勇者パーティーの保父になりました

阿井雪

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ギルドからの依頼

――魔力の大きさで開く扉――

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「これは……」
「おもちろい扉なの」

 石で出来た扉を前にルティナさんとマーチャが同時に言う。
「魔力で開く扉だわ。丁度いい。二世代の勇者様たちの力を見せて頂戴」
 ルティナさんが扉を拳でコンと叩いてルカとブレイズさんを振り返る。
「魔力だと? 俺は大剣使いだから魔力なんかほとんどないぞ」
「ボクは魔法剣士だから使えもするが……魔法使いほどではない」
「あんたたちの魔力量なら十分開けられる扉よ。体中の魔力を手のひらに集めるイメージで開けばいいの」

「わしじゃったら簡単に開けられるがのお」
 無詠唱の魔法使い、ロウスイさんが口を挟むが、
「手は貸さないで。この先のダンジョンで同じようなギミックに当たるかもしれないんだから。このぐらいの扉、開いてもらわないと安心して引退できないわぁ」

 ルティナさんに促され、ブレイズさんとルカが両開きの扉の片方ずつに立ち「すぅ」と息を吸って両手を扉にあてた。
「むぅ……!!!」
「ぐぅ…………!!」

 二人が踏ん張ってありったけの力を込め開けようとするが、扉はびくとも動かなかった。
「くそ、びくともしやがらねえ」
「もう一度だ、ぐぅ……!」
 ルカが押していたほうがずる、と一センチほど動いた。だけどそれまでだった。ドガァンと扉に押し返されて尻もちをつく。
「だ、ダメだ……」
 息を切らして二人して座り込んでしまう。

「じゃあ、『クロコダイル』と『不可視の剣』の魔法使いさん、お願いするわ」
「うちに魔法使いは居ないぜ」
「ぼ、ぼくですか!?」

「『クロコダイル』はパーティーバランスが悪すぎるわ。魔法が必要な時はどうしてたのよ」
「そりゃまあ、依頼を諦めてたな」
「あんたねえ、勇者がそれでいいと思ってるの? 魔法使いが居ないならあなたが魔力を上げないと。勇者はオールマイティな職業よ。魔力を伸ばそうと思えばいくらでも伸ばせるんだから。Sランクなんでしょ?」
「だが俺は剣があってるからなあ」
 そっぽ向いて頬をかくブレイズさん。
「た、試してみます。う、ぐ……!!」
 俺より身長が少し高いぐらいのいかにも魔法使いという格好をした青年が扉を押す。ごとりと開いて、数十センチほどの隙間ができたけど、
「うわぁ!」
 扉に押し返され、ルカと同じように尻もちを付いてしまった。
「おいおい、どんだけ平和ボケしてやがんだ、第二世代の連中は」
 イリアがあきれた声をあげる。

「じゃあ第一世代の勇者様の力を見せてくれよ」
 ブレイズさんがふてくされた様子でそう言い返した。
「仕方ないわねえ。ハーヴェル、見せてあげなさい」
「僕がこの手のギミックに触ったらどうなるか知ってるだろう。ルティナが開けばいい」
「ご指名があったんだから、見せてあげなさい」「見せてやれよ」
 ルティナさんとイリアさんに言われ、しょうがないな、とハーヴェルさんが前に進み出る。
 おそるおそるといった感じで人差し指で触れた途端、
 ドゴン!!! と派手な音が響いて扉がはじけ飛んだ。

 砂埃と粉塵が一気に襲い掛かってくる。

「な……!?」
「ど、どうなってやがんだ!?」
 砂煙や小さな小石を浴びながらルカもブレイズさんも目をむく。
「ただ単にハーヴェルの魔力に耐えられず扉が壊れただけだ。あいかわらず魔力のコントロールが下手な奴だ……逆に面倒ではないのか」
 エルメイさんが首をふる。
「これが、第一世代の勇者の力……!?」
「これが、大魔王戦まで生き残ったパーティーの実力か……!!!」
 呆然と誰かが言った。俺もびっくりだ。別にハーヴェルさんのことを過小評価してたわけじゃない。
 けど、チビ達よりも弱いからと勝手にランク付けしてた。
「これはたまげたわい。わしでも扉を吹き飛ばすなんて芸当はできん」
「繊細な魔力のコントロールが苦手なだけですよ」
 肩に乗った小石を払い落としながらハーヴェルさんが苦笑する。

