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6章 広がる世界と新たな疑問1 蜜月の日々
386 憤慨 (改)
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多くの人を不幸に陥れていた人頭税の使い道が着服だとか、冗談もいい加減にして欲しい。使い込んだ本人たちは全く罪の意識を持ってないしさぁ。
そりゃ日本でも横領が無くならないわけだ。目の前にお金があったら使うよねってか? 死ねよ。
苛々が治まらない俺に、ロイ殿下がいぶかしむように聞いてくる。
「俺とラズが転職条件を満たしているって、何で分かるんだい?」
「ノーコメントで」
好色家を得ているということは、相手に抱いている愛情は本物だってことだよな?
それなのに人頭税で奴隷に落とされる国民の気持ちは分からないのか?
王族として生まれてからずっと支配階級で生きてきたこの男には、奪われる人間の気持ちは想像できないんだろうか。
「私の相手も好色家を得ているのか確かめる方法はありませんか? もし得ていなければ新たに好色家を得る方法はあるのでしょうか?」
「勝手に頑張れ」
ラズ殿下からも切実な想いが伝わってはくる。
想い人と長く深く強く愛し合うために、なんとしてでも好色家の情報を得ようとしているのは分かるんだけど……。
お前らの幸せの裏でどれ程の人間が絶望に落とされたのかと思うと、どうしても好きになれないんだよ。
「う~ん。取り付く島も無いね……。弱ったねぇこれは」
「好色家のことは教えたんだからもう充分だろ。いい加減にしてくれ」
お前らと話してると宇宙人と話してる気分になるんだよ。
根っこの部分の常識や通念の噛み合わない相手と会話したって不毛だし、疲れるだけだ。
それでもやはり俺を引き止めてくるロイ殿下。
「……例えばの話だけど。俺が国王になってダンさんの指示に従うよって言ったら嬉しいかい?」
「アホくさ。興味無いよそんなもの」
権力になんて興味無いし、そもそも今の俺に権力が必要かと言われると微妙だ。
国の宰相であるゴブトゴさんとも友好な関係を築けている自信もある。
王国に対してなにかお願いがあったら、普通に言えば済む話だ。
「それでは、私の体をダンさんの好きに弄んで良いというのはどうでしょう?」
「……次それ言ったら問答無用で殺してやるから」
「えっ……」
俺の返答が意外だったのか、ショックを受けた様な表情になるラズ殿下。
恐らくは色狂いの自分が提供できる最も価値のあるものという意味での発言だとは思うけど、この流れでよくもそんな提案が出来るもんだ。
ロイ殿下もラズ殿下も頭は悪くないのかもしれないけれど、やはりどこか王族めいた考え方を持っているように感じられるな。
自分が否定されるはずがないと、何の根拠も無く確信しているというか。
「……もう良いでしょうお2人共。お2人ではダン殿と親交を深めるのは無理というもの。これ以上は時間の無駄でしょう」
ため息混じりに、ゴブトゴさんが両殿下に釘を刺した。
ゴブトゴさんのこの発言が完全に予想外だったのか、両殿下とも驚いた様子でゴブトゴさんを睨みつけている。
そんな2人の視線を真っ向から受け止めながらも、ゴブトゴさんの言葉は止まらない。
「まったく……。スペルディア家の愚か者どもには本当に辟易させられる……。ようやくシモンが死んでくれたというのに、残された殿下たちも漏れなくスペルディアの血を色濃く継いだクズばかりだ……」
吐き捨てるようにスペルディア家への恨み言を語るゴブトゴさん。
その言葉には長年の苦労が滲んでいるように思えた。
「ゴ、ゴブトゴ……? 自分がいったいなにを口にしているのか分かって……」
「それは私のセリフですよバルバロイ殿下。貴方は先ほどシャーロット殿下と共に何を語ったのか、本当に理解されておりますか?」
戸惑うロイ殿下の問いかけを遮って、鋭い視線でロイ殿下を射抜くゴブトゴさん。
その瞳には殺意と言ってもいいほどの怒りが宿っているように見えた。
「税金を着服していたが国政に問題の無い範囲だから大丈夫? レガリアと繋がりを持っていた? ……馬鹿も休み休みに言わんかっ、この愚か者どもがぁっ!!」
「「えっ、えぇ……?」」
会議室に響き渡るゴブトゴさんの怒声。
その声を正面から受けた両殿下は、ゴブトゴさんのあまりに強い怒りに戸惑ってるのが分かる。
この2人からすれば、飼い犬に噛まれたような気分なのかもしれない。
「先日のシモンの魔物化で、12名もの王国騎士が命を落としているのだぞっ!? 貴様らのお遊びで、この国を本気で守ろうとした12名もの尊い命が失われたのだっ!」
12名……。結構な数の犠牲者だ。
