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第5話 準備
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あれから1年。
全てのアーティファクトを集め終えた私は森の中の一軒家で暮らしている。
勿論邪神復活と、同時にその討伐の為の準備は抜かりなく進めていた。
まずは封印の儀の妨害だ。
ゲームの中では、私が聖女になった2年後に封印の儀はとり行なわれている。
聖女は1000年に1度、聖杯によって選出され。
弱った邪神の封印を強化するのがその最大の役目となる。
正に世界を邪悪から守る大役だ。
当然、私はこれを妨害する。
そのためにはまず、聖杯を盗み出さなければならない。
封印の儀に聖杯は必要不可欠だ。
これを奪ってしまえば、完璧な再封印は行えないだろう。
だがそれだけでは駄目だ。
不完全とはいえ、封印の強化は行える。
そうなれば1000年は難しくとも、百年単位で邪神の復活が先延ばしにされてしまうだろう。
数百年後に蘇ったのでは意味がない。
一番手っ取り早いのが、エリスを私の手で亡き者にする事なのだが。
それをすれば直ぐに私がやったとバレてしまう。
何せ、聖女である彼女に恨みを持つ者などこの世界には限られているのだから……
だから彼女には、邪神との戦いで死んでもらわなければならないのだ。
まあ兎に角、今は聖杯を盗む事だけに注力しよう。
私は室内の実験器具を起動させる。
特殊な器具に魔法の力が流れ込み、一本の杖がライトアップされた。
杖は特殊な合金の台座に突き刺さっており。
台座にはチューブが繋がっている。
そのチューブは周りに置いてある7つのカプセルへと延び。
カプセルの中には、液体に浸されたアーティファクトが入っていた。
「まだ時間はかかりそうね」
中央の杖は、私の血肉と特殊な合金を組み合わせて生み出した私の分身とも言える物。
これにアーティファクトの全ての力を取り込ませ、邪神との切り札にする予定だ。
復活させても、倒せませんでしたでは話にならないもの。
「ベルベット様!ただいま戻りました!」
ドタドタと足音が響き、青髪をした少年が研究室へと飛び込んでくる。
その少年は笑顔で籠を私へと突き出す。
その中には、採集してきた薬草や鉱物が入っていた。
「ガード。騒がしいわよ。それと酷く汚れているわ。体を洗ってきなさい」
彼の名はガード。
私が魔法で生み出した使い魔だ。
姿形は人間そのものだが、人では無く、れっきとした合成の生命体である。
人の様な姿をしているのは、街への買い出しなども考えるとその方が都合がいいからだ。
「あ……はい。ごめんなさい。ベルベット様」
ガードは明かに落ち込んだ表情で、荷物を置いてシャワールームへと向かう。
その姿を見て、少し厳しすぎたかなと反省する。
綺麗になって戻ってきたら、ちゃんと褒めてあげよう。
今の私にとって、家族は彼一人だけなのだから。
籠の中を確認する。
薬草や鉱物類は全てこの森の中で取れるものだ。
私はこれを錬成して薬品や特殊な合金を生み出し、それを高値で販売してお金を稼いでいる。
色々と目的の為に用意するには、何かとお金が必要なのだ。
「そろそろ、聖杯のレプリカを作る準備をしなくっちゃね」
単に妨害するだけなら盗むだけでいいが、それだと私が容疑者になるのは目に見えている。
だからそうならない様に偽物を用意して、聖女が失敗したと思わせる必要があった。
「しかし、いくらあっても足りないわね」
これはお金の話だ。
聖杯は純金で出来ている為、レプリカを作るだけでも結構な額が必要となる。
手痛い出費だ。
だが手を抜くわけには行かなかった。
メッキの様な安い仕様で誤魔化しても、直ぐに偽物とばれてしまうからだ。
騙し通す為には、最低でも同じ材質で制作しなければならない。
この後の用意にも、かなりの金額が必要になってくる。
出来れば邪神との戦いに備えて訓練に時間を割きたいところだが、必要金額にはまだまだ足りていない為、内職に時間を割かずにはいられない。
「これで邪神に負けたら笑えないわよね……」
