おいしいを探して

しのへわかば

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第2章

祖父の家へ

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 簡単にまとめると、両親2人は昨晩、周辺の家から通報を受けたらしい。
 その通報を受けて、感情の抑制を管轄する組織、通称「感情抑制委員会」が、2人を連れて「研修」を受けるように命ぜられた。
 研修を受けている間、2人との接触は基本的に禁止されている。

 そのため、一時的な策として颯太を祖父の住む東北へ向かって欲しいとのことだった。

「研修」とは、座学と実践で行われる感情を抑制するための講座だ。相当きついものらしく、そこから帰ってきた者は、しばらく置物のように静かになると言われているほどだ。

  颯太は、一抹の不安を抱えながら、必要なものを取り出して、祖父の元へ向かうことにした。この世界では、子ども(未成年)を1人にしておくだけでも罰則がかさむから。そのための手配だろうと颯太は感じていた。なので、早めに家を出るべく荷物は最低限にした。
 自宅から東北へ、昔は新幹線で2時間半で着いたらしい。今は反対に半日ほどかかる。なぜなら、新幹線が衰退したから。今では珍しい電車が使い勝手が良いと言う理由で生き残っている。

 東北には祖父がいる。身内がいることが最大の安心だった。でも、このほっとした感情さえ、颯太には居心地が悪かった。
 サプリを服用して、電車の中でタブレット上の電子書籍をひたすら読んでいた。文章は頭に入らなかった。
  半日の電車旅。ガタンゴゴンと鳴り、左右に揺れる感覚は、颯太にとって苦痛だった。
 普段は家の中でタブレット端末を片手に、ほとんど自由だった空間だったから、今のこのアナログ的な状態が不自然の極みのように感じた。
 電車に乗っている人さえ、ほとんど居なかった。自分だけ迷い込んだような不可思議な感覚に乗っ取られそうになる。
 たまたまポケットに入っていた酔い止めを何度か飲みながら、颯太の目的の場所の付近に着いた。
 そして、颯太はしまった。と思った。ここに来るのに必死で、祖父の名前も顔も知らないことに気づく。
 颯太の家庭は、祖父母にほとんど交流が無かったのだ。今回のきっかけでも無い限り、きっと一生無いと思っていたほどに。
 颯太の母と祖父は折り合いは悪く、しょっちゅう言い争いになっていたから。
  小さいときの記憶がほとんどない颯太。どうしようと途方に暮れていたところに、背中が少し丸まったおじいさんが話しかけてきた。
「おい、おまえ、颯太じゃねのか」
「はっはい」
 おびえながら答えると、ふてぶてしそうな様子のおじいさんが「こっち来い」と有無を言わさない勢いで手首を引っ張ってきた。
どもりながら、颯太が祖父かどうか尋ねる。
「お前を知ってるのは俺だけだからな」
 と、ぶっきらぼうに答えた。手首を掴む祖父の手はゴツゴツしていて力強かった。
  数十分ほど歩いた先、大きな民家にたどり着く。そこが祖父の家だという。ここは自由に使って良いから。
 準備できたらまた呼ぶ。と、祖父は庭の中に消えていった。
  家の中に上がった颯太は、柱の近くに荷物をおいて重ねると、一呼吸した。
  疲れた。ここが、昔の生活のままでいるといわれる「東北」なんだ。
  そもそも、「東北」ってなんだ?
  謎が謎を呼ぶ状態で、混乱に陥りそうな颯太は考えることを止めて、民家の縁側から空を仰いだ。青いなぁ。と思いながら。
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