王国騎士というくらいだから戦闘技術も磨いているだろうし、始まりの黒で職業浸透を進めていたのかもしれないけれど。
恐らく魔法士系の浸透も進んでいなければ、範囲型のウェポンスキルも所持していなかったはずだ。
範囲攻撃無しで無限に湧き出る魔物を相手取るのは……。文字通り、自殺行為に等しい……。
「何が悪印象を持たれたくないだっ! 私自らくびり殺してやりたいくらいだ、このスペルディア家のクズどもがっ!! スペルディア家にはいい加減ウンザリさせられるっ!!」
ゴブトゴさんが止まらない。
ちょっとしか交流してない俺ですらウンザリさせられてるからなぁ。
長年仕えていたっぽい? ゴブトゴさんには、積もりに積もったモノがあるんだろうねぇ……。
「暗愚なシモンを始め、権力にしか興味の無いハーロイル殿下、物欲に塗れたトミック殿下、他者の足を引っ張ることしか興味の無いコッコマ殿下、何も考えずに人の意見を否定することしか出来ないクミン殿下、自己愛の塊のマーガレット殿下、色に溺れた貴様ら……。誰か1人くらいまともな奴はおらんのかっ、スペルディア家の人間にはっ!?」
おお? ゴブトゴさん評価だとマーガレット殿下も脱落か。
マーガレット殿下の評価は自己愛の塊ねぇ。特別な自分に酔っているって感じなのかあの人。
周囲に賞賛して欲しくて、積極的に魔物狩り活動をしてるってことなのかな?
やらない善よりやる偽善なんて言う通り、たとえ自分の欲求の為でも人々の為に動ける分マーガレット殿下はマシだとは思うんだけど……。
献身じゃなくて自己愛によって動いている人だって考えたら、自分の家臣でもないペネトレイターを勝手に戦力に組み込もうとしたり、エルフェリアが滅亡するかもしれない瀬戸際の状況を無視して俺を襲ってきたのにも納得してしまうなぁ。
「飾りの王家なら飾りらしく、頂点でふんぞり返ってじっとしておらんかっ! いつもいつもいつも他人の足を引っ張ることばかりしおって……! 貴様らスペルディア家の人間は、誰かの足を引っ張らないと死ぬ呪いにでもかかっておるのかっ!?」
宰相という立場的に、王家の無能っぷりのしわ寄せが全部ゴブトゴさんに降りかかっていたのかもしれない。
長年溜め込んでいたモノが決壊してしまった以上、もう誰にも止められないな。止める気も無いけど?
しかしゴブトゴさんの怒りを受ける両殿下は、どこまでも当惑し続けているようだ。
ゴブトゴさんの怒りを本気で理解できないのだろう。
国庫に影響が出ない範囲で着服していたのに何で怒られるんだろう? とか、下々の兵が何人死のうがそれがどうかした? みたいに思ってそう。
この2人にはどこまで本気でぶつかっても、本質的に届かないのだ。
「おーいゴブトゴさん、落ち着いて落ち着いて。ゴブトゴさんがどれだけ怒りをぶつけても、この2人にはその怒りが理解できないんだ。相手するだけ損だよ?」
「分かっているっ! そんなことは分かっているのだっ……!」
ギリリと歯軋りしながら、両拳を震えるほどに握り締めるゴブトゴさん。
「だがそれでも……、それでも言わずにはいられなんだ……! 12名の王国騎士が命を捨ててでも守った王族こそがあの騒動を招いた者たちと通じていたなど……。そんなもの、許せるはずがなかろうがぁっ!!」
ゴブトゴさん、兵隊さんたちと仲良さそうだもんなぁ。
無能な上司に振り回される同志として連帯感みたいなものがあったのかもね。
正直な話、シモンがマジックアイテムを持って魔物化した事実を考慮してしまうと、両殿下どころかシモン本人もレガリアと通じていた可能性が高いと思うけどね。
というか、あの無能さを買われて王位に据えられたんじゃないのかな、国王シモンは。
俺が両殿下をはぐらかしてしまったことで、ゴブトゴさんが今まで抑えつけてきた感情を爆発させてしまったのかもしれない。
少しだけ申し訳ない気分だ。
「ごめんゴブトゴさん。ダラダラとこんな奴らを相手しちゃってせいでイライラさせちゃったね。申し訳なかった」
謝罪の言葉と共にゴブトゴさんに頭を下げる。
それを当然否定しようとするゴブトゴさんを手の平で制止して、未だ戸惑った様子の両殿下に告げる。
「好色家の転職条件は、心から愛し合う異性と3人以上で肌を重ねること、だと思うよ。多分ね」
「「え? な、なんで……?」」
俺の言葉に更に困惑する両殿下。この流れで俺が情報を開示した理由が分からないんだろう。
ただ付き合い切れないだけなんだけどな。
「さぁロイ殿下、ラズ殿下。さっさと寝室に篭って、そして2度と出てくるな。色狂いのお2人はお望み通り生涯寝室で過ごされれば良いよ。金は自分で稼いでもらうけどな」
そっちが望む情報を提供してやったんだ。あとはもう2度と表に出てくるなよ?
