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許した先に
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「一体どういうことかな、陽太クン?」
「本当にごめんなさい」
仁王立ちの金森さんと、その前で土下座させられている陽太。状況を掴めていないステラは、その光景に困惑の色を示している。
「乙女の部屋を漁るなんて、流石にデリカシー無さすぎるんじゃないかな?」
「E.T.研の部室って変わったもの置いてそうだなって思って、つい……」
「そこに『見たら殺す』って書いてあったよね? それなのに開けたわけだ。つまり死の覚悟はできているってことよね?」
「だって、あんなものが入ってるとは――」
「だからこその秘密でしょ! 言い訳は結構!」
「そんなことよりも、金森さんはなんであんな物を持ち込んでるんですか?」
俺が当然の突っ込みを入れると、金森さんは俊敏な動作で陽太の横に並んで俺の方へ向かって土下座をした。
「違うんです! アレは近々持ち帰るつもりで……」
「何が違うんですか? 持ち帰るとか以前に、そもそも神聖な学び舎にあんな物を持ってきてることが問題だと思うんですけど?」
「仰る通りでございます、星見様」
「ふざけてます……?」
「いえ、ごめんなさい……本当に反省してます」
ふざけまじりだった金森さんだが、俺が本気で怒っていることを察して声のトーンが低くなった。
「はっきり言って失望しました。普通の倫理観があれば、あんな不健全な物は持ち込みません」
「……はい」
「学生課に通報していいような案件ですけど、俺も鬼じゃないのでそこまでしません。その代わりに深く反省してください」
「ごめんなさい。持ち帰って二度と持ってきません……だから――」
「だから?」
この状況で「許してください」とみっともない言葉を口にするのかと思い呆れたが、金森さんが続けたのは別の言葉だった。
「だから、やめないでください」
「……まだ決めてはいないですけど。約束はできません」
金森さんは地面に顔をつけたまますっかりしゅんとしてしまった。あれほど強引に俺たちを勧誘するほどだ、よほどE.T.研に思い入れがあるのだろう。けれど、金森さんは公共の場に相応しくないものを持ち込み、その結果ステラに悪影響を与えかねない事態を招いたのだ。その罪はこれだけで許されるものではない。
とはいえ、これ以上に叱りつけるのは流石に俺も心が痛む。急にやり場のなくなった怒りをどう沈めれば良いかわからないでいたところに、ちょうどもう一人だけ悪事を犯した罪人がいた。
「……それと陽太! お前もだ」
ちらちらとこちらの様子を窺いつつ上半身を徐々に上げていた陽太であったが、名前を呼ばれるとびくりと体を震わせ、再び頭を垂れた。
「悪かった。ほんの出来心で……」
「ステラと一緒のときに物色なんて悪趣味なことするな! 教育に悪いだろ」
「俺も反省してる」
部屋を漁って良からぬ物を見つけてしまったことに目を瞑ったとしても、ステラにあんな物を触らせたことは看過できない。その点について追及しようとしたとき、ステラが口を開いた。
「レンは何を怒ってるんだ? これがどうしたというのだ?」
ステラは手に握った電動マッサージ器
「別に汚くなんてないぞ。レンは何を怒ってるんだ?」
「理由はいいから、それを離せ」
「ワタシに隠し事か? 納得いかないな。これが何か説明してくれ」
「駄目だ。どうしても伝えられない」
外の世界へ出たばかりのステラは赤子も同然だ。そんな彼女に変な情報を吹き込んだらどんな悪影響が出るか。
「教えてくれないならワタシはレンの言うことを聞かないぞ」
なぜ彼女はこんなつまらないことに、ここまで意地を張るのだろう。
「これはお前のためでもあるんだ。お願いだからわかってくれ」
「どうしてもと言うなら、条件がある」
「条件……?」
まさか、この状況でステラから取引を持ちかけられるとは思いもよらず、たじろいでしまった。一体どんな無理難題を投げられるのだろうか。ごくり、と唾を飲んで身構えた。
「アカネを許すこと。もちろんヨータを責めるのもダメだ」
