると、王妃がじっと自分を見つめているのに気が付いた。
「身を超えた願いですが……」
鬼人は何を所望するのか……広間の貴族達は、固唾を呑んで鬼人を見つめていた。鬼人の望み次第で、この国の政策が大きく変わる可能性もあるのだ。即位直後のこの時期には、ほんの僅か手綱を誤るだけで致命傷になりかねない。
「叶うことなら、陛下と一曲を共に踊ることができるのなら、これ以上の誉はございません」
広間はしんと静まり返る。
鬼人が何を言っているのか、多くの貴族が理解できなかったのだ。ややあって、皆がようやくその事実に気が付いた。この鬼人は…まさか女だったのか……と。
ただ共に踊りたい。ステレのその願いに、王は一瞬だけ悲し気な色を見せた。この娘は、もはや形のある栄誉や褒章など不要だと言っているのだ。ステレがただ思い出だけを求める理由は……。
それでも、ステレの願いなら叶えなければならない。そう決意した王が立ち上がろうとする矢先に、隣に控えるマーシア妃が声を上げた。
「陛下、発言をよろしいでしょうか」
「…良い」
「鬼人様の申し出は御立派なことかと思います。ですが、淑女が男装のまま陛下とダンスされのは、さすがにいかがな物かと。楽団の準備の間、少々お色直しをさせていただくお時間を頂戴できれば…と存じます」
王は胡乱な目で王妃を見た。毎度王妃は突拍子もないことを言い出す。今のステレは男性と変わらぬ体格になっている。彼女が男装して宮廷に来たのは、礼儀を知らない訳ではなく着られるドレスが無いからだ。だが王妃が、なんの考えもなく声を上げる女で無い事も知っていた。
「良い。見立ててくれ」
「ありがとうございます」
王妃は何事かを侍従に指示すると、「では控えの間をお借りいたします」そう言って、戸惑うステレを連れて下がった。
王妃と侍女と護衛と、廊下を進みながらステレは困惑していた。王妃とはツェンダフの屋敷で顔を合わせた程度でしかない。王に恥をかかせないため…というには手がかかりすぎる。しかも、王妃は控えの間には護衛を入れず、侍女にも何事かを指示して出て行かせてしまった。ステレを椅子に座らせた王妃は、まるで見定めようとするように、ゆっくりとステレの周りを歩く。王妃が人外と二人きりなど、通常はあり得ない事だ。しかも、王妃は…つまりは愛した人の妻だ。いざ王妃と二人きりになったステレは、王妃を見る事も出来ずにうつむいてしまった。いったい彼女は自分をどうしたいのだ?。
「あなた、ステレ・カンフレーでしょ?」
いきなりそう言われ、ステレの肩がピクリと震える。
「…それは誰の事です?」
「あなた、隠し事できない性格って言われるでしょ?」
とぼけてみたものの、王妃には一笑に付された。別に正体を推測した訳ではない、彼女は鬼人の正体を知っていたのだ。
「隠さなくていいわよ。あなたを王都への工作として送り込む…と決めた後、陛下がうっかり名を呟くのを聞いたのよ」
「……」
「まぁいいわ、沈黙もまた答え。あなたは嘘も苦手なようだし」
人払いをした理由は判った。王妃はステレと一対一で話がしたかったのだろう。それは判っても、何を話したいのかは想像もつかない。
「私はね、ずっとステレに会ってみたいと思っていたの」
意外な事を言われて、ステレは思わず顔を上げて王妃を見てしまった。目線が合うと、王妃はやっとこっちを見てくれた…と言わんばかりに破顔した。
「キブト王に、どうして女が騎士になれないのか…って正面から突き付けた娘が居ると聞いてね。私も、なぜ女が思い通りに生きていけないのか、ずっと疑問に思っていた。でも、私はそれを隠すしか無いと思っていたの。でも、その想いをステレが打ち砕いてくれた。だから会ってお礼を言いたかった。あなたに共感する女がここにも居ます、そう言いたかった。もうすぐツェンダフに…という所で、あなたが戦死したと聞いてとても残念だった。だから、陛下があなたの名前を呟いたときは驚いた以上に嬉しかったわ」