言いたいことは言い終えたので、ヴァルゴとリーチェの手を握って席を立つ。
好色家の転職条件まで開示した今、もうこの場に引き止められることもないだろう。
……いや、コイツらは俺とどうしても敵対したくないんだったっけ。なら言っておくか。
「お前らが自分で金を稼いで、誰にも迷惑をかけず、相手の意志を尊重した上で愛し合うのなら、お前らが誰とどれだけ肌を重ねようと気にしない。健全に淫欲に塗れた毎日を過ごしてくれればそれでいい。それなら俺は悪感情を持たないし、お前らと敵対する事はないから」
俺の言葉に神妙な面持ちで、でもコクコクと何度も頷く両殿下。
でもこの表情は俺と敵対したくないからって意味しか持ち合わせていなくて、今までの自分たちの行動に反省したり、そのために失われた命や未来に思い至っているわけではないんだよなぁ。
今後も心労が絶えなさそうなゴブトゴさんにバイタルポーションを数本プレゼントして、会議室を後にした。
もう2度とこの城には来たくないところだよ、まったく。
「ごめん2人とも……。今はとても2人を可愛がれるような気分じゃないんだ」
マグエルに帰還しても、色狂いの両殿下に辟易させられた為か、俺もリーチェもヴァルゴもなんとなく肌を重ねる気になれなかった。
そりゃあ男女の営みが綺麗なものばかりじゃないってのは分かってるけど……。
あの2人の性行為への意識は、綺麗とか汚いとかじゃなく、どこか異質で気持ちが悪かった。
「うん。分かってるから謝らないで。ぼくもダンと同じ気持ちのつもりだよ……」
「少々疲れてしまいましたしね。このまま少し休みましょう……」
暫く3人寄り添って、互いの温もりを感じて昂った気持ちを整理した。
そうして気付くと結構な時間が経っていたので、3人で夕食を用意しながら今日の話を振り返る。
「両殿下と話してさ。なんか愛する人と肌を重ねるってことが、嫌悪感を覚えそうになっちゃうほどに醜悪な行為に思えちゃったんだ……」
俺だって、やっている事は両殿下と変わらないはずなんだけどね。
あれほど身勝手に振舞いながらも好色家を得るほどに誰かを愛せている事実が、なんだか薄気味悪かった。
「みんなのおかげで、愛し合う事が素晴らしいことだって心から思えるんだ。だから俺は凄く幸せ者だって思ったね。リーチェとヴァルゴと愛し合う事が出来て、俺は本当に幸せ者だよ……」
「ふふ。ぼく達こそ幸せ者だと思うけどね。でもダンが幸せだと感じてくれるならそれでいいよ。君が幸せでいてくれるのがなによりも嬉しいんだっ」
「旦那様も暴君なんて言われるほど身勝手なはずなんですけどね。身勝手に我が侭に、自分を省みずに誰も彼も幸せにしてしまうのですから困ったものですよ。私達がこのままずっと幸せでいるために、旦那様もちゃんと幸せでいてくださいね?」
話をしていて段々と2人が愛おしくなってしまい、料理の途中だっていうのに2人を力いっぱい抱きしめた。
大丈夫だよ2人とも。2人がこうやって俺の腕の中にいてくれるだけで、俺はこの世界の誰よりも幸せな男なんだからね。
ロイ殿下とラズ殿下のせいで沈んでいた気分も、2人を抱きしめているだけでどんどん上向いてくる。
その勢いに乗ってリーチェに口付けしようとした時に、フラッタが元気な声で帰宅を知らせてくれた。
その声に少し笑い合ってから、リーチェとヴァルゴの2人と軽く唇を合わせ、愛する家族の為に3人で夕食作りを再開するのだった。
そりゃ日本でも横領が無くならないわけだ。目の前にお金があったら使うよねってか? 死ねよ。
苛々が治まらない俺に、ロイ殿下がいぶかしむように聞いてくる。
「俺とラズが転職条件を満たしているって、何で分かるんだい?」
「ノーコメントで」
好色家を得ているということは、相手に抱いている愛情は本物だってことだよな?
