【完結】小悪魔にも程がある。

雨樋雫

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あるデートの日〜陽一side〜

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 着信を知らせる音が、ポケットに入れておいたスマホから鳴り響いた。

「はい。田中です」

 この日陽一は有給を取り、晴瑠と久しぶりのデートを楽しんでいるところだった。
 晴瑠に断りを入れてから、陽一が電話に出る。

「えっ、そうだったんですね。申し訳ありません、わたくし本日有給を頂いておりまして…はい、ええ…折り返しお電話させていただきますね」

 通話を切った陽一に、晴瑠が尋ねる。

「仕事の電話?」
「ああ、うん。俺が入社した頃からずっとお世話になってるお客さんなんだけど、レジのシステムがおかしくなっちゃったらしくてすごく困ってて…とりあえず上司に連絡入れてみる」

 再び晴瑠に断りを入れてから、陽一は職場に連絡を入れた。

「えっ!?」

 しばらくしてから、陽一が驚愕の声を発する。
 晴瑠は隣で静かに待っていたが、陽一の顔がどんどん青ざめていくのに気付いた。


「駄目だ。今日たまたまそっちでも別件のトラブルが起きたらしくて、人員割けないって」

 上司との通話を切り、どう対処しようか頭を抱えている陽一に、晴瑠が尋ねる。

「そのシステムって、陽ちゃんなら解決できることなの?」
「とりあえず実際に行って見てみないとわからないけど、多分直せると思う」

 そうは言っても、有給は社員の権利だ。
 顧客の方には待っていただくしかない。

 しかし、晴瑠がサラッと「陽ちゃん、行ってきていいよ」と背中を押した。

「ええっ、でも晴瑠、ずっと今日のお出かけ楽しみにしてただろ」
「お出かけなんてまた行けるもん。だって、昔からお世話になった人なんでしょ」
「そりゃそうだけど…」
「それにさ、このままデートしてても陽ちゃん気になっちゃって楽しめないでしょ」
「う…」

 晴瑠の鋭い指摘を受け口ごもってしまった陽一に、晴瑠は「そこが陽ちゃんの良いところなんだよ」と笑った。

「困ってる人を見過ごせない陽ちゃんだから好きになったんだもん。俺は適当にその辺ブラブラして帰るからさ」

 自分のことは気にせず助けてあげて、と言う晴瑠に、陽一は申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめん、晴瑠。ありがと」
「その代わり……」
「?」

 晴瑠が陽一の袖をきゅ、と掴みながら、自分よりも背の高い陽一を見上げながら言った。

「帰ったら…いっぱい可愛がってね?」


 その瞬間、陽一の心臓が激しく跳ねた。

 (可愛すぎる…!!)

 桃色に染まる頬と潤んだ瞳が愛らしい目の前の恋人のため、陽一は仕事をとっとと終わらせて帰ったら絶対に晴溜をたっぷり可愛がろうと心に決めたのだった。
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