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668 ファッションショー
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「さぁご主人様っ。今日は目いっぱい楽しんでくださいねっ!」
弾けるような笑顔のシャロに手を引かれて、マグエルに建設した臨時の会場に足を運ぶ。
なんだかんだ言いながら、あっという間に服の発表会の日がやってきたのだ。
「ここで紹介した衣装は、全て全員分のサイズを揃えて持ち帰る事が決まっておりますからっ。ご主人様は発表会を見ながら、本日の予定に胸とコチラを大きく膨らませてくださいねっ」
両手を俺の下着に突っ込み、その細い腕でたっぷりと俺の股間を撫で回しながらキスをねだるシャロ。
これからシャロ主催の大イベントが始まるわけだし、シャロとしても少し緊張しているのかもしれない。
間もなくモデルとしても活躍する予定のシャロの中に思い切り注ぎこみたい衝動に駆られるけれど、俺の子種で膨らんだシャロを観客全てに見せびらかすのは最高に興奮しそうではあるんだけどぉ……!
今回はイベントの成功を優先して、シャロを激励するようによしよしなでなでに留めておいた。
「んもうっ。ご主人様ったら相変わらず真面目なんだからっ。シャロはご主人様の子種でいっぱいになった姿を衆目に晒したかったのにぃ……!」
「まさかのノリノリだった!? でもダーメ。エロいシャロの姿はもう俺以外に見せる気は無いからね。俺の子種で膨らんだお腹を嬉しそうに擦るエロシャロは、もう他の誰にも見せる気は無いよ」
「もーっ、仕方ないですねぇ。なら発表会が終わったあとにひたすら抱いてくださいね? 私はコレが終われば時間が出来ますからぁ……」
会話する為にはキスが出来ないので、もどかしそうに俺の首筋をゆっくり舐め上げてくるシャロ。
って、舐めると同時に首をはむはむと啄ばんでくるから、普通に舐め上げられるよりもめっちゃ気持ちいい……!
「め……滅茶苦茶にしてあげるって約束するから、今は発表会を頑張っておいで。色々な衣装に着飾ったシャロの姿、とっても楽しみにしてるから」
「ふっふーん。私だけじゃなくって、皆さんもすごいですよー? 期待しててくださいねご主人様っ」
最後にちゅーーーっと口付けをして、俺の口の中で縦横無尽に舌を暴れさせてから立ち去っていくシャロを見送る。
普段からエロに積極的なシャロだけど、今日はいつも以上にご機嫌のようだなー。気持ちよすぎてもうちょっとで手だけで出しちゃうところだったもん。
「さて、それじゃシャロに招待されたことだし、そろそろ観客席に移動しようかなー」
そう。観客席です。私はモデルとしては呼ばれておりません。
いやね? モデルとして呼ばれても正直困っちゃうよ? みんなから懇願されても、流石に断っちゃうんじゃないかなーってくらいには困っちゃうよ?
でも、シャロとティムルに普通に言われたんだよねー。俺はモデルには向いてないとっ。
妻の色眼鏡で無理矢理モデルとして選出されても困るんですけどね?
発表会の主催者であるシャロと、行商人として王国中の人間を見てきたティムルに、貴方はモデル映えしないから出なくていいよって言われるの、なかなかに悲しいものがあるんですよねぇ~……。
「皆さん。今日はお集まりいただいて本当にありがとうございますっ!」
「シャーロット様! シャーロット様ー!」
「待ってましたーっ!」
「お待たせ致しましたーっ! それではこれより、第1回マグエルファッションショーを開催いたしまーーすっ」
リーチェの風魔法で拡散されたシャロの声が響き渡る。
華やかな衣装に身を包んだ笑顔のシャロが発表会の開催を宣言し、会場にギュウギュウに詰め掛けた観客達が歓声で応えている。
普段は割とテンション低めなシャロが、楽しげに声を張り上げている姿は微笑ましいものを感じるなぁ。
「それではまずは子供用の衣装からの紹介でーす! コンセプトは動きやすさと丈夫さですねっ」
発表会の先陣を切ってシャロの声に応えて出てきたのは、余所行きって感じのキッチリとした衣装に身を包んだ幸福の先端のメンバー、ドワーフ族のサウザーだった。
サウザーは年少だし、どちらかと言うと体格の良いドワーフ族の中でも小柄な方だからな。子供用衣装のモデルにはピッタリだ。
女の子用の衣装モデルに選ばれたのは勿論、我等が無双将軍グラン・フラッタだ。
ドレス姿が印象的なフラッタだけれど、今回はサウザーのように庶民向けの衣装に身を包んでの登場だ。
水仕事を手伝うことが多い女の子用衣装は半袖にされていて、男の子用衣装に比べて少し明るいカラーの配色だ。
家の手伝いがしやすいようにスカートでは無くパンツスタイルで、そんな衣装に合わせて髪を高い位置で結んだポニーテールにしたフラッタが可愛すぎる。
え、今日発表会に来た男、みんなフラッタにガチ恋しちゃわない? 大丈夫なのこれ?