予想外の告白に、ステレは目を丸くしていた。自分のような王国の常識の枠内で生きられない変わり者など、そうそう居ないと思っていた。
「そして、あなたも私も同じ人を愛していると気が付いた。同じように、自分が自分らしく生きるために、陛下が必要なんだと。だから、あなたと私は同志になれないか?そう思ったの。……でもあなたは、陛下の許を去るつもりなのね。あなたはそんなにも強く美しいのになぜ?。性別の壁は壊そうとしても、種族の壁を壊すのは無理だと思った?」
「…そうですね」
王妃の指摘は正鵠を射ていたが、さすがに『一緒に居ると押し倒しそうになる』と、妻の前で言う度胸は無かった。だからもう一つの理由だけを言った。
「陛下に言った通りです。私は……鬼人は、殺す事しかできません、戦わないと生きていけないんです」
「溜まる前に、ソルメトロ卿かオーウェン卿をとっ捕まえて、発散したらいいじゃない」
あっさり言われて、ステレのあごがカクンと落ちた。「それをしたくないから去るのだ」と叫びたかった。いろいろ無茶をやって変人扱いされて来たステレだが、王妃はそんなステレをブッ千切りで超越した変わり者らしい。
「冗談よ?」
あきれ果てた表情のステレを見てか、取り繕おうとするように笑う王妃だが、嘘だ。今のは絶対本気だった。
からかわれているとは思えなかったが、だからこそ質が悪い。どちらにしろ、こうも振り回されると王妃に嫌味の一つも言ってやりたくなった。
「一番には……」
「え?」
「私が、妃殿下に嫉妬している…というのが一番の理由でしょうね」
「側室や愛妾じゃダメって事?」
思い切って本音をブチまけて見たステレは、直球で返されて慌ててフルフルと首を振って否定する。危ない。コイツはうかつな事を言ったら、真顔で「正妃を譲る」と言い出しかねない。そんな危険を感じたのだ。
「いいえ。剣だけでなく、もう少し貴族の娘としての教養を身に着けておけば良かったなと、後悔している所です」
「あぁ、そういう…」
マーシアにもようやく判った。この娘は、愛と忠誠が表裏一体なのだ。だから、グリフの側に居るためには、戦いが終わった後の王国でマーシア以上にグリフの役に立つ女でなければならないと思い込んでいる。
それは違う…と言おうとした王妃を、ノックの音が遮った。
「失礼いたします。お命じの物を持ってまいりました」
「入って」
侍従が持ってきたのは、広間の壁に飾られていたタペストリーであった。
この国では希少な絹で織られ、この国の王家が苦難の戦いを制して王位に就くまでの歴史が模式下された図柄で描かれている。
侍従が部屋を出ると、入れ違いで侍女が装身具や髪留めなどが入った箱を持って来た。
「話の途中だったけど時間が無いから始めるわ。脱いでくれるかしら」
言われるまま上下とも脱ぎ、シャツを脱ごうとするステレを止めると、王妃はシャツの胸元を引っ張って、中を覗き込んだ。何も着けていない。
「これじゃ脱ぐ訳にはいかないわね」
苦笑した王妃は、袖を肩口まで捲り上げ、襟元は内側に折り込んで首が見えるようにする。
王妃はタペストリーをステレの肩にかけ、侍女から渡された髪留めやピンでシャツに留めていく。そのまま、王妃はステレの周りをぐるぐる回りながら、タペストリーを巻き付けて行った。要所を折り返したりドレープを作りながら、貴重な絹に惜しげもなくピンを刺してとめて行く。全てを巻き付けると、腰を金の鎖の飾り帯で止めて完成した。それは、現代の視点からしたら、奇妙な衣装なのかもしれない。今の宮廷のドレスのように、身体を補正し、きっちり型を整えたものではなく、神殿にある古代の女神像のまとう緩やかな衣装のような古式の装いに仕上がっていた。
