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35 愛してるからだろ
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ノアを見つめる。ノアが俺を見上げる。
俺は少し・・悲しくなる。
ノアの顔や身体のあちこちに残っていた古い傷跡を、レオナルド様が指先一つですっかり癒してしまった。
俺は傷跡が消えたノアの身体を切なく思いながら、手のひらを這わしていく。
俺には癒してやれなかった。ノアに残る傷跡をいくら痛々しく思っていても、どうする事も出来なかったんだ。
「レオナルド様・・本当に、感謝します。俺には・・そのような特別な力はなくて。愛する者を癒すことすらしてやれないなんて、情けないですよ、本当に・・」
「ユージーン、思い詰めるな。誰しも出来る事じゃない。これまでお前が世話をしてきたからこそ、ノアの心は癒されたんだ」
「レオナルド様、ノアの事をありがとうございます」
ノアを連れて私室へ戻る。
俺はノアの、傷跡が消えた顔に手を添える。俺が時間を掛けて薬を塗ってきた膝だって、一瞬で元通りだ。喜ぶべきなのに、やるせなくて虚しい。
「ユージーン殿下?」
「ノア・・ごめん・・」
「どうして、謝るのですか?」
「お前を守っていけるのか・・不安になった。俺にはレオナルド様のような特別な力なんてない。お前を守ってくれる誰かに託すほうが、いいのかもな・・」
俺はとことん自信がなくなった。
長い時間をかけて、ノアの傷を癒してきた。いくら治癒士に見せても薬を塗ったとしても、身体中に残った傷跡は痛々しかった。そんなノアを、レオナルド様はいとも簡単に治してしまった。
「や・・だ・・ユージーン殿下と・・離れる、くらいなら、僕は、誰とも一緒にいません。誰もユージーン殿下の代わりになれる人なんて、いませんから」
「ノア、俺・・ごめん」
「ふぇ・・うわぁん!ユージーン殿下、僕、大人しくしていますから!言う事をちゃんと守りますから!だから・・僕をどこにもやらないで・・」
ノアが泣き出して、しきりに頭を横に振って俺に
すがる。俺は、ノアにそんな顔をさせたい訳じゃなかったのに、俺が勝手に感傷的になってノアを悲しませた。
「ノア、こんな無力な俺といてくれるのか?どうして・・」
「だって!だって、僕は、ユージーン殿下を愛してるから・・大好き、なんです」
「ノア、俺、お前とずっと、一緒にいたいよ・・」
「僕も、ユージーン殿下とずっと一緒にいたい!」
愛してるか・・照れくさいな・・
俺だって愛してる、ノアを。
俺のちっぽけな自尊心も誇りも、やるせなさだってこの虚しさすら、ノアを愛してるから生まれた感情なんだ。
守っていけるか不安だなんて、愛してるからこそそう思うんだろ?
ノアが心配そうな顔をしながら、背伸びして必死に俺に口づける。あまりにも拙くて、慣れないキスに思わず口元が緩む。
俺の心ひとつ崩れたって、ノアがこれまで受けてきた苦しみに比べたら小さな事だ。
俺はノアが断罪者だと分かっていても、それでもノアに惹かれていた。それくらいには、ノアを愛する事への覚悟が俺にはあった・・それなのに、ノアを不安にさせて泣かせた。
この可愛らしさも、容姿の幼さも、こんな儚い姿を見ていると、どうにもこの世のものとは思えない・・まるで、天使・・
気持ちがスッキリしないのは何故だ・・
そうだ。ノアの、記憶だ・・もしも記憶が戻ったら・・?
記憶が戻ったら・・何故かノアを失いそうな気がしてならないんだ。
俺の知らないノア、ノアすら忘れているノア自身の事を憂いてならないんだ。
どこか、俺の手の届かない場所へ、ノアが消えていなくなりそうで怖い。怖くて堪らない。
「本当にこの王子も・・うだうだと悩んでばかりで仕方がないなぁ。素直に愛してあげればいいのにさ」
「誰だ!!貴様!!」
俺は突然私室に現れた白髪の男に戸惑った。いきなり現れた・・初めて見た・・転移魔法か!?
俺はノアを後ろ手に背中に隠すと、腰に携えた長剣をゆっくりと抜刀する。
こいつ!殺気が全くない・・!いったい何なんだ・・!?