「続いては、壮年の皆様向けの衣装となりまーす! 落ち着きある配色と、負担の感じない滑らかな肌触りが特徴ですねーっ」
「うお……? ここでまさかのレオデックさんとキャリアさんのコンビかぁ……!」
壮年向けの衣装は少しゆったりとしたサイズ感のある服で、子供向けの衣装と比べると多少動き辛いデザインをしているかもしれない。
けれどその分防寒性や通気性、撥水性や肌触りなどを優先した実用的なデザインになっている。
こんな調子で、様々な衣装を身に纏った俺の知人が沢山登場する。
フロイさんやシルヴァ、カランさんからシャロの元愛妾たちと、俺って意外と男の知り合いも多いんだなぁと改めて実感する。
殆ど俺の家族で構成された女性モデルは本当に華やかで、ボーイッシュなシャツと短パンのニーナとか、男装したティムルとリーチェ、普段殆ど見られないドレス姿のヴァルゴなど、出てくるたびに会場は大盛り上がりだ。
「みんな可愛いな~。こんなに可愛いみんなが俺のお嫁さんだなんて、未だに信じられない気分だよ……」
華やかに壇上の上で輝いているみんなを離れた場所から眺めていると、なんだか不思議な気持ちになってくる。
別に自分を卑下するつもりなんてないけれど、やっぱり俺は余所者で、ここでこうしてみんなを眺めているのが正解のような気がしてしまう。
みんなが屈託無く笑えるようになった時点で俺の役割は終わりで、後はみんなが知らないうちにこの場を立ち去るべきなんじゃないのかと、俺の内側から囁く声が聞こえてくるようだ。
こんな下らない感傷に惑わされてみんなの下を去る気なんて毛頭無いけれど、きっとこの感情は俺がこの世界で生き続ける限り常に付き纏うものだろうなぁ。
「はは。ムーリは普段よりも露出が多い衣装だな? ターニアは歴戦の勇士然とした無骨なスタイルかぁ……」
ノースリーブの上半身に膝丈のスカートのムーリが、笑顔で俺に手を振ってくれる。
力仕事や戦闘がしやすいように、グローブや丈夫そうな半そでシャツのターニアが、俺に笑顔を向けてくれている。
俺はそんな2人に手を振って応えながら、どこか現実感の無さを感じてしまう。
幸せすぎて信じられない? いや、違うなぁ。
みんなが俺なんかを好きでいてくれることが信じられない? コレも違う気がする。
多分俺は、ココで笑っているみんながかつて絶望の底に沈んでいたことが信じられなくって、満面の笑顔を浮かべているみんながかつて不幸に見舞われていたのが嘘のように感じられて、そこに手を差し伸べたはずの俺なんか始めから居なかったんじゃないのか。そんな風に感じている気がする。
「はっ……。俺なんか必要無くみんなが笑えたのなら、それが1番だったんだけどねぇ」
だけどそれは無理だったんだ。
俺達は互いが出会わなければ誰も幸せになることが出来ず、貞操を、将来を、命を奪われることしか出来なかったんだ。
たとえ信じられなかろうが、たとえ現実感が無かろうが、みんなが笑顔であれば他は全部どうでもいい。
……どうでもいい? 俺のこともどうでもいい?
