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星の想い
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振り返ったらレンがいることをどこかで期待していたが、ただ夜道が真っ直ぐに続いているだけで、全部終わったんだと実感した。
研究所から逃げ出し、リサと別れたあの夜、ワタシは不安でいっぱいだった。目に映る物全てが初めて見る物で、何もわからない外の世界。ワタシ自身のことすら全然わかっていないのに、そんな未知の世界でどうやって生きればいいのかわからなかった。
そこにレンが現れた。
レンは得体の知れないワタシに優しくしたが、その優しさはワタシがヒトでないことを知らないからだと思った。それまでワタシに優しくしてくれたのはリサだけだったから、他のヒトから与えられる優しさを信じられなかった。
だからワタシは自暴自棄になってわざと手を変身させてみせた。ワタシがヒトではないと理解すれば、この男も逃げ出すだろう。研究所に連れ戻されても、別の誰かに捕まっても構わない。どのみちリサがいなければ、ワタシの正体を隠して生きることなんてできないのだから。
けれど、レンはワタシがヒトでないことを知っても受け入れてくれた。こんな優しいヒトを巻き込んではいけない。ワタシはレンから離れようとしたが、レンはワタシを部屋に置いてくれた。ゆくあてもないワタシに居場所をくれた。
レンを好きになるのに時間は要らなかった。
これまでにない不思議な感覚だった。リサといるときは安心が強かった。でもレンと一緒だと心が跳ねるようだった。もっとワタシを見て欲しい。もっとレンを知りたい。でもそれを口に出してレンに伝えることはできない。
その気持ちを恋だと認識したのは、ヨータが貸してくれた漫画がきっかけだった。ラブコメの主人公のドキドキはワタシの心臓の音とそっくりだった。自分の気持ちに名前があると知って、驚きと共に喜びが溢れてきた。ヒトではないワタシでも普通のヒトみたいな感情を持っている。ラブコメのキラキラがワタシの中にもある。バケモノと呼ばれたワタシにとって、それは救いだった。
ワタシはこの気持ちが恋であると確かめたくて、すぐにヨータに話した。ヨータはワタシの気持ちを恋だと認めてくれた後に「ステラちゃんならあいつを救ってやれるかもな」と言った。それがどういう意味かはわからなかったが、ワタシがリサやレンに助けてもらったように、ワタシがレンを助けられたとしたら、どれだけ嬉しいことだろう。
だけどヨータは一つだけワタシに忠告した――「あいつの気持ちが整うまで待ってやってくれ」
気持ちが整うというのは、きっとワタシと同じ「好き」の気持ちをレンが持つことだ。ラブコメではその状況を両想いと呼んでいた。両想いになれば恋人に、そして恋よりも深い愛という感情を育てて夫婦になり、セックスというものをして子供を作るらしい。難しいことはわからないが、まずはレンに好きになってもらう必要があった。
でもそれはあっさり達成できた……だが、実際には両想いになれたと勘違いしただけなのだろう。ワタシがレンの「好き」を手に入れたと思ったのは、動物園で意識を失ったワタシが目覚めた後だ。涙を流しながらワタシを抱きしめるレンの心臓はドキドキと鳴っていた。
ワタシはレンにワタシの過去を打ち明けた。レンがワタシを好きだとしても、ワタシがバケモノだと知れば気持ちは変わるかもしれない。そんな不安を消し去りたかった。そして、ワタシがこれまでに人を傷つけたことを知っても、レンは受け入れてくれた。初めて会った夜と同じように、ワタシに優しい言葉をかけてくれた。その場で気持ちを打ち明けようとも思ったが、やっぱり怖くてやめた。動物園で目覚めた後は意識がぼんやりしていたから、レンの心臓の音をちゃんと確かめられたわけじゃなかった。バケモノのワタシを受け入れたのも、レンが優しいだけかもしれない。だから、すぐに確かめた。ハンバーガーを買いに夕焼けの中を歩くときに手を繋いだ。感覚を研ぎ澄ますと、繋いだ手から鼓動と体温の高まりを感じた。あの瞬間、ワタシはレンと完全に気持ちが通じたと確信した。この上ない喜びだった。リサを失った悲しみでできた穴も埋めてしまえるような喜びだった。
