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ビジュアル系弁護士✨シンゴ✨💕💕

第2話 ビジュアル系バンド 【ワイルドプリンス】

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 ここは、ライブハウス【シャイニング ゲート】だ。
 



 無名のインディーズバンドの登龍門と言って良い。キャパシティーは三百人程度が目一杯だろう。

 

 今夜は、ここで【ル=シフェル】のギタリスト、ユウキの追悼の合同ライブが開催されていた。



 即日、ソールドアウトだ。



 もちろんオレたち【ワイルド プリンス】も参加している。



 ステージのバックには在りし日のユウキが大きく映った遺影が飾られてあった。



 ユウキの母親、美幸らも招待して、ライブ会場は熱気に包まれ盛況だ。



 会場に入りきれなかったユウキのファンも会場の外で、彼の早すぎる死をいたんでいた。



 いくつかマスコミのカメラも並んでいる。

 ユウキの最後の勇姿だ。


 目を凝らして見ていてくれ。

 


「OKェ~ーー!! みんな!!」
 オーディエンスに向かってオレは声を掛けた。



「キャァァァァ~ーー!!」
 悲鳴のような黄色い声援が響く。



「一ヶ月前…… オレたちのだったユウキが亡くなった」
 オレはバンド仲間を見回した。


「……」
 【ル=シフェル】のベースでリーダーのタクも無言で頷いた。

 ユウキの母親、美幸もオーディエンスも涙で瞳が潤んでいる。




「おォォーい、聴いてるかァァー……!!
 ユウキィ~ー……!!」
 オレは天に向かってギターを掲げた。


「キャァァァァ~ーーーー……ッ」
 たちまち悲鳴のような少女たちの黄色い歓声が会場に轟く。



「コイツは、お前の愛用していたギターだ!!」
 チラッとユウキの母親へ視線を向けた。
 母親はハンカチを手に涙を浮かべていた。



「お前のお母さんから預かっているぞォー!!」
 また歓声が響いた。



「悔しかったら取りに来い!!
 いつまでも待ってるからなァー……!!」
 天国のユウキに向かって精一杯、大声で叫んだ。


 ユウキの母親の泣いている姿が目に映った。



 期せずして、オーディエンスから『ユウキ』コールが巻き起こる。



『ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキィィィーー!!』
 コールの渦に巻き込まれたみたいだ。




「聴こえるかァ!! ユウキィーー……!!
 みんなお前のファンだァァーー!!
 いつかまたセッションしようぜェーー!!」



「キャァァァァァァァ~ーーーー!!」
 ライブは最高に盛り上がった。



「ユウキが最後に遺した楽曲バラードだ!!
 みんな、聴いてくれェ……
 『ラブソングは歌えない』!!」
 オレのセリフを合図にスピーカーから静かにギターソロが流れた。



 天才と呼ばれたユウキが最後に弾いたモノだ。

 流麗なメロディだ。




 オレたちも彼のギターソロに合わせて伴奏した。
 ラブバラードの演奏が始まった。


 オーディエンスも固唾を飲んで見守っている。



 
 そう、このバラードには哀しい経緯いきさつがあった。








 まさに、『ラブソングは歌えない』と言う題名そのものの……。










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