王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第11章 神の暇つぶし編

③束の間

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「「あははっ!」」
「最高じゃん!ハマったー!」
「でしょ?まじでいいよね!バズりまくったよ!」

 なぜか俺は、司と楽しく話し込んでいる。
 俺が日本に残したアニメやゲームの未練について、司が熱心に教えてくる。しかもBGM付きで。

「まじかよ!それで?オープニングとかエンディングは?誰が歌ってんの?歌ってよ!もう最終回行った?うわー!劇場版ってなんだよー!!デジタル技師すごいんだろうな!」
「映像がさぁ、AI技術の進化とか3Dアニメーションの発展がすごいんだよ。ストーリー、衝撃の展開だよね。結構SNSでもやばかったよ。最終局面で覚醒するとかまじヤバめ。あとは死んだ仲間が復活パターン入ってくるし。曲も良かったよ?だいぶヒットしたし、アーティスト同士のコラボもいいよね。柊、何か楽器出来ないの?一緒にやろ?洞窟のあれってさ、セスさんの?」
「あれは俺たちのだ。お前も何かできんの?昔バンド組んでたから、一応俺はキーボードとドラムができる。ギターはビギナー」

 同じ年代ともあって、そして元は同じ国に住むもの同士、話が合うじゃないか。

 俺の知りたかったアニメの続きの最終回も聞けたし、途中になっていたゲームのクリア攻略法も聞けてスッキリ爽快な気分だ。

 最初はなんて奴なんだと怒りが湧いたけれど、司だって好きで異世界に来た訳じゃない。
 それはかつての俺だって同じだ。当然、責めたって仕方がないと分かっていたんだ。

 レオナルド殿下との約束さえ守っていれば、自由に過ごせばいい。俺たちはそれを見守りながら側にいるだけだ。

「セッションしよ!僕はギターが得意だからテク教えようか?ダンスは?♪♪♪フンフンフン♪♪・・みたいな?」
「あー、知ってる!俺、ストリートやってたから懐かしいな・・じゃあ、外行く?」
「行こ行こ!」
「あー!バスケしてー!司、出来るか?あ、お前今チビだしなぁ」
「チビって言うな!!柊だってチビじゃんか!」
「は?俺、180あるけど?王子達がデカ過ぎなんだよ・・レオナルド殿下、190って・・くそ!」
「柊さぁ、せっかくのイケメンなのに王子様達のせいで見劣りしてかわいそー!」
「黙っとけ・・」
「あははっ!そう言えば柊ってさ、事故で死んだのって22歳だっけ?仕事は?社会人してたの?」
「真面目に働いてた、中学校の教員。バスケ部顧問」
「まじで!?中学教師!?教科は?教科は?」
「保健体育。教えてやろうか?理科も資格あるけど?」
「先生かよ!」
「まあな、半年だったけど」
「お疲れー」

 中学生相手に真面目に働いてたわ・・バスケ部顧問、サービス残業で毎日汗かいて。懐かしいな。

 司が鼻歌まじりに、ふざけて踊って見せている。いや、上手いな・・
 俺は立ち上がって、河川敷の洞穴に向かおうとした所をレオナルド殿下に止められた。

「家の中で楽しめばいい、外は冷えるからな。それに、私の目の届く所にいろ」
「えー・・結構うるさくしちゃうかもしれないですよ?レオナルドさんって、心配性だよね」
「構わない、楽しめ。それに、私にとってセスが全てなんだ。視界にその姿を入れておきたい」

 さらっと言えてしまうのは、この人が王子だからなのかイケメンだからなのか・・ヒューベルトだってエルフィードだって、レノ大好き王子なんだけれど、ふたりに少しは遠慮とか・・ないですね・・

「ねぇ、柊・・アンダムってさ、みんなこんなにビジュ最強なの?それとも、ここのメンズが王子様枠だから?何もかも完璧過ぎて驚くんだけど・・それにしてもイケメン揃いだわ・・萌・・胸キュンキュンする・・ヒューベルト様ぁ・・」

 司はそう言いながら、ヒューベルトのイケメン面を再確認するように覗き込みながらうんうん頷いている。続いてエルフィードの側に行って恥ずかしそうに瞳を見つめる。こいつはエルフィード推しらしい・・エルフィードの前からなかなか離れようとしない・・おい!お前の愛するレインはどうした!!

 それにレノの姿で見つめられるエルフィードも、何とも言えない顔をしてるじゃないか・・気の毒にな・・

「ビジュ?イケメン?それはいったいどういう意味だ?」
「それは、ここにいる王子様達みたいな、最高に良い男の事だよ・・ずるいなぁ」

 それからレオナルド殿下の側に座って、至近距離からまじまじと顔を見つめて殿下に向かって言った。

「・・レオナルドさんの側には居たくないな・・下手すると本気で堕とされる・・これは危ない・・」
「はぁ・・ならシュウと遊んでろ」

 レオナルド殿下は、恋される事なんて日常茶飯事でさも無いことなんだろうけど、レノの姿で言われるとため息だってつきたくなるよな。

「俺、楽器取ってくるよ」
「分かった。柊、ありがとう」

 司は、今は楽しげにして過ごせているけれど、この世界にくるきっかけが入水自殺だった。肉体は今どうなっているのか分からない。治療を受けているのか、元気なのか・・魂がここにあるんだから、死んではいないと思うけど。

 もしも、レインと再会出来なければ、また命を絶とうとするのだろうか。
 そういえば、レインは使者なんだ・・ならばさっさと司を異世界転生でも転移でもすれば良いじゃないか!なぜそれが出来ないんだ?
 レインのやつ・・準備が出来ていないとか言っていたけれど、早く何とかしてやってくれよ・・

 司はギターも歌も上手い。ツインボーカルで歌ってみたり、ギターを教えてもらったり、なんならすごく・・すごく楽しくて、何だか悲しくなった。こんな出会いじゃなくて、ちゃんと友人として知り合いたかったよ。

「柊、僕さ、王都とか城下町に行ってみたいな。駄目かな・・お城とか見てみたい」
「それは俺じゃ決められない。レオナルド殿下に聞いてみたらいいんじゃないか?」

 もうすぐだって、レインが言っていた。ならば司の望むことのひとつでも叶えてやりたいと思う。

「いいだろう、明日街へ行ってこい。但し、16時には帰って来るんだ。その後、私が城へ連れて行こう」
「本当に?嬉しい!ありがとう、レオナルドさん!」

 司が嬉しそうに笑う。こんな風に楽しげにされると、別れが来た時、つらくなるじゃないか。








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