【完結】小悪魔にも程がある。

雨樋雫

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あるデートの日〜晴瑠side〜

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「デートっ!?」
 晴瑠が元々大きな瞳を、更に零れ落ちそうなほど大きく見開き、キラキラと輝かせた。

「うん。今は急ぎの仕事もないから、たまには有給でも使って、晴瑠の休みに合わせようかなって」

 シフト制で土日出勤もある晴瑠と、たまにイレギュラーはあるもののだいたいカレンダー通りな職種についている陽一は、休みの日がなかなか合わない。
 同棲している二人は朝と夜は一緒に過ごせるが、デートはここしばらくしていなかった。

「平日だから、ゆっくり過ごせると思うよ」そう言って笑う陽一。人混みが苦手な晴溜のことを考えてくれているのだとわかり、その優しさにじわりと嬉しい気持ちが込み上げる。

「陽ちゃんと久々のデート…楽しみだなあ~」
 晴溜はウキウキしながら当日を迎えた。







 デートプランを特に決めずに街をブラブラと散策しながら目に付くお店に入ったりしていた二人が、そろそろ歩き疲れたから映画でも観ようかなんて、そんな話をしていた時だった。
 突如、陽一のスマホの着信が鳴り響く。

 晴溜に一言断ってから、陽一が電話に出た。仕事関係の人らしい。
 どうやら、陽一がお世話になっている顧客の店で、レジシステムにトラブルが起きたというのだ。

 陽一はすぐさま会社へ連絡を入れたが、その顔はみるみるうちに青ざめていく。

 専門用語なんて晴溜にはさっぱりわからないが、陽一の様子から、なんとなくヤバそうな雰囲気は感じ取れた。

 案の定、電話を切った陽一が「会社の方もトラブルがあって人を割けないらしい」と言ってきた。

 青い顔をしたままの陽一に、晴溜が目を瞬かせながら疑問に思ったことをそのまま口にする。
「そのシステムって、陽ちゃんなら解決できることなの?」
「とりあえず実際に行って見てみないとわからないけど、多分直せると思う」

 (システムとか、俺にはよくわからないけど…そういうの直せちゃうのカッコイイなあ)


 しかし、今日は二人にとって待ちに待ったデートだ。晴溜の気持ちを汲んでデートを優先させてくれようとする陽一に、晴溜は迷いなく「行ってきていいよ」と背中を押した。

 陽一は戸惑っていたが、気の優しい陽一のことだ。このままデートを続けたって、きっと心から楽しめないだろうと晴溜は見抜いていた。
 晴溜はむしろそんな陽一を誇らしい気持ちで、笑顔で送り出す。
 その代わり、「帰ったら…いっぱい可愛がってね?」と甘えるのも忘れずに。










「会社からも、お客様からも、すごく感謝されたよ。有給だったのに申し訳なかったとも言われた」
 帰宅した陽一は、晴れやかな顔をしていた。トラブルは無事、解決できたらしい。

「困ってる人のピンチを助けることができて良かったね」と晴溜が言えば、陽一が「晴瑠のお陰だよ、ありがとう」と返す。

 晴溜にとって、ひたすら人に対して優しくて誠実な陽一は、みんなに愛されるヒーローのような存在だ。
「陽ちゃんが凄いからだよ。やっぱり陽ちゃんはかっこいい」
 晴溜が笑顔で褒めると、陽一は照れくさそうに顔を赤く染めながら、手に持っていた白い箱を晴溜に手渡した。

「わあ、ロールケーキ!」
 晴溜の目がキラキラと輝く。
「晴溜、ここのケーキ好きだったろ。帰り道だったから買ってきたんだ。一緒に食べよう」
「うん!」
 陽一の気持ちが嬉しくて、晴溜は満面の笑みで陽一に抱きついた。
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