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無茶をする侯爵令嬢。
「戦況はどうなっているの?」
エミリアはバーシャルを、いや、ダニエルの状態を心配するあまり、父親に詰め寄った。
しかし、手広く商売を行っている父でも、バーシャルの現在の状況は掴めず、不安は増すばかりであった。
もう!
この世界は情報が遅いところが本当に困るんだよね!
そもそも通信手段が少なすぎるんだよ。
かといって、電話すら発明出来ないし・・・
私のバカ。
新しく情報が入るのを待つことしか出来ないエミリアは、どんどん悪い方へと物事を考えてしまう。
こうしている間にも、大量の兵達がバーシャルを襲って、ダニー様がやられてしまうかも。
ルシアン様の援軍が到着するにはまだ時間がかかるだろうし。
バーシャルへは急いでも二日はかかるだろう。
いても立ってもいられず、エミリアは思いたった。
そうだバーシャル、行こう。
エミリアはすぐさま父にバーシャル行きを直訴したが、速攻で却下された。
「パパ!なんでダメなの?ちょっと近くに行くだけでいいの。状況さえわかれば帰ってくるから!」
「駄目に決まっているよね?侯爵令嬢が、そんな危険な場所へ行くのを許す父親がいると思うか?」
「そこをなんとか!あ、あちらにあるパパの商会の支店も気になるでしょ?もしかして、様子を見に行こうとしてるんじゃないの?私もそのチームに入れて!一生のお願い!!」
かくして、エミリアは強引にバーシャル方面へ旅立つこととなった。
自ら戦地へ赴くという、令嬢以前に人として考えられない行為だったが、昔から風変わりなエミリアに、結局は家族も折れたのである。
翌日、エミリアは父の商会の人々とバーシャル近郊へ向けて出発した。
チームのリーダーはシーラの夫なので心強かったが、見送りに来ていたシーラには、「なんて無茶をするんですか!」と叱られてしまった。
最終的にバーシャルの近くまで向かうが、途中にある支店にも顔を出し、流通状況や、在庫について確認をしながら進む為、気は急くが、すぐにはバーシャルへは辿り着けない。
しかし、足を引っ張るにも関わらず、無理に連れてきてくれたことに感謝し、エミリアは出来るだけお手伝いを頑張った。
働いていた方が気も紛れたからである。
王都を出発して五日。
ようやくバーシャルの隣町に到着した。
エミリアは早速聞き込みを開始し、現在の戦況を探った。
すると、人々の表情は明るく、今日中にもこちら側の勝利で戦いは終わりそうだとのことだった。
安堵に包まれたエミリアは、すでに戦勝ムードが漂う隣町を抜け、バーシャルの町へ向かった。
バーシャルは封鎖され、入れないように門が閉まっている。
どうにかして中に入れてもらえないか、衛兵に話しかけようとした時、勝鬨の声が聞こえた。
どうやら、我が国が勝利したらしい。
「うわぁ、おめでとうございます!」
思わず衛兵に言うと、それまで強張っていた顔が緩み、笑みを覗かせている。
あ、今がチャンスなんじゃ?
頼んだら入れてくれるかも。
ノリで頼もうとすると、中から切羽詰まった叫び声が聞こえた。
「大変だ!副団長が斬られた!」
エミリアは急激に辺りの色が失われていくのを感じた。
嘘でしょ?
今、勝ったって言ってたじゃない。
エミリアは衛兵の腕を掴むと懇願していた。
「お願い!中に入れて下さい!私、エミリア・バートンと言います。ダニエル様の婚約者です!!」
衛兵は目を大きくして驚いていたが、エミリアの名前を知っていたのか、特別に入れてくれた。
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、エミリアはまだ攻撃の跡が生々しく残る町の中心へと走り出した。
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