アゲインスト

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迷宮

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「クスクス……」

 銃声がいくつか響き、人が倒れる音がした。武装した男たちが続々とエントランスへ押し入り、自分達以外の生存者がいないことを確認すると、無線で指示を飛ばす。

 キュ、キュ。青いシューズを履いた少女が、可愛らしい音を立てながら、死体をわき目に歩いて来る。

 銃を構えていた男たちは、エレベーターホールの安全を確認し終えると、親指を立て、手を回転させて仲間達を上階へ促す。階段を駆け上る音が響き渡るホール、黄色を基調にしたロリータファッションの少女がエレベーターホールへ辿り着き、微笑んで周囲の男たちを見回す。

 男たちの内一人が跪き、少女へと恭しく拳銃を捧げる。少女はそれを握り、笑みを浮かべた。

「今の状況はどうなっているのかしら」
「魔導持ち・強化人間組が上階を制圧、後に我々ピュアヒューマンが突撃します。制圧状況の進捗は78%」
「そう」

 少女は興味も無さそうに返事すると、エレベーターの表示プレートを見上げた。5階にランプが灯っている……いや、降りてきている。少女は目を細めた。

「来る」

 その言葉に反応し、武装した男たちは一斉に散開。おのおのが適切な距離感を保ちつつ、降りて来るエレベーターを待ち構える。少女は動かない。エレベーターホールの目の前でうっすらとした笑みを浮かべ、その瞬間を待ち構えている。

 エレベーターの表示プレートの灯りが降下する。3階。2階。少女はクスリと笑った。

 次の瞬間、エントランスの大ホールの床を突き破り、巨大な炎の塊が飛び出した。エレベーターの方を向いていた武装集団は咄嗟に振り向くが、火球は既に爆発寸前の膨らみを見せていた。

「まあ怖い」

 ロリータファッションの少女は笑みを崩さない。直後、火球が弾け飛んだ。爆風が男達を数人吹き飛ばす。

 同時に、床に開いた穴から燃える人影が飛び出した。爆風を耐えた数人がそれに向けて発砲するが、人影は素早く火線を躱し、近い者から順に殴って吹き飛ばして行く。

「この炎魔術と怪力、間違い無い! キャンドルだ!」
「急いで上階の水魔術師を呼び戻せ……ぐわああっ!!」

 キャンドルと呼ばれたその存在は、また一人の男を吹き飛ばすと、次にゆっくりと振り向いた。その視線の先には黄色い少女が立っている。

「リリス」
「ごきげんよう、キャンドル様……クスクス」

 少女はスカートの端をつまみ、優雅にお辞儀する。キャンドルは指の骨を鳴らし、全身の炎を激しく燃え上がらせる。エレベーターホール内、向かい合う二人を邪魔できる者は居ない。

「ようやく捕まえたぜ、クソ野郎。ここでケリをつける」
「まあ。女の子が『野郎』なんて、そんな怖い言葉を使うべきじゃありませんわ」
「ほざけ!」

 キャンドルが床を蹴り、一瞬で少女との距離を詰める。少女……リリスはゆらりと掌を構え、何かを呟いた。

詠唱ワード

 キャンドルは瞬時にそれを理解、バク転で距離を取ろうとする。だがキャンドルの足は床ごと凍り付き、既に動かなくなっている。詠唱から魔法発動までの時間が短すぎる。

「チィッ」
「舌打ちなんて……ウフフ」

 リリスは笑う。笑って更に魔力を練り上げる。キャンドルは全身から激しく炎を噴出させ、足元の氷を融解させて素早くバックステップ。リリスは追わず、また短い詠唱を繰り出した。キャンドルは己の直感に身を任せ、横っ飛びに身を投げ出した。

 コンマ01秒後、キャンドルが立っていた場所に超自然の雷が直撃した。それは床を這うように拡散し、執拗にキャンドルを追尾する。だがキャンドルは構わず、少女へ向かって突進する。

 少女は拒絶するかの如く、キャンドルへ向けて掌を立てる。すると水の壁が迫り立ち、炎の化身を阻んだ。天敵とも呼べる水を前に、思わず立ち止まり、隙を晒すキャンドル。その足元から水が這い上り、あっという間にキャンドルの全身を覆った。キャンドルはもがきながら、呪うような目つきで水越しにリリスを睨む。

