34 / 317
第2章 自己変革編
⑤モヤモヤ
しおりを挟む「・・水・・だな」
俺は指先で、水の塊を突ついてみる。
待てよ?最初は氷属性、次は土属性だった。
無属性の洗浄魔法、最後は水属性?
こいつはいくつ魔法を保持しているんだ?
適性だけでなく、魔法効率が悪ければ大した魔法は使えない。効率が良ければ少ない魔力で大きな結果を出せる。
こいつの保有魔力はどうなっている?
「水、だよ?こうやって、口を付けて見て?吸って?」
レノは俺の事を見ながら唇を尖らせると、キスするみたいに近づいて、チューっと吸って見せた。
透明な水は、レノの桃色の唇を写した。
とても綺麗で、しばらく身動き出来ずにじっと見つめていた。
「カイル?」
「あ、あぁ!ありがとう。こうだな!」
そう言ってゴクゴクと水を飲んでむせた。
「ゴホッゴホッ!」
「もー!慌てないで、カイル。無くなってもまた出すから」
レノの手が俺の背中を摩ってくる。その小さな手の感触が、俺を落ち着かなくさせた。
「すまない・・なあ、お前はパーティは組む予定あるのか?ないなら俺と組まないか?」
「パーティ?」
「ああ、厄介な魔獣討伐や護衛依頼、あとは迷宮に行く時は複数で行ったほうが安全だ。いろんな属性持ちだったり職業だったり、それぞれの役割を果たしながら依頼をこなして行くんだ」
「なるほど・・ずっと独りだと思ってたから」
レノは少し考え込んでいる。
もし断られても、また誘ってみればいい。
「レノは冒険者としてまだまだだし、俺が色々教えてやるよ。だから俺とパートナーにならないか?」
俺がそう言って笑うと、レノはその場で「分かった」と返事をした。
「嬉しい!足でまといにならないように頑張るね!よろしく、カイル!!」
こんなに簡単に・・?
これはまずい・・俺がいなければ、きっとレノはすぐに・・誰かに食われるぞ・・
俺たちは、マジックバックに詰め込んだ一角ウサギを冒険者ギルドに持ち帰り、依頼完了報告をしてギルドの食堂「雨宿り」で食事する事にした。
今日の依頼は一角ウサギの肉30匹分と角を全て売却して、1万リルだった。
まだまだランクが低いから、いい稼ぎにはならない。だか、今日の報酬を俺との食事代にしたいと言ってきた。
元々レノの付き添いのつもりだったし、俺は金には困っていない。
そんな事、望んでいなかったんだか。
「よかったのか?せっかく稼いだのに」
「もちろんだよ!カイルがいなかったら俺、逃げてたかも知れないし。それにカイルとの初めてが嬉しかったから」
レノは甘そうなぶどうジュースを美味しそうに飲みながらそう言った。
初めてが嬉しい・・・この子はわざと言ってるのか?分からない。
「初めて・・ねぇ?確かに、やだやだ!来ないでー!って騒いでたもんな?」
楽しそうにレノを揶揄ってみる。
「もー!揶揄わないでよ!だって、本当に怖かったんだ・・それにあんな可愛いウサギを殺すとか無理だし・・」
だんだんと小さくなっていく声に、これ以上揶揄うのは可哀想になり「良くやったな」と頭を撫でると嬉しそうな笑顔を見せた。
俺はエールがいつもより美味く感じ、羊肉を頬張った。
レノを見ていると不思議な感じがしてくる。
容姿はまるで少女のようだ・・綺麗、いや、どちらかと言えば可愛い。
体格は華奢で、到底冒険者には見えない。
仕草や口調は男らしいところがあって、ナヨナヨはしていない。
ただ、時々見せる照れや、雰囲気がとても扇情的で色気がある。
男、なんだよな?胸もないし。
レノは俺のエールが無くなりそうになると、勝手に注文をする。
フォークで野菜をつついては、綺麗な形の小さなトマトをコロコロと弄んで、刺して口に入れている。
「明日、簡単な依頼を受けて見るか?ウサギよりももう少しランクを上げて、2人で剣を振るってみるのもいいんじゃないか?お前の剣の腕前、見せてみろよ」
そう言いながら、野菜ばかり食べているレノの皿に羊の肉の塊を置いた。
「肉も食べろ」
「行きたい!でもカイルは本当に俺でいいの?お金、稼げないんじゃない?」
「大丈夫だ。早くお前を育てて、高レベルな迷宮に入れれば、あっという間にお釣りがくるよ。早くレベルが上がるといいな?」
俺はまた考え込むレノを観察した。
自分の手のひらを見つめながら、何をそんなに考えているんだ?