「くそ、せめて先陣を切って――!」
 ブレイズさんが先に進もうとしたけど、エルメイさんが剣でゆく手を防いだ。
 
「な、何を!」
「この部屋はトラップゾーンだ」
 エルメイさんが大き目の破片を手に取る。そして部屋の中に投げ込むと、
 四方八方からガシャンと刃が飛び出してきた!
 ブレイズさんが飛び込んでいたら今頃肉片になっていたところだ!!
「な、あ」
「騎士と賢者はトラップを見抜くのに長けてるのよね。パーティーの職業はバラバラにしていたほうがいい理由はわかったかしら。本当の出入り口を探しましょ」
「そこの入り口が使えないとなると……」

 ハーヴェルさんが壁を拳で叩く。
 しばらくすると、バカン!と壁がはじけた。
「通路が続いている。次へ行こう」

「で、でたらめすぎるぜ」
 ブレイズさんが頭を抱えた。
「伝説の勇者とご一緒できて、本当に光栄です!」
 逆にルカはテンションを挙げていた。
「僕は全然伝説じゃないんだけどね。伝説の勇者は――神々に愛されし勇者だから」
 と、言いながら、俺に視線を向けてきた。
 皆が一斉に俺に視線を向けてきて「え、あ?」ときょどってしまった! やめてください、誤解されるでしょ!

「今度は普通の扉ね」
 通路の先に現れたのは、これまた両開きの扉だった。
 ルカが張り切って前に出、引いて開いたんだけど、中にはびっちりとモンスターが詰まっていた。鱗のある体や毛の生えた獣人っぽい体、こちらに顔だけ出ているゴブリン、ラッシュ時の電車以上にみっちみちになっていた。窒息死しているモンスターもいっぱいいそう。
「う、わあああ!?」
 ルカが慌ててドアから離れる。

 またこんな状態か。このダンジョンはどうなってるんだろ。

「魔素が高すぎてモンスターが増え続けているのね。素敵」
 マリアさんがウットリと言う。貴方ホントに聖職者ですか!?

 開いたドアにモンスターたちが雪崩れ出てくる。

「もう、面倒くさいわね」
 パチン、とルティナさんが指を弾くと部屋にみっちり詰まっていたモンスターがみんな蒸発して消え、大量のアイテムだけが残った。

「えええええ!?」
「す、すごい……!!」
「う、嘘だろ、あんな大量のモンスターを一気に倒せるなんて!」

「魔法使いならこれぐらい出来て当たり前なのよ。雑魚敵を掃討するのが役目なんだから」
「あ、あたりまえ……!?」
 ルカのチームの魔法使いさんが呆然としている。
「ほら行け、アイテム回収だ」
 イリアさんに尻を蹴られて中に入る。と同時に全てのアイテムが俺の中に吸収された。

「お前さんどんだけインベントリを持ってるんだ!」
 ブレイズさんに詰め寄られてしまった。
「いえ、そんなに多くは無いんですが……」
「俺は3つだぞ」
 とブレイズさん。
「僕も5つだ」とルカ。インベントリってそんなもんなんだ。

 続いての扉も、また大量のモンスターが溢れていた。

「ここは第二世代のチームに任せるわ」
 ルティナさんが引いて岩の上に腰掛ける。
「では、次はわたくしが」
 マリアさんが掌から光を走らせた。
「聖呪文『愛のあいさつ』」
 モンスターが一瞬で砂みたいになって溶けて行った。しかも範囲攻撃だ。一直線上に居たモンスターが全部消えていく。
 3メートルぐらいあるゴーレムまで一撃で消え去った。