「てめぇ……」
「邪魔はさせませんわ」

 少女はクスクス笑うと、指を鳴らした。ぱきり。キャンドルを打ちに捕らえた水の牢獄は、囚人ごと凍り付いた。

 ホールに静寂が満ちる。負傷した男たちが呻きながら起き上がり、各々銃を持ち上げ、作業を続ける。

「余興にしてはつまらないモノでしたわね。早く終わらせて帰りましょう」

 リリスは溜息を吐きながら、降りてきたエレベーターに乗り込む。数人の男が同乗し、ウェイブスキャナーでエレベーターの安全を確認する。

 少女は構わず目的の階へのボタンを押す。静かな上昇が始まり、緩やかなGと心地良い音楽が空間を満たす。

「ウフフ、お紅茶を飲みたくなってきたわ。ご一緒にどう?」
「……」

 少女の声に、誰も返答を返さない。これは彼女の独り言のようなものであり、下手に返事を返して機嫌を損ねればこの場で殺されてしまう。敢えてそのリスクを取る者は少ない。

 ポーン。電子音がエレベーターが最上階へ到達した事を報せる。真っ先に降りたリリスは笑みを浮かべる。

 この階も制圧され、血の海となっていた。部屋の奥に設置された鉄扉にはC4が取り付けられ、いつでも起爆できるように準備が整えられている。

「起爆装置は何処かしら」
「これです」

 大男が歩み寄り、リリスにトリガ付きの装置を手渡す。リリスは無邪気な瞳でそれを矯めつ眇めつしていたが、やがてにっこりと笑い、指示を飛ばした。

「じゃあ、扉から離れてくださる? 仲間を巻き込んで爆発……それも楽しそうで良いけど、間抜けすぎるもの」
「「「「はい」」」」

 統制の取れた武装集団は一斉に扉から離れ、黄色い少女の後方へ回る。少女は暫く恍惚の表情で鉄扉、C4を見つめていたが……トリガを引いた。轟音と共に、凄まじい爆風が荒れ狂い……。


 瞬間、天井通風口の金網を蹴破り、真っ黒な影が飛び降りた。直下に居た男は『それ』の拳をまともに受け、気絶して崩れ落ちた。

 隣にいた男は魔術を行使しようと手を上げた。しかしその手が抑えられ、裏拳がその顔面をしたたかに揺らした。気絶。

 残り6人は躊躇いなく銃を構え、撃った。マズルフラッシュが暗闇を切り裂き、一瞬『それ』を克明に映す。だが一瞬後、一人が倒れた。そちらへ銃口を向ける暇もあればこそ、次は二人同時に吹き飛ばされる。

 3人が何かする前に、真っ黒なロープじみたものが3人を捉え、人外めいた腕力でまとめて縛り上げた。

「リリス」
「ようやく来てくださいましたわ、遅くて待ちくたびれましたの!」

 怜悧な男の声が闇の中から呼ばわった。リリスはこの階の部下が全員倒されたにも関わらず、嬉しそうに手を叩いて笑う。

「今度は何を企んでいる。銀行強盗など」
「ステキなパーティーには資金が必要ですわ、いつの時代も。それで……騎士ナイト様は何を?」
「決まっている。お前を止める」

 その声に、リリスの顔がぱあっと明るくなる。瞳全体に喜色が広がり、口の端が緩んで持ち上がる。

「ウフ、ウフフ、ウフフフフッ。そう、そうでなきゃ駄目ですわ! そうに決まってる! でも……」

 瞬間、リリスは闇へと掌を向けた。極短詠唱。飛び出した雷は標的を捉えられず、壁に当たって弾け散る。

 闇から飛び出した影は、リリスへ向けて疾走する。だが既にリリスは次の魔術を完成させ、床に魔法陣を残して飛び退いている。

 影はそれを迂回、リリスへ向けて黒いなにかを投擲。少女はそれを掴み取り、帯電させて投げ返す。影はそれを素早く払い落とす……否。彼は一瞬の判断でその場から飛び退いた。

 投げ返された帯電ナイフは、丁度彼が払い落とそうとした位置で爆発。鉄片を辺りに撒き散らし、最上階の強化ガラスを貫いた。ガラスが砕け、地上へ……ネオンの光輝く都市へと降り注いで行く。

「フフ、フフフフフ。相変わらずつれないお方」
「…………」

 風が吹き込む。少女は笑い、男は構える。男の出で立ちは今や地上の光に照らされ、露わになっていた。


 黒い鎖かたびらが地上からの光を反射する。手甲が鈍く光を吸収し、レガースが軋む。異様な出で立ちであったが、何より特徴的なのはその顔を覆う鉄仮面だ。

 両目の部分だけが開き、後は真っ黒に塗りつぶされた仮面。まさに『絶望』を体現するかのような、絶対的な黒。闇の中でさえ、その黒は微かに浮くようであった。

 リリスはクスクス笑いを止められない。少女の背後、破壊された鉄扉から覗くのは大量の金塊である。ここは富裕層御用達の銀行。金本位制を未だ信奉する金持ち達は、自分達の金をここに預ければその価値が不動のものになると信じて疑わない。

「愚かでしょう、救いがたいでしょう。だから私が壊して差し上げるの。素敵でしょう? 物の価値なんて所詮、指先一つでどうとでもなりますの」
「今逃げて後から全身の骨を砕かれるか、それともここで降伏するか。選べ」
「それはフェアじゃありませんわ……まだ、ね」

 悪戯っぽく笑う少女。男は鋭く踏み込み、正拳突きを叩き込もうとした。だが、その時!

