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3.星の去り際の挨拶という名のロマンス語り
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「おや、流れ星ではなくてほうき星かい」
ほうき星に跨ったわたしに突如声がかかった。
「珍しい光のほうき星じゃな」
周りを見渡しても、声の主は分からなかった。
わたしは憮然とした。
この手のからかいはもう何度か経験していたからだ。
不思議な組み合わせのわたしたちをどうやら出会った宇宙の生物たちは面白半分にしか見てくれない。
「その背に居るのは……はて、お主どこの出身じゃ?」
問われてしまったのなら答えるしかない。
わたしはこの宇宙の何処かの名前を適当に言った。
適当に言ったのには、ちゃんとした理由があるが此処ではまだ語らないとししておく。
「ははあ、辺鄙な惑星じゃな。また変な所の変な考えをした奴らじゃったわい」
何かカチンと来たが、敢えてわたしは黙っておく。
『…………』
ほうき星がチカチカと光った。
「君は黙っていなさい」
わたしは言った。
抗議する様にほうき星は光の粒子を不満そうに散らして黙る。
「ほうき星と辺鄙な惑星出身の旅人よ。儂の話を聞いてくれはしないか」
「生憎、急いでいるんで」
ぶっきらぼうに返事をするわたしに、声の主は黙ってしまった。
わたしは好都合と思い、ほうき星に先を急ぐように小声で伝える。
声はもう追っかけては来なかった。
後に、こんな噂を聞いた。
宇宙の風の便りだ。
星が一つ最期の力を放って輝いているらしい。
ずいぶんと歳を取った星だったらしい。
大きくもなく小さくもない星は最後に話を聞いてくれる誰かを探していたらしい。
わたしはその噂を聞いてふと寂しさが胸に去来した。
「聞いてやっても、よかったのだな」
話を聞いていたのなら、その星は何を語ったのだろう。
去り際の挨拶をしたのだろうか、それとも生きてきた長さを語ったのだろうか。
なんにしろ、到底聞ききれない程のロマンスを語ったのだろう。
今では推測しかできない。
ほうき星なら、分かったのだろうか……。
ほうき星に跨ったわたしに突如声がかかった。
「珍しい光のほうき星じゃな」
周りを見渡しても、声の主は分からなかった。
わたしは憮然とした。
この手のからかいはもう何度か経験していたからだ。
不思議な組み合わせのわたしたちをどうやら出会った宇宙の生物たちは面白半分にしか見てくれない。
「その背に居るのは……はて、お主どこの出身じゃ?」
問われてしまったのなら答えるしかない。
わたしはこの宇宙の何処かの名前を適当に言った。
適当に言ったのには、ちゃんとした理由があるが此処ではまだ語らないとししておく。
「ははあ、辺鄙な惑星じゃな。また変な所の変な考えをした奴らじゃったわい」
何かカチンと来たが、敢えてわたしは黙っておく。
『…………』
ほうき星がチカチカと光った。
「君は黙っていなさい」
わたしは言った。
抗議する様にほうき星は光の粒子を不満そうに散らして黙る。
「ほうき星と辺鄙な惑星出身の旅人よ。儂の話を聞いてくれはしないか」
「生憎、急いでいるんで」
ぶっきらぼうに返事をするわたしに、声の主は黙ってしまった。
わたしは好都合と思い、ほうき星に先を急ぐように小声で伝える。
声はもう追っかけては来なかった。
後に、こんな噂を聞いた。
宇宙の風の便りだ。
星が一つ最期の力を放って輝いているらしい。
ずいぶんと歳を取った星だったらしい。
大きくもなく小さくもない星は最後に話を聞いてくれる誰かを探していたらしい。
わたしはその噂を聞いてふと寂しさが胸に去来した。
「聞いてやっても、よかったのだな」
話を聞いていたのなら、その星は何を語ったのだろう。
去り際の挨拶をしたのだろうか、それとも生きてきた長さを語ったのだろうか。
なんにしろ、到底聞ききれない程のロマンスを語ったのだろう。
今では推測しかできない。
ほうき星なら、分かったのだろうか……。
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