王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第10章 真実の幕開編

⑪レインを想う

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 レオが悲しそうな顔をして俺を見ている、今にも泣きそうな顔・・

「・・・」
「セス・・?」

 ひゅうもエルも・・心配そうに俺を見て、何か言いたげにしている。シュウは、何か怒ってるのかな・・

「レオ・・?どうしてそんなに、悲しそうな顔・・するの?」

 俺が手を伸ばすと、レオは俺の手のひらを自分の頬に当てて大きな手で包み込む。それから俺の手のひらにキスをする。

「セス、なの?良かった・・気分はどう?」
「大丈夫、でも、ちょっとだけ・・」

 久しぶりにお腹が空いた感じがする。しばらく何も食べられなくて、大分痩せてしまったし、心配もさせてしまった。今なら、何か食べれそうな気がする。

「ちょっとだけ・・どうしたんだ?レノ・・」
「ひゅう?ひゅう、俺、おなか空いた・・」

 ひゅうは、力が抜けたように息を吐いて俺に笑いかけた。それからレオと顔を見合わせて、目配せする。

「そうか、なら何か作ろう。食べたいものはあるか?」
「んー・・」

 俺は考える。温かい味噌汁、かなぁ・・

「シュウ、味噌はあるか?」
「あるよ、取って来る」
「うん、ひゅうが作った味噌汁がいい・・キャベツが入った甘いのが食べたい」

 俺は、こんなに甘やかされて良いのだろうか・・俺の体調が良くなくて、みんなに心配させてしまっている。

 最近は、すぐに眠くなって、いつも同じ夢を見ていた。苦しくて、切なくて、死にたいと心が叫ぶ夢。閉じこもって、誰の声も聞こえない。まるで、俺が両親を亡くした時みたいに、絶望して打ちのめされていた時のようだ。

 レインに会いたい感情、きっとそれはツカサさんのものだ。レインの記憶しか俺の中にあるはずないのに、なぜツカサさんの感情を感じるんだろう・・

 以前も考えていた事だけれど、レインはもう、地球では生きていない・・きっとツカサさんは、それを知っていて悲しがっているんだ。

 悲しい・・レインは、ツカサさんを庇って死んでしまった。

 愛してた・・会いたい。辛い、死にたい・・苦しい。

 レインは、自分がもう生きていないという事を知らない・・どうやって伝えたらいい?
 レインは、ツカサさんに会うために俺と契約したのに、自分がもう亡くなっていると分かったら・・

「つらいよ・・」
「セス!?」「レノ!?」

「悲しい・・会いたいよ・・」
「お願いだから!セス・・どこにも行かないで!」
「レノ・・レノ!どこにも行くな!」

 会いたい、レインに会いたい・・ツカサさんが俺の中で泣いている。今、会わないといけない気がするんだ・・レインに。

 レインは最近、ちっとも顔を見せなくて、どこに行っても会えない。何をしているのか、どこにいるのか、本当に分からないんだ。

 何故か俺の中にあるツカサさんの感情は、俺の心まで揺さぶってくる。切なくて、苦しい。

 ずっと・・俺があの日レインに出会った日から、ツカサさんはこんなにも悲しい気持ちでいたのかな。ツカサさんは大丈夫なの?

 死にたいって、心が叫んでいる。生きているよね?ツカサさん・・大丈夫だよね?

「あ・・ごめん、なさい・・」

 ツカサさんと一緒に俺は泣いていて、涙がぽたぽたと落ちていく。

「セス・・?」
「うん、レオ。俺・・何だろう・・変だよね・・あぅっ!いっ!はぁはぁ・・」

 頭がズキンと痛んで思わず頭を抑え込む。

「レノ、大丈夫か?俺に寄りかかれ」
「セス!私に抱き締めさせて?」
「はい、ストップ!見てられないから・・レノが困ってるだろ?」

 抱き締められたいって・・ツカサさんが泣いている。温めて欲しいって望んでいる。たまらない、ひとりは寂しくて・・恋人が恋しい。

「抱き締めてほしいって言ってる・・でも恋人が、いないんだ・・」
「「・・?」」

 ツカサさんの恋人は、レインだ。日本にいた頃のレインは、シュウと同じ黒髪に黒い瞳だった・・ツカサさんは、シュウなら受け入れてくれるだろうか・・

「私ではダメなの・・?」
「俺がいるだろ?」
「だから!ストップだってば!レノ、お前が選べばいいんだよ。抱き締めてもらえ!」

 俺は、みんなの視線を浴びながらゆっくりと起き上がって、シュウの袖を掴んだ。
 ツカサさんにとって、ここは異世界だ。どんなにカッコいいみんなでも、馴染みのない容姿だから。シュウなら、同じ日本人だから受け入れてくれるかな。

「いやいや!俺!?俺じゃないだろ!?」
「少しだけ・・我慢してよ・・友達でしょ・・?」

 俺は少し笑って、泣きながら両腕を伸ばし、シュウの首にしがみついた。するとシュウは仕方がないと言わんばかりの顔をしながら、俺を抱き上げて、立ったまま子供をあやすみたいに体を揺らした。

「よいしょー!はぁ・・あー、よーしよし・・」
「シュウ、ごめん。黒髪がいいんだってさ・・」
「どういう・・レノ、あのさ、さっきお前・・・わっ!!お、おい!暴れるな!落ちるぞ!」
「嫌!!助けて!」

 またこの人たち!!?なんなの!?
















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