それはバケモノのワタシが得るにはあまりに大きな幸せで、明日には壊れてしまうんじゃないかと不安になったが、その後もキリヤが姿を見せることもなく、ワタシはレンと一緒に大学へ行くことができた。レンとワタシは両想いで、キリヤの邪魔もない。そうなれば、あとは想いを伝えるだけ。ワタシは告白のために最高の場を作る準備をした。ヨータとアカネの力も借りて、レンの誕生日パーティーを企画した。前にカレーを作ったときに喜んでくれたから、今度も料理を作ろうと決めた。誕生日プレゼントで気持ちの伝わるのは手作りだというから、何度も失敗しながらもエプロンを作り上げた。
レンはワタシが想像した以上に喜んでくれた。涙を流して、ワタシのプレゼントを抱きしめてくれた。勇気を出せず、告白のタイミングが遅くなってしまったが、それ以外は完璧だった。気持ちを共有して一つになれると信じていた。
けれど、結果がこれだ。
レンには拒絶され、きっともうどうにもならない。
何を間違えたのだろう。どこから間違えていたのだろう。両想いになれたと安心してレンの気持ちを確かめるのをやめたのがいけなかったのか。レンのドキドキは恋とは違う感情だったのか。それとも、レンが言ったように、ワタシの「好き」は本当の好きではないのだろうか。
何もわからない。宇宙人だから。バケモノだから。
きっと外の世界に、ワタシの居場所はない。
今はただ、帰りたい。リサに会いたい。リサに慰めて欲しい。自由なんてなくてもいいから、ずっと檻の中でいいから……もうこんな思いはしたくない。ワタシが傷つくのも、大切なヒトを傷つけるのも、もう嫌だ……さよなら、レン。
研究所から逃げ出し、リサと別れたあの夜、ワタシは不安でいっぱいだった。目に映る物全てが初めて見る物で、何もわからない外の世界。ワタシ自身のことすら全然わかっていないのに、そんな未知の世界でどうやって生きればいいのかわからなかった。
そこにレンが現れた。
レンは得体の知れないワタシに優しくしたが、その優しさはワタシがヒトでないことを知らないからだと思った。それまでワタシに優しくしてくれたのはリサだけだったから、他のヒトから与えられる優しさを信じられなかった。
だからワタシは自暴自棄になってわざと手を変身させてみせた。ワタシがヒトではないと理解すれば、この男も逃げ出すだろう。研究所に連れ戻されても、別の誰かに捕まっても構わない。どのみちリサがいなければ、ワタシの正体を隠して生きることなんてできないのだから。
けれど、レンはワタシがヒトでないことを知っても受け入れてくれた。こんな優しいヒトを巻き込んではいけない。ワタシはレンから離れようとしたが、レンはワタシを部屋に置いてくれた。ゆくあてもないワタシに居場所をくれた。
レンを好きになるのに時間は要らなかった。
これまでにない不思議な感覚だった。リサといるときは安心が強かった。でもレンと一緒だと心が跳ねるようだった。もっとワタシを見て欲しい。もっとレンを知りたい。でもそれを口に出してレンに伝えることはできない。
その気持ちを恋だと認識したのは、ヨータが貸してくれた漫画がきっかけだった。ラブコメの主人公のドキドキはワタシの心臓の音とそっくりだった。自分の気持ちに名前があると知って、驚きと共に喜びが溢れてきた。ヒトではないワタシでも普通のヒトみたいな感情を持っている。ラブコメのキラキラがワタシの中にもある。バケモノと呼ばれたワタシにとって、それは救いだった。
