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嵐の中で……✨✨✨✨

嵐の中で……

　
「バカヤロー！  いきなり飛び出して来やがって！！
　死ぬ気かァァァ！！」
　すぐに停車した車から若い男性が飛び出して来て怒鳴った。



　メガネを掛けたイケメンだ。



「うッぐうゥ……」どうやら生きてはいるみたいだ。かろうじて身体は動く。


「お、おいッ」
　だがイケメンのメガネ男は私の恰好を見てあ然とした。


　無理もないだろう。
　セーラーエンジェルのコスプレをした少女が､レイプをされたように衣裳がビリビリだ。

　しかも水たまりに突っ込み､あられもない恰好をしていた。


「おい､大丈夫か。キミィ」
　カレは優しく手を差し伸べた。



「見て解らねえぇのか。どう見ても､大丈夫じゃねえェだろう……」
　強がりを言うのが精一杯だ。


「ああァ、病院？   それとも警察へ行こうか」
　カレは怪我人を扱うみたいに丁寧に抱き上げようとした。




「うううゥ……、警察？   バカ言ってろよ」
　私は彼の差し出す手を思いっきり振り払った。


「なッ、それにしてもなんて恰好だ。レイプでもされたのか」


「ウッセェな。ほっとけよ！！」
　こんな無様な恰好をイケメンのメガネ男に見られたくない。
　すぐに立ち上がろうとしたが､身体じゅうが痛い。



「イテテテェ……」顔は涙と雨でグシャグシャだ。
　化粧も流れて､おそらく酷い顔だろう。



「おい、とにかく車に乗れよ。自宅へ送るよ」
　強引にイケメンは私を抱えあげ､お姫様抱っこをした。



「ええェ……？？」
　軽く持ち上げられ､有無も言わさず車の助手席へ座らされた。




　カーステレオからはピアノ曲の『月光』が流れていた。


　優しく助手席へ座らされたが､こっちは良い迷惑だ。


「さァ、セーラーエンジェルさん。ご帰還だ。
　早く帰らないと親御さんが心配するよ」

　ティッシュをくれたが､それでは間に合わないと感じたのか､タオルを渡してきた。


「るッせぇな。たった今、逃げ出して来たんだよ。
　自宅から……」


「フフゥン、セーラーエンジェルは､家出少女か」
　イケメンは呆れて苦笑いを浮かべ車を発進させた。　　





　戦後最大級と言われる台風のため､一台も行き交う車は走っていない。











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