その言葉を受けて気づいた。ステラは電動マッサージの用途を知りたくて意地を張っているのではない。金森さんや陽太が責められることに納得がいかないのだ。ステラは他人を思いやる心を持っている。天王寺に会ったときも俺を守ろうとして、拳を振り上げた。自分が愚弄されることよりも大切な人が愚弄されることに怒った。それと比べると、自分の価値観でもって他人を頭ごなしに責めている俺はなんて器の小さいことだろう。
「……わかったよ」
「うむ、それで良い」
「ありがとうね、ステラちゃーん!」
金森さんがステラに抱きついた。そもそもの元凶のくせに図々しいと言いたくなったが、許すと決めた以上、口には出さなかった。
「今回はステラに免じて許しますけど、変な物は全部持ち帰ってくださいね」
「ええ勿論持ち帰りますとも!」
「正直、退部しようかと思いましたよ」
「それはやめて!」
「駄目だ!」
金森さんとほぼ同時にステラが言った。
「ワタシはここで遊びたい!」
「一瞬本気で考えたけど、流石に初日に退部はしないよ。金森さんも、部員がいないと廃サーになるのは嫌でしょう? だったら、俺たちに逃げられないように振る舞ってください」
「まあ、それもそうだけど……」
金森さんは何か言おうか言うまいか悩んでいるようで、陽太が「どうしたんすか?」と尋ねた。
「廃サーが嫌なのもそうなんだけど、私は純粋に君らと一緒に楽しみたいなって」
「突然、恥ずかしい台詞吐くんすね」
「躊躇ってたのに、陽太っちが訊いたんじゃん!」
金森さんは、柄にもなく顔を赤らめながら言葉を続けた。
「私さ、こんなんだからすぐ人離れちゃってさ。友達とか全然いないんだよね。今度こそ仲間と一緒に青春したいなって思ってたんだよね」
少し意外だった。金森さんが俺たちを勧誘したのは、廃サーを回避し、性欲と一体化した知的好奇心を満たす場を維持する打算が主な理由だと思っていた。こんな変わった人でも課外活動を通じて他人と交流したいと平凡な願いを持っているのか。
「先輩って結構寂しがり屋なんすね」
陽太が茶々を入れ、金森さんが「このー!」とポカポカ叩いた。
もしかしたら金森さんも不器用なのかもしれない。妙にハイテンションで距離感が近いのも、彼女なりに仲良くしようと頑張った結果かもしれない。そう思うと、自分と正反対に思えた金森さんに急にシンパシーを感じてきた。表現が違うだけで根底にある欲求は案外似通っているのではなかろうか。
「楽しいな。やっぱり仲良しが一番だ!」
満面の笑みを浮かべるステラ。ステラは今日のMVPだ。彼女の一言がなければ、俺はこの二人との関係を壊すところだった。金森さんには歓迎会で温かい言葉をかけてもらった恩が、陽太にはこんな面倒な俺と長年付き合いステラの世話までしてもらっている恩がある。それを無視して二人を責めることこそ重大な罪じゃないか。意図していたかはわからないが、頭を冷やし、過ちに気づくチャンスを、ステラは俺に与えてくれたのだ。
俺は二人に対して土下座して謝った。
「ごめんなさい。色々と言い過ぎました」
「いや、元は私が悪いんだし、そこまでしなくても」
「いえ、俺の方が悪いです。俺が寛容に生きれないのが悪いんです。ステラみたいに優しくなれれば……」
「そんなのいいんだよ。私だって暴走しちゃうことばっかだし」
「さっきは、ああ言いましたけど、許してもらえるなら、ここで活動続けてみたいです」
「こちらこそよろしくお願いします。不甲斐ない先輩をどうか支えてくれたまえよ、副部長!」
頭の中が一瞬真っ白になった。顔を上げると金森さんがにんまりとこちらに笑いかけている。
「副部長……それって俺のことですか?」
「あれ、言ってなかったっけ? 大学の決まりで部長、副部長、会計の三役が必須になってるから、ホシミンが副部長で陽太っちを会計。申請ももう出してるよ」
「何勝手にやってるんですか!?」
やっぱりこの人はどうかしてる。
「えー、でも三人なんだから仕方ないじゃん。大学生じゃないステラちゃんは名簿に書けないし。副部長より会計が良かった?」
「そういう問題じゃなくて、説明もせずに勝手に決めるなってことですよ! 陽太、お前も言ってやれ!」
「え、俺は別に良いけど?」
一切気にしている素振りを見せない陽太。三人だから役職が回ってくるのは仕方ないが、普通は説明くらいするだろう? それとも、これも俺の感覚がおかしいのか?
