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第四章
溢れ出した記憶
間宮が選んだのは、先日オープンしたばかりの小さな子どもから大人まで幅広く遊べる総合アミューズメント施設。
広いフロア内にはゲームコーナーやカラオケ、食事が楽しめるエリアの他、映画館も入っている。
「ここ、一度来てみたかったんだよな~」
目がチカチカするほどの強い照明に照らされたフロアを前に間宮は子どものように瞳を輝かせ、はやる気持ちを隠しもせず、期待に胸を膨らませていた。
「……???」
間宮の真意がわからない三澄が困惑した表情を見せる。
自分はいじめの加害者で、そして間宮は紛れもなく被害者で。そして加害者である自分のことを憎んでいたはず…なのに何故こんなところに連れてきたのだろうか…と。
しかし三澄のそんな思考は、間宮によって遮断される。
「ほら、楽しもうぜ」
そう言い、当惑する三澄の手を引いて、間宮が前に歩みを進めた。
「ーーーっ」
繋がれた手が熱い。
そんなこと思ってはいけないのに。
間宮の方に深い意味はないとわかっていても、三澄は間宮の手に触れ、ドキドキする鼓動を抑えられなかった。
「こんだけいっぱいあると迷うよな」
どっから攻める?と真面目な顔で間宮に聞かれ、三澄も真剣に考えることにした。
「じゃ、まずはここから……」
最初は戸惑っていた三澄も、間宮が本気で楽しむつもりなのだとわかると、肩の力を抜いて、ただ楽しむことだけに集中した。
あれから何時間たったろうか。二人で散々遊び倒して、そして遊び疲れた頃、唐突に間宮が言った。
「そういや言い忘れてたけど、俺今日誕生日なんだよね」
「えっ、そうなの!?」
間宮の言葉に、三澄がしまったという顔をする。
「言ってくれれば…」
「なに?プレゼントでも用意したのにって?」
「いやその…うん」
「これでじゅーぶんだよ」
そう言って、間宮は手のひらを三澄に見せて、中にある物をブラブラと左右に揺らした。
間宮の指には、先ほど三澄がクレーンゲームでゲットした、あるアニメキャラクターのキーホルダーがぶら下がっている。
三澄がゲットするやいなや「このキャラクター好きだから俺にくれ」と間宮が勝手にぶんどったのである。
「そんなのでいいの?」
「うん、めっちゃ嬉しい」
へへ、と間宮が笑う。
「ぜってー大事にするわ」と間宮が言った時、その言葉はキーホルダーに向けられたもので他意はないとわかっているのに、三澄は自分の頬が赤くなるのを感じた。
「そうだ、三澄ってもう誕生日来てるのか?酒って呑める?」
「呑めるけど…」
「じゃあ、ちょっと付き合えよ」
間宮は大人向けの食事ができるコーナーに三澄を連れて行き、ビールを二つ注文した。
「ほい、俺様のハタチの誕生日にかんぱーい」
ビールを手渡しながら言うと、三澄が呆気にとられた顔をした。
「それ自分で言っちゃう?」
「いいだろ別に」
珍しい三澄のつっこみに間宮が口を尖らせる。そんな間宮に三澄がクスリと笑いグラスを掲げ、「お誕生日おめでとう、間宮。乾杯」と間宮の生誕を祝った。
グビグビグビ…と勢いよく飲んだところまでは良かったが、
「ゲホッ、ゲホゲホッ!」
初めて呑むビールの苦さに、間宮は眉間にシワを寄せながら咳き込んだ。
「うわまっず、よくみんなこんなの飲めるな」
そんな間宮の姿を見て、三澄がふふっと笑った。
「もー、慣れてないのにいきなりそんなガブ飲みするからだよ」
「ーーーっ」
天使のような笑顔。その瞬間、間宮の記憶の中にかたく閉じ込めていた三澄が一気に溢れ出してきた。
ーーそうだ、俺、この笑顔を見て好きになったんだった。
ずっと忘れていた記憶。
その日は、まだ6月だというのに、うだるような暑さで。
みんながだるそうにしてる中、三澄は涼やかな顔でこう言ったのだ。
『間宮くん、だよね。俺三澄聖貴。まだ教室の配置とか覚えきれてないでしょ?俺が学校案内してあげる』
まだ二人の間に亀裂が入っていなかった頃。転校して来たばかりの間宮に、三澄は優しく声をかけてくれた。
『あ、ありがとう…』
『いーよ、クラスメイトじゃん』
思わぬ申し出に戸惑い吃ってしまった間宮を見て、三澄は今みたいに笑っていた。まるで天使のような笑顔で…
初めての恋だった。
でも、その事実を信じたくなくて。楽しかった思い出ごと、ずっと蓋をしていた。
今日一日三澄と過ごして確信した。あれこそが本来の三澄なんだろうと。