そんな事はない。俺が居なきゃもうみんなだって幸せにはなれない。それはもう疑いようがない。
だけどこうして久しぶりに独りになって、距離を置いてみんなを眺めてしまうと、俺の位置はココなんだとどうしても感じてしまうのだ。
「……馬鹿馬鹿しい。俺の居場所はみんなの居るところだけだ」
本当に馬鹿馬鹿しいなぁ。せっかくみんなが色々な衣装を着てくれているのに、全然頭に入ってこないよ。
普段なら今晩は誰になんの衣装を着せようかなっ? なんてワクワクしているはずなのに、なんだかこのまま消えてしまいそうな不安感に駆られてしまうよ。
……誰も不幸にしたくないからって王国中で祭りを開催してっていうのに、みんなが幸せそうにしている場に自分が居ると不安になるなんて、我ながら面倒臭い男だよ。
「皆さーん! 本日はお集まりいただき、本当にありがとうございましたーっ」
不思議な疎外感に苛まれていると、気付いた時には発表会は終わっていた。
せっかくシャロが頑張って主催してくれたイベントだったっていうのに、その内容を半分も記憶出来ていない。
舞台の上で笑うみんなを楽しむよりも、その笑顔を曇らせない為にこの場に留まる事に必死になりすぎて他のことを気にしている余裕なんて全然無かったのだ。
相変わらず卑屈で、俺は全く成長していないと見るべきか。
……それとも、卑屈な自分から逃げ出さない強さを手に入れられたと胸を張るべきなのか。
人の本質なんて、そうそう変わらないってことなのかねぇ。
「今回紹介させていただいた服は、後日試験的にマグエルで販売させていただきますっ。そこで人気の商品を更に厳選して、王国中に流通させる衣装を決めさせていただきますねっ」
「えぇ~っ!? それじゃ期間限定販売ってこと~っ!?」
「販売期間が限られてるんじゃ、豪商人や貴族が買い占めて終わりだろ。確かに庶民向けの衣装は多かったけど、ここまで盛り上がれば貴族様だって欲しがるだろうからなぁ……」
「将来的には全ての商品を販売させていただく予定ですが、服作りが間に合ってないんですっ。なので人気の衣装を優先して販売させていただく事にしたんですっ」
「えっ……!?」
ボソボソと不平不満を口にし始めたギャラリーに答える様に、服の販売に優先順位をつけた理由を説明するシャロ。
いや、これはリーチェが本当に観客の声を拾ってシャロに届けているのかな?
「皆さんっ! 欲しい服があっても無理してお金を稼がなくて大丈夫ですよーっ。必ず全ての服を充分な量で王国中に流通させてみせますから、ゆっくりお金を貯めて販売に備えてくださいねーっ」
「お、おい……! お金を稼がなくていいなんて、そんなことを言う商売人初めて見たぞっ!?」
「何言ってんだよ! シャーロット様は王女様だぞ!? 商売人のわけねぇだろ!」
「今回の催しを発案され、この発表会も主催されているシャーロット様が言うなら間違いないわよねっ……!?」
「シャーロット様! シャーロット様ーーっ!」
何処までも前向きなシャロの説明に、ギャラリーたちが沸き立っている。
今日紹介された服はモデルが良すぎたのもあるけど、どれも本当に魅力的な服に見えたんだろうなー。
祝賀イベントの各種ボーナスによってお金が出回り始めたし、むしろ販売に時間が掛かることを喜んでいる人も居そうだ。
んー。しかしイベントがコレで終わりなら、俺はこのあとどうすればいいのかなぁ?
発表会が終わったはずなのに家族のみんなは誰も合流して来ないし、このままずーっと観客席でボーっとつっ立ってればいいんだろうか?