「即興にしてはまぁまぁかしら。小さい頃、神殿でみた女神様の恰好がしたくて、シーツでいろいろ試したのよ。踊るくらいならほどけないと思うけど、立ち回りとかしちゃダメよ?」
椅子に掛けさせたステレに化粧を施すように侍女に命じると、箱をひっかきました王妃は、紅い紗や銀の髪留めで髪を覆う紅いベールを作って、ステレの頭に留めた。ステレは髪を短くしているため、結い上げる事も流す事もできない。紅いベールを着けると、セミロングの髪を背に流しているように見えた。
「手袋と靴はどうしようも無いわね」
王妃は残念そうに呟く。さすがに男よりは細い指だが、筋肉のついた腕はかなり太くて普通の婦人の手袋では合わないだろう。靴も同様だ。男性サイズに近いパンプスなど用意できる訳もない。夜会で素手という訳にはいかないので、手袋は付けて来た男性用の白手袋で間に合わせた。靴はドレスの裾を捲りでもでもしない限りはそう目立たないだろう。それ以外は十分だ、何しろステレは素のままでもかなりの美形だった。
「いかがでしょうか?」
「良い出来ね、目力マシマシがばっちり似合うわ」
王家ご用達化粧品で化粧されたステレは、もうすっかり男には見えなくなっていた。普段化粧っ気の全くない王妃は、しかし、社交では見た目の力が大きい事を十分に承知している。だからこそこの侍女のメイク技術に全幅の信頼を置いていた。その期待通りの出来だった。特徴である女性にしてはシャープな印象を残しつつ、女性らしさも強調している。
鏡を渡されたステレは、半ば呆然と自分の顔を見ている。ようやく見慣れるようになった自分の顔が、また別人になっていた。
「さて、決戦よ。……ほら呆けてないで」
王妃にせかされたステレは、のろのろと立ち上がる。いったいどうしてこうなった?『決戦』って何の事だ?というか、なんで王妃の方がやる気満々なのだ?。
いろいろな疑問がぐるぐる回ったまま控えの間を出ると、侍従と護衛の他に、ふくよかな婦人が待っていた。婦人は目を閉じ、片手を侍女が取っている。盲しいているようだった。
ステレは婦人に見覚えがあった。母カーラの知己の一人だった。視力を失った婦人に招かれ、自分が外で見聞きして来た事を話す事があった。ステレも何度か同行した事がある。婦人は王都とかけ離れたド田舎の生活を、それは楽しそうに聞いていた。
婦人は王妃に礼をしたものの、閉じたままの目でステレを見ていた。
「私に用でしょうか?」
作っていない素のステレの声を聴いた婦人はわずかに微笑むと、侍女に向かって頷いた。侍女は無言のままステレに長手袋を差し出す。
「私の予備で申し訳ないけど、何もないよりは良いと思うわよ。指はちょっと合わないかもしれないけど、この通り太目だから、なんとか付けられるのではなくて?」
「どうして、こんな私に…」
「私の亡くなった友人の娘さんがね、必死に陛下をお支えしていたけど、あなたが陛下の許に現れる直前に亡くなったわ。王国を目の前にして、とても心残りだったでしょうね。…私は目が見えないけれど、目には見えないものを少しだけ見ることができるの。私にはあなたがその娘さんととてもよく似て見えたわ。だから縁だと思って」
ステレが知りたい事は、それだけで十分だった。
「……ありがとうございます」
婦人は「じゃあ広間でお待ちしていますわね」そう言って侍女に手を引かれて戻って行った。
受け取った手袋を付けると、確かに指の長さは足りなかった。それでも、長手袋は夜会のドレスコードだから、無いよりはだいぶマシだ。
「シエイラ伯爵夫人じゃない。あの人と知り合いだったの?」
