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平家伝説財宝殺人事件✨✨

お蝶✨✨✨

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 夜空には無数の星がまたたいていた。
 白く妖しい月光が闇夜を照らしている。

 夜になりいく分、蒸し暑さも和らいできたようだ。
 深川清住町にある柿の木長屋のオレの家だ。
 すでに夕食は片づいて酒を酌み交わしていた。今夜の気分は格別だ。

「どうぞ、キヨ様」
 妖しいほど美しいお蝶が酒を勧めてくる。
 こうしてお酌をしてもらうと、まるで新婚夫婦のようだ。
 このままずっと家にいてくれればよいのだが。それは虫の良い話しだろう。
 
「いやいや、だいぶ酔ってきましたから……」
 こんなに飲んだのは、おっかぁが亡くなった時以来だ。こんなに気分の良い酒は久しぶりだ。

「フフゥン、お強いんですかァ」
「いえ、普段は飲まないんですけど……」
 美女の手前、格好をつけ過ぎた。明らかに早く酔いが回っている。

「ど、どうぞ。お蝶さんも……」
 それにしても思ったよりも酔いが早い。

「ハイ、ありがとうございます」
 お蝶はかしこまって丁寧だ。

「そんなもっと楽にしてくつろいで下さい」
 酌をするが、徐々に意識が朦朧としてきた。

「大丈夫ですか。キヨ様……」
 彼女が心配そうに俺を抱きかかえてきた。
 甘くとろけそうな匂いが辺りに漂っていく。

「あれェ……、おかしいな」まだ宵の口だ。
 こんなに酔うはずがないのだが。

 けれども目の前のお蝶が、ぼんやり見えてきた。
 ものすごい眠気が襲って来るようだ。

「少し横になってお休みになったらいかがでしょうか」
 妖しく微笑んでオレの顔に唇を寄せてきた。このまま抱きしめてしまいたい。
 だが、今にも意識が遠退《とおの》きそうだ。

「え、ああァ、いや、あの……、おかしい」
 せっかくお蝶と二人きりなのに眠くて仕方がない。

「こんなはずじゃ……、目が回る」ヤバいと思ったのもつかの間、まるで一服盛られたようだ。
 倒れ込むようにお蝶の柔らかな胸元へ倒れ込んだ。
 ちょうど胸の膨らみのあたりに鼻面を突っ込んだ恰好だ。


「ああァン、キヨ様……」艶かしく喘ぐように吐息を漏らした。

「あッああァ……」なんて良い匂いなんだろう。
 香水なのか、しびれるような甘美で蠱惑的な匂いが俺の鼻孔をくすぐっていく。

 起きなくてはと思っているのに意識がなくなっていく。

「ぐうぅぅ……」
 不覚にも俺は、このままお蝶の胸で眠りこんでしまった。



「フフッ、すぐに床を用意しましょうね。キヨ様」
 お蝶は意味深に微笑んだ。
 目が妖しく光りを帯びている。







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