「よぉ大将。随分とシケた面してんなぁ?」
「へ? ……って、ティキ?」
考え事をしながら壇上のシャロを眺めていると、そんな俺に声をかけてくる男が居た。
俺に声をかけてくるような男って誰だ? と首を傾げながら声の主を確認すると、そこには反骨の気炎のティキの姿があった。
「あそこで喋ってる王女様もお前さんの嫁なんだろ? 国中が喜んでる今回の催しもお前が主催してるって聞いたぜ? だってのに当のお前がそんなシケた面してる理由が思い当たらねぇんだけど?」
「シケた面? 悪いけど自分の浮かべてる表情なんて分からないよ。どんな顔してんの俺?」
「ん~そうだなぁ。親と逸れて迷子になったガキみてーな面かねぇ?」
「……あ~、なんとなく分かったわ。例え上手いなお前」
ティキの例えに、今の自分の感じている感情がなんとなく理解できた。
俺が感じているのは疎外感とか孤独感とか、そんなかっこいいものじゃなかったらしい。
俺はただ単純に、いつも一緒に居るみんなが傍に居なくて寂しいと思ってるだけかぁ。
「大好きな奥さんが傍に居ないから落ち込んでるんだよ。魅力的過ぎる奥さんを貰うと、こういう悩みが生じたりするんだなぁって自分でもびっくりしてるわ」
「あぁん? ノロケかよ? 傍に居ないって、目の届く範囲にいるし半日くらいしか離れてねぇだろ。何言ってんだお前?」
「あーごめんごめん。独り者のティキには分からないよなぁ。つうかお前、金貨60枚も払ったのにまだ独身なの?」
「なんで俺を独身だって決め付けるんだよ!? 結婚してるかもしれねぇだろぅが!? してねぇけど!」
「ははっ。じゃあ今のはなんの抗議だったんだよっ?」
ティキとの何気ないやり取りが、なんだか無性に笑えてくる。
なんだ俺、家族のみんな以外にも、こうして話しかけてくる相手が居るんじゃないかよ。
疎外感も孤独感も俺が勝手に感じてるだけで、この世界はとっくに俺を受け入れてくれているんじゃないか。
「っていうかさ。服の発表会を野郎1人で見に来るとかありえないからな? 一緒に来ようって誘えるような女性居ないの?」
「パーティメンバーとか別パーティのやつとか、知り合いみんなで来たんだよ! でも人混みが多すぎて逸れちまったんだっての!」
「だははっ! それなんの弁解にもなってないからねっ? やっぱティキってどっか抜けてるよなー」
「あぁん!? シケた面してやがった癖に、人が声かけた途端に元気になりやがって! 声かけるんじゃなかったぜ!」
「まぁまぁ。せっかくだから逸れた者同士仲良くしようぜ? ウチの家族が来たら帰っていいからさ」
「ざっけんな! 完全に暇潰しじゃねーか! っていうかむしろ家族が来たなら紹介しろよ! 王女様に俺を紹介しやがれってんだーっ!」
ティキとの馬鹿話に興じていると、先ほどまでの沈んだ気分が嘘のように解消されている。
結局俺、ただ寂しがり屋のだけなんじゃないのかな?
家族じゃなくてティキに安心感を覚えてしまった自分に、ちょっと引いてしまう。
けれどそんな俺に更なる衝撃が待っているとは、この時にはまだ想像も出来なかったんだ……!
弾けるような笑顔のシャロに手を引かれて、マグエルに建設した臨時の会場に足を運ぶ。
なんだかんだ言いながら、あっという間に服の発表会の日がやってきたのだ。
「ここで紹介した衣装は、全て全員分のサイズを揃えて持ち帰る事が決まっておりますからっ。ご主人様は発表会を見ながら、本日の予定に胸とコチラを大きく膨らませてくださいねっ」
両手を俺の下着に突っ込み、その細い腕でたっぷりと俺の股間を撫で回しながらキスをねだるシャロ。
これからシャロ主催の大イベントが始まるわけだし、シャロとしても少し緊張しているのかもしれない。
間もなくモデルとしても活躍する予定のシャロの中に思い切り注ぎこみたい衝動に駆られるけれど、俺の子種で膨らんだシャロを観客全てに見せびらかすのは最高に興奮しそうではあるんだけどぉ……!
今回はイベントの成功を優先して、シャロを激励するようによしよしなでなでに留めておいた。
「んもうっ。ご主人様ったら相変わらず真面目なんだからっ。シャロはご主人様の子種でいっぱいになった姿を衆目に晒したかったのにぃ……!」
「まさかのノリノリだった!? でもダーメ。エロいシャロの姿はもう俺以外に見せる気は無いからね。俺の子種で膨らんだお腹を嬉しそうに擦るエロシャロは、もう他の誰にも見せる気は無いよ」
「もーっ、仕方ないですねぇ。なら発表会が終わったあとにひたすら抱いてくださいね? 私はコレが終われば時間が出来ますからぁ……」
会話する為にはキスが出来ないので、もどかしそうに俺の首筋をゆっくり舐め上げてくるシャロ。
って、舐めると同時に首をはむはむと啄ばんでくるから、普通に舐め上げられるよりもめっちゃ気持ちいい……!