「何度かお会いしたことがあるだけですよ」
王国の社交界で『事情通』『盲目の千里眼』として知られる夫人と友人だったのは、当主である母親だ。自分は何もしていない。それでも、自分を覚えていてくれて、気にかけてくれる人が王国に居た事は喜びだった。だからこそ、自分の行動で失望させてはならない。
ステレは、広間のドアの手前で足を止めると決意を固めたかのように息を整え背筋を伸した。
隣に立つマーシアは、ステレの横顔を見た。その目はドアの先を、そのずっと遠くを…王国の外を見ているように思えた。
招待者は、逃避行に付き従った騎士達と、元からグリフ王を支え続けた貴族のみ。言うなれば、身内の慰労会のような夜会だった。グリフ王はこの夜会には獣人の長を招くつもりだったが、手を尽くたもののやはり獣人の参加は見送らざるを得なかった。だが、グリフ王は鬼人の招待は譲らなかった。たとえ正体を明かす事はできないとしても、ステレに共に戦った栄誉を与えてやりたかった。
参加者には、「特別な客」が招かれる事、あらかじめ他言無用の魔法制約をしてもらう事が付されており、招待を受けた貴族は、おそらくは「特別な客」とは鬼人であろうと予想していた。
緊張をはらんで始まった夜会であるが、酒が注がれ王と王妃を寿ぐ乾杯により宴が始まってもステレは現れなかった。オーウェン始め、グリフの騎士達も心配げに王を見る。王は、ステレからは参加の意思が伝えられたと言っていた。だが、このまま二度と会えないのでは無いか…そんな不安が膨らむ。やがて、警備の一人が王の侍従に耳打ちをした。侍従が王に何事かを伝えると、やや沈んでいた王の表情が変わった事で、参加の貴族達は「特別な客」が来た事を知った。王の「通せ」という声に、ホールは静まり返る。先触れの声も無くドアが開かれると、王城のお仕着せのような地味な上下を身にまとい、帽子を目深に被った人物が入って来た。無言のまま王の前まで進み出ると、帽子を取り胸に当てて跪く…真っ赤な髪と金色に輝く目。王都の貴族の多くが初めて見る鬼人の姿だった。出回っている絵姿とは異なり、面差しは美しく体格は只人と大差無い。貴族達の間から「ほう」や「まぁ…」という声が漏れる。
「久しいな、鬼人殿。息災か?」
「はい、陛下にもお変わりなく」
グリフ王はやや表情を和らげたが、不安は変わらぬままだった。王都の前で別れた時からだいぶ経つが、ステレは変わらず今にも崩れそうに見えたからだ。
「夜会に縁の無いあなたにわざわざ来てもらったのは他でもない、あなたは苦境にあった私に力を貸してくれたにも拘わらず、何も取らずに出て行ってしまった。その埋め合わせをしたい。私の力不足により、今は王国の爵位を贈る事はできない。だがせめて、王国騎士の位は受けてもらえぬだろうか?」
これが今の王に出せる精一杯の褒章だった。それでも、どうにかステレのかつての夢を「騎士になる」を叶えてやることができる。貴族の子弟以外に騎士爵を与える事は、確かに今では肩書だけのささやかな褒美ではある。
だがそれが只人以外に対してであれば、王国の国是を変えるものである。貴族の間にざわめきが起きた。鬼人を家臣として従えれば、それは確かにグリフ王の権威を上げるだろう。だが、グリフ王を良く思わぬ貴族はここぞとばかりに王を非難するだろう。グリフを支え続けた貴族とはいえ、グリフの政策全てに全面的に賛成している訳ではない。政権に致命的な政策であれば、それを止めるのも貴族の役目だ。
鬼人はゆっくりと首を振った。
「俺の役目は終わりました。俺の望みは陛下を王位に就けることでした、俺は望むものを既に手に入れています」
鬼人を知らぬ貴族のざわめきが大きくなった。鬼人の言動が無礼だという声が上がる一方、鬼人を騎士にするという王の決断を辞退する事に安堵する声もある。
