【完結】罪と、罰と、二度目の恋と

雨樋雫

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第二章

復讐という名の暴力

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 この日は週に一度の職場の定休日だった。

 いつものように大学の講義を終えたあと、間宮は馴染みのゲイバーに足を運んだ。
 未成年の間宮はまだ酒は呑めないが、下戸にも優しいこのバーは間宮のお気に入りだ。

 そこでは間宮の顔見知りの客が既にゆったりとカクテルを楽しんでいたところだった。

「やほ、城崎しろさきさん」
「やぁ、龍くん。どうしたんだい久しぶりじゃないか。忙しかったの?」

 城崎と呼ばれた大人の色気が漂う、40代半ばのスーツ姿の男性が間宮に柔和な笑顔を見せる。
 タチ同士である間宮と城崎の間に肉体関係はないが、なんとなくお互いフィーリングが合い、年齢の垣根を越えて会話を楽しんでいた。

「んー、まあ忙しさは別にいつも通りかな。相変わらず大学とバイトに忙殺される日々だよ。でも今日は久々にここに来たくて」
「恋人でもできたのかと思ったよ」
「そういうんじゃないけどーーああ、でも最近面白い玩具おもちゃを見つけてさ」
「オモチャ…?」

 どういうことだと、城崎が怪訝な顔で聞き返す。間宮はヘラヘラと笑いながら、事の次第を一切隠すことなく説明した。
















「てなわけで、体のいい性処理道具が見つかったから、特に相手を探す必要がなかったんだよね。俺元々恋愛とか興味ない人間だし、性欲が解消されたらそれで」

 それまでずっと静かに間宮の話を聞いていた城崎が、ゆっくりと口を開いた。

「龍くん、君のしていることは復讐という名の暴力だ」

 城崎に復讐行為をぴしゃりと咎められた間宮は、眉間にシワを寄せた。

「は……?」
「悪いことは言わない。そんなことは今すぐやめなさい」

 普段は城崎の落ち着いた大人な雰囲気が好きだったが、今回に限ってはその冷静な物言いがかえって癇に障った。間宮は思わずカッとなり、早口でまくしたてた。

「何それ…?俺は散々酷いことをされたのに復讐の一つもしちゃいけないって?それに説明した通り俺は何ひとつ強要しちゃいない。あっちが償いをしたいって言うからむしろこっちがしたいようにさせてやってんだよ」
「だが…」
「つまらない説教なんて聞きたくないから」
「龍くん…っ!」

 傷つくのは君の方なんだぞ、と遠くで城崎が言っているのが聞こえたが、無視して飛び出すように店を出た。

 らしくない。
 普段ならどんなに理不尽なことを言われてもスルーするスキルを持ち合わせているし、割と自分は冷静な方だと自負している。
 しかも城崎が言っていたことは正論だ。

「ガキかよ…」
 大人げない態度をとってしまった自分自身に腹がたつ。

 どうにもムシャクシャがおさまらなくて、その勢いのまま、間宮は城崎とのいざこざの元凶でもある三澄を電話で呼び出した。
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