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軽い刺激
精神世界
しおりを挟むコツ、コツ、コツ……と音を響かせながら湿っていて真っ暗な道を進んでいく。
セリスのライトの魔法があるとはいえ、柔らかい灯りの先は本当に真っ暗で何も見えない。けれど私には確かに見える。
それどころか何処にどういう風に道ができていて、私達が今地上だと何処にいるのか上から見ているかのように完璧に把握できています。
私に掛けられた感覚強化の魔法の効力で魔力感知能力が高められていて、私達はその魔力感知能力で地下にある怪しそうな魔力へと向かっています。
「まさかドリーミーがここまでの魔力関知能力を持ってるとは思わなかったのう」
「何を今更、私はメリル……というよりドリーミーの存在を知って1ヶ月で過去を見る上級魔法アカシックレコードと同じ現象を無意識下でやってのける能力があるって知ったよ?
当然感覚強化無しでだ」
「え?あの現象上級魔法だったのです?」
「そうだよ、メリルは万人中なら……十人以外がどれだけ努力しても絶対に到達できない魔法に手をつけたんだよ?
だから言ったじゃないか、メリルは……ドリーミー種は素晴らしい種族なんだねって」
「そ……そうですか………」
とても優しげな笑顔でそう断言されてしまった。
セリスの方を見ていませんが丸見えで、セリスの優しさが恥ずかしいというか何て言うか………今の私は絶対に可愛くないニンマリとした笑みを浮かべているのでそっち向けないじゃないですか。
「それほどか……そこまでの能力を秘めている種族だとは……エルフを羨ましいと思ったことはあるがそれ以上か…………
いずれ誰かドリーミー種を雇うとするかのう」
私達と共に行動しているお爺さん……ファスタム辺境伯は根っからの魔法使いで魔法を極める環境が欲しくて今の地位を継いだそうです。
セリスの行動は伯爵に対してはあまりにも失礼でありましたが、魔法使いとしてはこれ以上無い挨拶であったらしく不問としてもらえて本当に助かりました。
貴族様と知った時は久しぶり血の気が引きましたよ……
しかし、後ろからマジマジ見られてるのが見えてないのにハッキリ見えてしまっています。
セリスとは違うこのねっとりとした強い興味のある視線………ここは少し生け贄を送りましょう。
同族がどうなろうが知ったことじゃありません!
私はセリスのモノでセリスは私のモノなんです!
……私ってこんなに独占欲ありましたっけ?
まあ、セリスは親友も親友、特別な存在だとは理解できています。
セリス程私を正しくいろんな目線で評価し、認めてくれる人は他には誰も、家族にだっていません。
「私のお父さんもそうですが、ドリーミーは基本魔法に携わる仕事を好むのでわりと簡単に引き抜けると思いますよ?
まあ、私みたいな例外ももちろんいますけど」
「ほうほう、それは真か!」
「ええ、私のお父さんは魔力変動を起こしやすくする研究をしていまして地質を調べるため良く洞窟に潜っています。
他に私が今まで出会ったドリーミーも似たような感じに魔力の調査を主な仕事としていますね。
ただ、それが原因で一般の人からは不気味がられているのは否定できませんけどね。
私のお父さんなんて一部から羽モグラって呼ばれたりしますし」
私は苦笑ぎみにそう言った。
とくにお父さんは変な感性を持っていて私ですら変人と思うほどです。
今ならお父さんがぶつぶつと呟いていた内容を少しは理解できますが、魔法の知識が無い者からしたら意味不明な単語を小声で呟き虚空を見つめているんですよ?
不気味ですって。
「一般の者からしたらのう……
まったく、有能な者にその様な扱いをして才能を開花させず、いざ開花し実績を残せば手のひら返し。
なんとも嘆かわしい……愚か者どもめ…………」
「出る杭は叩かれるのは当然だろうけど、私もちょっと不快だね。
メリルも何かされたりしてないかい?」
「陰口くらいなのでとくに……あ、もう近いですよ」
私達は今5人で行動していて、私、セリス、ファスタム辺境伯、トーマスさん、ツァリーヌさんの5人です。
トーマスさんは回復魔法が得意な男性です。
ツァリーヌさんは呪い系統の魔法が得意だそうですが、セリスの話に対してファスタム辺境伯以上に付いていけてない感じでした。
これはセリスとファスタム辺境伯が凄すぎるだけでツァリーヌさんが力不足では無いとセリス本人が言ってました。
少なくとも時間を掛ければ解決できる程の実力はあるらしいです。
「ほらもう見えて「メリルッ!!!」えっ?」
軽い足取りで駆け出した私が曲がり角に出ると………たぶん?セリスに?引き戻され抱き締められ……てるんでしょうね?