鬼人の正体を知る者は…。オーウェンは胸が痛むのを感じていた。やはりステレは王都を…下手をしたらこの国を出るつもりなのだ。
「私を支えてくれた者たちには、あなた以外には皆褒美を取らせた。あなたの謙譲を美しく思うが、論功行賞を正しく行うことは、我が国の寄って立つところなのだ」
「……確かに。俺の浅慮で陛下に迷惑をかけていたなら、お詫びいたします」
「ならば……」
しかし、ステレは重ねて首を振る。
「恐れながら、騎士爵であろうと受け取れません」
「私の側にはおれぬか……」
「俺は殺すことしかできない鬼です。それ以外できませませんから、騎士にはなれません」
ステレはあえて、戦うことと言わず殺すことと言った。
かつてキブト王に女が騎士になれない理由を聞いた時、キブト王は騎士の仕事は殺す事だと言った。ステレはそれを否定したかった。ステレは殺す騎士ではなく、愛するものを守る騎士になりたかった。それを目指し続けていた。だが、結局何も守る事はできなかった。故郷は壊滅し、両親と家臣が死んだ。そして今のステレは、関わる者に死を振りまき、人を殺さなければ済まない鬼人になってしまった。だからこそ騎士にななれない。王国の望むものが殺す騎士だからこそ、自分が望まぬ騎士になる事には何も意味が無いのだ。
グリフ王にはその想いは伝わっていた。性別も種族も飛び越えて騎士の位を与える…この国の最高権力者がそう言っても、もうステレの心をすくい上げる事ができなかった。全ては遅すぎた。あれほど望んだ王国騎士に相応しいだけの力を手に入れた事が、かえってステレを騎士から遠ざけてしまった。
それでも、グリフはステレを騎士に相応しいと思っている。ステレの死の刃は、グリフを守るために振るわれ続けたのだから。例えステレ自身がそれを否定したとしても。自分はステレに守られ、生き延びることで王位に就いたのだから。
「あなたが王国騎士にはなれなくとも、私はあの日の言葉を忘れていない。今でもあなたは私の騎士だ」
ステレの表情が僅かに緩んだ。貴族達は、王の言葉は鬼人が「鬼人卿」と呼ばれるようになった一件を指していると思っている。だが、そうでは無い事を王とステレと5人の騎士だけが知っていた。王は、わざわざ大勢の貴族の前で、この言葉を言ってくれたのだ。だからステレはその言葉だけで十分だった。鬼人の力と引き換えに全てを無くしたが、この誓いが残れば十分だ。
「はい、どこにあろうと俺はこの命ある限り陛下の騎士です」
「……では、私の騎士に何か望むものをとらせる。私の懐はそれほど大きいものではないから、望むままに…とはいかないがな」
何も要らない…そう思った矢先に望む物を…そう言われたステレは、ちょっと困ったような顔をした後、真剣に考え始めた。だが、考えれ考えるほど何も思いつかない。ふと視線を上げると、王妃がじっと自分を見つめているのに気が付いた。
「身を超えた願いですが……」
鬼人は何を所望するのか……広間の貴族達は、固唾を呑んで鬼人を見つめていた。鬼人の望み次第で、この国の政策が大きく変わる可能性もあるのだ。即位直後のこの時期には、ほんの僅か手綱を誤るだけで致命傷になりかねない。
「叶うことなら、陛下と一曲を共に踊ることができるのなら、これ以上の誉はございません」
広間はしんと静まり返る。
鬼人が何を言っているのか、多くの貴族が理解できなかったのだ。ややあって、皆がようやくその事実に気が付いた。この鬼人は…まさか女だったのか……と。
ただ共に踊りたい。ステレのその願いに、王は一瞬だけ悲し気な色を見せた。この娘は、もはや形のある栄誉や褒章など不要だと言っているのだ。ステレがただ思い出だけを求める理由は……。
