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きゐ

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東京黙示録

episode -1 夜明けの前②

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 「俺の…、護衛?」
「そう。私に課された使命はあなたを死なせないこと。」
「でも、別にピンピンしてるし、死なせないって、全くわかんないんですけど。」
「そうなのよ。本来なら2022年12月13日、君は命の危機にあう予定だった。」
「なんでそんなことわかるんだ…
「実際遭ったろ?」
信じられないが、実際命の危機ではあったし、事実妹は連れ去られた。
「でも、じゃなかったんだよ。君にかかるはずの命の危機は。だって、私がいなくても生きてたでしょ?私はその起こるはずの一瞬の護衛の為だけに来たはずだった。でも、私がここに来た時にはすでにこの有様で。」
シャーロットは外を指した。あまり気にはしていなかったが外はもう暗かった。この辺りで明かりがついているのはこの部屋だけのようだ。都内であったので、外に明かりがひとつもないのは違和感があった。暗くて全体像はよく見えないが、律樹の目に映ったのは異様な光景だった。
「なんだこれ……。」
「君が寝ていた12時間の間、東京は全ての機能を停止した。街から人が一人もいなくなってしまったんだ。」
「そんな…、そんなこと急に……、嫌でも俺はここから離れてないよな。」
「だから最初に言ったじゃん。生き残っているのはだって。」
「じゃあなんで俺だけ生き残ったの?第一誰がなんでシャーロットに俺を護らせるように指示をしたの?」
「それは君が…」
彼女が口を開いた瞬間、ゴォォンと鈍い音とともに、オフィスの壁がものすごい勢いで吹き飛んだ。そこにあったのは吹き飛んだ壁を隙間なく埋め尽くす大きなくちばし。
「え!?な…何!?」
「何よ今更…。別にこんなのでしょ…。」
あの時程でないが、似た恐怖を感じた。
「どうしてこんなのが…。東京は今こんなのばっかりなのか?」
「そうね。暫くは増えると思うよ。どうせ聞かれるだろうから先に教えとく。こいつは言わなくてもわかると思うけどこの世界の生態ではない。であればこのまま野放しにしてしまえば間違いなく被害は東京、いや、日本だけじゃ済まされないね。」
「そんな…。なら早く警察に連絡して…、早くここから逃げ……」
「そんなのに頼ってこの状況が変わるとでも。こんなやつ、人間が太刀打ちできると思う?」
「じゃあどうすんだよ!?」
「君がやるのさ。」
「はぁ?!俺だってただの人間だ!」
「こんな状況になってもかい?もう一度言うけど、君はこの東京で唯一生き残ったの。その意味、分かる?」
分かるわけ…
「て言ってもまぁ、ホントはもう君を護る使命はもうないんだけど、状況が状況だし、まだコッチ来てから何もしてないし。」
シャーロットは俺の前に立ち、そのくちばしに手を当てた。触れた瞬間、化け物は大きくくちばしを開け、声を荒らげた。急いで耳を塞ぐも、気を抜くとすぐに気絶してしまいそうなくらいの爆音と風圧は部屋の窓ガラスを割り、この建物もヒビが大きくなってきた。
「シャーロット!!」
声を出すもかき消されてしまう。風圧で今にも吹き飛ばされそうになる。立っているので精一杯な状況でもシャーロットはあの位置でビクとも動かない。
「今回はサービスね!」
シャーロットは静かに目を閉じた。化け物に当てたその手に気が集まっていく。原理はよく分からないが何も知らない俺が見ても分かる。何かものすごくヤバいことが起こる。
「……。」
一瞬、光が辺りを包み込んだ。律樹は咄嗟に目を閉じた。僅か2~3秒の間であったが、目を開いた時にはもうそこに化け物はいなかった。一体何が起こったのか。ビルの真下にはその化け物の死体が倒れていた。カラスのような見た目であったが、羽の先には人間の腕のようなものが付いていて、脚は右だけやけに大きく、後ろには蛇のような尻尾がついていた。シャーロットはその後、何も無かったかのようにこちらを向いて、
「というわけで、あとはよろしくね。」
化け物が空けた壁の穴から外が見えた。日が昇りだし、世界を朝焼け色に染める。それは初めて見る世界。昨夜見たものとはまた違った景色だった。ほとんどの建物は倒壊、木々は無造作に育ち、道は全て浸水し底が見えないほどのクレーターがいくつもあった。
「え…ちょっと……、」
「じゃ!」
「俺はこれからどうすれば……。……え?」
シャーロットは律樹の前で立ったまま、不思議そうな顔をして、次第に焦りが見えてきた。
「ど…どうしたの?」
「分からない……。」
「?」
「帰り方が……、分からない。」
「え…」
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