ヒロイン転生~ヒロインなのに聖女にもなれず王子には婚約破棄され、挙句の果てには侯爵家からは追い出される始末~だから私は魔女になって復讐します

manji

文字の大きさ
3 / 12

第3話 嫉妬

しおりを挟む
あれから3週間。
私は何もする気が起きず。
只々神殿の世話になる日々を送っていた。

正直私は最早聖女候補でも何でもない。
ましてや侯爵家からも勘当されてしまった身だ。
こんな生活を続けていたら、いつ神殿から追い出されてもおかしくはない。

「働かなくっちゃ……」

働かざる者食うべからずだ。
生きていくためには働かなければならない。

フラフラと部屋を出ると、司祭様方の話し声が聞こえて来た。
私は咄嗟に身を隠し、思わず聞き耳を立ててしまう。
何故なら、その話はカール王子と聖女となったエリスが明日成婚の儀を上げると言う内容だったからだ。

私はその話を聞き、その場に尻もちをついてしまう。

暫く呆然としていた私だが、徐に立ち上がり神殿を抜けだした。
目指すは成婚の儀が執り行われる大教会の中だ。
見張りが立っていたが、聖女となるべく能力を上げまくった私にとって彼らを出し抜くなど容易い事。
魔法で肉体を透明化し、結界を無力化して中へと侵入する。

そのまま私は朝を待つ。
王子達の結婚を見届け、自らの未練に終止符ピリオドを打つために……

やがて朝がやって来る。
人々が集まり出し、成婚の儀が粛々と執り行われる。
私は涙を押し殺し、その華やかな様子をしっかりと両目に焼き付けた。

エリスと王子の二人は笑顔で口付けを交わした後、教会を出て行った。
他の人達も次々と教会を後にしていく。
誰もいなくなったそこで、私は初めて涙を流し嗚咽を漏らす。

悲しかった。
本当は王子の横には自分がいる筈だったのだ。
だがもう私に居場所はない。

未練を断ち切るどころか、後悔は膨れ上がるばかりだ。

何でこんな事になってしまったのだろうか?
私が主人公なのに。
私は何も失敗などしていないのに。
どうして――

ドウシテアノフタリハアンナニシアワセソウダッタノ?
ワタシハコンナニモクルシンデイルノニ?

「聖乙女伝説はクソゲーだ」

私は呟く。
これはかつての友達の言葉だ。

ライバルもおらず。
いかに主人公ヒロインを育てるか。
それのみに主眼の置かれたゲームはつまらないと言っていた。

私はそんな聖乙女伝説が大好きだったし。
クソゲーだとは思わない。
だけどこの世界は――

「クソゲーだ」

自身を育て上げるだけのゲームで、完全完璧な育成を行ったにも拘らずバッドエンドを迎える。これをクソゲーと言わず何と言おうか?

「バグよ……そうよ……これはきっとバグなんだわ……」

蹲って泣いていた私は起き上がり、ふらつく足取りで教会を後にする。

「バグならリセットしなくっちゃ……」

そう、こんなバグった世界などリセットしてしまえばいい。
そしてやり直すのよ。

「力……」

力が必要だ。
そう、全てを屈服させる力が。

この日、私の頭のネジは弾け飛び。
私は狂う。
嫉妬と言う名の醜い炎にその心を焼き尽くされ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい
恋愛
伯爵令嬢のレナータは、“悪役令嬢”として王都中で噂の的。公爵令嬢であるヒロインをいびり、婚約者である王太子の心を掴めずに振り回し――いつか破滅する運命にある……と言われ続けていた。

『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!

aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。 そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。 それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。 淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。 古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。 知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。 これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

処理中です...