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⑯マグリウス男爵の息子
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放課後、俺はコスマ・ハンデリックと共に学園寮に向かった。
学園の敷地の外側、徒歩で10分程度の場所にある学園寮は、もちろん安全に配慮して確保された通学路となっていて、将来の当主となる嫡男や才能ある者、令息令嬢の身に危険が及ばないような明るい街道となっている。
各々の従者や護衛を従えて通学するものが多い中、やっぱり父様から護衛の提案をされたけれど、もちろん俺は大丈夫だと言って断った。
だってそうだろう?俺は狼獣人だし、どんなヤツが襲ってきたとしても、俺より強い奴なんてきっと父上かレオナルド殿下以外いないと思ったからだ。
「コスマ、お前は護衛を付けないのか?」
「いやー、鬱陶しいでしょ・・それに、俺は次男だし?平凡な見た目だし?狙うなら兄上か妹達じゃないか?」
「鬱陶しいか・・それもそうだよな?平凡・・?が何なのか分からないけど、何かあれば俺が助けてやるよ?お前、弱そうだし」
「はーい、よろしくな?相棒!」
コスマ・ハンデリックはとても気さくないい奴だ。コイツと話していると、何故かシュウの事を思い出した。
シュウは、いつも俺を揶揄ったり喧嘩になったりする相手だったけど、俺は実はシュウの事が人として好きだったりする。
俺にとって、気を使わないでいられる相手というのはとても貴重な存在で、友人だなんて言ったらきっと怒鳴られそうだけど、俺は友人だと勝手に思っている。
「ははっ・・」
「えー!何だよ!何笑ってるんだ?」
「ははっ!いや、コスマは俺の兄貴みたいな友人に似てる。すごくいい奴なんだ」
「へー?いい奴?」
「そう。お節介でうるさい。揶揄ってくるし喧嘩ばっかり吹っかけてくる。だけどすごくいい奴だ」
「それ・・複雑だわ・・でもいい奴ならー・・ま、いっか?さて、着いたよ」
高い門を通り抜けていく。入る・・え?屋敷?城?小さい城みたいだ・・
「なんだ?ここ・・すご・・」
「なんだって、寮だろ?お前みたいな公爵令息だって寝泊まりする場所なんだから、すごくて当然だよ?行くよ?案内する」
「ああ、頼むよ」
俺はコスマに連れられて、エントランスから順に回る。食堂に入ると、中には王族や公爵専用のダイニングスペースがいくつかに別れて配置されている。少し進むと、広い食堂スペースがあり、すでに食事をしている寮生が数人いた。
「初めまして、料理長のボルドです。ヴァンドーム公爵家、ご令息のレヴィー様ですね?」
「はい」
「レヴィー様には、あちらの貴方様専用のお部屋でお食事をして頂きます。ご朝食とディナーをご準備してお待ちしておりますので、お好きな時にいらして下さい」
「いや、みんなと同じでいい」
「いえいえ、貴方様のご両親から食事管理を任されておりますので」
「は、はぁ・・分かりました。どうぞ、よろしくお願いします」
「はははっ!私は子爵の生まれです。レヴィー様のような高貴な方にそのような事を言って頂けるとは光栄です。今後、ご要望がありましたら何なりと」
ボルド料理長はそう言って礼をとると、立ち去って行った。
「はぁ・・」
「レヴィー、すごいな、お前。さすがは王家出身の公爵家だ。食事は別々か・・ま、仕方ない。次、こっちだ」
コスマは急に立ち止まって、俺に振り向いてこんな事を言った。
「レヴィー、お前さ、たぶん個室だわ・・食堂ですら専用だろ?なら私室だって特別なんじゃないかな?」
「そうだったら助かる。俺は人と寝泊まりなんて無理だ」
「そ?なら確認しよ?」
コスマは俺を連れて部屋の確認をすると、「やっぱり」と言って俺に鍵を渡してきた。
「個室、良かったな?行く?」
「ああ、行く」
良かった。
とりあえず、狼耳や尾を出してしまっても、個室なら安心だ。
父上や父様は、俺が獣人である事を隠す必要などないと言った。俺の自由にすればいいんだと言って笑っていた。王族出身の公爵家の嫡男が?獣人?それはあまりにも弊害や害悪があり過ぎる・・本当なら父上の・・オットー様の妨げになどなりたくない。だけど俺は望んでしまったんだ、ふたりから愛情を向けて欲しいと。