出たと思ったらセリスに抱き締められてました。
「……セリス?」
今の感覚を強化されている私が反応できないってセリスは何なんですかね?まあ、今に始まった事ではありませんけど。
「ごめんね……しかし予想以上に成長が早いね『まったく、流石私の魔力だよ』」
テレパシーを使い最後の言葉を私にだけ聞こえるようにしたようです。
「今の魔法は何だ?」
『マジックバレットだよ。
ここら辺には魔力砲の概念は無いから知らないのも当然だろうね。
メリルは魔力砲を知ってるだろうけど、元々がメリルじゃ肉体強化しようと反射神経的に撃たれた結果しかわからないんじゃないかな?』
セリスがテレパシーで全員に語り掛け、その意味を私は最初理解できなかった。
いえ、したくありませんでした。
けれど、嫌でもその意味を脳が理解していく。
「それって……」
私は抱き締めてくれているセリスに思わずしがみつく。
12月辺りにセリスの手助けもあったにしろ私一人でCランク指定のモンスターを雑草抜きみたいに仕留めたアレで私が撃たれたって事ですよね?
「大丈夫、メリルには私がいる。
何があっても私がメリルを守るから。
……って言っても、こんな所に連れてきた私が言っても説得力無いかも知れないけどね」
そう言って苦笑するセリスを見て私は少しホッとした。
セリスはいつもと何も変わり無い様子で言うものだから問題はない、セリスにとってこの程度朝飯前なんだと思ったから。
「……メリル」
と思った矢先、セリスの魔力の質が変化する。
動揺した様子のセリスが私の髪に触れる。
その部分だけ髪が少し短くなってしまっています。
「あ……髪に擦ったみたいですね。後で調整しないと」
「…………そうだね」
私に怪我は無いのにセリスが本気で怒っているのが良くわかる。
けれどそれも一瞬の事ですぐに引っ込んだ。
『それじゃここは魔力砲に詳しい私が先導するけどそれで良いかい?
奴は必ず私が滅ぼす』
セリスがそう伝え、頷いたのを確認してセリスも頷く。
『カウント0で出るよ?3……2……1……0!』
セリスが飛び出し私達も走って行きます。
セリスが手を前に出すと青い光の線が私達を避けて後の方へ飛んで行きます。
それが何度か起きた後、レンガの足場から液体のようにして出てた茶色い何かが人の形をし始めました。
が、次の瞬間に弾け飛ぶ。
「次があるならマジックバレットはこうやって魔石なんかを混ぜて飛ばした方がより良いって覚えておきな」
魔力が集まっている、恐らく原因であろうそれに後少しと言うところに来た時です。
「来るよ!」
「……え?」
セリスの言葉と共に浮遊感に襲われ私は体制を崩す。
「……………」
そして真っ逆さまに落ちていく。
それでも状況の変化に私の処理速度が追い付かず言葉すら出ない。
ヒュオォオォォォォォ……
その風の音はまるで私の思考を吹き飛ばしているかのようでした。
「………ハッ!レビテーション!!!」
数秒して地面が見えたタイミングでようやく正気に戻った私はすぐに飛行魔法を使用し浮かぶ。
そしてその横をセリスが通りすぎていく。
「フフフ、今回も私の勝ちだねメリル!」
地面に激突する数ミリだろう位置で飛行魔法を一瞬だけ使用し音もなく着地したセリスがそう言ってこちらに手を振ってくる。
「えっと……何がです?」
私は考えながら降りていき、結局何に負けたのか理解できず聞いてみる。
「チキンランのつもりだったんだろう?
