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第19章 リティニア王国編
⑤ルシオの思い出
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あまりにも驚いて、俺は何も言えないまま呆然としていた。
そんな様子の俺を、オットーが優しい微笑みで見つめながらゆっくりと話し始めた。
「ヒューベルト殿下、実を言えば私もレオナルド殿下も、ルシオが貴方を愛していると知っていましたよ?」
「え・・」
俺たちが15才の頃の話だ。大地の割れ目に転落しそうになった俺とルシオをオットーが救ってくれた。大蛇はそれまでに遭遇したどんな魔物よりも手強くて、ルシオは重症を負いながら俺を守った。俺たちが死の危険に瀕した状態だった時、レオナルドが一撃で大蛇を斬滅させたんだ。
俺たちふたりが揃ってレオナルドやオットーに会ったのは、あの時しかない。
「そうですね・・貴方がまだ15才の可愛らしかった時の事です。何故貴方が、あれ程真っ直ぐで率直なルシオの気持ちに気が付かないのか不思議なくらいですけどね?ルシオは大蛇から貴方を守って重症を負っても、私に抱かせる事を嫌がって貴方を離さなかった。『俺のものだ!』っていう気迫が凄まじいかったですよ」
え・・でも、あれは・・というか、俺はルシオに抱き締められる事に慣れていて、抱き締められる事が当たり前になっていて?
正直、幼い頃からルシオとの距離について、あまり何も考えていなかった。
俺は家族からも揉みくちゃにされながら育ったからか・・何だよ・・間違えた?
「俺、何か、間違ってたかも知れない・・」
「ヒューベルト、お前・・鈍いんだな。ルシオの奴が気の毒になる・・私ですら、すぐに気が付いたぞ。初めはすでに恋人同士なのかと思っていたくらいだ」
「うそだ・・そんな」
確かにルシオはいつでも俺を優先していたし、俺の為に何でも・・え・・だって、友達だったし・・
「何も間違ってはいませんよ。ただ、貴方はルシオに心を許しすぎていたから、気が付けなかっただけです。あの後、貴方が女の子ではなく王子だと知って驚きました。ルシオとも少し話をしたんですよ?ルシオから、今後ヒューベルト殿下が外交する立場になった時、不利にならないようにと頭を下げられました。それに、ルシオは必ずヒューベルト殿下の側近になると宣言までしていました。優秀な子ですね?できる事なら、大人になったルシオとも貴方の事について語らいたかった」
「ルシオは他に何て・・」
「それだけです。私は、ルシオほど魅力的な15才を見た事がありません。何もかも完璧・・ルシオにとって足りなかったのは、ヒューベルト殿下、くらいですかね?ふふっ!」
ルシオはそんなに俺への想いを晒していたか?だって、いつも揶揄ってばかりで、子供扱いばかりして・・俺が何を言っても顔色一つ変えずにいただろ?
「あいつの魔法剣、私は初めて誰かが覚醒する姿を見た。潜在能力が突然開花するとは聞いた事があったが、内なる力に目覚めたというよりも、お前を守りたい一心で感情の爆発が起きたように見えた。それに伴った特殊能力の発現は、本当に凄かった。あの時ルシオは、ヒューがいなければこの力はなかったと言っていたな。強くて真っ直ぐなお前への愛情だよ」
人並み外れた才能や知識なんかは、俺が気が付いた時には身に付けていたし、嫉妬もした事もあったけど、ルシオの覚醒・・そうだ・・ルシオはあの一件を境に、ますます頭角を現したんだ。
才能や技量が周囲よりも抜きん出ている事は、遠征や討伐に行けば一目瞭然だった。
本当に、ルシオは凄かったんだ。
「ルシオ・・ルシオ・・」
「ヒューベルト、たまにはこんな日があってもいいんじゃないのか?ルシオを知る者が、ルシオを偲んで語らう。教えてくれ、知りたい、ルシオがどんな男だったのか」
「ルシオの、事・・」
「そうですね?ヒューベルト殿下、もうそんなに苦しまないで。ルシオを忘れるのではなく、忘れないように思い出して話すのですよ?その時は是非、私たちも仲間に入れて下さい」
「明日・・ルシオの命日、なんだ・・」
「なら、毎年その日に話をしろ。ルシオを思い出せ、忘れるな、ルシオを」
そうか・・無理に忘れなくていいのか・・
考えないようにしていた・・思い出したくなかったから。
「怖く、なくなりたい・・ルシオがいない世界を」
「ヒュー?怖くなくなるまで、沢山話そう?私もそうしたい、いいでしょ?」
「俺にも教えてよ、ひゅう。俺、ルシオの事が知りたい!ひゅうが愛したルシオの事、知りたい!」
「え・・?俺が?ルシオを?何言って・・!」
「だって、そうに違いないよ。俺には分かる。ひゅうの初恋なんでしょ?ルシオが」
「違う!!絶対違う!違う・・俺は、そんな事、考えた事、なかった」
「そう?まぁ、いっか?でもね、ひゅう、素直になるのも良いんじゃない?ひゅうを愛したルシオの為に」
「話したい・・みんな、今夜は付き合えよ」
俺は、俺がルシオに恋をしているとセスに言われてもよく分からなかった。
だけど、もうそんな事はどうでも良くて、ただ今夜は、明日のルシオの命日になるまでは、ルシオの事を、この友人たちと一緒に話したくなったんだ。
そんな様子の俺を、オットーが優しい微笑みで見つめながらゆっくりと話し始めた。
「ヒューベルト殿下、実を言えば私もレオナルド殿下も、ルシオが貴方を愛していると知っていましたよ?」
「え・・」
俺たちが15才の頃の話だ。大地の割れ目に転落しそうになった俺とルシオをオットーが救ってくれた。大蛇はそれまでに遭遇したどんな魔物よりも手強くて、ルシオは重症を負いながら俺を守った。俺たちが死の危険に瀕した状態だった時、レオナルドが一撃で大蛇を斬滅させたんだ。
俺たちふたりが揃ってレオナルドやオットーに会ったのは、あの時しかない。
「そうですね・・貴方がまだ15才の可愛らしかった時の事です。何故貴方が、あれ程真っ直ぐで率直なルシオの気持ちに気が付かないのか不思議なくらいですけどね?ルシオは大蛇から貴方を守って重症を負っても、私に抱かせる事を嫌がって貴方を離さなかった。『俺のものだ!』っていう気迫が凄まじいかったですよ」
え・・でも、あれは・・というか、俺はルシオに抱き締められる事に慣れていて、抱き締められる事が当たり前になっていて?
