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4 コリン家の断罪者
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俺はちょうど食事をしに行く所で、たまたま見かけた者に興味を持った。
色素の薄い白に近い金髪、とても美しくて珍しいと思って声を掛けた。身なりがみすぼらしくて初めは不審に感じたが、髪で隠れた目元からチラホラと見え隠れする薄桃色の瞳が美しかった。
監視役が張り付いていたが、目で牽制すると俺が何者であるかを理解したようだった。
思わず私室へ連れて行った。
とくに他意はない。ただ、膝の手当てをしてやろうと思っただけだった。それなのに、躊躇もせずに下着を下ろして俺に尻を差し出してきた。
あれは何だ?どういうつもりだったんだ?
白くて小さい尻を向けて男を誘う・・そういう嗜癖の者、なのか?
確かに、可愛らしい尻だったが・・あ、いや!そうじゃなくて!
何を考えてる・・俺にはそんな趣味はない!
とにかく、あの子は自分の事をノアと言ったな・・しかし、多分?多分ってなんだ?
自分の名前が分からない?どういう事なんだ・・?
仮にあの子が本当にノア・コリンだとしたら、少なくとも子爵家の子息だ。学園にも通う、使用人だっているだろう。名を知らずに過ごすなんてありえない。
名を知らないとなると・・
記憶?記憶がないから?
俺は確かにノア・コリンの事を聞いていた。子爵家の末の息子で、コリン家の断罪者が王宮の毒味役に来ると聞いていた。
だが実際に見たあの実物のノアは、あんなに怯えて声も出さず遠慮がちな子だった。
嫌われ者の?どうしたってあの子と噂で聞いていた者が一致しなさすぎて、ノアと聞いてもピンと来なかった。
それに嫌われ者とは何だ?いったい何があってそうなった?理由が何なのか知りたい。
ノアは自分の名前さえ半信半疑、おどおどとしながらまるで暴力を受けることを諦めているようにも見えた。身を固くして、痛めつけられる事を覚悟しているように。
現に実際、顔には新しい傷と治りかけの傷が複数あって、おそらく今でも暴力を受けている事は間違いない。
あんなに痩せて、小さくて、あれでは毒など食らってしまえばすぐに死んでしまうだろう・・
そもそも毒に当たったとしても、治療など不要だから捨て置くようにとの話だったか・・なんて酷い扱いなんだ。
あの子が・・?
いったい何をしたというんだろうか・・
「んー・・モヤモヤするな・・」
コンコンコン!
私室の扉をノックする音が響いて気が付く。そう言えば食事に行くところだった・・俺が食べているあの食事は、毎日、いや毎食ノアが毒味をして安全を確認しているのか・・何とも言い難い。
「ユージーン殿下、お食事をお持ちしました」
俺は複雑な思いをしながら考える。
なかなか食事に来ない俺を見かねて、侍女が運んで来た。
「マナカ、これは毒味が終わっているのか?」
「はい、殿下。毒味役が確認済みでございます」
「ふーん・・その、毒味役の者は普段何を?」
「確か・・地下での作業を。あまり人通りがある場所で作業をさせますと、嫌がる方がおられまして」
「それで地下に・・?」
「はい」
「住まいは?何処で寝泊まりを?」
「それは・・その」
何だ?歯切れの悪い・・
「言え」
「地下牢の空き部屋を使っていると聞いています」
「は・・!?地下牢?どうしてそんなっ!」
「分かりません・・」
地下で隠されながら仕事をさせられ、住まいも地下牢・・?どうなってるんだ?あまりにも人道的ではなさ過ぎだ!
「分かった、もう下がっていい」
「承知しました、失礼します」
ノアは俺が軟膏を塗ってやったら、泣きながら驚いていた。
これまで人の優しさに触れることなく生きてきた、そんなノアの様子にこちらの方まで心が痛んだ。
暴力を受けることも、命令に従うことさえ、全て受け身でいなければならなかったのか・・
もしかすると性被害にもあって・・?あの容姿だ、きっと襲われてしまってもおかしくはない。
あの怯えた、諦めを含んだ瞳が忘れられない。何とか助けてやれないだろうか。
俺の目には、どうしてもあのノアが断罪されるような理由を作る子には見えなかった。しかし監視役が付くほどだ・・それほど危険な人物だという事なのか・・あの子が?
