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大きな都
――保育ルームでお食事――
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「そうだ、これだけお金があるなら、土地が買えるかも!」
「土地ィ?」
「はい。三畳ぐらいの小さな土地でいいんです。あんまり郊外過ぎると困るんですけど、どこかいい土地を知りませんか?」
「じゃあうちの隣の土地を使えばいいよ。空いてるから無料で使っていいし」
ハーヴェルさんがあっけらかんと言った。
「そ、そんな、そこまで世話になるわけには」
「いいっつってんだろうが」
イリアさんが、がん! と机を踵で殴りつける。
「怖いのー」「のー」
子供たちがパタパタと俺の後ろに隠れていった。
「イリア」
「わ、悪かった…」
意外にも慌てて謝って足を机から降ろす。
「こい」
カウンターから出て俺たちを外へと案内する。
確かにちょうどいい程度の広さの空き地があった。
「盆栽でも育てようと思ったが面倒でそのままにしていた。勝手に使え」
盆栽。渋いな。いくつなんだイリアさんは。
「ではお言葉に甘えて……『保育ルーム』」
俺の前に小さな部屋が現れる。
「ユーチャ達のおうちなのー!」
「おい、こんな狭い部屋で暮らす気か?」
「中に入ってみてください」
ドアを開いてイリアさんとハーヴェルさんレオンハルトさんを迎える。
「へぇ、中は広いんだね。ユイくんは空間魔法も使えるのか。凄いじゃないか、この国にも五人といないんじゃないかな」
え、そんな凄い魔法なのか。
「お兄ちゃお兄ちゃ!」
「ん? どうした?」
子供たちが庭の葉っぱに集まっている。
「コタツムリさんなの!」
「コタツムリ」
見ると、確かに、貝の代わりにコタツをしょった小さな虫がいた。
なんだこの虫は。
また手を伸ばそうとするユーチャを止める。
「コタツムリさんも生活してるからな。邪魔しちゃいけないぞ」
「はーいの」
素直に引き下がった。
今日の昼ごはんは……焼きそばか。
キッチンのカゴの中には野菜と麺が乗っていた。ソースも準備万端である。
なぜかイリアさんたち大人の分まで材料があった。
「イリアさん、ハーヴェルさん、ついでだから飯を食っていってください」
「いいのかい?」
「食えるモンが出てくるんだろうなぁ?」
「食えますよ。お口に合うかはわかりませんが」
焼きそばは得意料理でもある。この世界の人の口に合うかどうかはわからないけど。
「キャベツさん嫌いなの……」
「葉っぱなの……」
「好き嫌いしない。ほら、火の傍にいたら危ないから遊んでなさい」
「はーいの」
わらわらと散っていく。
野菜を切って、炒めながら、「でんでんむしむし」を鼻歌で歌っていた。
「でーんでんむーしむーしこーたつむりー……って、わ、どうしたんだよ?」
「こたつむりのお歌の?」
「あ、ああ、そうだな、コタツムリさんの歌かな」
「ユーチャにおちえるの!」
「マーチャにも!」
「はいはい。でーんでんむーしむーしこーたつむりー」
鍋をふるいながら歌を教えてやる。かたつむり、の部分をこたつむり、に変えた歌を。
「覚えたの!」
ケンチャが言うと、四人はしゃがみこんで頭を突き合せた。こしょこしょと内緒話をしているようだ。
「美味そうなにおいがしてるじゃねえか。腹減ってきた。さっさと作れ」
イリアさんが酒瓶片手に向かってくる。
「もうできますよ、ちび共もおいでー」
「はいの!」
「いいかおりー、ジュージューなのねー!」
「お腹ぐーぐーなっちゃうの!」
「の」
「配膳しよう」
レオンハルトさんがテーブルに(なぜか昨日より大きくなっていた)に食器を配膳していく。
「いただきます」
床に胡坐をかいたイリアさんが意外にもちゃんと一礼してフォークで焼きそばをかきこむ。