「よっしゃあ俺たちも行くぜ! 後ろから撃たないでくれよ魔法使いさんたちよぉ」
 ブレイズさん達が突っ込んでいく。ルカも飛び出して行った。

「近接だけどこれぐらいは倒せます! 百体斬り『アトランティーダ』!」
 ルカが一撃で丸太みたいにぶっとい敵の体を分断してる。数十体も一気に倒し、立ったまま死んだモンスターを足場にして次々に倒していく。強い。『終焉を告げる黒使』さん達やチビ達が規格外に強いだけで、この人たちも勇者なんだ。ハーヴェルさん達の強さを見ても卑屈にならず、目の前の敵を迷わず倒している。

 こうなると、俺だけがここに残るわけにはいかなかった。剣を構えて敵に突っ込む。死んだら死んだ時だ。ケンチャが生き返らせてくれるだろうからな!

 俺が相手にしたのは普通のゴーレム。これ、剣通るのかな!?

 そう思った瞬間、剣が緑色に光った。こいつの弱点は風だ! 
「『悪魔を射貫く者』」

 魔法を叩きこんだ瞬間、単なる石になって地面に広がった。

 因みに、俺が動くたびに入ってくるドロップ品が鬱陶しい。
 自動で回収されるのは助かってるんだけど何せ量が多すぎる!

「本当にどれだけ膨大なんだ君のインベントリは!」
 ルカが敵を倒しながら呆れたように言った。
「いや、うん、外に出たらみんなで分けような!」
 そういうと、え!? と飛び跳ねながら敵を倒していた彼がびっくりする。
 どうしてびっくりするんだよ。皆で倒すんだから分けるのは当然だろ。
「お前ほんと太っ腹すぎるわ。もっと貪欲になってもいいのに、よっと!」
 剣を振るって数十体を一気に倒しながらブレイズさんが言う。
「皆で強くなる方がいいって言ったでしょ!」
「ふふ、第二世代……第一世代と比べてはるかに弱いわたくし達なのに、あなたがいることが心強いわ」
 マリアさんが範囲攻撃でどんどこ敵を倒しながら笑った。

 どれだけ戦ったんだろう。ルティナさんが指ぱっちんで倒した程度の敵を右往左往しながら倒しつくす。
 ユーチャたちも全然手を貸してくれなかった。
 あちこち走り回ったから足がガクガク言ってるよ。運動不足だったもんなぁ。

「おにちゃ、ポーチョン飲んだ方がいいのです」
 ユーチャがぽよぽよ歩いてくる。
「そうだな。ありがとう」

「俺たちにも頼むわ」
「はい、お好きなだけどうぞ」
 インベントリからケースにいれたポーションをドン、と出す。

「相変わらず太っ腹だな。見た目はひょろい優男なのに」
 ポーションあげたのに悪口を言われた。
 仕方ないだろデスクワークだったんだから!
 まぁポーションはスライム戦で結構集めたからケチる必要がないんだけどな。

「次への道はどこにあるのかしら?」
 マリアさんが周囲を見渡しながら言う。

「あ、ここにありますよ」
 ルカが言う。床下収納のような扉があり、そこを開くと眼下にまたモンスターが大量にいた。またも部屋中にびっちりだ。

「また一杯なのね。あんまり強いモンスターちゃんが居ないからユーチャはがっかりなの。このまま退治しちゃうのです」
 マーチャが小さな手を床下収納に突っ込んだ。
「無慈悲な火炎」
 いきなり焼かれたモンスターの悲鳴が聞こえる。

「あぶね!」
大型のゴブリンが棍棒を投げてきて慌ててマーチャとかわす。

「マーチャに意地悪したの。許せないの」
 次はユーチャが手を突っ込み
「『すべてを貫く氷剣』」

 唱えると、空中にいくつもの氷の剣が出来て部屋中に降り注いだ。
「じゃあ最後に私が。聖呪文『愛する人々へのレクイエム』」

 マリアさんが杖を掲げると、ざあああっとモンスターが砂になっていく音が聞こえた。

 次の階へは縄梯子で降りた。
 ん、いいにおいがしてきたぞ? これはまさか……。

「温泉だ!」
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