メリルが全然レビテーションを使わないから何が目的か考えて思い付いたら負けられないと思ってね」
「気付いてたなら助けてくださいよ!
というより何処ですかここ!?
何をされたんですか私達!?」
私の様子に「えっ?」と本当に何を言っているのか分からないという反応をするセリス。
私の方が訳分かりませんよ!
「……すまない、知っていて当然と思ってメリルに話してなかったね。
この場所は精神世界と呼ばれていて、本来魂を持たない物が魂を持つようになった場合に発生する内蔵部と言えるだろうね。
有名な部類だとダンジョンなんて言われたりするかな。
正確には全然違うけど。牛と豚とヒューマンくらい違うよ」
セリスに言われて周囲を確認する。
今いる場所はまるで洋館の廊下のようで、柱に蝋燭が付けられており蝋燭の明かりのみがこの場を照らしている。
「セリス、ここ怖い……」
廊下は一本道で床に赤い絨毯が引かれていますが、その絨毯や柱には魔力が流れていて、その魔力がまるで脈打っているような動きをしていると私の羽が正確に把握してしまい気持ち悪い。
あまりの気持ち悪さにセリスにしがみついて少しでも気をまぎらわそうとした頃に他の面々が降りてきた。
「単独行動は危険だろ!何を考えているんだ!」
トーマスさんが怒鳴るのは当然ですね。
つい体がビクリとしてしまいましたが、謝るべきだと口を開こうとしたらセリスに止められた。
「悪いね、メリルは魔力への理解力が高い種族だから知っているとばかり思っていたんだが精神世界の事を知らなかったみたいなんだ。
知っていれば一人で落ちていくなんてならなかっただろうね。
だから責めるとしたら私を責めな」
「う……まあ、この世界じゃ最初から落下による死亡はまず起こらないから大丈夫だろう」
セリスに睨まれてトーマスさんは話題を反らす。
落下死しない?
「えっと……いろいろ言いたい事はありますが、何故落下では死なないのですか?」
「う~ん……進みながらでも説明できるし行こうか」
「はい、そうですよね」
困った表情でセリスが私に手をさしのべてくるので手を握り応える。
セリスの手を握る事ができて私はとてもホッとした。
私は少し魔法が使え、その実力は狼をあしらう事ができるくらいで魔法使いとしては物凄く弱いですからね。
自分自身が思っていた以上に不安になっていたのでしょう。
「それでさっきの話だけど、確かにそれで確実に外敵を殺せるかもしれないけど、それだと勢いで魂そのものに逃げられて自身が強くなるという目的から離れるからね。
落下しているように感じてるけど、あれは正確には落下じゃなくて転移魔法の一種なんだよ」
「なるほど……ところで、それなら何故精神世界の外にいる間に殺そうとしてきたんですか?」
「良い質問だね、それは殺して魂を肉体から引き剥がせば精神世界の……今落下したところは言うなら口の中になるんだよ。
消化するには胃袋に送らないといけない。
肉体を持っている者は口からしか入れられないけど、魂だけの存在は直接胃袋に送れるんだ。
落下で死んでしまって外にやってしまった場合何故逃げられるかだけど、1度口に含んだ魂には自分の臭いがベットリ付いてしまって何処にいるのかわからなくなって見失ってしまうんだよ」
「うん、理解できました」
「けれど今回この世界を作った奴は欲をかきすぎて私と言う格上の存在に気づいてない愚か者。
必ず滅すから」
あれ……?
なんかセリスの言葉がすごくトゲトゲしてる?
「……もしかしなくてもセリス怒っていますか?」
「怒ってないと思う?」
セリスの魔力は平常時と全く変わらない冷静さと余裕を感じさせるものです。
でも目の前のセリスは怒ってる?
「……怒ってるかな?」
「そうだね、怒ってるよ」
と言うがセリスの魔力はやっぱりいつもと変化がない。
「……セリスって本当に凄いですね」
「そんな今更だなぁ、私はすご~く強いんだよ」
私が褒めるとセリスは本当に機嫌良さそうに応える。
けれど私が何を褒めたのか理解しているらしく魔力に変化は一切ありませんでした。
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