「おいちっちー、のね! この焼きそばさんもユーチャだいつきなのでつ」
「ほっぺたおっちゃうのー!」
子供たちが騒ぐ。
「初めて食ったけどうめえな。なかなかやるじゃねえか」
「ああ、おいしいね。こんな料理は見たことが無いよ。売り出せばいい収入になるんじゃないかな?」
売り出す……か。でもこの保育ルームは大量に食事は出してくれないだろう。自分で小麦粉を打って……と考えるととてもできる気がしないなぁ。
「キャベツさんが葉っぱじゃないのー、甘いのー!」
「よしよし、野菜も食べられていい子だ」
「酒にも合うな」
「イリアはなんでも酒に合わせるだろう」
なんというかがさつに食べるイリアさんと違って、ハーヴェルさんは優雅な仕草で食事をしていく。
元貴族とかだったりするのかなこの人。
「美味いな。ユイは料理もできたのか」
レオンハルトさんも褒めてくれた。
「あ、はい。親がいなかったからガキの頃からやってたもんで得意なんですよ」
レオンハルトさんの言葉に何気なく自分の秘密みたいなのを暴露してしまう。
しまった。これを言うと哀れみの目で見られたりするから隠していたのに。
でも、三人は特に顔色を変えることもなくレオンハルトさんが「そうか」と答えただけだった。
聞き流してくれるのがうれしかった。
独りぼっちに同情されるのはちょっと悔しいからな。まぁこの世界、戦いがある世界なんだから孤児も珍しくないだけかもしれないが。
「お腹いっぱいになりまちたー! お御馳走様でつの!」
「ここでユーチャたちのお遊戯をみてくだたい」
「お遊戯?」
椅子から立ち上がって四人が並ぶ。
「ほら、口の端が汚れてるよ」
「んむー」
ハーヴェルさんにナプキンで口を拭ってもらって、キーチャもその列に加わった。
横に並んだ四人が歌いだしたのはでんでんむしむしこたつむりの歌だった。
しかも高音、低音とハモリもばっちりだ。
歌い終わった四人に大人四人が笑顔で拍手をする。
「平和でいい飯だ」
イリアさんが酒瓶に口を付けて素直に笑った。
「土地ィ?」
「はい。三畳ぐらいの小さな土地でいいんです。あんまり郊外過ぎると困るんですけど、どこかいい土地を知りませんか?」
「じゃあうちの隣の土地を使えばいいよ。空いてるから無料で使っていいし」
ハーヴェルさんがあっけらかんと言った。
「そ、そんな、そこまで世話になるわけには」
「いいっつってんだろうが」
イリアさんが、がん! と机を踵で殴りつける。
「怖いのー」「のー」
子供たちがパタパタと俺の後ろに隠れていった。
「イリア」
「わ、悪かった…」
意外にも慌てて謝って足を机から降ろす。
「こい」
カウンターから出て俺たちを外へと案内する。
確かにちょうどいい程度の広さの空き地があった。
「盆栽でも育てようと思ったが面倒でそのままにしていた。勝手に使え」
盆栽。渋いな。いくつなんだイリアさんは。
「ではお言葉に甘えて……『保育ルーム』」
俺の前に小さな部屋が現れる。
「ユーチャ達のおうちなのー!」
「おい、こんな狭い部屋で暮らす気か?」
「中に入ってみてください」
ドアを開いてイリアさんとハーヴェルさんレオンハルトさんを迎える。
「へぇ、中は広いんだね。ユイくんは空間魔法も使えるのか。凄いじゃないか、この国にも五人といないんじゃないかな」
え、そんな凄い魔法なのか。
「お兄ちゃお兄ちゃ!」
「ん? どうした?」
子供たちが庭の葉っぱに集まっている。
「コタツムリさんなの!」
「コタツムリ」
見ると、確かに、貝の代わりにコタツをしょった小さな虫がいた。
なんだこの虫は。
また手を伸ばそうとするユーチャを止める。
「コタツムリさんも生活してるからな。邪魔しちゃいけないぞ」
「はーいの」
素直に引き下がった。
今日の昼ごはんは……焼きそばか。
キッチンのカゴの中には野菜と麺が乗っていた。ソースも準備万端である。
