魔眼持ちの伯爵家当主（旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢）

65話

「まあ、予想通りに退学だったわね。
それに面倒事の気配もしてたし、あまり関わりたくはなかったけど、仕方ないか」

私は教員室を退出してからは即座に帰路につき、屋敷に帰る途中の馬車の中で、ため息をつきながら、アリアとフィーナに話しかけた。

「まあ、退学に関しては、当然といえば当然でしたね。
平民が貴族に楯突く事を、学園が許容する訳が無いという事でしょう。

ただ、あの震えていた教員は貴族が行っていた不正の犯人にされたのでしょうね。
アリアの幼馴染の男と親もローニャ様が拾わなければ、商会毎処分だったでしょうね」

「あの、すみませんでした。無理を言ってしまって」

私達の少し疲れた様子を見て、アリアは表情を暗くしながら、頭を下げた。

そんなアリアを見て、流石に擁護できないなと、無言で苦笑いをした。
微妙な空気になってしまったのを変えようとしたのか、フィーナが質問してきた。

「ところで、アリアの幼馴染とその家族はどうするのですか？
流石にフロービス伯爵領には向かわせなければなりませんが、本当に兵士にしますか？」

「ん～、悩みどころだね。

あの教員に押し付けられた不正が、あの教員たけで済まない類の物ならば、兵士にしないと守れない。

でも、あの幼馴染は別としても、あの親を兵士にしても使えるようになるとは思えないから、フロービス伯爵領の領主邸で雑用でもさせようかな。

商会の方は『何でも屋商会』に併合すれば、色々と面倒も減りそうだね。
そこだけは良い点かな」

私が今後の対応を考えるのが面倒に感じていると、アリアが思い切り頭を下げた。

「本当に面倒をかけてしまって、すみません。
教員室でのお話を聞いていて、本来なら処分されても文句は言えないのだと分かりました。

なので、これ以上の我が儘は言えません。
伯爵様の扱いやすい様に、扱って頂いて構いません」

頭を下げたアリアは、少しだけ震えていた。

おそらく、あの幼馴染とはある程度の交流はあったのだろうし、その家族とも交流があったのだろう。
その人達を好きにして良いと言うのだから、色々と考える事があるのだろう。

そう考えた私は、ため息をつきながら、今後の対応を話した。

「そうね。

とりあえず、フロービス伯爵領の邸に送って、暫くは下働きをしてもらうわ。

その後は、あの教員の処罰理由次第で、本当に兵士になってもらう。
でも、こちらまで余波が来る様な物でなければ、『何でも屋商会』で会計の仕事をしてもらうとしましょう」

私の言葉に、頭を下げていたアリアは顔を上げた。

「良いんですか？
ガイ君は伯爵様に無礼な態度を取っていたのに」

「良いのよ。
元々不快なだけで、殺そうと思う程では無かったし、殺すくらいなら会計として使った方が有意義だもの」

「ありがとうございます」

アリアは嬉しそうな顔をして、頭を下げた。