それでも、ステレの願いなら叶えなければならない。そう決意した王が立ち上がろうとする矢先に、隣に控えるマーシア妃が声を上げた。
「陛下、発言をよろしいでしょうか」
「…良い」
「鬼人様の申し出は御立派なことかと思います。ですが、淑女が男装のまま陛下とダンスされのは、さすがにいかがな物かと。楽団の準備の間、少々お色直しをさせていただくお時間を頂戴できれば…と存じます」
王は胡乱な目で王妃を見た。毎度王妃は突拍子もないことを言い出す。今のステレは男性と変わらぬ体格になっている。彼女が男装して宮廷に来たのは、礼儀を知らない訳ではなく着られるドレスが無いからだ。だが王妃が、なんの考えもなく声を上げる女で無い事も知っていた。
「良い。見立ててくれ」
「ありがとうございます」
王妃は何事かを侍従に指示すると、「では控えの間をお借りいたします」そう言って、戸惑うステレを連れて下がった。
王妃と侍女と護衛と、廊下を進みながらステレは困惑していた。王妃とはツェンダフの屋敷で顔を合わせた程度でしかない。王に恥をかかせないため…というには手がかかりすぎる。しかも、王妃は控えの間には護衛を入れず、侍女にも何事かを指示して出て行かせてしまった。ステレを椅子に座らせた王妃は、まるで見定めようとするように、ゆっくりとステレの周りを歩く。王妃が人外と二人きりなど、通常はあり得ない事だ。しかも、王妃は…つまりは愛した人の妻だ。いざ王妃と二人きりになったステレは、王妃を見る事も出来ずにうつむいてしまった。いったい彼女は自分をどうしたいのだ?。
「あなた、ステレ・カンフレーでしょ?」
いきなりそう言われ、ステレの肩がピクリと震える。
「…それは誰の事です?」
「あなた、隠し事できない性格って言われるでしょ?」
とぼけてみたものの、王妃には一笑に付された。別に正体を推測した訳ではない、彼女は鬼人の正体を知っていたのだ。
「隠さなくていいわよ。あなたを王都への工作として送り込む…と決めた後、陛下がうっかり名を呟くのを聞いたのよ」
「……」
「まぁいいわ、沈黙もまた答え。あなたは嘘も苦手なようだし」
人払いをした理由は判った。王妃はステレと一対一で話がしたかったのだろう。それは判っても、何を話したいのかは想像もつかない。
「私はね、ずっとステレに会ってみたいと思っていたの」
意外な事を言われて、ステレは思わず顔を上げて王妃を見てしまった。目線が合うと、王妃はやっとこっちを見てくれた…と言わんばかりに破顔した。
「キブト王に、どうして女が騎士になれないのか…って正面から突き付けた娘が居ると聞いてね。私も、なぜ女が思い通りに生きていけないのか、ずっと疑問に思っていた。でも、私はそれを隠すしか無いと思っていたの。でも、その想いをステレが打ち砕いてくれた。だから会ってお礼を言いたかった。あなたに共感する女がここにも居ます、そう言いたかった。もうすぐツェンダフに…という所で、あなたが戦死したと聞いてとても残念だった。だから、陛下があなたの名前を呟いたときは驚いた以上に嬉しかったわ」
予想外の告白に、ステレは目を丸くしていた。自分のような王国の常識の枠内で生きられない変わり者など、そうそう居ないと思っていた。
「そして、あなたも私も同じ人を愛していると気が付いた。同じように、自分が自分らしく生きるために、陛下が必要なんだと。だから、あなたと私は同志になれないか?そう思ったの。……でもあなたは、陛下の許を去るつもりなのね。あなたはそんなにも強く美しいのになぜ?。性別の壁は壊そうとしても、種族の壁を壊すのは無理だと思った?」
「…そうですね」
王妃の指摘は正鵠を射ていたが、さすがに『一緒に居ると押し倒しそうになる』と、妻の前で言う度胸は無かった。だからもう一つの理由だけを言った。