なぜかイリアさんたち大人の分まで材料があった。
「イリアさん、ハーヴェルさん、ついでだから飯を食っていってください」
「いいのかい?」
「食えるモンが出てくるんだろうなぁ?」
「食えますよ。お口に合うかはわかりませんが」
焼きそばは得意料理でもある。この世界の人の口に合うかどうかはわからないけど。
「キャベツさん嫌いなの……」
「葉っぱなの……」
「好き嫌いしない。ほら、火の傍にいたら危ないから遊んでなさい」
「はーいの」
わらわらと散っていく。
野菜を切って、炒めながら、「でんでんむしむし」を鼻歌で歌っていた。
「でーんでんむーしむーしこーたつむりー……って、わ、どうしたんだよ?」
「こたつむりのお歌の?」
「あ、ああ、そうだな、コタツムリさんの歌かな」
「ユーチャにおちえるの!」
「マーチャにも!」
「はいはい。でーんでんむーしむーしこーたつむりー」
鍋をふるいながら歌を教えてやる。かたつむり、の部分をこたつむり、に変えた歌を。
「覚えたの!」
ケンチャが言うと、四人はしゃがみこんで頭を突き合せた。こしょこしょと内緒話をしているようだ。
「美味そうなにおいがしてるじゃねえか。腹減ってきた。さっさと作れ」
イリアさんが酒瓶片手に向かってくる。
「もうできますよ、ちび共もおいでー」
「はいの!」
「いいかおりー、ジュージューなのねー!」
「お腹ぐーぐーなっちゃうの!」
「の」
「配膳しよう」
レオンハルトさんがテーブルに(なぜか昨日より大きくなっていた)に食器を配膳していく。
「いただきます」
床に胡坐をかいたイリアさんが意外にもちゃんと一礼してフォークで焼きそばをかきこむ。
「おいちっちー、のね! この焼きそばさんもユーチャだいつきなのでつ」
「ほっぺたおっちゃうのー!」
子供たちが騒ぐ。
「初めて食ったけどうめえな。なかなかやるじゃねえか」
「ああ、おいしいね。こんな料理は見たことが無いよ。売り出せばいい収入になるんじゃないかな?」
売り出す……か。でもこの保育ルームは大量に食事は出してくれないだろう。自分で小麦粉を打って……と考えるととてもできる気がしないなぁ。
「キャベツさんが葉っぱじゃないのー、甘いのー!」
「よしよし、野菜も食べられていい子だ」
「酒にも合うな」
「イリアはなんでも酒に合わせるだろう」
なんというかがさつに食べるイリアさんと違って、ハーヴェルさんは優雅な仕草で食事をしていく。
元貴族とかだったりするのかなこの人。
「美味いな。ユイは料理もできたのか」
レオンハルトさんも褒めてくれた。
「あ、はい。親がいなかったからガキの頃からやってたもんで得意なんですよ」
レオンハルトさんの言葉に何気なく自分の秘密みたいなのを暴露してしまう。
しまった。これを言うと哀れみの目で見られたりするから隠していたのに。
でも、三人は特に顔色を変えることもなくレオンハルトさんが「そうか」と答えただけだった。
聞き流してくれるのがうれしかった。
独りぼっちに同情されるのはちょっと悔しいからな。まぁこの世界、戦いがある世界なんだから孤児も珍しくないだけかもしれないが。
「お腹いっぱいになりまちたー! お御馳走様でつの!」
「ここでユーチャたちのお遊戯をみてくだたい」
「お遊戯?」
椅子から立ち上がって四人が並ぶ。
「ほら、口の端が汚れてるよ」
「んむー」
ハーヴェルさんにナプキンで口を拭ってもらって、キーチャもその列に加わった。
横に並んだ四人が歌いだしたのはでんでんむしむしこたつむりの歌だった。
しかも高音、低音とハモリもばっちりだ。
歌い終わった四人に大人四人が笑顔で拍手をする。
「平和でいい飯だ」
イリアさんが酒瓶に口を付けて素直に笑った。
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