それなのに人頭税で奴隷に落とされる国民の気持ちは分からないのか?
王族として生まれてからずっと支配階級で生きてきたこの男には、奪われる人間の気持ちは想像できないんだろうか。
「私の相手も好色家を得ているのか確かめる方法はありませんか? もし得ていなければ新たに好色家を得る方法はあるのでしょうか?」
「勝手に頑張れ」
ラズ殿下からも切実な想いが伝わってはくる。
想い人と長く深く強く愛し合うために、なんとしてでも好色家の情報を得ようとしているのは分かるんだけど……。
お前らの幸せの裏でどれ程の人間が絶望に落とされたのかと思うと、どうしても好きになれないんだよ。
「う~ん。取り付く島も無いね……。弱ったねぇこれは」
「好色家のことは教えたんだからもう充分だろ。いい加減にしてくれ」
お前らと話してると宇宙人と話してる気分になるんだよ。
根っこの部分の常識や通念の噛み合わない相手と会話したって不毛だし、疲れるだけだ。
それでもやはり俺を引き止めてくるロイ殿下。
「……例えばの話だけど。俺が国王になってダンさんの指示に従うよって言ったら嬉しいかい?」
「アホくさ。興味無いよそんなもの」
権力になんて興味無いし、そもそも今の俺に権力が必要かと言われると微妙だ。
国の宰相であるゴブトゴさんとも友好な関係を築けている自信もある。
王国に対してなにかお願いがあったら、普通に言えば済む話だ。
「それでは、私の体をダンさんの好きに弄んで良いというのはどうでしょう?」
「……次それ言ったら問答無用で殺してやるから」
「えっ……」
俺の返答が意外だったのか、ショックを受けた様な表情になるラズ殿下。
恐らくは色狂いの自分が提供できる最も価値のあるものという意味での発言だとは思うけど、この流れでよくもそんな提案が出来るもんだ。
ロイ殿下もラズ殿下も頭は悪くないのかもしれないけれど、やはりどこか王族めいた考え方を持っているように感じられるな。
自分が否定されるはずがないと、何の根拠も無く確信しているというか。
「……もう良いでしょうお2人共。お2人ではダン殿と親交を深めるのは無理というもの。これ以上は時間の無駄でしょう」
ため息混じりに、ゴブトゴさんが両殿下に釘を刺した。
ゴブトゴさんのこの発言が完全に予想外だったのか、両殿下とも驚いた様子でゴブトゴさんを睨みつけている。
そんな2人の視線を真っ向から受け止めながらも、ゴブトゴさんの言葉は止まらない。
「まったく……。スペルディア家の愚か者どもには本当に辟易させられる……。ようやくシモンが死んでくれたというのに、残された殿下たちも漏れなくスペルディアの血を色濃く継いだクズばかりだ……」
吐き捨てるようにスペルディア家への恨み言を語るゴブトゴさん。
その言葉には長年の苦労が滲んでいるように思えた。
「ゴ、ゴブトゴ……? 自分がいったいなにを口にしているのか分かって……」
「それは私のセリフですよバルバロイ殿下。貴方は先ほどシャーロット殿下と共に何を語ったのか、本当に理解されておりますか?」
戸惑うロイ殿下の問いかけを遮って、鋭い視線でロイ殿下を射抜くゴブトゴさん。
その瞳には殺意と言ってもいいほどの怒りが宿っているように見えた。
「税金を着服していたが国政に問題の無い範囲だから大丈夫? レガリアと繋がりを持っていた? ……馬鹿も休み休みに言わんかっ、この愚か者どもがぁっ!!」
「「えっ、えぇ……?」」
会議室に響き渡るゴブトゴさんの怒声。
その声を正面から受けた両殿下は、ゴブトゴさんのあまりに強い怒りに戸惑ってるのが分かる。
この2人からすれば、飼い犬に噛まれたような気分なのかもしれない。
「先日のシモンの魔物化で、12名もの王国騎士が命を落としているのだぞっ!? 貴様らのお遊びで、この国を本気で守ろうとした12名もの尊い命が失われたのだっ!」
12名……。結構な数の犠牲者だ。
王国騎士というくらいだから戦闘技術も磨いているだろうし、始まりの黒で職業浸透を進めていたのかもしれないけれど。
恐らく魔法士系の浸透も進んでいなければ、範囲型のウェポンスキルも所持していなかったはずだ。
範囲攻撃無しで無限に湧き出る魔物を相手取るのは……。文字通り、自殺行為に等しい……。