そう、あの時俺は間違いなく、優しくて、天使みたいに可愛かった三澄に恋をしたんだーーー
広いフロア内にはゲームコーナーやカラオケ、食事が楽しめるエリアの他、映画館も入っている。
「ここ、一度来てみたかったんだよな~」
目がチカチカするほどの強い照明に照らされたフロアを前に間宮は子どものように瞳を輝かせ、はやる気持ちを隠しもせず、期待に胸を膨らませていた。
「……???」
間宮の真意がわからない三澄が困惑した表情を見せる。
自分はいじめの加害者で、そして間宮は紛れもなく被害者で。そして加害者である自分のことを憎んでいたはず…なのに何故こんなところに連れてきたのだろうか…と。
しかし三澄のそんな思考は、間宮によって遮断される。
「ほら、楽しもうぜ」
そう言い、当惑する三澄の手を引いて、間宮が前に歩みを進めた。
「ーーーっ」
繋がれた手が熱い。
そんなこと思ってはいけないのに。
間宮の方に深い意味はないとわかっていても、三澄は間宮の手に触れ、ドキドキする鼓動を抑えられなかった。
「こんだけいっぱいあると迷うよな」
どっから攻める?と真面目な顔で間宮に聞かれ、三澄も真剣に考えることにした。
「じゃ、まずはここから……」
最初は戸惑っていた三澄も、間宮が本気で楽しむつもりなのだとわかると、肩の力を抜いて、ただ楽しむことだけに集中した。
あれから何時間たったろうか。二人で散々遊び倒して、そして遊び疲れた頃、唐突に間宮が言った。
「そういや言い忘れてたけど、俺今日誕生日なんだよね」
「えっ、そうなの!?」
間宮の言葉に、三澄がしまったという顔をする。
「言ってくれれば…」
「なに?プレゼントでも用意したのにって?」
「いやその…うん」
「これでじゅーぶんだよ」
そう言って、間宮は手のひらを三澄に見せて、中にある物をブラブラと左右に揺らした。
間宮の指には、先ほど三澄がクレーンゲームでゲットした、あるアニメキャラクターのキーホルダーがぶら下がっている。
三澄がゲットするやいなや「このキャラクター好きだから俺にくれ」と間宮が勝手にぶんどったのである。
「そんなのでいいの?」
「うん、めっちゃ嬉しい」
へへ、と間宮が笑う。
「ぜってー大事にするわ」と間宮が言った時、その言葉はキーホルダーに向けられたもので他意はないとわかっているのに、三澄は自分の頬が赤くなるのを感じた。
「そうだ、三澄ってもう誕生日来てるのか?酒って呑める?」
「呑めるけど…」
「じゃあ、ちょっと付き合えよ」
間宮は大人向けの食事ができるコーナーに三澄を連れて行き、ビールを二つ注文した。
「ほい、俺様のハタチの誕生日にかんぱーい」
ビールを手渡しながら言うと、三澄が呆気にとられた顔をした。
「それ自分で言っちゃう?」
「いいだろ別に」
珍しい三澄のつっこみに間宮が口を尖らせる。そんな間宮に三澄がクスリと笑いグラスを掲げ、「お誕生日おめでとう、間宮。乾杯」と間宮の生誕を祝った。
グビグビグビ…と勢いよく飲んだところまでは良かったが、
「ゲホッ、ゲホゲホッ!」
初めて呑むビールの苦さに、間宮は眉間にシワを寄せながら咳き込んだ。
「うわまっず、よくみんなこんなの飲めるな」
そんな間宮の姿を見て、三澄がふふっと笑った。
「もー、慣れてないのにいきなりそんなガブ飲みするからだよ」
「ーーーっ」
天使のような笑顔。その瞬間、間宮の記憶の中にかたく閉じ込めていた三澄が一気に溢れ出してきた。
ーーそうだ、俺、この笑顔を見て好きになったんだった。
ずっと忘れていた記憶。
その日は、まだ6月だというのに、うだるような暑さで。
みんながだるそうにしてる中、三澄は涼やかな顔でこう言ったのだ。
『間宮くん、だよね。俺三澄聖貴。まだ教室の配置とか覚えきれてないでしょ?俺が学校案内してあげる』
まだ二人の間に亀裂が入っていなかった頃。転校して来たばかりの間宮に、三澄は優しく声をかけてくれた。
『あ、ありがとう…』
『いーよ、クラスメイトじゃん』
思わぬ申し出に戸惑い吃ってしまった間宮を見て、三澄は今みたいに笑っていた。まるで天使のような笑顔で…
初めての恋だった。
でも、その事実を信じたくなくて。楽しかった思い出ごと、ずっと蓋をしていた。
今日一日三澄と過ごして確信した。あれこそが本来の三澄なんだろうと。
そう、あの時俺は間違いなく、優しくて、天使みたいに可愛かった三澄に恋をしたんだーーー
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