「め……滅茶苦茶にしてあげるって約束するから、今は発表会を頑張っておいで。色々な衣装に着飾ったシャロの姿、とっても楽しみにしてるから」
「ふっふーん。私だけじゃなくって、皆さんもすごいですよー? 期待しててくださいねご主人様っ」
最後にちゅーーーっと口付けをして、俺の口の中で縦横無尽に舌を暴れさせてから立ち去っていくシャロを見送る。
普段からエロに積極的なシャロだけど、今日はいつも以上にご機嫌のようだなー。気持ちよすぎてもうちょっとで手だけで出しちゃうところだったもん。
「さて、それじゃシャロに招待されたことだし、そろそろ観客席に移動しようかなー」
そう。観客席です。私はモデルとしては呼ばれておりません。
いやね? モデルとして呼ばれても正直困っちゃうよ? みんなから懇願されても、流石に断っちゃうんじゃないかなーってくらいには困っちゃうよ?
でも、シャロとティムルに普通に言われたんだよねー。俺はモデルには向いてないとっ。
妻の色眼鏡で無理矢理モデルとして選出されても困るんですけどね?
発表会の主催者であるシャロと、行商人として王国中の人間を見てきたティムルに、貴方はモデル映えしないから出なくていいよって言われるの、なかなかに悲しいものがあるんですよねぇ~……。
「皆さん。今日はお集まりいただいて本当にありがとうございますっ!」
「シャーロット様! シャーロット様ー!」
「待ってましたーっ!」
「お待たせ致しましたーっ! それではこれより、第1回マグエルファッションショーを開催いたしまーーすっ」
リーチェの風魔法で拡散されたシャロの声が響き渡る。
華やかな衣装に身を包んだ笑顔のシャロが発表会の開催を宣言し、会場にギュウギュウに詰め掛けた観客達が歓声で応えている。
普段は割とテンション低めなシャロが、楽しげに声を張り上げている姿は微笑ましいものを感じるなぁ。
「それではまずは子供用の衣装からの紹介でーす! コンセプトは動きやすさと丈夫さですねっ」
発表会の先陣を切ってシャロの声に応えて出てきたのは、余所行きって感じのキッチリとした衣装に身を包んだ幸福の先端のメンバー、ドワーフ族のサウザーだった。
サウザーは年少だし、どちらかと言うと体格の良いドワーフ族の中でも小柄な方だからな。子供用衣装のモデルにはピッタリだ。
女の子用の衣装モデルに選ばれたのは勿論、我等が無双将軍グラン・フラッタだ。
ドレス姿が印象的なフラッタだけれど、今回はサウザーのように庶民向けの衣装に身を包んでの登場だ。
水仕事を手伝うことが多い女の子用衣装は半袖にされていて、男の子用衣装に比べて少し明るいカラーの配色だ。
家の手伝いがしやすいようにスカートでは無くパンツスタイルで、そんな衣装に合わせて髪を高い位置で結んだポニーテールにしたフラッタが可愛すぎる。
え、今日発表会に来た男、みんなフラッタにガチ恋しちゃわない? 大丈夫なのこれ?
「続いては、壮年の皆様向けの衣装となりまーす! 落ち着きある配色と、負担の感じない滑らかな肌触りが特徴ですねーっ」
「うお……? ここでまさかのレオデックさんとキャリアさんのコンビかぁ……!」
壮年向けの衣装は少しゆったりとしたサイズ感のある服で、子供向けの衣装と比べると多少動き辛いデザインをしているかもしれない。
けれどその分防寒性や通気性、撥水性や肌触りなどを優先した実用的なデザインになっている。
こんな調子で、様々な衣装を身に纏った俺の知人が沢山登場する。
フロイさんやシルヴァ、カランさんからシャロの元愛妾たちと、俺って意外と男の知り合いも多いんだなぁと改めて実感する。
殆ど俺の家族で構成された女性モデルは本当に華やかで、ボーイッシュなシャツと短パンのニーナとか、男装したティムルとリーチェ、普段殆ど見られないドレス姿のヴァルゴなど、出てくるたびに会場は大盛り上がりだ。
「みんな可愛いな~。こんなに可愛いみんなが俺のお嫁さんだなんて、未だに信じられない気分だよ……」
華やかに壇上の上で輝いているみんなを離れた場所から眺めていると、なんだか不思議な気持ちになってくる。