人間の振りをすればいい。でもその後は?いつまで?結婚相手には?跡取りは?俺には公爵家という肩書きが、あまりにも重く感じて仕方がなかった。
「レヴィー、ずごい部屋だな!家族揃って住めそう・・」
「父上・・俺には贅沢過ぎだ・・困ったな・・」
「お前って、貴族らしくないな?偉そうでもないし、謙虚だし?」
「・・俺は普通でいい。あまり目立ちたくない」
「それは無理だろ?すでに目立ってるし」
「そうなのか!?俺は何か間違えたか!?」
「・・嫌味?本気か?鏡見てみろよ・・ま、いいや。俺の部屋、来る?同室の先輩、紹介するから」
「分かった」
鏡?俺の面のことか?そんなに目立つなら、髪を切らなければ良かったか・・これが美形なのかは知らないが、父様やセス様があまりにも俺を褒め称えるから、多少は勘違いしている。
俺は私室を出るとコスマの部屋に招かれた。部屋はふたりで過ごすには十分な広さがあるし、仕切りを使えば、プライバシーも保たれる。
寮には個室がいくつか配置されているが、それらを使うのはほとんどが公爵家で、貴族の中でも金持ちの上流階級の出身の者なのだそうだ。
「俺の同室の先輩はとても優秀で、2年生にも関わらず、すでに生徒会に入ってるんだ。マグリウス男爵家の三男で・・あ、いる。レヴィー、入って?」
コスマの部屋に一歩入る。俺たちに背中を向けて座っているその人に、コスマはゆっくりと近づいていく。
「失礼します」
俺はマグリウスと言う名を聞いた事がある。男爵家、そうだ・・知っている。間違いない・・
俺はその人が立ち上がって、ゆっくりと振り向くのを見ていた。まるでスローモーションのように一瞬一瞬が切り取られるみたいに、その人の姿が、金色の髪が、桃色の瞳が・・俺のこの目に映し出された。
「イ、オ・・」
「・・レヴィー・・?」
「イオ!イオ・・!」
「レヴィーなの!?会いたかった!探したんだ!ずっと、なのにどこを探しても、レヴィーは見つからなかった!どこにいたの!?ううっ・・ふぇ・・レヴィー、レヴィー!」
泣きながら俺にしがみつくイオを抱き締めながら、俺もどうしても涙を止めることが出来なかった。
こんな所で再会するなんて・・俺は、またイオに会えた事が信じられなくて、なかなかイオを離してやれかなった。こうして、俺とイオは2年振りに再会した。
学園の敷地の外側、徒歩で10分程度の場所にある学園寮は、もちろん安全に配慮して確保された通学路となっていて、将来の当主となる嫡男や才能ある者、令息令嬢の身に危険が及ばないような明るい街道となっている。
各々の従者や護衛を従えて通学するものが多い中、やっぱり父様から護衛の提案をされたけれど、もちろん俺は大丈夫だと言って断った。
だってそうだろう?俺は狼獣人だし、どんなヤツが襲ってきたとしても、俺より強い奴なんてきっと父上かレオナルド殿下以外いないと思ったからだ。
「コスマ、お前は護衛を付けないのか?」
「いやー、鬱陶しいでしょ・・それに、俺は次男だし?平凡な見た目だし?狙うなら兄上か妹達じゃないか?」
「鬱陶しいか・・それもそうだよな?平凡・・?が何なのか分からないけど、何かあれば俺が助けてやるよ?お前、弱そうだし」
「はーい、よろしくな?相棒!」
コスマ・ハンデリックはとても気さくないい奴だ。コイツと話していると、何故かシュウの事を思い出した。
シュウは、いつも俺を揶揄ったり喧嘩になったりする相手だったけど、俺は実はシュウの事が人として好きだったりする。
俺にとって、気を使わないでいられる相手というのはとても貴重な存在で、友人だなんて言ったらきっと怒鳴られそうだけど、俺は友人だと勝手に思っている。
「ははっ・・」
「えー!何だよ!何笑ってるんだ?」
「ははっ!いや、コスマは俺の兄貴みたいな友人に似てる。すごくいい奴なんだ」
「へー?いい奴?」
「そう。お節介でうるさい。揶揄ってくるし喧嘩ばっかり吹っかけてくる。だけどすごくいい奴だ」
「それ・・複雑だわ・・でもいい奴ならー・・ま、いっか?さて、着いたよ」
高い門を通り抜けていく。入る・・え?屋敷?城?小さい城みたいだ・・
「なんだ?ここ・・すご・・」
「なんだって、寮だろ?お前みたいな公爵令息だって寝泊まりする場所なんだから、すごくて当然だよ?行くよ?案内する」
「ああ、頼むよ」