ワタシはこの気持ちが恋であると確かめたくて、すぐにヨータに話した。ヨータはワタシの気持ちを恋だと認めてくれた後に「ステラちゃんならあいつを救ってやれるかもな」と言った。それがどういう意味かはわからなかったが、ワタシがリサやレンに助けてもらったように、ワタシがレンを助けられたとしたら、どれだけ嬉しいことだろう。
だけどヨータは一つだけワタシに忠告した――「あいつの気持ちが整うまで待ってやってくれ」
気持ちが整うというのは、きっとワタシと同じ「好き」の気持ちをレンが持つことだ。ラブコメではその状況を両想いと呼んでいた。両想いになれば恋人に、そして恋よりも深い愛という感情を育てて夫婦になり、セックスというものをして子供を作るらしい。難しいことはわからないが、まずはレンに好きになってもらう必要があった。
でもそれはあっさり達成できた……だが、実際には両想いになれたと勘違いしただけなのだろう。ワタシがレンの「好き」を手に入れたと思ったのは、動物園で意識を失ったワタシが目覚めた後だ。涙を流しながらワタシを抱きしめるレンの心臓はドキドキと鳴っていた。
ワタシはレンにワタシの過去を打ち明けた。レンがワタシを好きだとしても、ワタシがバケモノだと知れば気持ちは変わるかもしれない。そんな不安を消し去りたかった。そして、ワタシがこれまでに人を傷つけたことを知っても、レンは受け入れてくれた。初めて会った夜と同じように、ワタシに優しい言葉をかけてくれた。その場で気持ちを打ち明けようとも思ったが、やっぱり怖くてやめた。動物園で目覚めた後は意識がぼんやりしていたから、レンの心臓の音をちゃんと確かめられたわけじゃなかった。バケモノのワタシを受け入れたのも、レンが優しいだけかもしれない。だから、すぐに確かめた。ハンバーガーを買いに夕焼けの中を歩くときに手を繋いだ。感覚を研ぎ澄ますと、繋いだ手から鼓動と体温の高まりを感じた。あの瞬間、ワタシはレンと完全に気持ちが通じたと確信した。この上ない喜びだった。リサを失った悲しみでできた穴も埋めてしまえるような喜びだった。
それはバケモノのワタシが得るにはあまりに大きな幸せで、明日には壊れてしまうんじゃないかと不安になったが、その後もキリヤが姿を見せることもなく、ワタシはレンと一緒に大学へ行くことができた。レンとワタシは両想いで、キリヤの邪魔もない。そうなれば、あとは想いを伝えるだけ。ワタシは告白のために最高の場を作る準備をした。ヨータとアカネの力も借りて、レンの誕生日パーティーを企画した。前にカレーを作ったときに喜んでくれたから、今度も料理を作ろうと決めた。誕生日プレゼントで気持ちの伝わるのは手作りだというから、何度も失敗しながらもエプロンを作り上げた。
レンはワタシが想像した以上に喜んでくれた。涙を流して、ワタシのプレゼントを抱きしめてくれた。勇気を出せず、告白のタイミングが遅くなってしまったが、それ以外は完璧だった。気持ちを共有して一つになれると信じていた。
けれど、結果がこれだ。
レンには拒絶され、きっともうどうにもならない。
何を間違えたのだろう。どこから間違えていたのだろう。両想いになれたと安心してレンの気持ちを確かめるのをやめたのがいけなかったのか。レンのドキドキは恋とは違う感情だったのか。それとも、レンが言ったように、ワタシの「好き」は本当の好きではないのだろうか。
何もわからない。宇宙人だから。バケモノだから。
きっと外の世界に、ワタシの居場所はない。
今はただ、帰りたい。リサに会いたい。リサに慰めて欲しい。自由なんてなくてもいいから、ずっと檻の中でいいから……もうこんな思いはしたくない。ワタシが傷つくのも、大切なヒトを傷つけるのも、もう嫌だ……さよなら、レン。
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