「何が悪印象を持たれたくないだっ! 私自らくびり殺してやりたいくらいだ、このスペルディア家のクズどもがっ!! スペルディア家にはいい加減ウンザリさせられるっ!!」
ゴブトゴさんが止まらない。
ちょっとしか交流してない俺ですらウンザリさせられてるからなぁ。
長年仕えていたっぽい? ゴブトゴさんには、積もりに積もったモノがあるんだろうねぇ……。
「暗愚なシモンを始め、権力にしか興味の無いハーロイル殿下、物欲に塗れたトミック殿下、他者の足を引っ張ることしか興味の無いコッコマ殿下、何も考えずに人の意見を否定することしか出来ないクミン殿下、自己愛の塊のマーガレット殿下、色に溺れた貴様ら……。誰か1人くらいまともな奴はおらんのかっ、スペルディア家の人間にはっ!?」
おお? ゴブトゴさん評価だとマーガレット殿下も脱落か。
マーガレット殿下の評価は自己愛の塊ねぇ。特別な自分に酔っているって感じなのかあの人。
周囲に賞賛して欲しくて、積極的に魔物狩り活動をしてるってことなのかな?
やらない善よりやる偽善なんて言う通り、たとえ自分の欲求の為でも人々の為に動ける分マーガレット殿下はマシだとは思うんだけど……。
献身じゃなくて自己愛によって動いている人だって考えたら、自分の家臣でもないペネトレイターを勝手に戦力に組み込もうとしたり、エルフェリアが滅亡するかもしれない瀬戸際の状況を無視して俺を襲ってきたのにも納得してしまうなぁ。
「飾りの王家なら飾りらしく、頂点でふんぞり返ってじっとしておらんかっ! いつもいつもいつも他人の足を引っ張ることばかりしおって……! 貴様らスペルディア家の人間は、誰かの足を引っ張らないと死ぬ呪いにでもかかっておるのかっ!?」
宰相という立場的に、王家の無能っぷりのしわ寄せが全部ゴブトゴさんに降りかかっていたのかもしれない。
長年溜め込んでいたモノが決壊してしまった以上、もう誰にも止められないな。止める気も無いけど?
しかしゴブトゴさんの怒りを受ける両殿下は、どこまでも当惑し続けているようだ。
ゴブトゴさんの怒りを本気で理解できないのだろう。
国庫に影響が出ない範囲で着服していたのに何で怒られるんだろう? とか、下々の兵が何人死のうがそれがどうかした? みたいに思ってそう。
この2人にはどこまで本気でぶつかっても、本質的に届かないのだ。
「おーいゴブトゴさん、落ち着いて落ち着いて。ゴブトゴさんがどれだけ怒りをぶつけても、この2人にはその怒りが理解できないんだ。相手するだけ損だよ?」
「分かっているっ! そんなことは分かっているのだっ……!」
ギリリと歯軋りしながら、両拳を震えるほどに握り締めるゴブトゴさん。
「だがそれでも……、それでも言わずにはいられなんだ……! 12名の王国騎士が命を捨ててでも守った王族こそがあの騒動を招いた者たちと通じていたなど……。そんなもの、許せるはずがなかろうがぁっ!!」
ゴブトゴさん、兵隊さんたちと仲良さそうだもんなぁ。
無能な上司に振り回される同志として連帯感みたいなものがあったのかもね。
正直な話、シモンがマジックアイテムを持って魔物化した事実を考慮してしまうと、両殿下どころかシモン本人もレガリアと通じていた可能性が高いと思うけどね。
というか、あの無能さを買われて王位に据えられたんじゃないのかな、国王シモンは。
俺が両殿下をはぐらかしてしまったことで、ゴブトゴさんが今まで抑えつけてきた感情を爆発させてしまったのかもしれない。
少しだけ申し訳ない気分だ。
「ごめんゴブトゴさん。ダラダラとこんな奴らを相手しちゃってせいでイライラさせちゃったね。申し訳なかった」
謝罪の言葉と共にゴブトゴさんに頭を下げる。
それを当然否定しようとするゴブトゴさんを手の平で制止して、未だ戸惑った様子の両殿下に告げる。
「好色家の転職条件は、心から愛し合う異性と3人以上で肌を重ねること、だと思うよ。多分ね」
「「え? な、なんで……?」」
俺の言葉に更に困惑する両殿下。この流れで俺が情報を開示した理由が分からないんだろう。
ただ付き合い切れないだけなんだけどな。
「さぁロイ殿下、ラズ殿下。さっさと寝室に篭って、そして2度と出てくるな。色狂いのお2人はお望み通り生涯寝室で過ごされれば良いよ。金は自分で稼いでもらうけどな」
そっちが望む情報を提供してやったんだ。あとはもう2度と表に出てくるなよ?