 またしても爆風が巻き起こった。男の真正面、少女の背後からだ。正拳突きの勢いを殺され、男はバク転で距離を取る。少女は髪をなびかせながら、ウインクを残して爆風めがけ歩いて行く。

 金庫を覆うビルの壁に穴が開き、その向こうで輸送ヘリが金塊を次々に回収している。リリスはゆったりと歩いて行く。

 男は追おうとしたが、ヘリ内部でリリスの部下がロケットランチャーを構えているのを見ると、素早く方向転換してガラスを突き破り、夜光輝く街の上空へ身を躍らせた。

 放たれたミサイルはエレベーターシャフトに直撃、爆発。爆風が下の階まで次々に突き抜け、次々にガラスが砕けて行く。

「退去しますわよ、ここに最早用はございませんの」

 リリスは輸送ヘリに乗り込み、冷たく指示を飛ばす。ドロップゲートが閉じるその一瞬、彼女はちらりと、ビルから地上へ落ちて行く黒い騎士を見た。


 暫く落下を続けていた男は、地上までの距離が十分になると、背中からフックショットを取り出し、高層ビルの一つへかませる。そうして振り子運動じみてエネルギーを拡散させ、ビルの屋上へと転がって夜天を見上げた。

 飛び去ってゆく輸送ヘリ。炎を噴出させる銀行ビル。取り逃した。その事実に歯噛みする暇もなく、サイレンの音が近付いてくる。

 男は素早く転身すると、フックショットを使いながらビルの屋上を跳び渡り、光る闇の中へ消えて行った。




 川のほとりの立ち食いそば屋の屋台、旧型の薄型テレビは、先程から何度も炎上する銀行ビルの映像を映す。

『エー、今回の犯行もやはり「リリス」他数名の組織的犯行と見られており……一階ではキャンドルさんが凍結した状態で発見され、他にも多数の被害者が……』

 ズルルルーッ!! くたびれたトレンチコートの男は何度かそれを見上げ、そばを啜りながら思案顔になる。犯行の現場はここからそう離れてはいない。

「おい店主! このチャンネル変えてくれよ!」

 不快に思ったらしい客の一人が赤ら顔で叫ぶ。が、それを手で制し、トレンチコートの男はじっとテレビの画面を見詰めた。

『なお、今回の事件現場からも、逃走する「デッドナイト」の姿が確認されており、一連の事件との関連性が疑われています』

「デッドナイト……」

 炎上する銀行ビル、その最上階から飛び降りる真っ黒な男の映像が何度も繰り返される。トレンチコートの男は我に返り、赤ら顔の客に謝罪の会釈を送って席に座る。

「……ゴローさん、疲れてんじゃねえのか。奥さんと娘さんのためにも、さっさと家に帰ってやりなよ」
「大丈夫だ、大丈夫……あぁ、平気だぜ俺は」

 店主が心配そうに声を掛ける。ゴローと呼ばれたトレンチコートの男は、先程の映像を何度も脳内で反芻しながら、上の空で返事を返した。

 そして、居ても立っても居られなくなり、銭をいくつかカウンターに置くと、夜の闇へ向けて走り出した。







「またか」
「こちらから派遣したキャンドルもやられた。リリス、デッドナイト。何か関係があるに違いないぞ」
「ひひひ……早計……けどそこそこ論理的……」
「これ以上奴らの好き勝手にさせる訳にはいかぬ。警察機関との連携も強めつつ、近い内にマスコミも巻き込むが得策」
「…………」
「次は二人送る。それでも駄目だった場合は……考えさせてもらおう」




 渦巻く思惑、隠し切れぬ殺気と暴力の気配。

 魔力が見つかった世界、人が人であることを諦め始めた世界。魔法が日常と化し、人は魔結晶での後天的変化、肉体強化を許容する、ここは都。すべての中心地。秩序と犯罪の交差点。混沌渦巻く魔性都市、「ラビュリント」。

 誰かがまた、クスクスと笑った。
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