冗談抜きで笑えなかった。
だからと言って、引き返すつもりは更々ない。
私は取り返すのだ。
例え、その為に世界が滅びようとも。
全てのアーティファクトを集め終えた私は森の中の一軒家で暮らしている。
勿論邪神復活と、同時にその討伐の為の準備は抜かりなく進めていた。
まずは封印の儀の妨害だ。
ゲームの中では、私が聖女になった2年後に封印の儀はとり行なわれている。
聖女は1000年に1度、聖杯によって選出され。
弱った邪神の封印を強化するのがその最大の役目となる。
正に世界を邪悪から守る大役だ。
当然、私はこれを妨害する。
そのためにはまず、聖杯を盗み出さなければならない。
封印の儀に聖杯は必要不可欠だ。
これを奪ってしまえば、完璧な再封印は行えないだろう。
だがそれだけでは駄目だ。
不完全とはいえ、封印の強化は行える。
そうなれば1000年は難しくとも、百年単位で邪神の復活が先延ばしにされてしまうだろう。
数百年後に蘇ったのでは意味がない。
一番手っ取り早いのが、エリスを私の手で亡き者にする事なのだが。
それをすれば直ぐに私がやったとバレてしまう。
何せ、聖女である彼女に恨みを持つ者などこの世界には限られているのだから……
だから彼女には、邪神との戦いで死んでもらわなければならないのだ。
まあ兎に角、今は聖杯を盗む事だけに注力しよう。
私は室内の実験器具を起動させる。
特殊な器具に魔法の力が流れ込み、一本の杖がライトアップされた。
杖は特殊な合金の台座に突き刺さっており。
台座にはチューブが繋がっている。
そのチューブは周りに置いてある7つのカプセルへと延び。
カプセルの中には、液体に浸されたアーティファクトが入っていた。
「まだ時間はかかりそうね」
中央の杖は、私の血肉と特殊な合金を組み合わせて生み出した私の分身とも言える物。
これにアーティファクトの全ての力を取り込ませ、邪神との切り札にする予定だ。
復活させても、倒せませんでしたでは話にならないもの。
「ベルベット様!ただいま戻りました!」
ドタドタと足音が響き、青髪をした少年が研究室へと飛び込んでくる。
その少年は笑顔で籠を私へと突き出す。
その中には、採集してきた薬草や鉱物が入っていた。
「ガード。騒がしいわよ。それと酷く汚れているわ。体を洗ってきなさい」
彼の名はガード。
私が魔法で生み出した使い魔だ。
姿形は人間そのものだが、人では無く、れっきとした合成の生命体である。
人の様な姿をしているのは、街への買い出しなども考えるとその方が都合がいいからだ。
「あ……はい。ごめんなさい。ベルベット様」
ガードは明かに落ち込んだ表情で、荷物を置いてシャワールームへと向かう。
その姿を見て、少し厳しすぎたかなと反省する。
綺麗になって戻ってきたら、ちゃんと褒めてあげよう。
今の私にとって、家族は彼一人だけなのだから。
籠の中を確認する。
薬草や鉱物類は全てこの森の中で取れるものだ。
私はこれを錬成して薬品や特殊な合金を生み出し、それを高値で販売してお金を稼いでいる。
色々と目的の為に用意するには、何かとお金が必要なのだ。
「そろそろ、聖杯のレプリカを作る準備をしなくっちゃね」
単に妨害するだけなら盗むだけでいいが、それだと私が容疑者になるのは目に見えている。
だからそうならない様に偽物を用意して、聖女が失敗したと思わせる必要があった。
「しかし、いくらあっても足りないわね」
これはお金の話だ。
聖杯は純金で出来ている為、レプリカを作るだけでも結構な額が必要となる。
手痛い出費だ。
だが手を抜くわけには行かなかった。
メッキの様な安い仕様で誤魔化しても、直ぐに偽物とばれてしまうからだ。
騙し通す為には、最低でも同じ材質で制作しなければならない。
この後の用意にも、かなりの金額が必要になってくる。
出来れば邪神との戦いに備えて訓練に時間を割きたいところだが、必要金額にはまだまだ足りていない為、内職に時間を割かずにはいられない。
「これで邪神に負けたら笑えないわよね……」
冗談抜きで笑えなかった。
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