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✨ユウキ✨💕

第12話 ユウキ

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 ようやくユウキの実家へ着いた。


 実家周辺にもユウキの少女ファンが大挙押しかけしていた。


 オレとクリスは腕を組み、その後ろをヒデが着いてきた。



「あ、見て、シンゴだ!!」その中の一人がオレの事を知っていたみたいだ。

「マジマジィ…… 
 真っ赤なモヒカンのチンパンジーを連れてる」
 

「はァ、誰がチンパンジーだよ!!」
 ヒデは憤慨して女子ファンに食ってかかった。


「キャーキャーー」ファンは逃げ回っている。


「おいおい、葬儀の最中だぜ!!
 せよ! ファンと揉めるのは!!」
 やはりヒデは置いておくべきだったのか。

 まったく恥ずかしい。




 ユウキの実家へ上がると喪主の母親が気丈に振る舞っていた。

 しかし何処かやつれた感じで痛々しい。


 他の親戚らは白い目でオレたちを見ているが、母親だけは優しく微笑みを浮かべていた。


「このたびは御愁傷様です……」
 
「ハイ…… ありがとうございます。
 ええっと、お友達の」
 深々と母親はオレに頭を下げた。

「シンゴです。
 ユウキ君の親友の織田シンゴです」


「そうそう、織田さんね。
 せい……、ユウキがお世話になりました」
 まだ生前と言う言葉を使いたくないのだろう。
 途中で言葉を飲み込んだ。



「いえ、こんなカッコで申し訳ありません。
 折り入ってお願いがあって……!!
 実は、たいへん不躾ぶしつけですが、ユウキの遺書を拝見したいのです」

「ハイ……、遺書ですか……」



「えェ……、それと、あとユウキのパソコンがあればお借りしたいのですが……」

「ハイ、少しお待ち下さい」


「ええッ、どうか、そんなに急がなくても。
 僕たちもユウキ君に最後の挨拶を……」


「そうですね。ユウキも喜ぶと思います」

「どうも……」



 オレたちは純白に敷き詰められた棺に歩み寄った。



「……」ヤケに棺が遠く感じる。







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