上 下
6 / 7

初投稿

しおりを挟む
 帰宅後。家のパソコンを借りて編集作業を始めた俺。だが、編集ソフトのインストールや使い方を覚えるのに手いっぱいで、ようやく編集作業に取り掛かるも、最初の三十秒を作るだけでかなりの時間を要している。

「結構手間だな……」

 マウスをカチカチ操作しながらぼやいていると、琉夏からラインの着信があった。メッセージを見て、俺はうっと唸る。『ちょっとー、撮った動画を見返してるけどさぁ。所どころでやらしい目をわたしに向けてない?』というメッセージ。心当たりがありすぎる。俺の煩悩が、ばっちりカメラに収められていたようだ。

 俺が謝罪を送信すると、『一斗くんの変な視線はカットしてね。視聴者にキモがられたくないし』というお怒りの指摘があり、俺は再び謝罪を送った。はぁ、カットするシーンが多そうだな。

 そんなことを考え、編集に四苦八苦しながら作業を進めていく。
 そして、悪戦苦闘すること五日後。

 高校からの帰宅途中に琉夏の自宅に寄った俺は、琉夏が校正した動画を二人で最終チェックする。

「うん、初心者にしては上出来じゃない?」
「そうだな、がんばった甲斐があった」
「お疲れさま。編集大変だったでしょ? 校正にも時間がかかったくらいだし」
「一分のシーンを作るだけで一時間かかった。慣れてくればペースは上がるだろうけど、こんなに大変とはな……」

 そういう手間があったからこそ、初めての動画投稿を前にワクワクするものだ。

「よし、投稿するよ」

 チェックが完了し、琉夏の手で投稿が完了した。
 はぁ、長かった。しんどかった。口元が緩む俺。

 ふと、琉夏が聞いてきた。

「一週間でどれくらい再生されると思う?」
「ん? 一万くらいか?」

 相場がよくわからないので適当に答える。サイトのトップページに載っている動画が、だいたい何万とか、何十万とかが多いから、そこから直感的に推測した。
 だが、琉夏はくすっと笑う。

「二十再生くらいじゃない?」
「え? 少なすぎだろ」
「そうかな? どうだろう?」

 冗談っぽく、あいまいに笑う琉夏。本気で言っているのか、冗談で言っているのか、このときの俺は判断ができなかった。

 そして投稿してから一週間が経ち。


 カウントされていた再生数は、『27』だった。
しおりを挟む

処理中です...