正直、幼い頃からルシオとの距離について、あまり何も考えていなかった。
俺は家族からも揉みくちゃにされながら育ったからか・・何だよ・・間違えた?
「俺、何か、間違ってたかも知れない・・」
「ヒューベルト、お前・・鈍いんだな。ルシオの奴が気の毒になる・・私ですら、すぐに気が付いたぞ。初めはすでに恋人同士なのかと思っていたくらいだ」
「うそだ・・そんな」
確かにルシオはいつでも俺を優先していたし、俺の為に何でも・・え・・だって、友達だったし・・
「何も間違ってはいませんよ。ただ、貴方はルシオに心を許しすぎていたから、気が付けなかっただけです。あの後、貴方が女の子ではなく王子だと知って驚きました。ルシオとも少し話をしたんですよ?ルシオから、今後ヒューベルト殿下が外交する立場になった時、不利にならないようにと頭を下げられました。それに、ルシオは必ずヒューベルト殿下の側近になると宣言までしていました。優秀な子ですね?できる事なら、大人になったルシオとも貴方の事について語らいたかった」
「ルシオは他に何て・・」
「それだけです。私は、ルシオほど魅力的な15才を見た事がありません。何もかも完璧・・ルシオにとって足りなかったのは、ヒューベルト殿下、くらいですかね?ふふっ!」
ルシオはそんなに俺への想いを晒していたか?だって、いつも揶揄ってばかりで、子供扱いばかりして・・俺が何を言っても顔色一つ変えずにいただろ?
「あいつの魔法剣、私は初めて誰かが覚醒する姿を見た。潜在能力が突然開花するとは聞いた事があったが、内なる力に目覚めたというよりも、お前を守りたい一心で感情の爆発が起きたように見えた。それに伴った特殊能力の発現は、本当に凄かった。あの時ルシオは、ヒューがいなければこの力はなかったと言っていたな。強くて真っ直ぐなお前への愛情だよ」
人並み外れた才能や知識なんかは、俺が気が付いた時には身に付けていたし、嫉妬もした事もあったけど、ルシオの覚醒・・そうだ・・ルシオはあの一件を境に、ますます頭角を現したんだ。
才能や技量が周囲よりも抜きん出ている事は、遠征や討伐に行けば一目瞭然だった。
本当に、ルシオは凄かったんだ。
「ルシオ・・ルシオ・・」
「ヒューベルト、たまにはこんな日があってもいいんじゃないのか?ルシオを知る者が、ルシオを偲んで語らう。教えてくれ、知りたい、ルシオがどんな男だったのか」
「ルシオの、事・・」
「そうですね?ヒューベルト殿下、もうそんなに苦しまないで。ルシオを忘れるのではなく、忘れないように思い出して話すのですよ?その時は是非、私たちも仲間に入れて下さい」
「明日・・ルシオの命日、なんだ・・」
「なら、毎年その日に話をしろ。ルシオを思い出せ、忘れるな、ルシオを」
そうか・・無理に忘れなくていいのか・・
考えないようにしていた・・思い出したくなかったから。
「怖く、なくなりたい・・ルシオがいない世界を」
「ヒュー?怖くなくなるまで、沢山話そう?私もそうしたい、いいでしょ?」
「俺にも教えてよ、ひゅう。俺、ルシオの事が知りたい!ひゅうが愛したルシオの事、知りたい!」
「え・・?俺が?ルシオを?何言って・・!」
「だって、そうに違いないよ。俺には分かる。ひゅうの初恋なんでしょ?ルシオが」
「違う!!絶対違う!違う・・俺は、そんな事、考えた事、なかった」
「そう?まぁ、いっか?でもね、ひゅう、素直になるのも良いんじゃない?ひゅうを愛したルシオの為に」
「話したい・・みんな、今夜は付き合えよ」
俺は、俺がルシオに恋をしているとセスに言われてもよく分からなかった。
だけど、もうそんな事はどうでも良くて、ただ今夜は、明日のルシオの命日になるまでは、ルシオの事を、この友人たちと一緒に話したくなったんだ。
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