俺は長剣に魔法を込めると、いつでも攻撃できる体勢に入った。それなのに、ノアが俺に抱きついて来て必死に俺を止めようと腕にしがみついてきた。
俺は少し・・悲しくなる。
ノアの顔や身体のあちこちに残っていた古い傷跡を、レオナルド様が指先一つですっかり癒してしまった。
俺は傷跡が消えたノアの身体を切なく思いながら、手のひらを這わしていく。
俺には癒してやれなかった。ノアに残る傷跡をいくら痛々しく思っていても、どうする事も出来なかったんだ。
「レオナルド様・・本当に、感謝します。俺には・・そのような特別な力はなくて。愛する者を癒すことすらしてやれないなんて、情けないですよ、本当に・・」
「ユージーン、思い詰めるな。誰しも出来る事じゃない。これまでお前が世話をしてきたからこそ、ノアの心は癒されたんだ」
「レオナルド様、ノアの事をありがとうございます」
ノアを連れて私室へ戻る。
俺はノアの、傷跡が消えた顔に手を添える。俺が時間を掛けて薬を塗ってきた膝だって、一瞬で元通りだ。喜ぶべきなのに、やるせなくて虚しい。
「ユージーン殿下?」
「ノア・・ごめん・・」
「どうして、謝るのですか?」
「お前を守っていけるのか・・不安になった。俺にはレオナルド様のような特別な力なんてない。お前を守ってくれる誰かに託すほうが、いいのかもな・・」
俺はとことん自信がなくなった。
長い時間をかけて、ノアの傷を癒してきた。いくら治癒士に見せても薬を塗ったとしても、身体中に残った傷跡は痛々しかった。そんなノアを、レオナルド様はいとも簡単に治してしまった。
「や・・だ・・ユージーン殿下と・・離れる、くらいなら、僕は、誰とも一緒にいません。誰もユージーン殿下の代わりになれる人なんて、いませんから」
「ノア、俺・・ごめん」
「ふぇ・・うわぁん!ユージーン殿下、僕、大人しくしていますから!言う事をちゃんと守りますから!だから・・僕をどこにもやらないで・・」
ノアが泣き出して、しきりに頭を横に振って俺に
すがる。俺は、ノアにそんな顔をさせたい訳じゃなかったのに、俺が勝手に感傷的になってノアを悲しませた。
「ノア、こんな無力な俺といてくれるのか?どうして・・」
「だって!だって、僕は、ユージーン殿下を愛してるから・・大好き、なんです」
「ノア、俺、お前とずっと、一緒にいたいよ・・」
「僕も、ユージーン殿下とずっと一緒にいたい!」
愛してるか・・照れくさいな・・
俺だって愛してる、ノアを。
俺のちっぽけな自尊心も誇りも、やるせなさだってこの虚しさすら、ノアを愛してるから生まれた感情なんだ。
守っていけるか不安だなんて、愛してるからこそそう思うんだろ?
ノアが心配そうな顔をしながら、背伸びして必死に俺に口づける。あまりにも拙くて、慣れないキスに思わず口元が緩む。
俺の心ひとつ崩れたって、ノアがこれまで受けてきた苦しみに比べたら小さな事だ。
俺はノアが断罪者だと分かっていても、それでもノアに惹かれていた。それくらいには、ノアを愛する事への覚悟が俺にはあった・・それなのに、ノアを不安にさせて泣かせた。
この可愛らしさも、容姿の幼さも、こんな儚い姿を見ていると、どうにもこの世のものとは思えない・・まるで、天使・・
気持ちがスッキリしないのは何故だ・・
そうだ。ノアの、記憶だ・・もしも記憶が戻ったら・・?
記憶が戻ったら・・何故かノアを失いそうな気がしてならないんだ。
俺の知らないノア、ノアすら忘れているノア自身の事を憂いてならないんだ。
どこか、俺の手の届かない場所へ、ノアが消えていなくなりそうで怖い。怖くて堪らない。
「本当にこの王子も・・うだうだと悩んでばかりで仕方がないなぁ。素直に愛してあげればいいのにさ」
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俺はノアを後ろ手に背中に隠すと、腰に携えた長剣をゆっくりと抜刀する。
こいつ!殺気が全くない・・!いったい何なんだ・・!?
俺は長剣に魔法を込めると、いつでも攻撃できる体勢に入った。それなのに、ノアが俺に抱きついて来て必死に俺を止めようと腕にしがみついてきた。
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