言いたいことは言い終えたので、ヴァルゴとリーチェの手を握って席を立つ。
好色家の転職条件まで開示した今、もうこの場に引き止められることもないだろう。
……いや、コイツらは俺とどうしても敵対したくないんだったっけ。なら言っておくか。
「お前らが自分で金を稼いで、誰にも迷惑をかけず、相手の意志を尊重した上で愛し合うのなら、お前らが誰とどれだけ肌を重ねようと気にしない。健全に淫欲に塗れた毎日を過ごしてくれればそれでいい。それなら俺は悪感情を持たないし、お前らと敵対する事はないから」
俺の言葉に神妙な面持ちで、でもコクコクと何度も頷く両殿下。
でもこの表情は俺と敵対したくないからって意味しか持ち合わせていなくて、今までの自分たちの行動に反省したり、そのために失われた命や未来に思い至っているわけではないんだよなぁ。
今後も心労が絶えなさそうなゴブトゴさんにバイタルポーションを数本プレゼントして、会議室を後にした。
もう2度とこの城には来たくないところだよ、まったく。
「ごめん2人とも……。今はとても2人を可愛がれるような気分じゃないんだ」
マグエルに帰還しても、色狂いの両殿下に辟易させられた為か、俺もリーチェもヴァルゴもなんとなく肌を重ねる気になれなかった。
そりゃあ男女の営みが綺麗なものばかりじゃないってのは分かってるけど……。
あの2人の性行為への意識は、綺麗とか汚いとかじゃなく、どこか異質で気持ちが悪かった。
「うん。分かってるから謝らないで。ぼくもダンと同じ気持ちのつもりだよ……」
「少々疲れてしまいましたしね。このまま少し休みましょう……」
暫く3人寄り添って、互いの温もりを感じて昂った気持ちを整理した。
そうして気付くと結構な時間が経っていたので、3人で夕食を用意しながら今日の話を振り返る。
「両殿下と話してさ。なんか愛する人と肌を重ねるってことが、嫌悪感を覚えそうになっちゃうほどに醜悪な行為に思えちゃったんだ……」
俺だって、やっている事は両殿下と変わらないはずなんだけどね。
あれほど身勝手に振舞いながらも好色家を得るほどに誰かを愛せている事実が、なんだか薄気味悪かった。
「みんなのおかげで、愛し合う事が素晴らしいことだって心から思えるんだ。だから俺は凄く幸せ者だって思ったね。リーチェとヴァルゴと愛し合う事が出来て、俺は本当に幸せ者だよ……」
「ふふ。ぼく達こそ幸せ者だと思うけどね。でもダンが幸せだと感じてくれるならそれでいいよ。君が幸せでいてくれるのがなによりも嬉しいんだっ」
「旦那様も暴君なんて言われるほど身勝手なはずなんですけどね。身勝手に我が侭に、自分を省みずに誰も彼も幸せにしてしまうのですから困ったものですよ。私達がこのままずっと幸せでいるために、旦那様もちゃんと幸せでいてくださいね?」
話をしていて段々と2人が愛おしくなってしまい、料理の途中だっていうのに2人を力いっぱい抱きしめた。
大丈夫だよ2人とも。2人がこうやって俺の腕の中にいてくれるだけで、俺はこの世界の誰よりも幸せな男なんだからね。
ロイ殿下とラズ殿下のせいで沈んでいた気分も、2人を抱きしめているだけでどんどん上向いてくる。
その勢いに乗ってリーチェに口付けしようとした時に、フラッタが元気な声で帰宅を知らせてくれた。
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