「陛下に言った通りです。私は……鬼人は、殺す事しかできません、戦わないと生きていけないんです」
「溜まる前に、ソルメトロ卿かオーウェン卿をとっ捕まえて、発散したらいいじゃない」
あっさり言われて、ステレのあごがカクンと落ちた。「それをしたくないから去るのだ」と叫びたかった。いろいろ無茶をやって変人扱いされて来たステレだが、王妃はそんなステレをブッ千切りで超越した変わり者らしい。
「冗談よ?」
あきれ果てた表情のステレを見てか、取り繕おうとするように笑う王妃だが、嘘だ。今のは絶対本気だった。
からかわれているとは思えなかったが、だからこそ質が悪い。どちらにしろ、こうも振り回されると王妃に嫌味の一つも言ってやりたくなった。
「一番には……」
「え?」
「私が、妃殿下に嫉妬している…というのが一番の理由でしょうね」
「側室や愛妾じゃダメって事?」
思い切って本音をブチまけて見たステレは、直球で返されて慌ててフルフルと首を振って否定する。危ない。コイツはうかつな事を言ったら、真顔で「正妃を譲る」と言い出しかねない。そんな危険を感じたのだ。
「いいえ。剣だけでなく、もう少し貴族の娘としての教養を身に着けておけば良かったなと、後悔している所です」
「あぁ、そういう…」
マーシアにもようやく判った。この娘は、愛と忠誠が表裏一体なのだ。だから、グリフの側に居るためには、戦いが終わった後の王国でマーシア以上にグリフの役に立つ女でなければならないと思い込んでいる。
それは違う…と言おうとした王妃を、ノックの音が遮った。
「失礼いたします。お命じの物を持ってまいりました」
「入って」
侍従が持ってきたのは、広間の壁に飾られていたタペストリーであった。
この国では希少な絹で織られ、この国の王家が苦難の戦いを制して王位に就くまでの歴史が模式下された図柄で描かれている。
侍従が部屋を出ると、入れ違いで侍女が装身具や髪留めなどが入った箱を持って来た。
「話の途中だったけど時間が無いから始めるわ。脱いでくれるかしら」
言われるまま上下とも脱ぎ、シャツを脱ごうとするステレを止めると、王妃はシャツの胸元を引っ張って、中を覗き込んだ。何も着けていない。
「これじゃ脱ぐ訳にはいかないわね」
苦笑した王妃は、袖を肩口まで捲り上げ、襟元は内側に折り込んで首が見えるようにする。
王妃はタペストリーをステレの肩にかけ、侍女から渡された髪留めやピンでシャツに留めていく。そのまま、王妃はステレの周りをぐるぐる回りながら、タペストリーを巻き付けて行った。要所を折り返したりドレープを作りながら、貴重な絹に惜しげもなくピンを刺してとめて行く。全てを巻き付けると、腰を金の鎖の飾り帯で止めて完成した。それは、現代の視点からしたら、奇妙な衣装なのかもしれない。今の宮廷のドレスのように、身体を補正し、きっちり型を整えたものではなく、神殿にある古代の女神像のまとう緩やかな衣装のような古式の装いに仕上がっていた。
「即興にしてはまぁまぁかしら。小さい頃、神殿でみた女神様の恰好がしたくて、シーツでいろいろ試したのよ。踊るくらいならほどけないと思うけど、立ち回りとかしちゃダメよ?」
椅子に掛けさせたステレに化粧を施すように侍女に命じると、箱をひっかきました王妃は、紅い紗や銀の髪留めで髪を覆う紅いベールを作って、ステレの頭に留めた。ステレは髪を短くしているため、結い上げる事も流す事もできない。紅いベールを着けると、セミロングの髪を背に流しているように見えた。
「手袋と靴はどうしようも無いわね」