別に自分を卑下するつもりなんてないけれど、やっぱり俺は余所者で、ここでこうしてみんなを眺めているのが正解のような気がしてしまう。
みんなが屈託無く笑えるようになった時点で俺の役割は終わりで、後はみんなが知らないうちにこの場を立ち去るべきなんじゃないのかと、俺の内側から囁く声が聞こえてくるようだ。
こんな下らない感傷に惑わされてみんなの下を去る気なんて毛頭無いけれど、きっとこの感情は俺がこの世界で生き続ける限り常に付き纏うものだろうなぁ。
「はは。ムーリは普段よりも露出が多い衣装だな? ターニアは歴戦の勇士然とした無骨なスタイルかぁ……」
ノースリーブの上半身に膝丈のスカートのムーリが、笑顔で俺に手を振ってくれる。
力仕事や戦闘がしやすいように、グローブや丈夫そうな半そでシャツのターニアが、俺に笑顔を向けてくれている。
俺はそんな2人に手を振って応えながら、どこか現実感の無さを感じてしまう。
幸せすぎて信じられない? いや、違うなぁ。
みんなが俺なんかを好きでいてくれることが信じられない? コレも違う気がする。
多分俺は、ココで笑っているみんながかつて絶望の底に沈んでいたことが信じられなくって、満面の笑顔を浮かべているみんながかつて不幸に見舞われていたのが嘘のように感じられて、そこに手を差し伸べたはずの俺なんか始めから居なかったんじゃないのか。そんな風に感じている気がする。
「はっ……。俺なんか必要無くみんなが笑えたのなら、それが1番だったんだけどねぇ」
だけどそれは無理だったんだ。
俺達は互いが出会わなければ誰も幸せになることが出来ず、貞操を、将来を、命を奪われることしか出来なかったんだ。
たとえ信じられなかろうが、たとえ現実感が無かろうが、みんなが笑顔であれば他は全部どうでもいい。
……どうでもいい? 俺のこともどうでもいい?
そんな事はない。俺が居なきゃもうみんなだって幸せにはなれない。それはもう疑いようがない。
だけどこうして久しぶりに独りになって、距離を置いてみんなを眺めてしまうと、俺の位置はココなんだとどうしても感じてしまうのだ。
「……馬鹿馬鹿しい。俺の居場所はみんなの居るところだけだ」
本当に馬鹿馬鹿しいなぁ。せっかくみんなが色々な衣装を着てくれているのに、全然頭に入ってこないよ。
普段なら今晩は誰になんの衣装を着せようかなっ? なんてワクワクしているはずなのに、なんだかこのまま消えてしまいそうな不安感に駆られてしまうよ。
……誰も不幸にしたくないからって王国中で祭りを開催してっていうのに、みんなが幸せそうにしている場に自分が居ると不安になるなんて、我ながら面倒臭い男だよ。
「皆さーん! 本日はお集まりいただき、本当にありがとうございましたーっ」
不思議な疎外感に苛まれていると、気付いた時には発表会は終わっていた。
せっかくシャロが頑張って主催してくれたイベントだったっていうのに、その内容を半分も記憶出来ていない。
舞台の上で笑うみんなを楽しむよりも、その笑顔を曇らせない為にこの場に留まる事に必死になりすぎて他のことを気にしている余裕なんて全然無かったのだ。
相変わらず卑屈で、俺は全く成長していないと見るべきか。
……それとも、卑屈な自分から逃げ出さない強さを手に入れられたと胸を張るべきなのか。
人の本質なんて、そうそう変わらないってことなのかねぇ。
「今回紹介させていただいた服は、後日試験的にマグエルで販売させていただきますっ。そこで人気の商品を更に厳選して、王国中に流通させる衣装を決めさせていただきますねっ」
「えぇ~っ!? それじゃ期間限定販売ってこと~っ!?」
「販売期間が限られてるんじゃ、豪商人や貴族が買い占めて終わりだろ。確かに庶民向けの衣装は多かったけど、ここまで盛り上がれば貴族様だって欲しがるだろうからなぁ……」
「将来的には全ての商品を販売させていただく予定ですが、服作りが間に合ってないんですっ。なので人気の衣装を優先して販売させていただく事にしたんですっ」
「えっ……!?」
ボソボソと不平不満を口にし始めたギャラリーに答える様に、服の販売に優先順位をつけた理由を説明するシャロ。
いや、これはリーチェが本当に観客の声を拾ってシャロに届けているのかな?
