覇王セリスの後日談

あかみみ

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軽い刺激

親友

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 ダンジョン攻略……と呼べるかは疑問でしたが下水道からファスタム辺境伯の館に戻ってきました。
 本当はもう疲れたので帰りたかったのですが領主様直々の頼みとして話し合いに参加する事になってしまいました。

「セリス、本当に良かったのですか?」

「ん?あぁ、こうなることは分かってしたからね。
 逆にこうなってもらわなければ意味がないよ」

「そうですけど……」

 ファスタム辺境伯はセリスを格上の魔法使いで尊敬に値する存在だと思っている事は魔力と言動から察するのは簡単なのですが、その弟子である人達から感じるそれは………よくわかりません。
 何しろ初めて感じる感情なのですから。
 ただ、これが良い感情ではない事だけはわかります。

「さて、今回の事件の現況だけれど、下水道に放置されたいたこの翡翠に魂が宿りダンジョン化していた事が原因だろうね。
 ダンジョンについてはある程度研究されており、過去の資料の中にはダンジョンは己の格を上げるために魂を補食する習性があるが、獲物があまりにも多いと厳選しようとする。
 術者から離れた呪いの魔法具が何故効果を発動し続けていたかという謎はこれで解決するね。
 つまるところ、ダンジョンと同じ性質の魔力を持つ魔法具であったから上手いように利用していたって事だろうね。
 元々は同じ魔力なのだから簡単だったと思うよ?」

 ……って、セリスが最初から語り始めるんですか?
 いや、まあ良いとは思うんですけど……

 話の内容が簡単だったのは最初のこれだけ。
 その次からは初耳な単語が泉のように沸き出てきます。

「呪魂は……『呪魂っていうのは呪い系統魔法を覚えるのに必要な入り口的なものでね、己の魂、気持ちを力に変えて込めるのが呪魂と呼ばれる技術なんだよね。
 呪い系統を得意とする魔法使いが魔法以外でも得意な事が多いのはこれが理由なんだ。
 呪魂は魔法使いでなくても込める事ができてね、一流の剣士が何年も使い続けた愛剣、一流の絵師が描いた渾身の絵画なんかにも呪魂が宿ることがある。
 今上げた例は無意識的にやっているんだけど、これを理解して扱えるようになって初めて呪い系統の見習い魔法使いと名乗って良いレベルだと私は思っているね』……で、足りない魔力は祭りに受かれて酒を飲んで泥酔している奴から気付かれない程度に奪っていたんだろうと私は考えているけど、他に何か心当たりは……」

 ……と、話の途中でまだ教わっていない事をテレパシー越しに教えてくれます。
 もちろん全てではないにしても、説明しながらテレパシーで教えるって器用すぎません……?
 まあ……セリスですし、今更ですよね、うん。

「報告書等はこの辺にしてセリス殿。お主に聞きたかった事があるのじゃが、ダンジョン内で使用した魔法に関して聞きたい事があるのじゃが良いか?」

「答えても良い範囲であればいくらでも」

「ほほう、それは楽しみじゃ「コホン!失礼!」

 話が進み、ある程度終わりが見えてきた所でそう話が変わろうとした時にトーマスさんが咳払いをして割り込む。

「ダンジョン内でセリス殿は戦争などと何やら物騒な事を発言されていましたが、先にその真意をお聞かせいただいても宜しいでしょうか?」

「真意も何も言葉通りだよ。
 帝国が平和が続く努力をするのであれば私は帝国の味方だ。
 メリルが帝国出身なのもあるけどね。
 けれど、もし帝国が意欲的に戦争を起こそうというなら私が相手になろう」

「なっ……愚かな、国に勝てるわけ無……」

「……どうしたんだい?そんな青い顔をして?」

 ……あれ?セリス今何かしてるのでしょうか?
 私が気付けないって事は魔法じゃない?

「全く、力って言うのは数じゃなくて質なんだよ、よく覚えておきな。
 味方してやると言っていたのだから感謝するんだねぇ」

「ハァッ!ハッ……ハッ………」

 息すらできていなかったのか息を荒くさせ、見ただけでわかるくらいにトーマスさんの体から汗が噴き出ている。

「ククク……しかし、今の一瞬で私はアンタを16回殺した気分だよ」

 セリスの口が裂けるような、まるで三日月のような、狂気的で邪悪な笑みを一瞬だけ浮かべ周囲は恐怖してしまいます。

 ……セリスってもしかしてかなり意地悪?
 こんなセリス初めて見たし普通に楽しんでますよ。

 しかし本当にわからない。
 いったいトーマスさんに何をしたのでしょう?
 セリスは魔法だけじゃな……むしろ魔法以外ばかり見てきた気がしますが魔法以外にこんな切り札があったんですね。
 前に「私の切り札は108あるよ」と冗談みたいに言ってましたけど、この様子じゃ108じゃ済まないかもしれません。

 セリスがそんな事をしてしまってから私達3人を除いた弟子の皆さんはどんよりと暗くなってしまいました。
 この状況を作ったセリスはまだしも、ファスタム辺境伯は気づいてないのか、気にしてないのか……どちらにしろ二人で楽しく魔法の話をしています。

「………失礼!私は町の様子を見て参ります!
 念のためという言葉があるくらいですから、数名は魔法使いが見回りしていた方が良いでしょう!」
「わ、私も!」「私も」

 一時間くらいしてからでしょうか?
 この場にいる事に我慢の限界が来たのか一人が立ち上がると続けて皆外へ行ってしまいました。

「……皆さん行ってしまいましたね。勿体無い」

「ん?勿体無いって?」

「だって、この場所でしている話は私の知る魔法使いの中でも他を寄せ付けないくらいの実力者で、そんな人が魔法に関する知識で話し合いをしているのですよ?
 全て理解できないのは当然かもしれませんけど、こんな機会はきっとこの先彼等には訪れませんもの」

 ……あれ?私何か変な事言いった?
 セリスが目をパチクリさせて驚くなんて珍しいですね。

「区切りも良いしそろそろ終わらそうと思っていたけどそれならもう少し続けよっか?」

「セリスが楽しんでいるようですしそれでも構いませんよ?」

「そうかい……メリル、こっちにおいで」

「え……えっと………」

 ここおいでって膝の上ですか?
 ファスタム辺境伯の方を見ると「わしは構わんよ」と何か言う前に言われてしまいました。

「はぁ、わかりました」

「照れ隠しかわいい」

「五月蝿いですよもう!」

 今のため息が照れ隠しなんてセリスじゃなくてもわかるでしょうに何で態々言うんでしょうもう!
 とか思いながらも座るんですけど。

「さて……メリルの許可も出た訳だしもう少し語り合おうか。 と、その前にこの国で禁忌とされている魔法の種類を教えてもらえないかい?
 私は遠い異国から来た魔法使いだから下手すると知らないで使ってしまう危険があるんだが……」

「うむ、あれだけの魔法を行使できるならば使えたとしても不思議ではあるまいのう。
 禁忌とされているのは変身魔法かの、あれは元に戻れなくなるゆえ使うとは思えんが……」

「それはイデアに干渉するのもダメなのかい?」

「………イデアとは何じゃ?」

「イデアを知らないのか……イデアの説明は面倒だしそれに見合う対価を用意してもらうのは至難だろうね。
 ただ、イデアに干渉した結果は正直変身ではなく変換となるとまでなら教えられるかな。
 存在その物を最初からソレだった場合の姿へと変換され、あくまでも変換だけだから変身と違い魂まで変形しないので意識を保ったままその姿へとなれる魔法だよ。
 変身を行う場合はどうしても魂をソーマへ閉じ込めた状態で行うくらいしか方法が無いのだけど……」

 うん、もうわかんない。
 なんかいきなりレベルが数段上がった感じの内容になって訳わかんないです。

 ……セリスが楽しそうですのでそれで……うん、大丈夫です。

 あ……そう言えばセリスに言わないといけない事ができたんだったけど、それはまた今度かな。
 戦争の話もそうだけど、セリスって何でこうも最悪の事態ばかり想定するんだろ。
 真面目に考えてくれる事は嬉しいですよ?
 けれどやっぱり行動に移す前に教えてほしかったです。
 今回の事に関しては予め相談してくれていればもっと別の方法を取れたかもしれません。
 セリスは最悪の事態を避けるために悪い事態を甘んじて受ける姿勢なんですもの。それだけの覚悟がある事もわかりますけど……

 ああもう、それこそセリスと話し合うべきですね。
 今度にします今度に。


 ・


「………であってぇ~…………メリル?」

 と、こんな感じに時々余計な事も考えつつ二人の会話を聞いて更に一時間くらい経ちましたね。
 なんとなく尿意を感じていたらセリスに気付かれてしまったようです。
 我慢していたとは言ってもそんな急ぐような感じではありませんでしたから平気だと思っていました。しかし気が散ってしまったようですし席を外すことにしましょう。

「すいません、少々お花摘みに行って参ります」

「ん……ごめん。余計な事言ったね」

「気にしないでください、私も聞いていたい内容だったので。
 呪い系統が魔法具を作る専門の系統だと言う話は凄く興味深かったですし、今度教えてくれませんか?」

 私は商人ですからね、自力で作れるとなれば興味を引かれるのは当然です。

「もちろん。いってらっしゃい」

「いってきます」

 話し合いから外れてトイレへと向かうことにします。


 ・


 ふぅ、まだ4月だけあってトイレは冷えますね。

 私は案内人のメイドさんの後ろを付いて話し合っていた部屋へ足を進める。

 トイレという誰の話し声もしない中で考えていたのですが、今回はセリスが先走って大事になりそうな状態になっていますが、私も私で沢山の問題がありますよね。

 私はセリスの事を良く知っている。

 セリスはとても強くとても綺麗で同姓でも引き込まれてしまいそうな色気を感じる時があるほどの強い魅力を持っています。
 何て言いますか、どの動作も静かで目立たない、けれどとても華やかなんですよね。

 あまりにも完成された動きだからこそ目立たない。
 あまりにも完成された動きだからこそ華やかである。
 平民の振舞い。貴族の振舞い。盗賊の振舞い。冒険者の振舞い。魔法使いの振舞い。
 きっとこれだけじゃない。もっと沢山の振舞いを完成させている。

 細かな素振り一つ一つが綺麗で、たとえそれが乱れたとしても、まるで乱れているように見せているとしか思えない事ばかり。
 それはセリスと半年程過ごしていたからわかることで、そうでなければわからない。

 だからこそ見る人が見れば、それだけでセリスは人間離れしていると思うでしょうね。
 それに加えてあれだけ強大な魔法を見せられたらどう思うか……

 ファスタム辺境伯とセリスは他の魔法使いを置き去りにしてとても高度な魔法の考察をしていて、時々ファスタム辺境伯ですらわからなくなるような事を言い出すのを私は眺めていました。

 他の魔法使い達はパトロールなんて理由を付けてこの部屋にはもういませんが、セリス達が大丈夫だと結論付けたのに万が一異変が起きたとして、パトロールに出た誰が解決できるのでしょうね?
 絶対無理でしょうに。

 私はセリスが楽しそうに語っているのを眺めつつ知ってる原理の考察が出ればなんとなく嬉しくなるし、知らなくてもなるほどと思うことも多々ありました。
 魔法使いじゃない私ですらそう思うのに本当に勿体無い。

「………ん」

 廊下でツァリーヌさんとアリスさん、トーマスさんが固まって話しているのを見付け、向こうもこちらに気が付きます。

 けれど、3人から私に向けられる感情はとても人に向けるモノとは思えず眉を潜める。
 そんなやり取りを露知らずメイドさんは「お帰りなさいませ」と深くお辞儀をしますが3人とも無視です。
 3人とも平民を見下す古い思考を持つ貴族なのでしょうか?
 それとも私がドリーミーだから?

「……どうしました?
 皆さん見廻りが終わったのですよね?
 戻って考察に参加しないのですか?
 ファスタム辺境伯とセリスはまだ話していますよ?」

「我々が参加したところで話に付いていけもしない。
 提案もできない者が居ても邪魔でしょう?」

 明らかな嫌悪、ツァリーヌさんから感じたのはドリーミーなら一度は感じる拒絶の気配でした。
 けれど会話が成立しそうですし気にしなくて良いですね。
 話し合いすらする気の無い人は会話が成立しませんもの。

「だとしても本人達が追い出さない限りはあの場に居るべきでは?
 あそこで行われている会話は魔法使いとしては間違いなく最高位のものです。
 例え全てを理解できなくとも一流の感性から来る魔法の発想等は少し嗜む程度の私でも価値あるものだと思えるものですよ?」

 私に言われた事を正しいと思ったのかトーマスさんとアリスさんは良い方向へ冷めた感じがします。

「……そう言う癖になんでここにいるのよ、アンタも変わらないでしょ?」

「私は種族魔法使いではありませんので食事を必要とすれば睡眠も必要ですしお花摘も必要なんです。
 食べた物全て魔力へ変換して睡眠も食事も全てを魔力で補うなんて私にはとてもではありませんができません」

「……あの化け物はそんな事もできるって言うの?」

「化け物?」

 ツァリーヌさんが何を指して化け物の言っているか私はわからず首を傾げた。

「アンタのご主人様よ、どうせ魔法の契約か何かで縛られてる非合法な奴隷なんでしょ?
 じゃなきゃあんな化け物の側になんて居たくないだろうし」

「ご主人……もしかして、セリスの事を言ってるんですか?」

「他に誰が居るって言うの?
 生き物を作る魔法を意図も簡単に使うなんて化け物の他にいないでしょ?」

「……訂正してください」

 真水を掛けられたかのように頭が冷めきる。
 セリスを化け物呼ばわりされた事は私の予想以上に感情を刺激するモノでした。
 ゆっくりと、けれど確実に、一度冷めた頭とは裏腹にじんわり心の底から熱を帯びるような怒りが私の中から出てくる。

「は?何を?」

「セリスを悪く言った事を訂正してください」

「化け物を化け物と呼んで何が悪いの?
 あんなの人間が使えるような魔法じゃないでしょ?」

「いいえ、使えます。
 セリスは人の限界を越えたと言っても良いくらいの魔力を持っていますがそれ相応の才能と努力の末です。
 何もわかっていない貴女にセリスを化け物だなんて呼ぶ資格はありません。
 セリスの強さはどんな過酷な地獄でも貪欲に生きようと抗い築き上げた力であって、目の前の強くなれるチャンスを捨ててこんなところで話している貴女方のような人達では絶対に使えないと言う意味では貴女の言っている事も正しいでしょうね」

 もはや熱湯のように熱くなる感情。

 冷静じゃないから一旦落ち着こう。
 僅かに残った冷静な部分が止めようとしますが、そんなものでは止まれない程で、私は肩を震わせながら彼等に言った。

 幸いにもトーマスさんとアリスさんは私の言葉を聞いて引く素振りを見せた。

「ただのドリーミーの癖に何を偉そうに言ってるのよ」

 だけど、ツァリーヌさんは怒りを露にし距離をつめてきた。

「もしかしてあの化け物にとって都合の良い事を言わないと苦しむように契約が施されてるとか?
 アンタあの化け物のお気に入りだったよね?
 かなり取り入るのが上手なのね貴女。
 それにしても女同志でなんて気持ち悪い、ほんと同情するわ。
 あんなレズ化け物に捕らわれて本当にかわ」