少し、調べてみるか・・なぜノアが断罪され、捨て身でこの城に来なければならなかったのかを。
色素の薄い白に近い金髪、とても美しくて珍しいと思って声を掛けた。身なりがみすぼらしくて初めは不審に感じたが、髪で隠れた目元からチラホラと見え隠れする薄桃色の瞳が美しかった。
監視役が張り付いていたが、目で牽制すると俺が何者であるかを理解したようだった。
思わず私室へ連れて行った。
とくに他意はない。ただ、膝の手当てをしてやろうと思っただけだった。それなのに、躊躇もせずに下着を下ろして俺に尻を差し出してきた。
あれは何だ?どういうつもりだったんだ?
白くて小さい尻を向けて男を誘う・・そういう嗜癖の者、なのか?
確かに、可愛らしい尻だったが・・あ、いや!そうじゃなくて!
何を考えてる・・俺にはそんな趣味はない!
とにかく、あの子は自分の事をノアと言ったな・・しかし、多分?多分ってなんだ?
自分の名前が分からない?どういう事なんだ・・?
仮にあの子が本当にノア・コリンだとしたら、少なくとも子爵家の子息だ。学園にも通う、使用人だっているだろう。名を知らずに過ごすなんてありえない。
名を知らないとなると・・
記憶?記憶がないから?
俺は確かにノア・コリンの事を聞いていた。子爵家の末の息子で、コリン家の断罪者が王宮の毒味役に来ると聞いていた。
だが実際に見たあの実物のノアは、あんなに怯えて声も出さず遠慮がちな子だった。
嫌われ者の?どうしたってあの子と噂で聞いていた者が一致しなさすぎて、ノアと聞いてもピンと来なかった。
それに嫌われ者とは何だ?いったい何があってそうなった?理由が何なのか知りたい。
ノアは自分の名前さえ半信半疑、おどおどとしながらまるで暴力を受けることを諦めているようにも見えた。身を固くして、痛めつけられる事を覚悟しているように。
現に実際、顔には新しい傷と治りかけの傷が複数あって、おそらく今でも暴力を受けている事は間違いない。
あんなに痩せて、小さくて、あれでは毒など食らってしまえばすぐに死んでしまうだろう・・
そもそも毒に当たったとしても、治療など不要だから捨て置くようにとの話だったか・・なんて酷い扱いなんだ。
あの子が・・?
いったい何をしたというんだろうか・・
「んー・・モヤモヤするな・・」
コンコンコン!
私室の扉をノックする音が響いて気が付く。そう言えば食事に行くところだった・・俺が食べているあの食事は、毎日、いや毎食ノアが毒味をして安全を確認しているのか・・何とも言い難い。
「ユージーン殿下、お食事をお持ちしました」
俺は複雑な思いをしながら考える。
なかなか食事に来ない俺を見かねて、侍女が運んで来た。
「マナカ、これは毒味が終わっているのか?」
「はい、殿下。毒味役が確認済みでございます」
「ふーん・・その、毒味役の者は普段何を?」
「確か・・地下での作業を。あまり人通りがある場所で作業をさせますと、嫌がる方がおられまして」
「それで地下に・・?」
「はい」
「住まいは?何処で寝泊まりを?」
「それは・・その」
何だ?歯切れの悪い・・
「言え」
「地下牢の空き部屋を使っていると聞いています」
「は・・!?地下牢?どうしてそんなっ!」
「分かりません・・」
地下で隠されながら仕事をさせられ、住まいも地下牢・・?どうなってるんだ?あまりにも人道的ではなさ過ぎだ!
「分かった、もう下がっていい」
「承知しました、失礼します」
ノアは俺が軟膏を塗ってやったら、泣きながら驚いていた。
これまで人の優しさに触れることなく生きてきた、そんなノアの様子にこちらの方まで心が痛んだ。
暴力を受けることも、命令に従うことさえ、全て受け身でいなければならなかったのか・・
もしかすると性被害にもあって・・?あの容姿だ、きっと襲われてしまってもおかしくはない。
あの怯えた、諦めを含んだ瞳が忘れられない。何とか助けてやれないだろうか。
俺の目には、どうしてもあのノアが断罪されるような理由を作る子には見えなかった。しかし監視役が付くほどだ・・それほど危険な人物だという事なのか・・あの子が?
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