「皆さんっ! 欲しい服があっても無理してお金を稼がなくて大丈夫ですよーっ。必ず全ての服を充分な量で王国中に流通させてみせますから、ゆっくりお金を貯めて販売に備えてくださいねーっ」
「お、おい……! お金を稼がなくていいなんて、そんなことを言う商売人初めて見たぞっ!?」
「何言ってんだよ! シャーロット様は王女様だぞ!? 商売人のわけねぇだろ!」
「今回の催しを発案され、この発表会も主催されているシャーロット様が言うなら間違いないわよねっ……!?」
「シャーロット様! シャーロット様ーーっ!」
何処までも前向きなシャロの説明に、ギャラリーたちが沸き立っている。
今日紹介された服はモデルが良すぎたのもあるけど、どれも本当に魅力的な服に見えたんだろうなー。
祝賀イベントの各種ボーナスによってお金が出回り始めたし、むしろ販売に時間が掛かることを喜んでいる人も居そうだ。
んー。しかしイベントがコレで終わりなら、俺はこのあとどうすればいいのかなぁ?
発表会が終わったはずなのに家族のみんなは誰も合流して来ないし、このままずーっと観客席でボーっとつっ立ってればいいんだろうか?
「よぉ大将。随分とシケた面してんなぁ?」
「へ? ……って、ティキ?」
考え事をしながら壇上のシャロを眺めていると、そんな俺に声をかけてくる男が居た。
俺に声をかけてくるような男って誰だ? と首を傾げながら声の主を確認すると、そこには反骨の気炎のティキの姿があった。
「あそこで喋ってる王女様もお前さんの嫁なんだろ? 国中が喜んでる今回の催しもお前が主催してるって聞いたぜ? だってのに当のお前がそんなシケた面してる理由が思い当たらねぇんだけど?」
「シケた面? 悪いけど自分の浮かべてる表情なんて分からないよ。どんな顔してんの俺?」
「ん~そうだなぁ。親と逸れて迷子になったガキみてーな面かねぇ?」
「……あ~、なんとなく分かったわ。例え上手いなお前」
ティキの例えに、今の自分の感じている感情がなんとなく理解できた。
俺が感じているのは疎外感とか孤独感とか、そんなかっこいいものじゃなかったらしい。
俺はただ単純に、いつも一緒に居るみんなが傍に居なくて寂しいと思ってるだけかぁ。
「大好きな奥さんが傍に居ないから落ち込んでるんだよ。魅力的過ぎる奥さんを貰うと、こういう悩みが生じたりするんだなぁって自分でもびっくりしてるわ」
「あぁん? ノロケかよ? 傍に居ないって、目の届く範囲にいるし半日くらいしか離れてねぇだろ。何言ってんだお前?」
「あーごめんごめん。独り者のティキには分からないよなぁ。つうかお前、金貨60枚も払ったのにまだ独身なの?」
「なんで俺を独身だって決め付けるんだよ!? 結婚してるかもしれねぇだろぅが!? してねぇけど!」
「ははっ。じゃあ今のはなんの抗議だったんだよっ?」
ティキとの何気ないやり取りが、なんだか無性に笑えてくる。
なんだ俺、家族のみんな以外にも、こうして話しかけてくる相手が居るんじゃないかよ。
疎外感も孤独感も俺が勝手に感じてるだけで、この世界はとっくに俺を受け入れてくれているんじゃないか。
「っていうかさ。服の発表会を野郎1人で見に来るとかありえないからな? 一緒に来ようって誘えるような女性居ないの?」
「パーティメンバーとか別パーティのやつとか、知り合いみんなで来たんだよ! でも人混みが多すぎて逸れちまったんだっての!」
「だははっ! それなんの弁解にもなってないからねっ? やっぱティキってどっか抜けてるよなー」
「あぁん!? シケた面してやがった癖に、人が声かけた途端に元気になりやがって! 声かけるんじゃなかったぜ!」
「まぁまぁ。せっかくだから逸れた者同士仲良くしようぜ? ウチの家族が来たら帰っていいからさ」
「ざっけんな! 完全に暇潰しじゃねーか! っていうかむしろ家族が来たなら紹介しろよ! 王女様に俺を紹介しやがれってんだーっ!」
ティキとの馬鹿話に興じていると、先ほどまでの沈んだ気分が嘘のように解消されている。
結局俺、ただ寂しがり屋のだけなんじゃないのかな?
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けれどそんな俺に更なる衝撃が待っているとは、この時にはまだ想像も出来なかったんだ……!
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十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
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