「フクブチョーだってな、格好いいな! 服を作るのか?」
的外れなことを言うステラの頭を金森先輩は「ステラちゃんは可愛いね」と撫でる。
きっと、これから先もこんなドタバタの日々が続いていくのだろう。憂鬱なような、それでも楽しいような。
「本当にごめんなさい」
仁王立ちの金森さんと、その前で土下座させられている陽太。状況を掴めていないステラは、その光景に困惑の色を示している。
「乙女の部屋を漁るなんて、流石にデリカシー無さすぎるんじゃないかな?」
「E.T.研の部室って変わったもの置いてそうだなって思って、つい……」
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「だって、あんなものが入ってるとは――」
「だからこその秘密でしょ! 言い訳は結構!」
「そんなことよりも、金森さんはなんであんな物を持ち込んでるんですか?」
俺が当然の突っ込みを入れると、金森さんは俊敏な動作で陽太の横に並んで俺の方へ向かって土下座をした。
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「……はい」
「学生課に通報していいような案件ですけど、俺も鬼じゃないのでそこまでしません。その代わりに深く反省してください」
「ごめんなさい。持ち帰って二度と持ってきません……だから――」
「だから?」
この状況で「許してください」とみっともない言葉を口にするのかと思い呆れたが、金森さんが続けたのは別の言葉だった。
「だから、やめないでください」
「……まだ決めてはいないですけど。約束はできません」
金森さんは地面に顔をつけたまますっかりしゅんとしてしまった。あれほど強引に俺たちを勧誘するほどだ、よほどE.T.研に思い入れがあるのだろう。けれど、金森さんは公共の場に相応しくないものを持ち込み、その結果ステラに悪影響を与えかねない事態を招いたのだ。その罪はこれだけで許されるものではない。
とはいえ、これ以上に叱りつけるのは流石に俺も心が痛む。急にやり場のなくなった怒りをどう沈めれば良いかわからないでいたところに、ちょうどもう一人だけ悪事を犯した罪人がいた。
「……それと陽太! お前もだ」
ちらちらとこちらの様子を窺いつつ上半身を徐々に上げていた陽太であったが、名前を呼ばれるとびくりと体を震わせ、再び頭を垂れた。
「悪かった。ほんの出来心で……」
「ステラと一緒のときに物色なんて悪趣味なことするな! 教育に悪いだろ」
「俺も反省してる」
部屋を漁って良からぬ物を見つけてしまったことに目を瞑ったとしても、ステラにあんな物を触らせたことは看過できない。その点について追及しようとしたとき、ステラが口を開いた。
「レンは何を怒ってるんだ? これがどうしたというのだ?」
ステラは手に握った電動マッサージ器
「別に汚くなんてないぞ。レンは何を怒ってるんだ?」
「理由はいいから、それを離せ」
「ワタシに隠し事か? 納得いかないな。これが何か説明してくれ」
「駄目だ。どうしても伝えられない」
外の世界へ出たばかりのステラは赤子も同然だ。そんな彼女に変な情報を吹き込んだらどんな悪影響が出るか。
「教えてくれないならワタシはレンの言うことを聞かないぞ」
なぜ彼女はこんなつまらないことに、ここまで意地を張るのだろう。
「これはお前のためでもあるんだ。お願いだからわかってくれ」
「どうしてもと言うなら、条件がある」
「条件……?」
まさか、この状況でステラから取引を持ちかけられるとは思いもよらず、たじろいでしまった。一体どんな無理難題を投げられるのだろうか。ごくり、と唾を飲んで身構えた。
「アカネを許すこと。もちろんヨータを責めるのもダメだ」
その言葉を受けて気づいた。ステラは電動マッサージの用途を知りたくて意地を張っているのではない。金森さんや陽太が責められることに納得がいかないのだ。ステラは他人を思いやる心を持っている。天王寺に会ったときも俺を守ろうとして、拳を振り上げた。自分が愚弄されることよりも大切な人が愚弄されることに怒った。それと比べると、自分の価値観でもって他人を頭ごなしに責めている俺はなんて器の小さいことだろう。
