三つの課題

萩原 操

文字の大きさ
上 下
1 / 1

三つの課題

しおりを挟む
史(ふみ)爺ィじゃ。今年で70になった。まだまだ元気と言いたいが、衰えも目立つ。若い頃思い通りにできなかったので、今でもくすぶっているモノがある。退屈しのぎにそんな爺ィの話でも聞いてくれ。
こんなメールが来たのは今年の8月の初めだった。

「夜分にすみません。
かなり前に一度お会いして、プレイをしていただきました××に住む57歳の者です。
今から8年ほど前の5月にそちらにお伺いして、昼間モーテルでプレイをしました。あの時から随分経ちましたが、いまでも思い出すたび愚息が固くなります。よろしければお会いして、虐めていただきたいと思ってます。お返事、待ってます。
都合の良いときばかり連絡してすみません。」

ワシはすっかり忘れていた。ただ保存している画像ファイルに<夏虫>というのがあったのを思い出して、それを見てみた。ワシとしてはけっこう派手なことをしていたが(笑)、全く記憶には残っていなかった。かなり不便なところに住んでいて、なかなか逢えそうもないので、それで終わりになっていたのだろう。
このあとメールのやりとりをしていると、ワシの奴隷にしてくれと言う。全く期待していなかったので、いじわるでもする気で、課題を三つ出し、これをクリアすれば、奴隷にしてやることにした。

第一の課題は、<パイパンにしてその画像を送れ>ということにした。家庭や仕事のある人ではやりたくてもできない人が多いが、<夏虫>は次の日に3枚画像を送ってきた。こういう時はパイパンだけでなく勃起したものを上手に見せるのが望ましいのだが、その点はできていなかった。

「早速今晩剃りました。久しぶりに剃ったので、ドキドキしまくりました。今もしてます。剃っている途中から風呂場の横の脱衣場で嫁がなにかし始めたので、いつ扉を空けるかドキドキしました。また、身体を拭くときに見られないかと一層ドキドキしました。」

添えてあった文面にドキドキ感があったので、クリアとすることにした。またパイパンにしたあとの感じは、「無意識に股間を触ってしまいます。ツルツルの感触がいいです」とあった。

第二の課題は、<公衆便所の中で全裸になり、その画像を送れ>というものでした。

「今日は実行しないといけないと思っていたら急に仕事になり、終わった後、公衆トイレで実行しました。家からマジックと洗濯バサミを持ち出した時からドキドキし、仕事中もどこでしようかと考えていました。

いい歳こいてパイパンになった親父が、外で全裸になり、所有物の証である<史>と言う字を身体に書いた上、洗濯バサミを乳首につけ、写メールを送る、というシチュエーションにとても興奮し、仕事はうわのそらでした。先走りは一日中少しですけど出てました。早く実行したい、けど見られたらどうしようと、ずっとドキドキしてました。

三ヶ所で実行しました。最初に入ったトイレは家族連れが多くいる公園のトイレで、男子用に入り全裸になった後、史と言う字を書き、乳首に洗濯バサミを咬ましてから撮りました。

次は、無人駅近くのトイレです。無人駅と言うと寂れた所に思われますが、交通量のわりと多い道路に面しています。今度は身障者用に入りましたが、服を脱ぐとき鍵を掛けずに脱ぎました。いつ、扉を開けられるかドキドキしました。

最後は別の公園の男子トイレで撮りました。誰も居なかったので扉を開けて撮りました。そして我慢できずにパイパンを見ながら果てました。」

別に3ヶ所で撮れと指示したわけでなく、ドアの鍵を開けておくとか、扉を開けて撮るとかも、自分の盛り上がりでやっていました。勝手なことをするのは、必ずしも歓迎できることではないのですが、今回は大目にみることにしました。クリア。

 第三の課題は、<作文―自分のM性に目覚めたのはいつ頃か?>というものでした。

「中二の時に精通があり、同級生の女の子や、女性を対象にオナニーをしていましたが、高一夏休みのキャンプの時に雑魚寝をしていたら、同級生の小太りの少年が私の上に乗っかって来て、圧迫するように体重をかけて来ました。ただ、その時は身体を触られる事もなく、何事もなかったようにすぐに降りて隣で寝始めましたが、その時の圧迫された時の感じが気持ち良かった事が頭に残り、オナニーの対象は女性から小太りの男性に替わり始めました。

高校時代は新聞配達のバイトをしており、夏は早朝からステテコとランニング姿で散歩している小太りの親父さんを見ては、配達後自宅へ急いで帰り、学校へ行くまでの僅な時間で、配達の時に見た親父の事を思い出しながらオナニーしました。

昭和53年に高校を卒業後、地元の会社に勤め始め、より多くのタイプの男性を見る機会が増え、ズリネタには困らなくなりました。勤め始めて二年が経った夏の終わり頃、隣町の本屋へふらりと入った時、『さぶ』と言う雑誌の巻頭の写真を見てびっくりしました。男が縛られてなんとも言えない表情でフル勃起している写真に見入ってしまい、私も写真のように縛られて写真を撮られたい、という思いが芽生えました。買うのは躊躇いましたが、家でじっくり見たい思いの方が強く、うつ向きながら顔をあわせないように買ったのを覚えています。帰る途中の信号待ちの時間にも本を見ては勃起し、股間を触りながら帰りました。

自宅で写真を見てオナニーしさっぱりした後で、投稿文か小説か今となっては忘れましたが、私がMに目覚めた話がありました。それは、中年小太りの男がふとしたきっかけで同性愛者のがっちりした男と出会い、その男に手解きを受け、同性とのセックスやSMを受け入れていき、徐々に墜とされていく、という内容でした。

中年小太り男が社員旅行でとある温泉旅館へ行き、宴会の後一人で風呂に入っていると、がっちりした男が入って来て世間話や身体を洗ったりして近づき、その後がっちり男の部屋で飲み直し、マッサージをして身体を触ったりしていくうちに、二人とも酔いに任せて大胆になり、寝巻きの紐で縛られて色んな恥ずかしい格好をさせられ、写真を撮られ、ケツ穴の拡張で指やらビール瓶を入れられて最後はがっちり男の肉棒をくわえこんで、ケツの奥深くに射精されるという話で、後日体験が忘れられず男と連絡を取合い男の元を訪ねると、男の友達もおり、三人で山中へ入り野外プレイを強いられ、木に縛り付けられ、恥ずかしい格好や二人から上下の穴を凌辱され、全てを写真に納められて、後日その写真を自宅に送られ、ばらされたくなかったら俺達の奴隷を一生続けていけ、と。小太り男にとっては限りなく不利な条件での奴隷契約書を書かされ、小太り男は会社を辞め男達の奴隷となって飼われ始めたという話で、小説とも体験談ともわからない話に、こんな世界があるんだと思うと同時に、こんなことを経験したいと強く思い、この話をネタに何度となくオナニーをしました。年末あたりまでこの話をネタにしてたと思います。その位強烈に頭に焼き付いていました。

これがMに目覚めるきっかけです。当時20歳でした。恥ずかしいことをさせられたい、といった思いはその頃からありました。」

これじゃ文句のつけようがないので、クリアとしました。ただ本のなかの話は出来すぎていて、いかにもの作り話のようで、それなりの経験のある人には白けてしまうような話ですが、20歳の未経験の青年には強烈過ぎるものだったのでしょう。挿絵か写真でもあれば、なおさらだったと思われます。

というわけで、3つの課題はクリアされ、めでたく(?)史爺ィの奴隷となったというわけです。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...