王妃は残念そうに呟く。さすがに男よりは細い指だが、筋肉のついた腕はかなり太くて普通の婦人の手袋では合わないだろう。靴も同様だ。男性サイズに近いパンプスなど用意できる訳もない。夜会で素手という訳にはいかないので、手袋は付けて来た男性用の白手袋で間に合わせた。靴はドレスの裾を捲りでもでもしない限りはそう目立たないだろう。それ以外は十分だ、何しろステレは素のままでもかなりの美形だった。
「いかがでしょうか?」
「良い出来ね、目力マシマシがばっちり似合うわ」
王家ご用達化粧品で化粧されたステレは、もうすっかり男には見えなくなっていた。普段化粧っ気の全くない王妃は、しかし、社交では見た目の力が大きい事を十分に承知している。だからこそこの侍女のメイク技術に全幅の信頼を置いていた。その期待通りの出来だった。特徴である女性にしてはシャープな印象を残しつつ、女性らしさも強調している。
鏡を渡されたステレは、半ば呆然と自分の顔を見ている。ようやく見慣れるようになった自分の顔が、また別人になっていた。
「さて、決戦よ。……ほら呆けてないで」
王妃にせかされたステレは、のろのろと立ち上がる。いったいどうしてこうなった?『決戦』って何の事だ?というか、なんで王妃の方がやる気満々なのだ?。
いろいろな疑問がぐるぐる回ったまま控えの間を出ると、侍従と護衛の他に、ふくよかな婦人が待っていた。婦人は目を閉じ、片手を侍女が取っている。盲しいているようだった。
ステレは婦人に見覚えがあった。母カーラの知己の一人だった。視力を失った婦人に招かれ、自分が外で見聞きして来た事を話す事があった。ステレも何度か同行した事がある。婦人は王都とかけ離れたド田舎の生活を、それは楽しそうに聞いていた。
婦人は王妃に礼をしたものの、閉じたままの目でステレを見ていた。
「私に用でしょうか?」
作っていない素のステレの声を聴いた婦人はわずかに微笑むと、侍女に向かって頷いた。侍女は無言のままステレに長手袋を差し出す。
「私の予備で申し訳ないけど、何もないよりは良いと思うわよ。指はちょっと合わないかもしれないけど、この通り太目だから、なんとか付けられるのではなくて?」
「どうして、こんな私に…」
「私の亡くなった友人の娘さんがね、必死に陛下をお支えしていたけど、あなたが陛下の許に現れる直前に亡くなったわ。王国を目の前にして、とても心残りだったでしょうね。…私は目が見えないけれど、目には見えないものを少しだけ見ることができるの。私にはあなたがその娘さんととてもよく似て見えたわ。だから縁だと思って」
ステレが知りたい事は、それだけで十分だった。
「……ありがとうございます」
婦人は「じゃあ広間でお待ちしていますわね」そう言って侍女に手を引かれて戻って行った。
受け取った手袋を付けると、確かに指の長さは足りなかった。それでも、長手袋は夜会のドレスコードだから、無いよりはだいぶマシだ。
「シエイラ伯爵夫人じゃない。あの人と知り合いだったの?」
「何度かお会いしたことがあるだけですよ」
王国の社交界で『事情通』『盲目の千里眼』として知られる夫人と友人だったのは、当主である母親だ。自分は何もしていない。それでも、自分を覚えていてくれて、気にかけてくれる人が王国に居た事は喜びだった。だからこそ、自分の行動で失望させてはならない。
ステレは、広間のドアの手前で足を止めると決意を固めたかのように息を整え背筋を伸した。
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追記:2025/09/20
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もし気になる方は、
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