【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ

文字の大きさ
17 / 25

人はそれを嫉妬と呼ぶ。


エミリアが騎士のダニエルと婚約(仮)をして、二年が経過した。

エミリアの父、バートン伯爵は、ビジネスの功績を認められ、侯爵へと陞爵していた。
巷では影で「マンゴリラ侯爵」と呼ばれているらしく、エミリアは笑いが止まらなかった。

エミリアも侯爵令嬢となったが、元々規格外の令嬢だった為、本人はあまり変化が無かった。
ただ、十二歳になったエミリアは、今までは天才少女のように扱われていたが、ここにきて弱点も見えてきた。

「エミリアちゃんは、何でもそつなくこなすのに、お名前を覚えるのはちょっと苦手なのねぇ。」

ある日母に言われ、エミリアはドキッとした。

バレてる!
なんとか誤魔化してここまで来たけど、やっぱりバレてた!!

エミリアは何しろ、前世が日本人なのである。
日本人脳なるものがあるのかわからないが、とにかくカタカナの名前が頭に入ってこない。
微妙に似ていたり、発音が難しい名前もある。
今までは幼かったのと、話の内容に皆が気を取られていて気付かれなかったが、エミリアは貴族の名前を覚えるのに苦労していた。

あーもう、いっそあだ名を付けてしまいたい・・・
それか、短く愛称で呼べればいいけど、そんなに親しくないのに呼んだら大変なことになりそうだし。

今や、勢いに乗るバートン侯爵家である。
迂闊に親しげな態度を見せると、勘違いされて、大きな問題に発展しかねない。

地道に覚えるしかなく、今日も家族の影でブツブツ復習をしていた。

「エミリアってば、そんなに真剣にならなくても、僕と父上がついてるから大丈夫だよ。」

「いいなー、お兄ちゃんはすぐに覚えられて。私、顔すら同じに見える人がいっぱいいるのに。」

優しい兄がいつもフォローしてくれるが、さすがにいつまでも頼りっぱなしは良くないと気合いを入れる。
しかし、エミリアには、いわゆる外国人顔の見分けも難しい。
女性はまだいいのだが、年配で小太りの、髪が若干寂しい男性など、全部同じに見えてしまう。

「そんなこと言いながら、ちゃんと持ち物を覚えて、商売に繋げるんだからね。エミリアは凄いよ。」

顔は覚えられないが、眼鏡や時計などの小物には目が留まるエミリアは、持ち物で年配男性の判別をしていた。
この前も、ある男性貴族の懐中時計の鎖が以前と違うことに気付き、指摘をしたら、そんな細かいことを覚えていたのかと感動され、奥様へのプレゼントを依頼されたのである。

苦手な部分を家族に補ってもらいながら、侯爵令嬢となったエミリアが社交を学んでいる頃、騎士のダニエルも環境が変わりつつあった。


「ダニー様、昨夜のパーティーは楽しかったですか?モテモテだったそうですね。」

エミリアが、屋敷に顔を見せたダニエルに尋ねる。

あら、なんだか浮気を問い詰める奥さんみたいになってる?
違うの、ただの確認だもの。
別に気になってる訳じゃないし。

冷静に、私は少しも気にしてませんよ風な口調を意識する。

「ん?もしかして、嫉妬か!?俺が他の令嬢と何かあったと心配してるのか?」

ダニエルの満面の笑顔が憎らしい。

「ちーがーいーまーすぅー!」

否定するが、なんだか恥ずかしくて目が見られない。
ダニエルは自分の膝にエミリアを乗せると、頭を撫でた。

「俺がエミィ以外に気を許すはずがないだろ?何年エミィを見てると思ってるんだ。」

ダニエルの言葉に嘘がないのはわかっているが、ダニエルは騎士団でも出世頭であり、婚約者のエミリアが幼い内に、一発逆転を狙う令嬢が多いと聞く。
パーティーにまだ出られないエミリアは、話を聞くとついモヤモヤしてしまうのだ。

「どうだか。そんなこと言いながら、ボンキュッボンなお姉さんにフラーっと靡いちゃうかもしれないし。」

まだ十二歳のエミリアは、体型では全く勝負にならない。
いまだペタンコな胸を見下ろした。

「ブッ!アハハハハ!!そこを気にしてたのか?エミィは可愛くて困る。」

ダニエルはギュッとエミリアを抱きしめた。

「焦らなくても、エミィは大人になってるよ。でもそんなこと言い出すなんて、そろそろ婚約者(仮)も終わりか?」

なんだか悔しくなったエミリアは、口を尖らせながら言った。

「まだ(仮)です!!」

ダニエルはしばらく笑い続けていた。












感想 6

あなたにおすすめの小説

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。 でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!! 超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。 しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。 ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。 いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——? 明るく楽しいラブコメ風です! 頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★ ※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。 ※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!! みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*) ※タイトル変更しました。 旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜

水都 ミナト
恋愛
「ルイーゼ・ヴァンブルク!!今この時をもって、俺はお前との婚約を破棄する!!」 ヒューリヒ王立学園の進級パーティで第二王子に婚約破棄を突きつけられたルイーゼ。 彼女は周囲の好奇の目に晒されながらも毅然とした態度でその場を後にする。 人前で笑顔を見せないルイーゼは、氷のようだ、周囲を馬鹿にしているのだ、傲慢だと他の令嬢令息から蔑まれる存在であった。 そのため、婚約破棄されて当然だと、ルイーゼに同情する者は誰一人といなかった。 いや、唯一彼女を心配する者がいた。 それは彼女の弟であるアレン・ヴァンブルクである。 「ーーー姉さんを悲しませる奴は、僕が許さない」 本当は優しくて慈愛に満ちたルイーゼ。 そんなルイーゼが大好きなアレンは、彼女を傷つけた第二王子や取り巻き令嬢への報復を誓うのだが…… 「〜〜〜〜っハァァ尊いっ!!!」 シスコンを拗らせているアレンが色々暗躍し、ルイーゼの身の回りの環境が変化していくお話。 ★全14話★ ※なろう様、カクヨム様でも投稿しています。 ※正式名称:『ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために、姉さんをいじめる令嬢を片っ端から落として復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜』

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…