「何をそんなに真剣に考えてるんだ?また手のひらから水でも出すのか?」
俺は、エールをぐびぐび飲み干す。
追加のエールはレノに任せる。
「俺、小さいから力付けないと。体力も筋力も足りない。ねぇ、ねぇカイル、お願い!俺に色々教えて?」
「・・お前のその言い方は良くない・・」
本当に無自覚だ。
最初は意識的にそうしているのかとも思っていた。しかし、レノはそんな事が出来る程器用でもなく、駆け引きなんて出来なさそうだ
俺は、はぁーっと大きなため息を付いた。
「あの、教えて下さい。お願いします!」
「いや、そうじゃなくて・・」
今まで、こいつはどうやって生きてきたんだ!?よく無事だったな・・・いや、まさかもう誰かの餌食に?
いやいや!もしかしたら、ものすごくやり手なのでは!?
あ・・俺は今、騙されそうになってるとか?
俺がまとまらない思考を巡らせていると、後ろから銀髪の長い髪をした男が声をかけてきた。
「やあ!何の話?無自覚で無防備な子を相手に何してるの?カイル?」
本当に面倒な野郎だ・・
ついでにこのエルフもいつもふわふわしながら無自覚で、俺を困らせるんだ。
レノがエルフィードの瞳に捕まって、じっと見つめている。レノは急に恥ずかしそうな顔になって、俯いてしまったんだが!
「エルフィード!あんまりレノに近づくなよ。その無駄に良い面を退けろ!」
「へー?なるほどー?あのカイルが?ねぇ、レノ。私を覚えてるかな?一度会ったよね?」
「はい、覚えてます。エルフィードさん?」
エルフィードは、図々しくもレノの隣に腰掛けた。
「うん、エルって呼んでね?レノ」
「エ、エル?」
「うんうん!いい子だね」
エルフィード!距離が近いんだよ!!レノが困ってるじゃないか!
「レノが困ってる。早くどこかに行けよ、邪魔するなエルフィード!」
エルフィードはニコリと笑ったかと思うと、レノの頬にキスをして「分かったよ。またねレノ」と言って去って行った。
「あの!馬鹿!もう来るなよ!エルフィード!!」
レノは呆然として固まったまま、動かなくなった。真っ赤になって、ぼーっとしている・・ 嘘だろ!?
「レノ?大丈夫か?あいつ、今度会ったらただじゃおかない!お、おい?あいつに惚れるなよ?」
俺はそう言って、濡れたタオルでレノの汚れた頬を丁寧に拭いた。
しかし拭いても拭いても、なかなか俺の気が済まない。
「ほ!惚れる!?お、俺、男だよ!?やめてよ、そんな・・」
そんな・・・?
それから?何を言おうとしている?
「同性でも、いいのか・・」
「おいおい!あいつはやめておけよ!訳ありだし!何人も女を泣かせて来たやつだぞ!絶対に駄目だ!」
俺は焦って、ガタッと音をたてて、立ち上がった。
「あ・・俺の事じゃなくてね?恋愛は自由でいいんじゃない?俺はそういうの、もういいからさ。さっきはちょっと驚いただけ」
そう言って、また甘そうなジュースを飲んでニコっと笑って見せる。
ん?そういうの、もういいからさ?
どういう意味だ?
こんなにも恋愛偏差値が低そうなやつが、もういいと言う程の何があったんだ?
「そうか・・ならいい」
俺は静かに椅子に座り、レノを見ていた。
「お前、今までその外見で苦労しなかったか?なんて言うかその・・いろんなへんな奴らがいるから気を付けろ。何かあったらすぐに俺に言え、分かったな?」
レノは俺がそう言うと、俺の顔にほんの少しだけ顔を寄せてきて、俺の顔をじっと見て言った。
「うん?んー、分かった。別に苦労した事なんてないけど。カイル、ありがとう」
絶対にこいつ、分かってないな・・
俺はどっと疲れて、ため息をついた。
しかし、本当に嫌だった。
エルフィードの奴、気安くレノに触って、キスまで!くそっ!なんかむしゃくしゃする。
なんだ?なんでだ?俺、酔ってるのか?
あー!!もやもやする。
44
あなたにおすすめの小説
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる