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きゐ

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東京黙示録

episode -1 夜明けの前③

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 「帰り方が分からないって、シャーロットはどうやって来たんだよ。」
「それは、えーっとー。こっちとばされてー。解決すれば元に戻るから勝手に消えるはずなんだけど…。」
「でも消えてない…。てことは本来と違うことが起こったから?」
「何かが狂ったのかも……。」
「というかさ、」
律樹はシャーロットに近づいた。
「まだこの状況をしっかり説明されてないんだけど。どうして東京はこうなったのか、シャーロットは誰の指示でどこから来たのか、どうして俺だけ生き残ったのか、俺はこれから何をすればいいのか……」
「分かった。どうせ暫く帰れないんだし。教えれることを話すよ。」

「lost東京。私たちの世界では見たまんまそう呼んでいた。分かりにくにかもしれないけどここら一帯は深さ200m、地表から下に位置している。見てわかる通り、この土地一帯は荒廃している。というのもこの東京、本来より何千年も時が進んでいるの。」
「どうして……。昨日まであった町が一晩で何千年も時が過ぎるなんて…。」
「それが私が君を守る予定だった。明確にはそれを行った犯人なんだけど。そいつは禁忌と言われている魔法使いの末裔の一人。彼か彼女か、そいつの暴走によってこの世界はできたの。本来なら正体が見れるはずだったんだけど、誰かが歴史を早めたか、どうにか狂ってしまった。目的も、素性も分からない。ただこの一連の出来事は魔法によるものだってことぐらいしか分からない。」
「魔法って…。そんなフィクションの世界じゃあるまいし、」
「はぁ~。呆れた。こんな状況でも現実見ようとしてるの?実際この状況に対して飲み込み早いからてっきり現実見るの諦めてるのかと思った。こんな場所に置かれてるんだから、魔法の一つや二つ信じてもいいんじゃないって思うんだけど。まぁ無理もないか。じゃあ魔法について、ついでだけど説明するね。律樹の言う通り、魔法は現在フィクションの存在になっている。でも何年も前はそうではなかったの。魔法は実在するものだったの。でも、とある出来事をキッカケに魔法という存在は完全に消されてしまった。魔法を使える人間は限られてたからね。魔法使いが消えてしまえばその存在も消えてしまう。」
「消えるって?」
「殺されたんだ。魔法を使える人が全員。詳しく話すと長くなるからそこまで深く話さないけど、魔法の危険性を感じた人々がある時魔法使いを片っ端から殺していって、結果は魔法使いが全滅。もちろんみんながみんな危険視していたわけではなかったみたいで、魔法が消えてからも科学の進歩の裏で魔術を開発する人達が現れた。魔法に劣る点は多いものの、魔術には誰でも使えるというメリットがあった。それは今でも使っている人達はいる。」
「でも今回の事件の犯人は魔術じゃなくて魔法を使ったんだろ?全員死んだんじゃ?」
「いいや、正確にはまだ魔法使いは何人か生きてるんだ。その事件の後、魔法使いたちは素性を隠し、または魔法使いだということを忘れ、子孫を残して現代まで暮らしてきたんだ。君もその一人だよ、律樹くん。」
「え??」
「他人事だと思って聞いてただろ?君は後者だろう。先祖は自分が魔法使いであることを隠し、子孫にはこれを伝えず自然消滅させようとした。君たちには伝わってこなかったが確実に魔法使いの血が通っている。これこそが君を守った理由で君が今生きている理由だ。時操魔法は魔法が危険視されていた理由の一つ。やつが何者か分からないけどそんな強力な魔法に対抗出来るものなんて魔法くらいしかないよ。ということで私たちは対抗策として現代を生きてる君を選んだんだ。そこで私が代表して派遣されたの。律樹をこの終末から守るのと、犯人を見つけることが課された使命だった。あとは私が何もしなくても2人は会う予定だった。でも想定外のことが起きて、今この状態。会うどころか相手の顔すら分からない。」
「まって、仮に俺とその犯人が出会ったとして、俺は魔法のことも何も知らないんだよ。そんなの刃向かえるわけないじゃん!」
「いや、できるのさ。魔法というのは遺伝的に継承されていくものなんだ。魔法が使える人にとって、魔法は体の一部に等しい。指や腕の関節を動かす容量で簡単に扱えてしまう。君はそれを知らなかっただけで、何か危機を感じた時に君の魔法は反射的に出るはずなんだ。」
「でも、何ができるか分からないし、そんなこれまで存在すらも知らなかったものをすぐに自在に操れるものか。」
「確かにそうだ。でもそれでもこの事件は解決するはずだったんだ。」
「さっきから言ってたその想定とか予想とかはシャーロットを送り出したやつの能力なのか?」
「うん。「事象予測」。過去や未来に起こる出来事に対して、様々な行動に対する結果を予知することができる能力。よくある千里眼の更に上位と言われている。未来の確定事項を予測するから外れることはない…はずなんだけど…」
「今回は外れたと…。送り出される前に何を言われたの?」
「「常磐律樹を生かせ。」とだけ。」
「なるほど…。取り敢えず、妹が気になる。正直まだ夢じゃないかと疑ってるし、受け入れ難いことは山ほどあるけど、こうなってるのは事実なんだろ?俺に力があるなら俺が助けないと。シャーロット、帰れないなら俺に魔法を教えてくれ。」
「やけにやる気ね。」
「なんだよ急に。俺しかいないんだろ、この状況を打開できるのは。それに、今またあいつに会っても俺はまだ何も出来ないかもしれない。どーせ決まってた就活先も潰れちゃってるわけだし、よろしく頼むよ。」
「うん。そうこなくっちゃ。(なんか、やけにすんなり話が進んじゃった…。早いに越したことはないけど、なんだろうこの違和感…。常磐律樹、そして優里。彼たちは一体何者なんですか……。)」
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