俺はコスマに連れられて、エントランスから順に回る。食堂に入ると、中には王族や公爵専用のダイニングスペースがいくつかに別れて配置されている。少し進むと、広い食堂スペースがあり、すでに食事をしている寮生が数人いた。
「初めまして、料理長のボルドです。ヴァンドーム公爵家、ご令息のレヴィー様ですね?」
「はい」
「レヴィー様には、あちらの貴方様専用のお部屋でお食事をして頂きます。ご朝食とディナーをご準備してお待ちしておりますので、お好きな時にいらして下さい」
「いや、みんなと同じでいい」
「いえいえ、貴方様のご両親から食事管理を任されておりますので」
「は、はぁ・・分かりました。どうぞ、よろしくお願いします」
「はははっ!私は子爵の生まれです。レヴィー様のような高貴な方にそのような事を言って頂けるとは光栄です。今後、ご要望がありましたら何なりと」
ボルド料理長はそう言って礼をとると、立ち去って行った。
「はぁ・・」
「レヴィー、すごいな、お前。さすがは王家出身の公爵家だ。食事は別々か・・ま、仕方ない。次、こっちだ」
コスマは急に立ち止まって、俺に振り向いてこんな事を言った。
「レヴィー、お前さ、たぶん個室だわ・・食堂ですら専用だろ?なら私室だって特別なんじゃないかな?」
「そうだったら助かる。俺は人と寝泊まりなんて無理だ」
「そ?なら確認しよ?」
コスマは俺を連れて部屋の確認をすると、「やっぱり」と言って俺に鍵を渡してきた。
「個室、良かったな?行く?」
「ああ、行く」
良かった。
とりあえず、狼耳や尾を出してしまっても、個室なら安心だ。
父上や父様は、俺が獣人である事を隠す必要などないと言った。俺の自由にすればいいんだと言って笑っていた。王族出身の公爵家の嫡男が?獣人?それはあまりにも弊害や害悪があり過ぎる・・本当なら父上の・・オットー様の妨げになどなりたくない。だけど俺は望んでしまったんだ、ふたりから愛情を向けて欲しいと。
人間の振りをすればいい。でもその後は?いつまで?結婚相手には?跡取りは?俺には公爵家という肩書きが、あまりにも重く感じて仕方がなかった。
「レヴィー、ずごい部屋だな!家族揃って住めそう・・」
「父上・・俺には贅沢過ぎだ・・困ったな・・」
「お前って、貴族らしくないな?偉そうでもないし、謙虚だし?」
「・・俺は普通でいい。あまり目立ちたくない」
「それは無理だろ?すでに目立ってるし」
「そうなのか!?俺は何か間違えたか!?」
「・・嫌味?本気か?鏡見てみろよ・・ま、いいや。俺の部屋、来る?同室の先輩、紹介するから」
「分かった」
鏡?俺の面のことか?そんなに目立つなら、髪を切らなければ良かったか・・これが美形なのかは知らないが、父様やセス様があまりにも俺を褒め称えるから、多少は勘違いしている。
俺は私室を出るとコスマの部屋に招かれた。部屋はふたりで過ごすには十分な広さがあるし、仕切りを使えば、プライバシーも保たれる。
寮には個室がいくつか配置されているが、それらを使うのはほとんどが公爵家で、貴族の中でも金持ちの上流階級の出身の者なのだそうだ。
「俺の同室の先輩はとても優秀で、2年生にも関わらず、すでに生徒会に入ってるんだ。マグリウス男爵家の三男で・・あ、いる。レヴィー、入って?」
コスマの部屋に一歩入る。俺たちに背中を向けて座っているその人に、コスマはゆっくりと近づいていく。
「失礼します」
俺はマグリウスと言う名を聞いた事がある。男爵家、そうだ・・知っている。間違いない・・
俺はその人が立ち上がって、ゆっくりと振り向くのを見ていた。まるでスローモーションのように一瞬一瞬が切り取られるみたいに、その人の姿が、金色の髪が、桃色の瞳が・・俺のこの目に映し出された。
「イ、オ・・」
「・・レヴィー・・?」
「イオ!イオ・・!」
「レヴィーなの!?会いたかった!探したんだ!ずっと、なのにどこを探しても、レヴィーは見つからなかった!どこにいたの!?ううっ・・ふぇ・・レヴィー、レヴィー!」
泣きながら俺にしがみつくイオを抱き締めながら、俺もどうしても涙を止めることが出来なかった。
こんな所で再会するなんて・・俺は、またイオに会えた事が信じられなくて、なかなかイオを離してやれかなった。こうして、俺とイオは2年振りに再会した。
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