「……わかったよ」
「うむ、それで良い」
「ありがとうね、ステラちゃーん!」
金森さんがステラに抱きついた。そもそもの元凶のくせに図々しいと言いたくなったが、許すと決めた以上、口には出さなかった。
「今回はステラに免じて許しますけど、変な物は全部持ち帰ってくださいね」
「ええ勿論持ち帰りますとも!」
「正直、退部しようかと思いましたよ」
「それはやめて!」
「駄目だ!」
金森さんとほぼ同時にステラが言った。
「ワタシはここで遊びたい!」
「一瞬本気で考えたけど、流石に初日に退部はしないよ。金森さんも、部員がいないと廃サーになるのは嫌でしょう? だったら、俺たちに逃げられないように振る舞ってください」
「まあ、それもそうだけど……」
金森さんは何か言おうか言うまいか悩んでいるようで、陽太が「どうしたんすか?」と尋ねた。
「廃サーが嫌なのもそうなんだけど、私は純粋に君らと一緒に楽しみたいなって」
「突然、恥ずかしい台詞吐くんすね」
「躊躇ってたのに、陽太っちが訊いたんじゃん!」
金森さんは、柄にもなく顔を赤らめながら言葉を続けた。
「私さ、こんなんだからすぐ人離れちゃってさ。友達とか全然いないんだよね。今度こそ仲間と一緒に青春したいなって思ってたんだよね」
少し意外だった。金森さんが俺たちを勧誘したのは、廃サーを回避し、性欲と一体化した知的好奇心を満たす場を維持する打算が主な理由だと思っていた。こんな変わった人でも課外活動を通じて他人と交流したいと平凡な願いを持っているのか。
「先輩って結構寂しがり屋なんすね」
陽太が茶々を入れ、金森さんが「このー!」とポカポカ叩いた。
もしかしたら金森さんも不器用なのかもしれない。妙にハイテンションで距離感が近いのも、彼女なりに仲良くしようと頑張った結果かもしれない。そう思うと、自分と正反対に思えた金森さんに急にシンパシーを感じてきた。表現が違うだけで根底にある欲求は案外似通っているのではなかろうか。
「楽しいな。やっぱり仲良しが一番だ!」
満面の笑みを浮かべるステラ。ステラは今日のMVPだ。彼女の一言がなければ、俺はこの二人との関係を壊すところだった。金森さんには歓迎会で温かい言葉をかけてもらった恩が、陽太にはこんな面倒な俺と長年付き合いステラの世話までしてもらっている恩がある。それを無視して二人を責めることこそ重大な罪じゃないか。意図していたかはわからないが、頭を冷やし、過ちに気づくチャンスを、ステラは俺に与えてくれたのだ。
俺は二人に対して土下座して謝った。
「ごめんなさい。色々と言い過ぎました」
「いや、元は私が悪いんだし、そこまでしなくても」
「いえ、俺の方が悪いです。俺が寛容に生きれないのが悪いんです。ステラみたいに優しくなれれば……」
「そんなのいいんだよ。私だって暴走しちゃうことばっかだし」
「さっきは、ああ言いましたけど、許してもらえるなら、ここで活動続けてみたいです」
「こちらこそよろしくお願いします。不甲斐ない先輩をどうか支えてくれたまえよ、副部長!」
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「何勝手にやってるんですか!?」
やっぱりこの人はどうかしてる。
「えー、でも三人なんだから仕方ないじゃん。大学生じゃないステラちゃんは名簿に書けないし。副部長より会計が良かった?」
「そういう問題じゃなくて、説明もせずに勝手に決めるなってことですよ! 陽太、お前も言ってやれ!」
「え、俺は別に良いけど?」
一切気にしている素振りを見せない陽太。三人だから役職が回ってくるのは仕方ないが、普通は説明くらいするだろう? それとも、これも俺の感覚がおかしいのか?
「フクブチョーだってな、格好いいな! 服を作るのか?」
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