 パンッと廊下に音が響く。

 私のビンタを受けたツァリーヌさんは何が起きたかわからないと言う表情をしていた。

「訂正しなさいっ!!!
 私の事はいくら侮辱しようが構わないけれど、私の親友をこれ以上侮辱するなあっ!!!」

 私は大声で怒鳴った。
 ここまで怒ったのは生まれて初めてで、自分がどれだけ冷静でないのか全く分からず感情のままに行動していた。

「このッ!ドリーミー癖にぃッ!!!」

「なっ!?おい!!!」

 ツァリーヌさんが杖を大きく振り殴り掛かり、トーマスさんが止めようとするが間に合わない。

 私は頭を守るようにして目を瞑り、来るだろう痛みを覚悟して供えた。

 ゴッと杖で力強く殴ったような音がする。

 しかし痛みは無く、変わりに私の体を触れる感触がある。
 その感触から感じる魔力はとても感じ慣れている物でしたが、ここまで怒りに満ちているものは一度も感じた事がない。

 私は自分の怒りが一瞬で引いていき、逆に怖くなった。
 それでも私は目を開く。

 そこにはセリスが居て、腕で杖を受け止めていた。

 それよりも……
 セリスの魔力がハッキリと 見えていた。

 私の羽が捕らえてるのは当然なのですが、私の眼球、私の目が紺色の魔力を捕らえている。
 今まで何度かセリスの魔力を色で表現していたけれど、今回はハッキリと肉眼で見えてしまっている。

 普通魔力は目で見えるものじゃない。
 本来見えないものが見えているなど、どれだけの力なのか想像もできない。

 その紺色の魔力はセリスの全身を湯気のように出ており、それはツァリーヌさんを完全に敵と認識して威圧しているのだとわかる。

 トーマスさんとアリスさんはなんとも無いが、威圧されているツァリーヌさんは息をする事すら困難な様子です。

「何があったか知らないけど……私の親友にそんな物で殴り掛かるなんて殴り殺される覚悟もできてるって事だよね?」

「セリス!」

 私はセリスの名を呼び、殴ろうと挙げた腕にしがみつく。

「止めてセリス!先に手を出したのは私なんです!
 だから……今回は…………」

 止めたものの私はツァリーヌさんが言った事を許せない。
「だから今回は」と言ったその先が出せない。

 私の様子を数秒見ていたセリスは力を納めて私の頭を撫でる。

「まったく、メリルは強いけど喧嘩は弱いんだからあまり心配かけないでくれ。
 風邪で死にかけたのを見た私としてはあの程度でも殴られれば簡単に死んでしまうと思うじゃないか」

「はい……ごめんなさい」

 声が掠れる……

 セリスの言う通りだ。

 こんなの私らしくない、なんでこんな行動をした?

 なんで……なんで…………

「……メリル、泣かないでおくれ。本当に何があったんだい?
 私は、その、どうしたら泣き止んでくれる?」

 私は心底自分が情けなくて涙を流してしまう。

「ごめんなさい……私は……セリスが馬鹿にされて……悔しくて……
 それで怒って手を出したのに……
 結局セリスに助けられて……ごめんなさい…………」

「……メリル、私のために怒ってくれてありがとう。
 それは凄く嬉しいよ。でもそんな無茶はしないでおくれ」

 セリスが優しく私を撫でながらハンカチで涙を拭ってくれる。

「例え私は千人どころか万人に恐怖されようとも、メリルのような良き理解者が側に居てくれるなら他は何も要らない。
 だからそんなに悲しまないで、私のためにそんなに泣かないでおくれ、私が困ってしまうよ。
 そうだ、私の大好きなキャンディーをあげるから舐めてみようか。
 きっと気持ちが楽になるよ?」

「はい……頂きます」

 セリスに撫でられながら渡されたキャンディーを口に入れる。
 程よく甘い味が口に広がり今まで押し寄せていた激流のような感情が嘘のように緩やかなモノになっていた。

「落ち着いた?」

「はい、少し落ち着きました。
 ごめんなさい、もう大丈夫です」

 セリスのお陰で私は大分落ち着いた。
 我ながら本当に不甲斐ない。

「ファスタム辺境伯に私はメリルと帰ると伝えておくれ。
 もうここには来ないから後は皆で頑張ってくれ。
 行こうか、メリル」

 トーマスさんとアリスさんが止めようとする姿が一瞬見えたと思えば次の瞬間にはテレポーテーションにより私達が泊まっている部屋へ戻っていました。
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