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第1章
第3話 転機
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「改装工事?」
サプリを食べ終えてすぐ、母親が颯太を呼び止めた。母親は淡々と「この家を改装しようと思うの」と抑揚のない声をだした。
今住んでいる家は珍しく「リビング」という部屋がある。元々は父方の祖父が長い間住んでいた昔ながらのレトロな家だ。リビングは、家族が食事をとったりまったりできる場所だと颯太は教わっていた。
しかし、食事がサプリに変わった今、このリビングという部屋の存在は邪魔でしかない。自室よりも広くなにも使っていない部屋だったからだ。母親はリビングを改装して個室を増やしたいようだ。
仕事が一段落したであろう父がリビングにやってきた。大きく伸びをしながら「仕事は疲れるなぁ」と軽快にあくびをした。
「あなた、リビングを取り壊して個室にするのはどう?」
ちょうどいいと言わんばかりに話を進める母。にこりとして話を続けた。
「颯太も手がかからなくなったし、この広い場所は必要ないでしょう?」
「明日にでも、工事の人を呼びましょうよ」
颯太の目には母が不思議に映る。声が普段よりも高く上ずっているようだった。母が父にタブレット端末を見せながら個室のイメージを伝えようとした瞬間、父は颯太が今まで聞いたことのない低い声で「やめろ」と母をみていた。
母はなんでもないような顔をして
「なあに?不満なのかしら」
とタブレットをリビングにあるテーブルの上に置きながら答える。
「ここは親父が大事にしてきた家なんだぞ」
声を震わせる父。
「お義父さんの自慢の家?だから?なにそれ」
と、母は父の言葉を「訳がわからない」と理解することを拒む。
「リビングを改装するのはダメだ」
「いつもより語尾が強いわ、薬飲んでないのかしら」
「……飲んでないのは確かだが今はそんな話関係ないだろ」
「あら関係あるわ。薬を飲んでいないから頭に血がのぼるのよ」
「うるさい。リビングを改装することはダメだ。これは家族のための大切な場所なんだ……」
「あら面倒ね、こんな非効率な場所が家族のためになるなんて理解できないわ」
理解できない。という言葉に、父は今までみたことない表情をして、母に向かって聞いたことない言葉を放った。
颯太の目の前で恐ろしいことが起きている。しかし、彼はその一部始終を眺めるだけで終わった。昔の創作物によく出てくる「嵐」のようだと少し考えたが正解は分からなかった。
サプリを食べ終えてすぐ、母親が颯太を呼び止めた。母親は淡々と「この家を改装しようと思うの」と抑揚のない声をだした。
今住んでいる家は珍しく「リビング」という部屋がある。元々は父方の祖父が長い間住んでいた昔ながらのレトロな家だ。リビングは、家族が食事をとったりまったりできる場所だと颯太は教わっていた。
しかし、食事がサプリに変わった今、このリビングという部屋の存在は邪魔でしかない。自室よりも広くなにも使っていない部屋だったからだ。母親はリビングを改装して個室を増やしたいようだ。
仕事が一段落したであろう父がリビングにやってきた。大きく伸びをしながら「仕事は疲れるなぁ」と軽快にあくびをした。
「あなた、リビングを取り壊して個室にするのはどう?」
ちょうどいいと言わんばかりに話を進める母。にこりとして話を続けた。
「颯太も手がかからなくなったし、この広い場所は必要ないでしょう?」
「明日にでも、工事の人を呼びましょうよ」
颯太の目には母が不思議に映る。声が普段よりも高く上ずっているようだった。母が父にタブレット端末を見せながら個室のイメージを伝えようとした瞬間、父は颯太が今まで聞いたことのない低い声で「やめろ」と母をみていた。
母はなんでもないような顔をして
「なあに?不満なのかしら」
とタブレットをリビングにあるテーブルの上に置きながら答える。
「ここは親父が大事にしてきた家なんだぞ」
声を震わせる父。
「お義父さんの自慢の家?だから?なにそれ」
と、母は父の言葉を「訳がわからない」と理解することを拒む。
「リビングを改装するのはダメだ」
「いつもより語尾が強いわ、薬飲んでないのかしら」
「……飲んでないのは確かだが今はそんな話関係ないだろ」
「あら関係あるわ。薬を飲んでいないから頭に血がのぼるのよ」
「うるさい。リビングを改装することはダメだ。これは家族のための大切な場所なんだ……」
「あら面倒ね、こんな非効率な場所が家族のためになるなんて理解できないわ」
理解できない。という言葉に、父は今までみたことない表情をして、母に向かって聞いたことない言葉を放った。
颯太の目の前で恐ろしいことが起きている。しかし、彼はその一部始終を眺めるだけで終わった。昔の創作物によく出てくる「嵐」のようだと少し考えたが正解は分からなかった。
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