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六舎部《ムトベ》エリカ✨✨

第41話 六舎部《ムトベ》エリカ✨

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 オレたちはオープンカフェで話しをした。

 交差点で急にオレたちに話しかけてきた男性は自己紹介をした。



「すみませんね。私は西田と申します」
 名刺を出した。そこには『西田健一』と書かれてあった。


「どうも、西田さんですか。
 オレは、シンゴと言います」


「ン、シンゴさん…… ミュージシャンですか」

「えェ……、ま、ビジュアル系バンドの……」
 インディーズバンドと自己紹介するのは躊躇ためらわれた。


 西田はコーヒーを飲み話し始めた。
「どうしても、あの曲が脳裏から離れないので」



「では……、あの曲をご存知なんですか」
 オレたちは顔を見合わせた。

 この西田は、あのユウキのバラードをどこで聴いたのだろう。
 まだ世には出ていない曲だ。



「えェ、3日前の夜、ある女性に電話を掛けた時に聞きました……。いや聞こえましたと言うか」


「ン、3日前ですか……」
 ちょうどユウキが亡くなった日だ。


「この曲は、いったいどこで売っているんですか」
 西田は訊いた。


「え、ああ、これは、まだ売り物ではないんですよ。
 サンプル版と言うか」
 


「あァ……、そうか。アナタの曲ですか……」

「いえ、親友の曲なんですが……。
 うゥン……、ちょっと待ってください。
 本当に、この曲を3日前の深夜に聴いたんですか」



「えェ……、間違いありません。
 僕は思いきって彼女をデートに誘ったんですよ。
 もちろん振られましたがね」
 照れ笑いを浮かべた。


「デートに…… 差し支《つか》えなければ、その彼女のお名前を教えて貰えますか」



「えェ……、構いませんよ。エリカ様です!!」
「な、エリカ様……!!」


「ハイ!! 六舎部ムトベエリカ様です!!」



「ムトベ  エリカ!!
 まさか、あの『エリカ  ン飛べ』の!!」
 オレは立ち上がって西田に詰め寄った。



「えェ……?! 『エリカ  ン飛べ』……
 なんですか。それは」
 不意に、謎のフレーズを言われて西田も驚いている。



「いえ、ありがとうございます!!」
 思わぬところで、見つからなかったピースがみたいだ。









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